Chapter7♯45 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter7 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
登場人物
貴志 鳴海 19歳男子
Chapter7における主人公。昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の副部長として合同朗読劇や部誌の制作などを行っていた。波音高校卒業も無鉄砲な性格と菜摘を一番に想う気持ちは変わっておらず、時々叱られながらも菜摘のことを守ろうと必死に人生を歩んでいる。後に鳴海は滅びかけた世界で暮らす老人へと成り果てるが、今の鳴海はまだそのことを知る由もない。
早乙女 菜摘 19歳女子
Chapter7におけるもう一人の主人公でありメインヒロイン。鳴海と同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の部長を務めていた。病弱だが性格は明るく優しい。鳴海と過ごす時間、そして鳴海自身の人生を大切にしている。鳴海や両親に心配をかけさせたくないと思っている割には、危なっかしい場面も少なくはない。輪廻転生によって奇跡の力を引き継いでいるものの、その力によってあらゆる代償を強いられている。
貴志 由夏理
鳴海、風夏の母親。現在は交通事故で亡くなっている。すみれ、潤、紘とは同級生で、高校時代は潤が部長を務める映画研究会に所属していた。どちらかと言うと不器用な性格な持ち主だが、手先は器用でマジックが得意。また、誰とでも打ち解ける性格をしている
貴志 紘
鳴海、風夏の父親。現在は交通事故で亡くなっている。由夏理、すみれ、潤と同級生。波音高校生時代は、潤が部長を務める映画研究会に所属していた。由夏理以上に不器用な性格で、鳴海と同様に暴力沙汰の喧嘩を起こすことも多い。
早乙女 すみれ 46歳女子
優しくて美しい菜摘の母親。波音高校生時代は、由夏理、紘と同じく潤が部長を務める映画研究会に所属しており、中でも由夏理とは親友だった。娘の恋人である鳴海のことを、実の子供のように気にかけている。
早乙女 潤 47歳男子
永遠の厨二病を患ってしまった菜摘の父親。歳はすみれより一つ上だが、学年は由夏理、すみれ、紘と同じ。波音高校生時代は、映画研究会の部長を務めており、”キツネ様の奇跡”という未完の大作を監督していた。
貴志/神北 風夏 25歳女子
看護師の仕事をしている6つ年上の鳴海の姉。一条智秋とは波音高校時代からの親友であり、彼女がヤクザの娘ということを知りながらも親しくしている。最近引越しを決意したものの、引越しの準備を鳴海と菜摘に押し付けている。引越しが終了次第、神北龍造と結婚する予定。
神北 龍造 25歳男子
風夏の恋人。緋空海鮮市場で魚介類を売る仕事をしている真面目な好青年で、鳴海や菜摘にも分け隔てなく接する。割と変人が集まりがちの鳴海の周囲の中では、とにかく普通に良い人とも言える。因みに風夏との出会いは合コンらしい。
南 汐莉 16歳女子
Chapter5の主人公でありメインヒロイン。鳴海と菜摘の後輩で、現在は波音高校の二年生。鳴海たちが波音高校を卒業しても、一人で文芸部と軽音部のガールズバンド”魔女っ子の少女団”を掛け持ちするが上手くいかず、叶わぬ響紀への恋や、同級生との距離感など、様々な問題で苦しむことになった。荻原早季が波音高校の屋上から飛び降りる瞬間を目撃して以降、”神谷の声”が頭から離れなくなり、Chapter5の終盤に命を落としてしまう。20Years Diaryという日記帳に日々の出来事を記録していたが、亡くなる直前に日記を明日香に譲っている。
一条 雪音 19歳女子
鳴海たちと同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部に所属していた。才色兼備で、在学中は優等生のふりをしていたが、その正体は波音町周辺を牛耳っている組織”一条会”の会長。本当の性格は自信過剰で、文芸部での活動中に鳴海や嶺二のことをよく振り回していた。完璧なものと奇跡の力に対する執着心が人一倍強い。また、鳴海たちに波音物語を勧めた張本人でもある。
伊桜 京也 32歳男子
緋空事務所で働いている生真面目な鳴海の先輩。中学生の娘がいるため、一児の父でもある。仕事に対して一切の文句を言わず、常にノルマをこなしながら働いている。緋空浜周囲にあるお店の経営者や同僚からの信頼も厚い。口下手なところもあるが、鳴海の面倒をしっかり見ており、彼の”メンター”となっている。
荻原 早季 15歳(?)女子
どこからやって来たのか、何を目的をしているのか、いつからこの世界にいたのか、何もかもが謎に包まれた存在。現在は波音高校の新一年生のふりをして、神谷が受け持つ一年六組の生徒の中に紛れ込んでいる。Chapter5で波音高校の屋上から自ら命を捨てるも、その後どうなったのかは不明。
瑠璃
鳴海よりも少し歳上で、極めて中性的な容姿をしている。鳴海のことを強く慕っている素振りをするが、鳴海には瑠璃が何者なのかよく分かっていない。伊桜同様に鳴海の”メンター”として重要な役割を果たす。
来栖 真 59歳男子
緋空事務所の社長。
神谷 志郎 44歳男子
Chapter5の主人公にして、汐莉と同様にChapter5の終盤で命を落としてしまう数学教師。普段は波音高校の一年六組の担任をしながら、授業を行っていた。昨年度までは鳴海たちの担任でもあり、文芸部の顧問も務めていたが、生徒たちからの評判は決して著しくなかった。幼い頃から鬱屈とした日々を過ごして来たからか、発言が支離滅裂だったり、感情の変化が激しかったりする部分がある。Chapter5で早季と出会い、地球や子供たちの未来について真剣に考えるようになった。
貴志 希海 女子
貴志の名字を持つ謎の人物。
三枝 琶子 女子
“The Three Branches”というバンドを三枝碧斗と組みながら、世界中を旅している。ギター、ベース、ピアノ、ボーカルなど、どこかの響紀のようにバンド内では様々なパートをそつなくこなしている。
三枝 碧斗 男子
“The Three Branches”というバンドを琶子と組みながら、世界中を旅している、が、バンドからベースとドラムメンバーが連続で14人も脱退しており、なかなか目立った活動が出来てない。どこかの響紀のようにやけに聞き分けが悪いところがある。
有馬 千早 女子
ゲームセンターギャラクシーフィールドで働いている、千春によく似た店員。
太田 美羽 30代後半女子
緋空事務所で働いている女性社員。
目黒 哲夫 30代後半男子
緋空事務所で働いている男性社員。
一条 佐助 男子
雪音と智秋の父親にして、”一条会”のかつての会長。物腰は柔らかいが、多くのヤクザを手玉にしていた。
一条 智秋 25歳女子
雪音の姉にして風夏の親友。一条佐助の死後、若き”一条会”の会長として活動をしていたが、体調を崩し、入院生活を強いられることとなる。智秋が病に伏してから、会長の座は妹の雪音に移行した。
神谷 絵美 30歳女子
神谷の妻、現在妊娠中。
神谷 七海 女子
神谷志郎と神谷絵美の娘。
天城 明日香 19歳女子
鳴海、菜摘、嶺二、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。お節介かつ真面目な性格の持ち主で、よく鳴海や嶺二のことを叱っていた存在でもある。波音高校在学時に響紀からの猛烈なアプローチを受け、付き合うこととなった。現在も、保育士になる資格を取るために専門学校に通いながら、響紀と交際している。Chapter5の終盤にて汐莉から20Years Diaryを譲り受けたが、最終的にその日記は滅びかけた世界のナツとスズの手に渡っている。
白石 嶺二 19歳男子
鳴海、菜摘、明日香、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。鳴海の悪友で、彼と共に数多の悪事を働かせてきたが、実は仲間想いな奴でもある。軽音部との合同朗読劇の成功を目指すために裏で奔走したり、雪音のわがままに付き合わされたりで、意外にも苦労は多い。その要因として千春への恋心があり、消えてしまった千春との再会を目的に、鳴海たちを様々なことに巻き込んでいた。現在は千春への想いを心の中にしまい、上京してゲーム関係の専門学校に通っている。
三枝 響紀 16歳女子
波音高校に通う二年生で、軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”のリーダー。愛する明日香関係のことを含めても、何かとエキセントリックな言動が目立っているが、音楽的センスや学力など、高い才能を秘めており、昨年度に行われた文芸部との合同朗読劇でも、あらゆる分野で多大な(?)を貢献している。
永山 詩穂 16歳女子
波音高校に通う二年生、汐莉、響紀と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はベース。メンタルが不安定なところがあり、Chapter5では色恋沙汰の問題もあって汐莉と喧嘩をしてしまう。
奥野 真彩 16歳女子
波音高校に通う二年生、汐莉、響紀、詩穂と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はドラム。どちらかと言うと我が強い集まりの魔女っ子少女団の中では、比較的協調性のある方。だが食に関しては我が強くなる。
双葉 篤志 19歳男子
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音と元同級生で、波音高校在学中は天文学部に所属していた。雪音とは幼馴染であり、その縁で”一条会”のメンバーにもなっている。
井沢 由香
波音高校の新一年生で神谷の教え子。Chapter5では神谷に反抗し、彼のことを追い詰めていた。
伊桜 真緒 37歳女子
伊桜京也の妻。旦那とは違い、口下手ではなく愛想良い。
伊桜 陽芽乃 13歳女子
礼儀正しい伊桜京也の娘。海亜中学校という東京の学校に通っている。
水木 由美 52歳女子
鳴海の伯母で、由夏理の姉。幼い頃の鳴海と風夏の面倒をよく見ていた。
水木 優我 男子
鳴海の伯父で、由夏理の兄。若くして亡くなっているため、鳴海は面識がない。
鳴海とぶつかった観光客の男 男子
・・・?
少年S 17歳男子
・・・?
サン 女子
・・・?
ミツナ 19歳女子
・・・?
X 25歳女子
・・・?
Y 25歳男子
・・・?
ドクターS 19歳女子
・・・?
シュタイン 23歳男子
・・・?
