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第16話 忍者面接

「…………」


「おう、また会ったな、【不可視】」


 里の他の有力者たちが集まっているという集会所の部屋に入ると、そこにはコータ君がいた。

 部屋は広く、何十人も入れそうで座布団が置かれていた。

 そこには7人ほどの着物を着た忍者たちが、他にダンゾウさんやアヤメちゃん、コータ君がいた。因みに明らかに緊張感のある部屋だったが、その中でコータ君だけが唯一夜に会ったような雰囲気のままだ。


「いや、なんでコータ君がいるのさ」


「ん? 俺は若頭だからな」


 その役職が何かは知らないけど、一応有力者の一人だったみたい。

 セリカちゃんと僕の分の座布団が置かれていて、それに座るとちょうど対面になるように有力者たちと面と向かって対峙する構図になった。



「こんな若造が【不可視】なのか?」


 多分70歳くらいの手には扇子を持った男が、明らかに僕を侮蔑する様に言い放った。

 知っていたけど僕は歓迎されていないようだ。


 というか、僕だって別に来たくなかったわけだし。

 セリカちゃんには今日はなるべく穏便に落ち着いてあまり口を挟まないようにお願いしている。


「確かにこの魔力遮断、並大抵の実力者ではないだろうが、しかしこんな若造が里の頭領になりたいだと?」


 ん?


「この由緒正しい忍びに部外者が長になるなど有り得ない」

「この者に素質などあるのか?」

「忍びが何たるかもわからないガキがこのような場所に来るとは」


 ん? あれれ?

 僕の聞き間違いかな? 僕がまるで頭領になりたがってるみたいな状態になっているのか?


 ダンゾウさんを無言で睨むと、彼は明らかに明後日の方向を向いている。

 つまり、説得できなかったのだ。別に僕は頭領にもなりたくないんだけれど、そもそも僕なんでいるんだろう。帰ろうかな。


「まあ待て待てご隠居方。いきなり今日初対面の人間に悪態をつくなど失礼ではないか?」


「君のご隠居方っていうのも失礼だと思うけどね」


 空気を換えたのはコータ君。正直これ以上、文句言われるなら普通に帰ろうかと思っていた。


「俺は昨日彼と話して、彼の中に秘めている忍びを見た。素質は十分にあると思うぞ」


「いや、ないだろ」


 思わずツッコミを入れてしまう。

 因みに隣にいるセリカちゃんは僕を馬鹿にするセリフに対して苛立ちを隠せていない。


「まあ待て待て。とりあえずご隠居方から何か素質を聞いてみて、それでも納得がいかないならこの里を知ってしまったこの者を殺せばよかろう」


 さらっとえげつないことを言ってくる。それは不可視程度忍びの者たちで倒せるであろうという思想であり、それは正解でもあり不正解でもある。

 正解という点は、『僕』は恐らく殺すことができるとは思う。不正解なのはネーカの存在を忘れている点だ。コータ君が彼女の存在を知らないだけかもしれないが。


「……それもそうか。では【不可視】、お主に聞こう」


 初めに口を開いた老人が重々しく質問する。

 ……流されに流されているけれど、なんで僕が面接受けているんだろう。



「忍びとは何たるか」


 お、おう。

 僕はなるべく表情を変えないように努める。因みにご隠居方よりも後ろにいるアヤメちゃんは困っているようにきょろきょろと僕や、ダンゾウさん、長老っぽい人に視線を動かしている。

 ダンゾウさんは声を殺して、動きを殺して笑っている。


「いや、知りませんよそんなの」


 流石に真剣に考えるほど僕はお人好しではない。どちらかというとこれで怒らせるものの無難に終えて最後ネイカに助けを求めて逃げればいいと思っている。


「ふん、やはり忍びを理解もできないただのガキではないか」


「は?」


 答えたのは僕ではない、セリカちゃんだ。

 普段のふわふわした小動物系少女とは思えないような切れた声だ。


 座布団から立ち上がり、呆然としている僕の前に立つ。なにこれかっこいい。


「さっきからその態度何なんですか? 自分たちが理解できないことについては相手を貶めるだけですか?」


「ちょ、ちょっとセリカちゃん。落ち着いて」


「師匠は黙っててください」


「あ、はい」


 怒鳴るような怒り方であればこちらも声を張り上げることになっていたのかもしれないが、静かに淡々と言われるとより怖さが増す。


「そもそも忍びたるはなんたるかという質問の時点であなた方は二流なんですよ」


「なんだと!?」


「あなた方の今の格好は何ですか? 黒装束を着ている三人はいいとして、あなた方は着物を着てそれは忍びなんですか?」


「別に里におるのじゃから問題なかろう」


 はん、と鼻で笑うセリカちゃん。


「そもそもその発想が二流ですよ。師匠はですね、常に魔力を遮断し続けているのですよ? それにどれだけの技術が必要かは私には測りかねますが、あなた方のように職業としての忍びではないんです。生き様が忍びなんです。里だからとか言い訳しているあなた方がそもそも忍びとは何かなど聞くこと自体烏滸がましい」


 ……あれ、僕って実は忍びだった?

 なんかまるでみんなが僕を忍者のように言ってくるんだけど、外堀から埋められすぎて僕自身が自信なくなってきた。


「し、しかし魔力を常に遮断し続けて居るなど、今目の前にいる人間に自分が【不可視】であると教えているようではないか」


「それが何か? 隠密行動するのに自分がばれて何か問題でも? そもそも探知されないんですから」


「う、うむ」


 いや、なんでそこで押し黙るんだよ。さっさと反論しろよ。


「しかし、先程の質問については」


「だから先ほど言いましたよね。師匠は忍びたるは生き様です。あなたは人生が何たるか考えるのですか?」


 ちょっとダンゾウさん、笑ってますけどあなたご隠居方から睨まれてますよ?

 僕はどこで話を切ればいいのか考えているが、最早長老たちとセリカちゃんのバトルみたいになってる。


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