伊桜の「滅ばずの少年の物語」に出て来る人物
リーヴェ 17歳?女子
奇跡の力を宿した少女。よくいちご味のアイスキャンディーを食べている。
メーア 19歳?男子
リーヴェの世界で暮らす名も無き少年。全身が真っ黒く、顔も見えなかったが、リーヴェとの交流によって本当の姿が現れるようになり、メーアという名前を手にした。
バウム 15歳?男子
お願いの交換こをしながら旅をしていたが、リーヴェと出会う。
盲目の少女 15歳?女子
バウムが旅の途中で出会う少女。両目が失明している。
トラオリア 12歳?少女
伊桜の話に登場する二卵性の双子の妹。
エルガラ 12歳?男子
伊桜の話に登場する二卵性の双子の兄。
滅びかけた世界
老人 男子
貴志鳴海の成れの果て。元兵士で、滅びかけた世界の緋空浜の掃除をしながら生きている。
ナツ 女子
母親が自殺してしまい、滅びかけた世界を1人で彷徨っていたところ、スズと出会い共に旅をするようになった。波音高校に訪れて以降は、掃除だけを繰り返し続けている老人のことを非難している。
スズ 女子
ナツの相棒。マイペースで、ナツとは違い学問や過去の歴史にそれほど興味がない。常に腹ペコなため、食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
柊木 千春 15、6歳女子
元々はゲームセンターギャラクシーフィールドにあったオリジナルのゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”に登場するヒロインだったが、奇跡によって現実にやって来る。Chapter2までは波音高校の一年生のふりをして、文芸部の活動に参加していた。鳴海たちには学園祭の終了時に姿を消したと思われている。Chapter6の終盤で滅びかけた世界に行き、ナツ、スズ、老人と出会っている。
Chapter7♯45 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
◯3030貴志家玄関(日替わり/朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
玄関にいる鳴海と菜摘
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
靴を履いている鳴海
少しすると鳴海は靴を履き終える
鳴海「(靴を履き終えて)昨日みたいに遅くなるなら連絡してくれ」
菜摘「う、うん」
鳴海「じゃあ・・・行って来るよ」
鳴海は玄関の扉を開ける
菜摘「な、鳴海くん!!」
鳴海「なん・・・」
菜摘は話途中の鳴海にキスをする
菜摘にキスをされている鳴海は驚いて両目を開く
驚いている鳴海にキスをするのをやめる菜摘
菜摘「(驚いている鳴海にキスをするのをやめて)い、行ってらっしゃい」
鳴海「(驚いたまま)な、菜摘も主婦らしくなって来たんじゃないか?」
菜摘「ぜ、全国の主婦に失礼だよ鳴海くん」
鳴海「失礼かどうかは帰って風呂にでも入りながらゆっくり議論しような」
菜摘「お、夫の発言がおじさんっぽくなってる!!」
鳴海「(少し笑って)俺がおじさんになる時、菜摘はおばさんになるから覚悟しといてくれ。それじゃあな」
菜摘「き、気をつけてね」
鳴海は玄関の扉を開けて家から出て行く
少しの沈黙が流れる
菜摘「無理だよ・・・」
◯3031貴志家リビング(朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
リビングにいる菜摘
菜摘はテーブルに向かって椅子に座っている
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
菜摘の髪の毛は金髪になっている
テーブルに突っ伏している菜摘
菜摘「(テーブルに突っ伏しながら)鳴海くんは・・・優しい・・・鳴海くんは・・・私に優しくしてくれる・・・」
少しの沈黙が流れる
蝉の鳴き声が止まる
リビングの電気がゆっくり消え、テーブルに突っ伏している菜摘にどこからか照明の明かりが当てられる
菜摘はテーブルに突っ伏しながらABBAの”SOS”を歌い始める
菜摘「(テーブルに突っ伏して”SOS”を歌いながら)Where are those happy days? They seem so hard to find」
◯3032緋空浜(朝)
空は曇っている
緋空浜の浜辺でゴミ掃除をしている鳴海
浜辺にはペットボトルやお菓子の袋のゴミが落ちており、◯1690、◯2004のキツネ様の奇跡、◯1786、◯1787、◯1791、◯1849、◯1972のかつての緋空浜に比べると汚れている
緋空浜には鳴海以外にも釣りやウォーキングをしている人がいる
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
鳴海はマスクと手袋をして、トングでゴミを拾っている
鳴海の側には大きなゴミ袋が5つ、新聞紙、ガムテープが置いてある
鳴海の側に置いてある5つのゴミ袋の中には浜辺で拾ったたくさんのゴミが入っている
鳴海はトングで拾ったゴミを分別し、小さな山にしている
ゴミの小さな山は燃える物、缶類、ペットボトル類、燃えない物、割れ物などに分別されている
トングでゴミを拾いながらABBAの”SOS”を歌っている鳴海
トングでゴミを拾いながら”SOS”を歌っている鳴海にどこからか照明の明かりが当てられており、鳴海の周りは薄暗くなっている
鳴海「(トングでゴミを拾って”SOS”を歌いながら)I tried to reach for you, but you have closed your mind」
◯3033貴志家由夏理と紘の寝室(約10年前/朝)
外は曇っている
寝室にいる35歳頃の由夏理
由夏理と紘の寝室にはダブルサイズのベッドと小さなベッドサイドテーブルがある
小さなベッドサイドテーブルには幼い頃の鳴海と風夏が写った家族写真とデスクライトが置いてある
由夏理はダブルサイズのベッドの上に座っている
ABBAの”SOS”を歌っている由夏理
由夏理と紘の寝室は電気が消えており、”SOS”を歌っている由夏理にどこからか照明の明かりが当てられている
由夏理「(”SOS”を歌いながら)Whatever happened to our love? I wish I understood」
◯3034一条会事務所(約10年前/朝)
外は曇っている
一条会事務所にいる35歳頃の紘、一条佐助、智秋、数人のスーツ姿の男たち
一条佐助の年齢は40歳頃
智秋の年齢は10歳
一条会事務所には大きな数脚のソファとテーブルがある
一条会事務所の壁には、歴代一条会の会長の写真と虎が描かれた掛け軸が飾ってある
テーブルを挟んで向かい合って大きなソファに座っている一条佐助と智秋
話をしている一条佐助と数人のスーツ姿の男たち
紘はABBAの”SOS”を歌っている
一条会事務所は電気が消えており、”SOS”を歌っている紘にどこからか照明の明かりが当てられている
紘「(”SOS”を歌いながら)It used to be so nice, it used to be so good」
◯3035緋空教会(朝)
外は曇っている
緋空教会にいるすみれ
緋空教会の中にはたくさんの椅子がある
緋空教会のガラスはステンドグラスになっている
緋空教会の中には祭壇があり、その後ろには大きなマリア像がある
緋空教会の中には懺悔室がある
緋空教会の中にはすみれ以外にも数人の信者がいて、両手を合わせ両目を瞑ったまま祈っている
すみれは椅子に座っている
両手を合わせ両目を瞑ったまま祈っているすみれ
すみれは両手を合わせ両目を瞑り祈りながらABBAの”SOS”を歌っている
緋空教会は電気が消えており、両手を合わせ両目を瞑り祈りながら”SOS”を歌っているすみれにどこからか照明の明かりが当てられている
すみれ「(両手を合わせ両目を瞑り祈りながら”SOS”を歌って)So, when you're near me, darling, can't you hear me? S.O.S」
◯3036早乙女自動車整備工場(朝)
外は曇っている
早乙女自動車整備工場にいる作業服を着た潤と同じく作業服姿の数人の男たち
早乙女自動車整備工場には数台の車、タイヤ、車の備品、工具、車を上げるためのリフトなどがある
早乙女自動車整備工場にある数台の車はリフトで上げられていたり、ボンネットが開いていたりする
早乙女自動車整備工場にいる作業服姿の数人の男たちは車のパーツを変えたりして整備を行っている
潤は仰向けで台車に乗りスパナを使って車の下のボルトを閉めている
仰向けで台車に乗りスパナを使って車の下のボルトを閉めながらABBAの”SOS”を歌っている潤
早乙女自動車整備工場は電気が消えており、仰向けで台車に乗りスパナを使って車の下のボルトを閉めながら”SOS”を歌っている潤に、どこからか照明の明かりが当てられている
潤「(仰向けで台車に乗りスパナを使って車の下のボルトを閉めながら”SOS”を歌って)The love you gave me, nothing else can save me, S.O.S」
◯3037波音総合病院/ナースステーション(朝)
外は曇っている
波音総合病院のナースステーションにいるナース服姿の風夏と数人の看護師たち
波音総合病院のナースステーションにはテーブル、パソコン、椅子、書類などがある
風夏の机の上にはパソコン、たくさんの菜摘のカルテ、筆記用具、コーヒーなどが置いてある
机に向かって椅子に座っている風夏
ナースステーションにいる看護師たちはパソコンで作業をしていたり、書類に何か書き込んだりしている
風夏はABBAの”SOS”を歌っている
ナースステーションは電気が消えており、”SOS”を歌っている風夏にどこからか照明の明かりが当てられている
風夏「(”SOS”を歌いながら)When you're gone, how can I even try to go on?」
◯3038緋空海鮮市場(朝)
外は曇っている
緋空海鮮市場にいる漁業用の作業服を着た龍造
緋空海鮮市場の中は広く、左右至る所でたくさんの魚介類が売られている問屋がある
龍造は”緋赤水産”という問屋で働いている
”緋赤水産”ではたくさんの魚介類が卸売りされている
龍造は鮎が入っている発泡スチロールを”緋赤水産”に並べている
鮎が入っている発泡スチロールを”緋赤水産”に並べながら、ABBAの”SOS”を歌っている龍造
緋空海鮮市場は電気が消えており、鮎が入っている発泡スチロールを”緋赤水産”に並べながら”SOS”を歌っている龍造に、どこからか照明の明かりが当てられている
龍造「(鮎が入っている発泡スチロールを”緋赤水産”に並べながら”SOS”を歌って)When you're gone, though I try, how can I carry on?」
鮎が入っている発泡スチロールを”緋赤水産”に並べながら”SOS”を歌っている龍造の腕に、龍の絵のタトゥーが入っているのが見える
◯3039南家汐莉の自室(朝)
外は曇っている
自室にいる汐莉
汐莉の部屋にはベッド、勉強机、パソコン、プリンター、ギターなどが置いてある
汐莉の部屋は教科書、ノート、文房具、プリント、部誌、朗読劇用の波音物語、楽譜、脱ぎ捨てた服などが散らかっていて汚くなっている
汐莉は机に向かって椅子に座っている
イヤホンをつけてABBAの”SOS”を聞きながら机に突っ伏している汐莉
机の上にはスマホと”20Years Diary”が置いてある
汐莉のスマホからはABBAの”SOS”が流れている
汐莉はイヤホンをつけて”SOS”を聞きながら歌っている
汐莉の部屋は電気が消えており、イヤホンをつけて”SOS”を聞きながら歌っている汐莉にどこからか照明の明かりが当てられている
汐莉「(イヤホンをつけて”SOS”を聞きながら歌って)You seem so far away though you are standing near」
◯3040神谷家志郎の自室(朝)
外は曇っている
自室にいる神谷
机に向かって椅子に座っている神谷
机の上には缶ビールとパソコンが置いてある
神谷の部屋の壁には早季の遺書、ズジスワフ・ベクシンスキーが描いた"KO"という絵のコピー、汚れた海の写真、少年兵の写真、原爆ドームの写真などが貼られてある
早季の遺書には赤い字で"子供たちに教えて”と書かれてある
神谷は早季の遺書に赤い字で書かれた"子供たちに教えて”という文を見ている
早季の遺書に赤い字で書かれた"子供たちに教えて”という文を見ながらABBAの”SOS”を歌っている神谷
神谷の部屋は電気が消えており、早季の遺書に赤い字で書かれた"子供たちに教えて”という文を見ながら”SOS”を歌っている神谷に、どこからか照明の明かりが当てられている
神谷「(早季の遺書に赤い字で書かれた"子供たちに教えて”という文を見ながら”SOS”を歌って)You made me feel alive, but something died I fear」
◯3041映画館(朝)
映画館の中に一人いる早季
映画館ではスクリーンに◯3040の自室にいる神谷の姿が映し出されている
スクリーンに映し出されている神谷の部屋には机と椅子があり、机の上には缶ビールとパソコンが置いてある
スクリーンに映し出されている神谷の部屋の壁には早季の遺書、ズジスワフ・ベクシンスキーが描いた"KO"という絵のコピー、汚れた海の写真、少年兵の写真、原爆ドームの写真などが貼られてある
スクリーンに映し出されている早季の遺書には赤い字で"子供たちに教えて”と書かれてある
スクリーンに映し出されている神谷は早季の遺書に赤い字で書かれた"子供たちに教えて”という文を見ながら、ABBAの”SOS”を歌っている
スクリーンに映し出されている神谷の部屋は電気が消えており、早季の遺書に赤い字で書かれた"子供たちに教えて”という文を見ながら”SOS”を歌っている神谷に、どこからか照明の明かりが当てられている
早季はスクリーンに映し出されている◯3040の神谷のことを見ながら神谷と一緒にABBAの”SOS”を歌っている
映画館は電気が消えており、スクリーンに映し出されている◯3040の神谷のことを見ながら神谷と一緒に”SOS”を歌っている早季に、どこからか照明の明かりが当てられている
早季「(スクリーンに映し出されている◯3040の神谷のことを見ながら神谷と一緒に”SOS”を歌って)I really tried to make it out, I wish I understood」
神谷「(早季の遺書に赤い字で書かれた"子供たちに教えて”という文を見ながら”SOS”を歌って 声)
映画館の音響設備から神谷の歌声が響き渡る
◯3042奇跡の世界:バウムの木の前(朝)
空は曇っている
バウムの木の前に一人いるリーヴェ
バウムの木は大きくて太い立派な木で、たくさんの葉が生い茂っている
リーヴェはバウムの木の前で体育座りしている
体育座りをしながらABBAの”SOS”を歌っているリーヴェ
体育座りをしながら”SOS”を歌っているリーヴェにどこからか照明の明かりが当てられており、リーヴェの周りは薄暗くなっている
リーヴェ「(体育座りをしながら”SOS”を歌って)What happened to our love? It used to be so good」
◯3043牢屋(朝)
外は曇っている
薄暗い牢屋の中に閉じ込められているトラオリアとエルガラ
薄暗い牢屋の中は汚れており、古いトイレが設置してある
薄暗いの牢屋の壁には鎖付きの手錠がある
トラオリアとエルガラの両手には鎖付きの手錠がされている
両手に鎖付きの手錠をされているトラオリアとエルガラはABBAの”SOS”を歌っている
薄暗い牢屋の中は電気が消えており、両手に鎖付きの手錠をされたまま”SOS”を歌っているトラオリアとエルガラにどこからか照明の明かりが当てられている
トラオリア・エルガラ「(両手に鎖付きの手錠をされたまま“SOS”を歌って)So, when you're near me, darling, can't you hear me? S.O.S」
◯3044三枝家リビング(約10年前/朝)
外は曇っている
三枝家のリビングにいる5歳頃の響紀と瑠璃
瑠璃の年齢は30歳頃で、極めて中性的な容姿をしている
三枝家のリビングは狭く、古いブラウン管のテレビ、CDプレーヤー、ギター、低いテーブルがある
床に座っている瑠璃
瑠璃の膝の上に座っている5歳頃の響紀
瑠璃は膝の上に座っている5歳頃の響紀の髪の毛をポニーテールにして結んでいる
膝の上に座っている5歳頃の響紀の髪の毛をポニーテールにして結びながらABBAの”SOS”を歌っている瑠璃
三枝家のリビングは電気が消えており、膝の上に座っている5歳頃の響紀の髪の毛をポニーテールにして結びながら”SOS”を歌っている瑠璃に、どこからか照明の明かりが当てられている
瑠璃「(膝の上に座っている5歳頃の響紀の髪の毛をポニーテールにして結びながら”SOS”を歌って)The love you gave me, nothing else can save me, S.O.S」
◯3045公園(朝)
公園にいる波音高校の制服姿の希海
希海の年齢は17歳になっている
希海は◯2379鳴海の夢の希海と違って、黒髪で尻尾は生えていない
希海はブランコに座っている
公園には希海以外誰もいない
希海は一枚の写真を見ている
希海が見ている写真は、5歳頃の希海と25歳の汐莉が公園のブランコに座って写っている
希海は5歳頃の自分と25歳の汐莉が公園のブランコに座って写っている写真を見ながらABBAの”SOS”を歌っている
5歳頃の自分と25歳の汐莉が公園のブランコに座って写っている写真を見ながら”SOS”を歌っている希海に、どこからか照明の明かりが当てられており、希海の周りは薄暗くなっている
希海「(5歳頃の自分と25歳の汐莉が公園のブランコに座って写っている写真を見ながら“SOS”を歌って)When you're gone, how can I even try to go on?」
◯3046波音総合病院/智秋の個室(朝)
波音総合病院の智秋の個室にいる風夏と智秋
智秋はベッドの上で横になっている
智秋は痩せている
雪音はベッドの横の椅子に座っている
ベッドの隣には棚があり、小さなテレビ、波音物語を含む数冊の本、雪音と智秋のツーショット写真などが置いてある
雪音に話をしている智秋
雪音は智秋の話を無視してABBAの"SOS”を歌っている
智秋の個室は電気が消えており、”SOS”を歌っている雪音にどこからか照明の明かりが当てられている
雪音「(智秋の話を無視して”SOS”を歌いながら)When you're gone, though I try, how can I carry on?」
◯3047映画館(朝)
映画館の中にいる早季とリーヴェ
映画館ではスクリーンに◯3040の自室にいる神谷の姿が映し出されている
スクリーンに映し出されている神谷の部屋には机と椅子があり、机の上には缶ビールとパソコンが置いてある
スクリーンに映し出されている神谷の部屋の壁には早季の遺書、ズジスワフ・ベクシンスキーが描いた"KO"という絵のコピー、汚れた海の写真、少年兵の写真、原爆ドームの写真などが貼られてある
スクリーンに映し出されている早季の遺書には赤い字で"子供たちに教えて”と書かれてある
スクリーンに映し出されている神谷は早季の遺書に赤い字で書かれた"子供たちに教えて”という文を見ながら、ABBAの”SOS”を歌っている
スクリーンに映し出されている神谷の部屋は電気が消えており、早季の遺書に赤い字で書かれた"子供たちに教えて”という文を見ながら”SOS”を歌っている神谷に、どこからか照明の明かりが当てられている
早季とリーヴェはスクリーンに映し出されている◯3040の神谷のことを見ながら神谷と一緒にABBAの”SOS”を歌っている
映画館は電気が消えており、スクリーンに映し出されている◯3040の神谷のことを見ながら神谷と一緒に”SOS”を歌っている早季とリーヴェに、どこからか照明の明かりが当てられている
早季・リーヴェ「(スクリーンに映し出されている◯3040の神谷のことを見ながら神谷と一緒に”SOS”を歌って)So, when you're near me, darling, can't you hear me? S.O.S」
神谷「(早季の遺書に赤い字で書かれた"子供たちに教えて”という文を見ながら”SOS”を歌って 声)So, when you're near me, darling, can't you hear me? S.O.S」
◯3048緋空教会(朝)
外は曇っている
緋空教会にいるすみれと作業服姿の潤
緋空教会の中にはたくさんの椅子がある
緋空教会のガラスはステンドグラスになっている
緋空教会の中には祭壇があり、その後ろには大きなマリア像がある
緋空教会の中には懺悔室がある
緋空教会の中にはすみれと潤以外にも数人の信者がいて、両手を合わせ両目を瞑ったまま祈っている
すみれと潤は椅子に座っている
両手を合わせ両目を瞑ったまま祈っているすみれと潤
すみれと潤は両手を合わせ両目を瞑り祈りながらABBAの”SOS”を歌っている
緋空教会は電気が消えており、両手を合わせ両目を瞑り祈りながら”SOS”を歌っているすみれと潤にどこからか照明の明かりが当てられている
すみれ・潤「(両手を合わせ両目を瞑り祈りながら”SOS”を歌って)And the love you gave me, nothing else can save me, S.O.S」
◯3049貴志家由夏理と紘の寝室(約10年前/朝)
外は曇っている
寝室にいる35歳頃の由夏理と同じく35歳頃の紘
紘はスーツを着ている
由夏理と紘の寝室にはダブルサイズのベッドと小さなベッドサイドテーブルがある
小さなベッドサイドテーブルには幼い頃の鳴海と風夏が写った家族写真とデスクライトが置いてある
由夏理と紘はダブルサイズのベッドの上に座っている
ABBAの”SOS”を歌っている由夏理と紘
由夏理と紘の寝室は電気が消えており、”SOS”を歌っている由夏理と紘にどこからか照明の明かりが当てられている
由夏理・紘「(”SOS”を歌いながら)When you're gone, how can I even try to go on?」
◯3050波音高校二年二組の教室/軽音部二年の部室(朝)
外は曇っている
軽音部の部室にいる瑠璃、響紀、詩穂、真彩
瑠璃は響紀たちよりも少し年齢が上で、極めて中性的な容姿をしている
黒板の前にはピアノ、リードギター、サイドギター、ドラム、ドラムが置いてある
瑠璃たちはABBAの”SOS”をカバーして演奏している
瑠璃はピアノ、響紀はサイドギター、詩穂はベース、真彩はドラムを演奏している
楽器を演奏しながら”SOS”を歌っている瑠璃と響紀
軽音部の部室は電気が消えており、”SOS”を演奏しながら歌っている瑠璃と響紀にどこからか照明の明かりが当てられている
瑠璃・響紀「(”SOS”を演奏しながら歌って)When you're gone, though I try, how can I carry on?」
◯3051公園(朝)
公園にいる波音高校の制服姿の希海と汐莉
汐莉の年齢は25歳
希海の年齢は17歳になっている
希海は◯2379鳴海の夢の希海と違って、黒髪で尻尾は生えていない
汐莉と希海はブランコに座っている
公園には汐莉と希海以外誰もいない
希海は一枚の写真を持っている
希海が持っている写真は、5歳頃の希海と25歳の汐莉が公園のブランコに座って写っている
汐莉と希海はABBAの”SOS”を歌っている
”SOS”を歌っている汐莉と希海にどこからか照明の明かりが当てられており、汐莉と希海の周りは薄暗くなっている
汐莉・希海「(“SOS”を歌いながら)When you're gone, how can I even try to go on?」
◯3052貴志家リビング(朝)
外は曇っている
リビングにいる鳴海と菜摘
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
鳴海と菜摘は両手を繋いでいる
両手を繋ぎ踊りながらABBAの”SOS”を歌っている鳴海と菜摘
リビングの電気は消えており、両手を繋ぎ踊りながら”SOS”を歌っている鳴海と菜摘にどこからか照明の明かりが当てられている
鳴海・菜摘「(両手を繋ぎ踊りながら”SOS”を歌って)When you're gone, though I try, how can I carry on?」
菜摘は鳴海と両手を繋ぎ踊りながら”SOS”を鼻歌で歌う
両手を繋ぎ踊っている鳴海と菜摘に当てられていた照明の明かりが少しずつ弱くなる
外から蝉の鳴き声が聞こえて来る
リビングの電気が元に戻り始める
菜摘は鳴海と両手を握り”SOS”を鼻歌で歌いながら踊るのやめる
少し寂しそうに”SOS”を鼻歌で歌いながら鳴海の両手を離す菜摘
菜摘は少し寂しそうに”SOS”を鼻歌で歌いながらゆっくりテーブルに向かって椅子に座る
”SOS”を鼻歌で歌いながらテーブルに突っ伏す菜摘
リビングにいたはずの鳴海はいつの間にかいなくなっている
菜摘はテーブルに突っ伏したまま一人”SOS”を鼻歌で歌い続ける
◯3053早乙女家リビング(日替わり/夜)
早乙女家リビングにいる鳴海、菜摘、すみれ、潤
テーブルに向かって椅子に座っている鳴海、菜摘、すみれ、潤
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
テーブルの上にはエビ、椎茸、ナス、さつま芋、ししとう、蓮根などの天ぷら、マグロの刺身、ご飯、味噌汁、取り皿が置いてある
夕食を食べながら話をしている鳴海たち
鳴海「すみません、すみれさん」
すみれ「どうして謝るの?」
鳴海「この間出て行ったのに、また晩ご飯をご馳走になっているなんておかしいじゃないですか」
潤「気にすることはねえ、鳴海。家族ってのは昔からこうやって一つの食卓を囲むもんだからな」
すみれ「(少し笑って)潤くんは二人に会えなくて寂しかったんです。早く菜摘と鳴海くんを呼ぼうって一日に10回は言ってましたから」
菜摘「そ、そうだったの?お父さん」
潤は菜箸でエビの天ぷらを取り皿に乗せる
エビの天ぷらを一口食べる潤
潤「(エビの天ぷらを一口食べて)馬鹿お前、お父さんをあんまり舐めるなよ。一日10回どころか100回は寂しいって言っていたからな?」
鳴海「(呆れて)めちゃくちゃ寂しがっているじゃねえか・・・」
潤「あったり前だろ、この俺が何年父親やっていると思ってるんだ」
鳴海「100年くらいだろ」
潤「20年だよ20年!!てめえが成人するまでの期間と変わらない時間を俺は愛する娘とだなぁ!!」
鳴海「お、落ち着け、とりあえず椎茸とナスの天ぷらでも食べて正気に戻るんだ」
菜摘「椎茸とナスの天ぷらは鳴海くんが食べたくないだけじゃないの・・・?」
鳴海「ち、違うぞ菜摘、俺は年功序列に従ってお前の親父さんにリスペクトを払ってだな・・・」
潤「お前、アホなのによく年功序列なんて難しい四字熟語を知っているじゃねえか、さすがは俺の義理の息子だな」
鳴海「あんたに褒められても全然嬉しくないんだが・・・」
潤「そんなことよりも俺は犬が飼いたいんだ、すみれ。犬を飼おう」
すみれ「はいはい、また今度にしましょうね」
鳴海「とてつもなく雑なあしらわれ方だな・・・」
菜摘は菜箸でマグロの刺身を取り皿に乗せる
菜摘「(菜箸でマグロの刺身を取り皿に乗せて)お父さん、犬アレルギーなんだよ」
潤「アレルギーだろうが、俺は犬が好きだ、だからきっと犬も俺のことが好きだ」
菜摘「そうかな・・・」
すみれ「菜摘も昔はダルメシアンが好きだったでしょう?覚えている?」
菜摘「お、覚えてるよ。でもお父さんがアレルギーだったせいで飼えなかったんだ」
潤「なら今こそダルタニャンを飼おう、お父さんが許可するぞ」
鳴海「犬種がフランスの軍人の名前になっていないか」
潤「ニャンってついてるんだからどちらかというと猫の名前だろ」
鳴海「そ、それはちょっと意味不明だが・・・」
潤「とにかく俺は寂しいから犬と遊びたいんだよ!!」
すみれ「はいはい、まずは犬のおもちゃにしときましょうね」
鳴海「(小声でボソッと)こんなふうに菜摘から扱われないように俺は気をつけよう・・・」
時間経過
夕食を食べ終えた鳴海、菜摘、すみれ、潤
鳴海たちは話をしている
菜摘「美味しかったよ、お母さん」
すみれ「今日は気合いを入れてお高めの食材を買いましたからね」
鳴海「すみません、気を使わせてしまって」
すみれ「良いのよ、ご飯は美味しく楽しくが基本なのだから」
鳴海「今度俺も市場で美味そうなのを買って来ます」
潤「緋空海鮮市場か?」
鳴海「ああ、龍さんも働いているしもう行き慣れたもんだよ」
潤「お前の方はどうなんだ、上司が事故ったって菜摘から聞いたぞ」
鳴海はチラッと菜摘のことを見る
鳴海「(チラッと菜摘のことを見て)ひ、酷い怪我だがそのうち戻って来るさ」
潤「事故った上司じゃなくてお前のことを心配しているんだよ」
鳴海「お、俺は大丈夫だ。毎日緋空浜でゴミを拾いまくっているからな」
潤「そうか・・・仕事のことで悩みがあったらいつでも相談しろよ、力になれるかもしれないからな」
鳴海「お、おう」
少しの沈黙が流れる
すみれは立ち上がる
どこかに行くすみれ
再び沈黙が流れる
少しするとすみれがリビングに戻って来る
すみれは一枚の古いハガキを持っている
テーブルに向かって椅子に座るすみれ
すみれは古いハガキを鳴海に差し出す
古いハガキをすみれから受け取る鳴海
鳴海「(古いハガキをすみれから受け取って)何ですか?これ」
鳴海は古いハガキを見る
古いハガキの差出人欄には”水木 由美”と書いてある
鳴海は古いハガキの差出人欄に書いてある”水木 由美”という名前を見る
鳴海「(古いハガキの差出人欄に書いてある”水木 由美”という名前を見て)水木由美って・・・」
すみれ「10年以上前に、鳴海くんの伯母さんから送られて来た物です」
鳴海は古いハガキの差出人欄に書いてある”水木 由美”という名前を見るのをやめる
鳴海「(古いハガキの差出人欄に書いてある”水木 由美”という名前を見るのをやめて)お、伯母さんから?」
すみれ「由夏理が言っていました、鳴海は私の姉に懐いているって。ご両親が家を留守にした時、伯母さんがよく鳴海くんと風夏ちゃんの面倒を見てくれていたんですよね?」
鳴海「む、昔の話です、最後に会ったのは葬式の時だし姉貴とも仲が悪かったんですよ」
潤「それでも鳴海のことを忘れちゃいないだろう、可愛い甥っ子だ」
鳴海「せ、世話になったのは否定しないが今更会ったところで何になる?もうほとんど赤の他人なんだぞ」
再び沈黙が流れる
すみれ「鳴海くんのお母さんのことを誰よりも知っている人です、鳴海くんや風夏ちゃん、私たちよりも長い時間を由夏理と一緒に過ごしています」
鳴海「そ、そんなことを言われてもまず俺は伯母の連絡先を知りません、い、生きているかすら怪しいくらいだ」
潤「住所はそのハガキから変わってねえだろう、毎年年賀状が送れているからな」
鳴海「ま、待ってくれ、す、すみれさんと潤さんは今でも伯母さんと関わりがあるのか?」
すみれ「関わりがあるとは言えません・・・ただ年賀状だけは送っているんです、向こうからの返信はありませんけど・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「い、今更どんな顔をして会いに行けば良いんだ・・・」
潤「大人になったことを見せつけて、あとは聞きたいことを聞いて帰って来れば良い」
再び沈黙が流れる
菜摘「私たちのことも・・・報告した方が良いんじゃないかな・・・」
鳴海「こ、小難しい人だから喜んでくれるかどうか分からないぞ」
菜摘「それでも・・・ちゃんと伝えるべきだと思う」
◯3054回想/貴志家リビング(約10年前/夜)
リビングにいる8歳頃の鳴海と40歳頃の水木由美
テーブルに向かって椅子に座っている8歳頃の鳴海と由美
由美はタバコを吸っている
テーブルの上には裏返しになったトランプ、タバコの箱、使い捨てライター、灰皿が置いてある
話をしている8歳頃の鳴海と由美
由美「(タバコを咥えたまま)まだ待つの?」
鳴海「うん」
由美「(タバコを咥えたまま)そう」
由美はタバコの煙を吐き出す
少しの沈黙が流れる
由美「(タバコを咥えたまま)17、8の女の子は神経衰弱なんてやりたがらないのかも」
鳴海「お姉ちゃんは14歳だよ」
由美「(タバコを咥えたまま)分かってるわ、今のは冗談で言ったのよ」
鳴海「ママの方が伯母さんよりも面白い冗談を言うな・・・」
由美「(タバコを咥えたまま)本当に?例えば?」
鳴海「タクシーに乗るわたくしー」
由美「(タバコを咥えたまま少し笑って)確かにちょっと面白いわね」
鳴海「ねえねえ」
由美「(タバコを咥えたまま)ん」
鳴海「お茶はお茶でも飲めないお茶って何か知ってる?」
由美「(タバコを咥えたまま)お姉ちゃん」
鳴海「(驚いて)な、何で分かったの!?」
由美「(タバコを咥えたまま少し笑って)昔、鳴海のお母さんに全く同じなぞなぞを出されたことがあるから」
鳴海「そうなんだ・・・」
再び沈黙が流れる
由美はタバコを咥えたまま裏返しになっているトランプを1枚めくる
由美がタバコを咥えたままめくったトランプはハートの3
由美はタバコを咥えたまま裏返しになっているトランプをもう1枚めくる
由美「(タバコを咥えたまま裏返しになっているトランプをもう一枚めくって)お姉ちゃんを待つのはやめて先に始めましょ」
由美がタバコを咥えたままめくったトランプはクローバーの13
鳴海「伯母さんからやるなんてずるいよ」
由美はタバコを咥えたままハートの3とクローバーの13を裏返す
由美「(タバコを咥えたままハートの3とクローバーの13を裏返して)鳴海が2回続けてめくって良いわ」
鳴海「やった」
8歳頃の鳴海は裏返しになっているトランプを一気に4枚めくる
8歳頃の鳴海が一気にめくった4枚のトランプはハートの8、ダイヤの5、ダイヤの11、スペードの4
鳴海「全部ハズレだ」
8歳頃の鳴海はハートの8、ダイヤの5、ダイヤの11、スペードの4を裏返す
由美「(タバコを咥えたまま)次があるわよ」
由美はタバコを咥えたまま裏返しになっているトランプを1枚めくる
由美がタバコを咥えたままめくったトランプはスペードの9
鳴海「伯母さんはどーして結婚しないの?」
由美「(タバコを咥えたまま)恋人がいないから?」
由美はタバコを咥えたまま裏返しになっているトランプを1枚めくる
由美がタバコを咥えたままめくったトランプはハートの7
鳴海「結婚した方が良いよ」
由美「(タバコを咥えたまま)私は結婚に興味がないの」
鳴海「何で?勿体無いじゃん」
由美はタバコを咥えたままスペードの9とハートの7を裏返す
由美「(タバコを咥えたままスペードの9とハートの7を裏返して)勿体無いと思ってくれる人が近くにいて良かったわ、まだちょっと幼過ぎるけどね」
8歳頃の鳴海は裏返しになっているトランプを1枚めくる
8歳頃の鳴海がめくったトランプはクローバーの12
鳴海「ママも早く相手を見つけて欲しいって言ってたよ」
8歳頃の鳴海は裏返しになっているトランプを1枚めくる
由美「(タバコを咥えたまま)水木家はね、結婚に向いているような家系じゃないの」
8歳頃の鳴海がめくったトランプはハートの8
鳴海「あ、またハートの8だ・・・」
8歳頃の鳴海はクローバーの12とハートの8を裏返す
由美「(タバコを咥えたまま少し笑って)結婚出来なくてもハートは伯母さんが貰うわ」
時間経過
8歳頃の鳴海と由美は神経衰弱を終えている
8歳頃の鳴海と由美の隣には取ったトランプが置いてある
8歳頃の鳴海の隣に置いてあるトランプの方が由美のトランプよりも数が多い
灰皿の中にはたくさん吸い殻がある
由美は変わらずタバコを吸っている
タバコの煙を吐き出す由美
由美「(タバコの煙を吐き出して)やるわね、鳴海」
鳴海「記憶力は良いんだ」
由美「(タバコを咥えたまま)もう一度だけやる?」
鳴海「うん」
由美「(タバコを咥えたまま)これが終わったら歯を磨いて寝るのよ」
鳴海「分かった」
時間経過
8歳頃の鳴海と由美は変わらず神経衰弱をしている
8歳頃の鳴海と由美が取ったトランプの数は同じくらいになっている
由美はタバコを咥えたまま裏返しになっているトランプを1枚めくる
由美がタバコを咥えたままめくったトランプはクローバーの10
由美「(タバコを咥えたまま)クローバーの10ならさっき出たはずだわ、覚えてる?鳴海」
鳴海「覚えてるけど言わないよ」
由美「(タバコを咥えたまま)意地悪ね、お菓子を買ってあげたのに」
鳴海「だって勝負だし」
由美「(タバコを咥えたまま少し笑って)言えてるわ」
リビングに15歳頃の風夏がやって来る
由美「(タバコを咥えたまま)風夏も勝負したくなった?」
風夏「ママはどこ?」
由美「(タバコを咥えたまま)心配しなくてもそのうち帰って来るわよ」
風夏「私はママがどこにいるのか聞いたの、姉妹なんだから妹がどこで何をしているのかくらい分かるでしょ」
由美「(タバコを咥えたまま)娘の風夏が分からないことは妹の私にも分からないわ」
風夏「嘘つき。あなたはママのことを分かってて知らないふりをしてるだけじゃん」
少しの沈黙が流れる
風夏「来て、鳴海」
鳴海「まだトランプが終わって・・・」
15歳頃の風夏は話途中だった8歳頃の鳴海の手を掴んで無理矢理立たせる
風夏「(8歳頃の鳴海の手を掴んで無理矢理立たせて)トランプくらい後でお姉ちゃんが一緒にしてあげるから」
鳴海「(15歳頃の風夏に手を掴まれたまま)で、でも伯母さんが・・・」
風夏「(8歳頃の鳴海の手を引っ張り鳴海の話を遮って)良いから来て鳴海」
鳴海「(15歳頃の風夏に手を引っ張られたまま)う、うん」
8歳頃の鳴海は15歳頃の風夏に手を引っ張られながらチラッとタバコを咥えている由美のことを見る
タバコを咥えたまま頷く由美
8歳頃の鳴海は15歳頃の風夏に手を引っ張られながら自分の部屋に行く
再び沈黙が流れる
由美はタバコの煙を深く吐き出す
◯3055回想/貴志家客室(約10年前/深夜)
客室にいる40歳頃の由美
客室は和室になっており、布団が敷いてある
布団の横にはスタンドライトが置いてある
客室の電気はついておらず、スタンドライトの光だけが明かりになっている
由美は老眼鏡をかけている
布団に横になって小説を読んでいる由美
少しすると客室の扉が静かに開く
由美は本を読むのをやめる
客室の前に8歳頃の鳴海が立っている
由美「どうしたの?」
鳴海「入って良い・・・?」
由美「お姉ちゃんは?」
鳴海「もう寝てると思う」
由美は読みかけていた本を布団の横に置く
由美「(読みかけていた本を布団の横に置いて)いらっしゃい」
8歳頃の鳴海は客室の中に入る
由美「いきなり扉を開けるんじゃなくてノックしなきゃダメでしょ」
鳴海「でもママもお姉ちゃんもノックなんかしたことないよ」
由美「それはあの二人が間違えているんだわ」
8歳頃の鳴海は畳に座る
少しの沈黙が流れる
鳴海「何読んでるの?」
由美「昔の本よ、兄弟の話なの」
鳴海「伯母さんとママみたいな?」
由美は老眼鏡を外して布団の横に置く
首を横に振る由美
由美「(首を横に振って)私と鳴海のママは姉妹、私が読んでたのはお兄ちゃんと弟の物語なの」
鳴海「仲の良い兄弟の話?」
由美「まだ分からないわ。お兄ちゃんは弟のことを愛しているけど、弟にはそれが伝わっていないのよ」
鳴海「悲しいね・・・」
由美「ええ・・・悲しくなるわ」
鳴海「悲しくても眠れるの?」
由美「(少し笑って)もちろんよ」
鳴海「俺だったら寝る前に悲しい本を読むのは嫌だな・・・」
由美「眠れなくなるから?」
鳴海「うん」
由美「(少し笑って)羨ましいわね、私なんて悲しくても起きてる力がもうないのよ」
鳴海「どーして?」
由美「(少し笑いながら)さあ?もうババアだからじゃない?」
鳴海「子供の時から悲しくても眠れたの?」
由美「どうだったかしら・・・(少し間を開けて)鳴海くらいの歳の頃はもう少し起きていた気がするけど・・・悲しみに鈍くなったのね」
鳴海「鈍くなったって?」
由美「歳を取って・・・悲しみに慣れてしまったのよ」
鳴海「この前アニメを見てたら痛みに慣れて強くなった悪者が出て来たけど、伯母さんもそんな感じ?」
由美「ええ、そんな感じだわ。でも慣れたからって強くなったわけじゃないのよ」
鳴海「そうなの?」
由美「悲しい気持ちでいる時間が長くなっているから、体が小さな痛みを無視してしまうようになったんだわ」
再び沈黙が流れる
鳴海「寝たら悲しいことは忘れる・・・?」
由美「そういうのは人によって違うのよ」
鳴海「伯母さんは?」
由美「私は忘れられないわ。だから悲しくても眠れるんだけど、いつまでもちゃんと眠った感じがしないの」
少しの沈黙が流れる
鳴海「俺が眠れないのも伯母さんと同じかな」
由美「悪夢が怖いの?」
鳴海「ううん」
由美「なら大丈夫よ、すぐに眠れるようになるわ」
再び沈黙が流れる
鳴海「どーして伯母さんとお姉ちゃんは仲が悪いの?」
由美「風夏は賢いのよ」
鳴海「賢いなら仲良くやれなきゃ変だ」
由美「(少し笑って)私が鳴海のお姉ちゃんほど賢くないのかも」
鳴海「じゃあどーしてママと喧嘩するの?」
少しの沈黙が流れる
由美「昔弟にも同じことを聞かれたわ・・・(少し間を開けて)鳴海は本当にあの子に似ているのね・・・」
鳴海「喧嘩するのもママが賢いから?」
由美「ごめんなさい・・・私にも分からないの」
◯3056回想/貴志家由夏理と紘の寝室前(約10年前/日替わり/早朝)
日が登り始めている
由夏理と紘の寝室の前にいる8歳頃の鳴海
由夏理と紘の寝室の扉が少しだけ開いている
寝室にいる35歳頃の由夏理と40歳頃の由美
由夏理と紘の寝室にはダブルサイズのベッドと小さなベッドサイドテーブルがある
小さなベッドサイドテーブルには幼い頃の鳴海と風夏が写った家族写真とデスクライトが置いてある
由夏理の頬を平手打ちする由美
由夏理「(由美に頬を平手打ちされて)だからごめんって言ってるじゃん・・・」
由美「子供たちにもそうやって謝れば良いわ」
由夏理「あ、謝るだけじゃなくてちゃんと埋め合わせするからさ・・・」
由美「風夏は気付いているわよ」
少しの沈黙が流れる
由美「あの子はあなたが考えてるよりもしっかりしているわ、私を避けているし、弟のことも守ろうとしてる」
由夏理「そりゃいつも口酸っぱくして言っているからね、姉弟仲良く、お互いに守り合うようにってさ」
由美「私たちになかった能力を自分の子供に求めるなんてどうかしてるわよ」
由夏理「別にお姉ちゃんに当てつけているわけじゃないんだし、私の教育方針についてはあれこれ口出しされたくないねー」
由美「だったらそれそう相応の責任能力を身につけるべきだわ。母親としての義務を果たさなければ、由夏理は今度子供も失う羽目になるわよ」
再び沈黙が流れる
由夏理は涙を流す
由夏理「(涙を流して)お姉ちゃんと話をしているといつもこれじゃん・・・(少し間を開けて)お兄ちゃんを殺したのは私だってずっと認めているのにさ・・・」
由美「私は二度も妹にしくじって欲しくないだけだわ」
◯3057回想戻り/貴志家洗面所(夜)
洗面所にいる風呂上がりの鳴海と菜摘
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
鳴海と菜摘は歯磨きをしている
歯ブラシを咥えたままボーッとしている鳴海
菜摘は歯磨きをするのをやめる
菜摘「(歯磨きをするのをやめて)鳴海くん・・・?」
鳴海「(歯ブラシを咥えたまま)ん・・・?」
菜摘「さっきから歯ブラシを咥えたまま止まっているけど・・・」
鳴海「(歯ブラシを咥えたまま)伯母さんのことを・・・思い出していたんだ」
鳴海は歯磨きをし始める
◯3058貴志家鳴海の自室(深夜)
鳴海の部屋にいる鳴海と菜摘
鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない
机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラ、くしゃくしゃになったてるてる坊主、フレームに入った一枚の写真、◯2091の結婚式会場/披露宴場で鳴海と菜摘が風夏に抱き寄せられて写っている写真、菜摘がクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレット、水族館のガチャガチャで手に入れたダイオウグソクムシのフィギュア、ミズクラゲのフィギュア、菜摘が鳴海にプレゼントしたイルカのぬいぐるみ、◯2377の鳴海の夢のダイナーで由夏理が紙ナプキンに可愛く描いた二頭身の鳴海の絵、”鳴海くんとしたいことリスト”のノートが置いてある
机の上のてるてる坊主には顔が描かれている
机の上のフレームに入った一枚の写真には、ホテルらしき披露宴場で水色のウェディングドレスを着た20歳頃の由夏理と、タキシードを着た同じく20歳頃の紘が写っている
机の上のフレームに入った一枚の写真は、◯2097で約30年前に潤が披露宴場で由夏理と紘を撮った時の物
机の上の◯2091の結婚式会場/披露宴場で鳴海と菜摘が風夏に抱き寄せられて写っている写真には、手書きの赤い文字で”我が愛する弟と妹に幸あれ❤︎”と書かれている
机の上の◯2091の結婚式会場/披露宴場で鳴海と菜摘が風夏に抱き寄せられて写っている写真は、滅びかけた世界の老人が持っている写真と完全に同じ
机の上のノートの表紙には大きな字で”鳴海くんとしたいことリスト”と書かれてある
鳴海と菜摘はベッドの上で横になっている
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
カーテンの隙間から月の光が差し込んでいる
話をしている鳴海と菜摘
菜摘「私も会ってみたいな、鳴海くんの伯母さん」
鳴海「会っても良いことなんかないぞ」
菜摘「挨拶は良いことだよ」
鳴海「挨拶なら一方的に年賀状を送り付けるだけで成立するじゃないか」
菜摘「一方的な時点で挨拶とは言えないと思う」
鳴海「それでもすみれさんと潤さんは毎年律儀に送り付けているんだぞ、凄過ぎて俺には到底無理な作業だ」
菜摘「だったら会いに行くしかないね、鳴海くん」
鳴海「会えば平手打ちされるぞ」
菜摘「えっ?どうして?」
鳴海「攻撃力の高い人だったからな、振り返ってみれば母さんも親父もよくぶたれていた気がするし」
菜摘「こ、怖い人なの?」
鳴海「はっきり言って愛想はない」
菜摘「そ、そうなんだ」
鳴海「母さんが社交的過ぎて誰とでもすぐに打ち解けた分、伯母さんは警戒していたのかもしれないな」
菜摘「でも鳴海くんのことは可愛がってくれていたんでしょ?」
鳴海「あの頃の俺はまだ若かったんだ」
菜摘「鳴海くん・・・今でも十分若いと思う・・・」
鳴海「実年齢が若くても、この間菜摘におじさんっぽくなってるって言われたばかりだが・・・」
菜摘「ほ、本物のおじさんよりは若いよ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「伯母さんのことは明日姉貴たちに相談してみるか・・・」
◯3059貴志家リビング(日替わり/朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
リビングにいる鳴海、菜摘、風夏、龍造
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
話をしている鳴海たち
風夏「今日はガールズの買い物にボーイズが付き合って、ボーイズが遊んでいる間にガールズは美味しいパフェを・・・」
鳴海「(風夏の話を遮って)い、家で飯を食うだけじゃないのか?」
風夏「ん?私そんなこと言ってなくない?」
少しの沈黙が流れる
龍造「僕ら男子チームは打ちっぱなしに行こう、鳴海くん」
鳴海「俺野球よりサッカー派の人間なんですけど・・・」
龍造「いや、僕らが行くのは野球でもサッカーでもなくてゴルフだよ」
鳴海「ゴルフっすか・・・」
龍造「言わば紳士の嗜みだね。日頃の鬱憤をクラブにぶつけ、義理の兄弟同士で会話を楽しもう」
鳴海「道具を持っていない上にそもそもゴルフなんてやったことすらないんすけど・・・」
龍造「それなら気にしなくて良い、僕のを貸してあげるから」
鳴海「はあ」
風夏「ちゃんと付き合ってあげてねー」
鳴海「ご、ゴルフをするのは分かっ・・・」
風夏「(鳴海の話を遮って)私と菜摘ちゃんは買い物」
菜摘「は、はい!!」
鳴海「な、菜摘の欲しい物は後で俺が買うから姉貴だけ店に行って来いよ」
菜摘「えぇー・・・」
風夏「うわっ、冷たい弟だ」
鳴海「な、菜摘もわざわざ姉貴と買いに行く必要はないと思っているだろ?」
菜摘「私・・・風夏さんとお買い物したい・・・」
再び沈黙が流れる
風夏「よし、じゃあそれで決まりということで出発しますか」
鳴海「ま、待ってくれ姉貴」
風夏「何?もう忘れ物したの?」
鳴海「いや、まだ出かけてねえだろ」
風夏「早く行こうよ鳴海、時間が勿体無いんだから」
鳴海「そ、その前に大事な話がある」
風夏「重い話は嫌だよー、昨日夜勤明けで録画していたドロドロの遺産相続ドラマを見ちゃったしー」
鳴海「重い話じゃなくて大事な話なんだが・・・」
風夏「本当に大事な話なら聞いてあげなくもないけどさー」
鳴海「お、伯母さんに会いに行こうと思うんだ」
少しの沈黙が流れる
風夏「二人とも今の聞いた?私弟におばさん扱いされちゃったんだけど」
鳴海「お、おい、何でそうなるんだよ」
風夏「だって今私の顔面を直視しておばさんって言ったじゃん」
菜摘「な、鳴海くんが言っているのは風夏さんのことじゃありません」
風夏「いや、でも私がこの家の中で一番年歳を取ってるし、ついでに言うとアラサーでもある」
鳴海「誰も姉貴の年齢の話なんかしていないだろ・・・」
風夏「もしかして鳴海、龍ちゃんのことをおばさんっぽいって思ってるの?」
龍造「風夏、鳴海くんの話はそういうことではなく・・・」
風夏「(龍造の話を遮って)これは姉夫婦としての尊厳に関わることだからね?龍ちゃんも真剣に考えなきゃ・・・」
鳴海「(風夏の話を遮って)どうして姉貴は母さんのことも伯母さんのことも嫌うんだよ」
再び沈黙が流れる
風夏「まず第一に、私はママのことを愛していたし今でも愛している。それから第二に、伯母さんのことは・・・(少し間を開けて)関わりたくないだけ」
鳴海「そ、その理由を教えてくれ」
風夏「理由?」
鳴海「そ、そうだ」
風夏「伯母さんは家族なのに私たちのことを助けてくれなかった」
少しの沈黙が流れる
鳴海「ど、どういう意味だよ」
風夏「(少し笑って)助けてくれなかったにそれ以上もそれ以下の意味もないって」
鳴海「母さんも姉貴も何を思ったらそんなすぐにヘラヘラ出来るんだ」
風夏「別に私もママも笑いたくて笑っているわけじゃないと思うよ、鳴海」
◯3060◯2725の回想/貴志家由夏理と紘の寝室前(約18年前/朝)
外は蝉が鳴いている
約18年前の由夏理と紘の寝室にいる由夏理と鳴海
鳴海の髪の毛は金髪になっている
由夏理は妊娠しており、お腹が少し膨らんでいる
由夏理の右目元には痣が出来ている
由夏理と紘の寝室にはダブルサイズのベッドと小さなベッドサイドテーブルがある
小さなベッドサイドテーブルにはデスクライトと電話の子機が置いてある
由夏理と鳴海はダブルサイズのベッドの上に座っている
話をしている鳴海と由夏理
鳴海「誰と話をしていたんだ」
由夏理「(少し笑って)当たり前のように盗み聞きをしていたなんて、しばらく会っていない間に君も悪い子になったね〜」
鳴海「だ、誰と話をしていたんだよ」
由夏理「(少し笑いながら)ただの友達だって」
鳴海「ご、誤魔化さないでくれ、あなたには友達と呼べる人がほとんどいないはずだ」
由夏理「(少し笑いながら)君は私の友達じゃないの?」
◯3061回想戻り/貴志家リビング(朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
リビングにいる鳴海、菜摘、風夏、龍造
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
話をしている鳴海たち
鳴海「それなら笑うなよ」
少しの沈黙が流れる
龍造「わ、分かった、今から夕方までは男女別で話をしよう」
鳴海「は・・・?」
◯3062ゴルフ練習場に向かう道中(朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
鳴海と龍造が乗っている軽自動車がゴルフ練習場に向かっている
鳴海と龍造が乗っている軽自動車は一般道を走っている
鳴海は助手席に座っている
龍造は運転席に座り、運転をしている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
話をしている鳴海と龍造
龍造「(運転をしながら)そ、それにしても結婚はめでたいね、僕はまだ鳴海くんとも菜摘ちゃんとも付き合いが浅いけど、やっぱ嬉しいよ」
鳴海「そうっすか」
少しの沈黙が流れる
龍造「(運転をしながら)ゆ、指輪はまだ決まってないのかい?」
鳴海「そんな感じっすね」
龍造「(運転をしながら)式もあってこれからしばらくは慌ただしい毎日になるだろうけど、悩んでることがあれば遠慮なく僕と風夏に言ってくれよ。特に風夏に対してのサプライズがあるなら僕もぜひ協力を・・・」
鳴海「(運転をしている龍造の話を遮って)結婚式は開かない予定なんです」
龍造「(運転をしながら驚いて)えっ!?」
鳴海「菜摘がやりたくないみたいで」
龍造「(運転をしながら)こ、これから開きたくなるかもしれないじゃないか」
鳴海「いや、菜摘の反応からしてそれはないと思いますよ」
龍造「(運転をしながら)い、今は興味を持てなくても10年後の気持ちは分からないぞ」
鳴海「そうっすね」
再び沈黙が流れる
鳴海「龍さんは伯母の存在を知っていたんすか?」
龍造「(運転をしながら)し、知ってるかと聞かれたらもちろん存在は知ってるけど・・・」
鳴海「そこら辺にいるおばさんじゃなくて俺と姉貴の伯母のことですよ」
龍造「(運転をしながら)あ、ああ・・・話は風夏から聞いていたし・・・(少し間を開けて)実は・・・挨拶にも行ったんだ」
鳴海「あ、挨拶って伯母と直接会ったってことですか?」
少しの沈黙が流れる
鳴海「だ、黙らないでくださいよ」
龍造「(運転をしながら)よく考えてみたんだけど、せっかく男女別に別れたんだからもうちょっと楽しい話をしないと、結局別れた意味が・・・」
鳴海「(龍造の話を遮って)このことは姉貴には黙ってます」
龍造「(運転をしながら)いや、しかし・・・」
鳴海「い、今から聞いたことは義理の兄弟だけの秘密にしますから」
再び沈黙が流れる
龍造「(運転をしながら)分かった、義理の兄弟として僕は鳴海くんのことを信じるよ」
鳴海「助かります龍さん」
龍造「(運転をしながら)もし僕が話したって風夏に知られたら、僕の身に危険が・・・」
鳴海「(運転をしている龍造の話を遮って)早く話してください」
少しの沈黙が流れる
龍造「(運転をしながら)な、鳴海くんのお姉さんは・・・伯母さんと・・・」
◯3063貴志家リビング(朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
リビングにいる菜摘と風夏
テーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている菜摘と風夏
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
菜摘の髪の毛は金髪になっている
話をしている菜摘と風夏
菜摘「ぜ、絶縁・・・ですか・・・?」
風夏「うん」
少しの沈黙が流れる
風夏「こ、このことは鳴海には言わないでね菜摘ちゃん」
菜摘「わ、分かりました」
風夏「もし鳴海が知ったら私の身に危険が及ぶかもしれないんだから」
菜摘「ふ、風夏さんに危険が迫っているかは、絶縁した理由を聞いてから判断しようと思います・・・」
風夏「理由、ね・・・どう説明したら良いのやら・・・」
再び沈黙が流れる
風夏「私と鳴海のママは・・・寂しがり屋で・・・ずっと愛情に飢えている人だったの。私が物心ついた頃もそんな感じだったから、多分昔からそうだったんだと思う」
菜摘「前に鳴海くんがお母さんのことを孤独だったって言ってました」
風夏「愛情を追い求めてる私を想像してみて、それが私たちの母親だから」
少しの沈黙が流れる
風夏「伯母さんは・・・最期までママのことを許さなかった・・・でもそれは半分私にも当てはまること。私はずっとママに怒っていたけど・・・だんだん悲しく、辛くなって来た。今でもふとした瞬間に、自分の中にママがいることを感じる。親子だしね、似てるところはいくらでもあるわけだよ。(少し間を開けて)波高に通いながら鳴海の面倒を見ていると、私がママよりも全然母親に向いていないことが分かったの。ママは頑張ってたんだな・・・上手くいかないだけで・・・子供たちに好かれたくて必死に頑張ってたんだなって・・・私が長い時間をかけて反抗期を卒業し、ようやく憎むよりも愛する方が楽だって気付いた頃には・・・今度は鳴海が高校生になっててさ・・・」
菜摘「鳴海くんはお母さんのことを理解し始めているんじゃないですか?」
風夏「それなら良いんだけどね・・・(少し間を開けて)伯母さんはママを憎み続けてる、過去は立ち戻れる場所だけど、生きて良い場所じゃない。だから私は伯母と縁を切ったんだよ」
再び沈黙が流れる
菜摘「鳴海くんは伯母さんに会いたがっていると思います・・・私も・・・出来れば挨拶に行きたいです・・・」
風夏「菜摘ちゃん、もしかして鳴海のために伯母に会おうとしていない?」
菜摘「そ、それは・・・」
風夏「別に鳴海にそこまでの気を使わなくても良いんだよ菜摘ちゃん、だって本当に伯母さんに会いたいんだったら、鳴海は私にわざわざ確認なんかしないだろうからさ」
菜摘「わ、私のためなんです風夏さん。鳴海くんは関係ありません」
◯3064ゴルフ練習場に向かう道中(朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
鳴海と龍造が乗っている軽自動車がゴルフ練習場に向かっている
鳴海と龍造が乗っている軽自動車は一般道を走っている
一般道からは陽炎が立っている
鳴海は助手席に座っている
龍造は運転席に座り、運転をしている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
話をしている鳴海と龍造
龍造「(運転をしながら)一度会ってみるのが・・・鳴海くんのためではあるかもしれないな、風夏がいない方が話も出来るだろうし」
少しの沈黙が流れる
鳴海「俺にはどうして姉貴が伯母と絶縁したのか理解出来ません・・・」
龍造「(運転をしながら)風夏にも思うところがあったんだよ。冷たいように聞こえるかもしれないけど、風夏にとって大事なのは過去じゃなくて今なんだ」
鳴海「だ、だからと言ってそこまでするなんてどうかしてますよ」
龍造「(運転をしながら)確かに、見方を変えればどうかしてるのかもしれない」
鳴海「どんな見方をしても一方的に嫌われた伯母さんが気の毒だ」
龍造「(運転をしながら)風夏は自分の意志を示したかったんだと思う、もうあなたには期待していないし、頼りませんってね」
◯3065貴志家リビング(朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
リビングにいる菜摘と風夏
テーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている菜摘と風夏
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
菜摘の髪の毛は金髪になっている
話をしている菜摘と風夏
龍造「(声)それが風夏なりの過去との向き合い方で、決着の付け方でもあったんだ」
◯3066ゴルフ練習場に向かう道中(朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
鳴海と龍造が乗っている軽自動車がゴルフ練習場に向かっている
鳴海と龍造が乗っている軽自動車は一般道を走っている
一般道からは陽炎が立っている
鳴海は助手席に座っている
龍造は運転席に座り、運転をしている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
話をしている鳴海と龍造
龍造「(運転をしながら)僕と付き合い始めた頃、風夏は過去と別れたいって言ってた。だからきっとこれは、彼女にとって必要な通過儀礼なんだよ、鳴海くん」
鳴海「過去と決別するために・・・ですか・・・」
龍造「(運転をしながら)と言うよりは受け入れるためかもしれないな、うん、僕らは未来に進んでるわけだし」
◯3067ゴルフ練習場入り口前(朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
鳴海と龍造はゴルフ練習場の入り口に向かっている
ゴルフ練習場は広く、ボールが出ないようにネットで囲われている
地面からは陽炎が立っている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
龍造はキャディバックを背負っている
話をしている鳴海と龍造
龍造「ゴルフは大変奥が深くてね、いや、僕もまだ始めて半年の初心者ではあるんだけど、こんなに奥の深いスポーツは他に・・・」
龍造は話を続ける
鳴海と龍造の後ろから波音高校の制服を着た少年Sが走って来る
少年Sの年齢は17歳
鳴海の後ろから走って来た少年Sの肩が鳴海の肩と勢いよくぶつかる
鳴海「(後ろから走って来た少年Sの肩と勢いよくぶつかり舌打ちをして)チッ・・・いってえな・・・」
少年Sは鳴海と龍造の少し先で立ち止まる
振り返る少年S
少年Sは鳴海に向かって両手を合わせて何度も頭を下げる
鳴海に向かって両手を合わせて頭を下げるのをやめる少年S
少年Sは両手を合わせるのをやめて前を向く
再び走り始める少年S
少年Sはゴルフ練習場の中に入って行く
鳴海「クソ高校生が・・・」
龍造「そういう言葉は使わない方が良いよ鳴海くん、ゴルフ場はあくまで紳士が嗜むための施設だから」
鳴海「菜摘みたいなことを言うのはやめてもらえませんかね龍さん」
◯3068ゴルフ練習場/2階(朝)
空は曇っている
蝉が鳴いている
ゴルフ練習場の2階にいる鳴海と龍造
ゴルフ練習場は2階建てになっていて、たくさんの打席がある
ゴルフ練習場の打席は自動でゴルフボールがティーアップされるようになっている
ゴルフ練習場の打席の隣にはオートティーアップ機が設置されている
ゴルフ練習場は広く、ボールが出ないようにネットで囲われている
ゴルフ練習場にはグリーン、バンカー、ホールが設置されており、たくさんの人が打ちっぱなしの練習を行っている
ゴルフ練習場の打席の後ろにはベンチがある
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
鳴海と龍造はグローブを手につけている
龍造はゴルフウェアを着て帽子を被っている
鳴海はドライバーで、龍造は7番アイアンで打ちっぱなしを行っている
鳴海と龍造は隣同士でボールを打っている
龍造の打席に自動でゴルフボールがティーアップされる
7番アイアンを構える龍造
龍造「(7番アイアンを構えて)家庭や仕事のこと忘れ、淡々とボールに向き合う」
龍造は7番アイアンでゴルフボールを打つ
龍造が打ったゴルフボールはグリーンの上に落ちて転がる
龍造「いやはやこんな楽しい休日はないよね、鳴海くん」
鳴海はドライバーを構えている
ドライバーでゴルフボールを打とうとする鳴海
鳴海は空振りをする
鳴海「(空振りをして)俺、さっきからボールに当たってすらないんですけど」
龍造「力を入れ過ぎなんじゃない?」
龍造の打席に自動でゴルフボールがティーアップされる
龍造「イメージとしてはボールを叩きつけるんじゃなくて優しく撫でるような感じだ、動作は淡々としてるけど、あくまで懇切丁寧にしなきゃならない」
鳴海「龍さん、本当は菜摘と姉貴のことが気になっているんじゃないんすか」
龍造「まあ・・・気にならないと言えば嘘になるが・・・(少し間を開けて)しかし男同士、女同士で過ごそうと決めた以上は、二人で放物線を描いたボールを眺めようじゃないか」
龍造は7番アイアンを構える
7番アイアンでゴルフボールを打つ龍造
龍造「(7番アイアンでゴルフボールを打って)色々あったし、これからも色々あるけど、僕たちの人生は今打ち上げたゴルフボールのように頂点に・・・」
鳴海「(7番アイアンでゴルフボールを打った龍造の話を遮って)いや、打ち上げたら後は下がるだけの人生じゃないっすか」
龍造が打ったゴルフボールはバンカーの上に落ちて転がる
少しの沈黙が流れる
龍造「な、鳴海くんには違うクラブの方が良いかもしれないな、別の借りてみよう」
鳴海「クラブの問題なんですかね」
龍造「お、おそらくは・・・」
再び沈黙が流れる
龍造の打席に自動でゴルフボールがティーアップされる
鳴海「もう帰りませんか龍さん」
龍造「ま、まだ打ちっぱなしに来て10分だけど・・・」
鳴海「これ以上淡々とボールと向き合ったってホームランは出ませんよ」
龍造「いや、それはバッティングセンターの話であって・・・」
鳴海「(龍造の話を遮って)菜摘たちと合流した方が良いんじゃないですかね、今頃はパフェを食べながらテレビを買っているかもしれないし」
龍造「ど、どうしてテレビを?」
鳴海「あの二人、なんか高い物を買いたいって顔をしてましたよ」
龍造「まさか、テレビを買うにしたって僕に相談くらいはするだろ」
鳴海「姉貴のことだから龍さんを驚かしたくて8Kテレビを黙って購入しててもおかしくはないと思いますけど」
龍造「(驚いて)は、8K!?」
鳴海「多分スイートメロンパン級に高いテレビっすよ」
龍造「よ、よく分からないけどそれは確かに高そうだ」
鳴海「姉貴たちと合流してテレビを買わせないようにしますか?」
龍造「い、いや、まだ買うと決まったわけじゃないし」
鳴海「決まっていないからこそ止めに行けるんすよ」
龍造「た、確かに高いかもしれないけど買ったって良いじゃないか鳴海くん、風夏が欲しがってるんだし、僕だって綺麗なテレビがあっても困らないし」
少しの沈黙が流れる
鳴海「龍さん、姉貴に甘過ぎませんかね」
龍造「だって・・・彼女は僕の奥さんだよ。(少し間を開けて)鳴海くんも菜摘ちゃんの欲しい物は買ってあげているだろ?」
鳴海「お、俺は別に菜摘を甘やかしているわけじゃありません」
龍造「それは僕だってそうだよ、鳴海くんのお姉さんも菜摘ちゃんも自立心が強いし、僕たちが甘やかしてるなんて少し傲慢過ぎるくらいの言い方だよ」
龍造は7番アイアンを構える
龍造「(7番アイアンを構えて)だって彼女たちはちゃんと自分のことをやれる、そもそも本当に欲してるのは僕らの方だ」
龍造は7万アイアンでゴルフボールを打つ
鳴海「ほ、欲しているって何をですか?」
龍造が打ったゴルフボールはグリーンの上に落ちて転がる
龍造「彼女たちから必要とされることをだよ」
再び沈黙が流れる
龍造「別のクラブを借りて来るね、鳴海くん」
龍造は7番アイアンをベンチに立て掛ける
7番アイアンをベンチに立て掛けて、一階へ向かう龍造
龍造の打席に自動でゴルフボールがティーアップされる
少しの沈黙が流れる
鳴海はドライバーをベンチに立て掛ける
ドライバーをベンチに立て掛けて、ベンチに座る鳴海
鳴海「(ベンチに座って)俺が本当に欲しているのは・・・菜摘から必要とされること・・・」
◯3069貴志家リビング(朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
リビングにいる菜摘と風夏
テーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている菜摘と風夏
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
菜摘の髪の毛は金髪になっている
話をしている菜摘と風夏
菜摘「風夏さん」
風夏「ん?」
菜摘「好きな人の愛を・・・他の人に向けるにはどうすれば良いと思いますか・・・?」
風夏「どうしたの急に菜摘ちゃん」
菜摘「知りたいんです、どうしたら私が貰っている愛を違う人へ向け・・・」
風夏「(菜摘の話を遮って)待って待って、まず何で菜摘ちゃんは自分が貰った愛を人にあげたいの?」
菜摘「それは・・・」
菜摘は俯く
菜摘「(俯いて)愛が大き過ぎるからです・・・」
風夏「お、弟が重いってこと?」
菜摘は顔を上げる
菜摘「(顔を上げて)そ、そうじゃなくて・・・私が全部受け取れたら良かったんですけど・・・」
風夏「好きな人の愛は他人にあげるものじゃないよ、だってその愛は初めから鳴海が菜摘ちゃんへ用意したものなのにさ」
菜摘「わ、私のものだっていうのは分かっているんです・・・私が独り占めにしなきゃいけないのも分かってます・・・で、でもそれが出来ないからこそ、鳴海くんの愛を他の人へ向けたいんです」
少しの沈黙が流れる
風夏「やっぱり私には鳴海の愛が重いってことしか伝わってないよ、菜摘ちゃん」
菜摘「な、鳴海くんが悪いわけじゃありません!!」
再び沈黙が流れる
菜摘「ご、ごめんなさい」
風夏「大丈夫、鳴海には黙っておくからさ、溜め込んでるやつを話してみて」
少しの沈黙が流れる
菜摘「鳴海くんの愛は重いし・・・とっても軽いんです・・・(少し間を開けて)私の心は鳴海くんに愛されれば愛されるほど・・・滅び始めます・・・な、鳴海くんが私のことを愛さなければ愛さなくなるほど・・・私の心は・・・」
風夏「滅びるんだね・・・?」
菜摘は頷く
風夏「でもさ、菜摘ちゃんは鳴海に愛されたいと思っているんでしょ・・・?」
菜摘「はい・・・」
風夏「だったら鳴海にもそれを伝えるべきだよ。弟は菜摘ちゃんの気持ちに応えたいだろうから」
再び沈黙が流れる
菜摘「私が・・・鳴海くんからの愛を感じるたびに・・・もっと鳴海くんに愛されたくなって・・・鳴海くんの愛がいっぱい欲しくなったとしても・・・鳴海くんにはそのことを言えないし・・・鳴海くんの愛を独り占めすることも出来ません・・・」
風夏「でも言わなきゃ、その方が二人のためだよ」
菜摘「ふ、風夏さん」
風夏「何?」
菜摘「わ、私もうすぐ死ぬんです、だから鳴海くんの愛は受け取れない、あ、愛されたくてももう無理なんです」
風夏「な、菜摘ちゃん・・・」
菜摘「私にも・・・鳴海くんと風夏さんのお母さんの気持ちが少し分かります・・・きっと私は強欲で・・・愛の魔物なんです・・・私の心が滅びてしまうほど・・・鳴海くんのことを愛していて・・・それすらも嫌になるんだから・・・」
少しの沈黙が流れる
風夏「人はいつか死ぬけど・・・その時は選べない・・・私の母親も・・・色んなことをしたくせに結局は事故で亡くなった・・・死というのはそれくらい気まぐれで、理不尽で、予想のつかない動きをするものだから、菜摘ちゃんは今すぐに人生のゴールを決めるべきじゃない・・・(少し間を開けて)今菜摘ちゃんの後ろには真っ黒な混沌が迫っているのかもしれないけど、菜摘ちゃんの隣には家族がいる、鳴海や私、龍ちゃんも、すみれさんと潤さんもすぐ隣にいるの。死と戦う時、菜摘ちゃんは決して一人じゃないし、私たちは全力で菜摘ちゃんのことを守ってみせる。だからさ、菜摘ちゃんは暗いことを考えたりしないで鳴海からいっぱい愛を求めなきゃ」
再び沈黙が流れる
菜摘「私が鳴海くんを愛しても、思うように愛が届かないこともあると思います・・・私と鳴海くんじゃ、夫婦の愛のバランスが均等にならなくて・・・」
風夏「菜摘ちゃんは鳴海には勿体無いくらい最高のお嫁さんだよ」
菜摘「わ、私の存在はみんなを不幸にするんです・・・鳴海くんだってそれが分かっているのに・・・」
風夏「菜摘ちゃんがどれだけネガティブになろうが、私は菜摘ちゃんと姉妹になれて幸せだからね?だって菜摘ちゃんは良い子だし、可愛いし、愛嬌もあるし」
少しの沈黙が流れる
風夏は両手を広げる
風夏「(両手を広げて)おいで」
菜摘「でも・・・」
風夏「(両手を広げたまま少し笑って)大丈夫だよ、抱き締めるだけだから」
菜摘は少し悩む
少し悩んで椅子から立ち上がる菜摘
菜摘は両手を広げている風夏の近くに行く
菜摘のことを抱き締める風夏
風夏「(菜摘のことを抱き締めて)心配しないで菜摘ちゃん、言えないことがあっても、いつかは言えるようになるよ」
菜摘「(風夏に抱き締められたまま小さな声で)風夏さんは・・・鳴海くんと同じ匂いがする・・・」
◯3070ゴルフ練習場/2階(昼前)
空は曇っている
蝉が鳴いている
ゴルフ練習場の2階にいる鳴海
ゴルフ練習場は2階建てになっていて、たくさんの打席がある
ゴルフ練習場の打席は自動でゴルフボールがティーアップされるようになっている
ゴルフ練習場の打席の隣にはオートティーアップ機が設置されている
ゴルフ練習場は広く、ボールが出ないようにネットで囲われている
ゴルフ練習場にはグリーン、バンカー、ホールが設置されており、たくさんの人が打ちっぱなしの練習を行っている
ゴルフ練習場の打席の後ろにはベンチがある
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
鳴海はグローブを手につけている
ベンチに座っている鳴海
ベンチには鳴海のドライバー、龍造の7番アイアンが立て掛けてある
鳴海は龍造が戻って来るのを待っている
少しの沈黙が流れる
鳴海はグローブを外す
グローブをベンチの上に置く鳴海
鳴海はグローブをベンチの上に置いてため息を吐き出す
少年S「お、おい」
どこからか少年Sの声が聞こえて来る
どこからか少年Sの声が聞こえて来たが、鳴海は少年Sの声を無視する
再び沈黙が流れる
少年S「おいってば、無視しないでくださいよ」
再びどこからか少年Sの声が聞こえて来るが、鳴海は変わらず少年Sの声を無視している
少年S「あんたに話しかけてるんです、そこの椅子に座ってるやる気のない先輩に」
鳴海「(驚いて)も、もしかして俺のことか?」
少年S「その通り、少年N」
鳴海は少年Sのことを探す
鳴海「(少年Sのことを探して)ど、どこにいるんだ?」
少年S「少年N先輩の隣の隣の隣」
鳴海は少年Sのことを探すのをやめる
隣の隣の隣の打席を見る鳴海
鳴海の隣の隣の隣の打席では少年Sがドライバーを構えている
少年Sの年齢は17歳
少年Sは波音高校の制服を着ている
鳴海の隣の隣ではおじさんが打ちっぱなしの練習を行っている
鳴海はドライバーを構えている少年Sのことを見る
鳴海「(ドライバーを構えている少年Sのことを見て)誰だよ、お前」
少年Sはドライバーでゴルフボールを打つ
少年Sがドライバーで打ったゴルフボールは横に大きく逸れネットに当たって落ちる
少年S「あ、あんたが話しかけて来たからミスったじゃないか!!」
鳴海「(少年Sのことを見たまま)お前はどこの誰なんだ」
少年S「少年Sですよ俺は」
鳴海は少年Sのことを見るのをやめる
鳴海「(少年Sのことを見るのをやめて)悪いが今は変人と関わる気分じゃない」
少年S「嘘だろ・・・?あんたは俺のことを忘れちゃったんですか・・・?」
鳴海「元々お前のことなんか知らないんだが」
少年S「一緒に部活をやった後輩のことを忘れるなんて・・・」
少年Sの打席に自動でゴルフボールがティーアップされる
鳴海「お前は俺の後輩じゃないから安心しろ」
少年S「いや、確かに後輩だった」
鳴海「(小声でボソッと)何で俺はいつもいつも変人に絡まれるんだ・・・」
少年S「思い出しましたよね?俺のこと」
鳴海「知らない奴のことを思い出せるわけないだろ」
鳴海と少年Sの間で打ちっぱなしの練習を行っているおじさんは迷惑そうにしている
鳴海「ここは紳士が嗜むための場所なんだ、高校生は家に帰って夏休みの宿題でもしてろよ」
少年S「宿題ならもう終わらせました」
鳴海「それはご苦労だったな、ゲームしてて良いぞ」
少しの沈黙が流れる
少年S「とりあえず来てもらえませんか」
鳴海「来るってどこにだよ」
少年S「南波音高校に」
鳴海「南波音高校なんて全く聞いたことがないんだが」
少年S「めんどくさい先輩だな・・・」
鳴海「おい、卒業生とは言え俺は先輩だぞ」
少年S「だからめんどくさい先輩だって言ったんじゃないですか」
鳴海「どこの誰だか知らないが目上には敬意を払えよ」
少年S「敬意を払えばついて来てくれるのか」
鳴海「(少し笑って)そんなことあるわけないだろ」
再び沈黙が流れる
少年S「頼んでも無理なら強引にってサン様が言ってたけど・・・」
鳴海「おいおい、物騒だな最近の高校生は。俺が卒業してから数ヶ月の間に何があった・・・」
少年Sは鳴海の話を無視して鳴海のところに行く
少年Sが◯3067のゴルフ練習場の入り口前でぶつかって来た人物だと気付く鳴海
鳴海「お、お前よく見たらさっき俺にぶつかって来た奴じゃないか!!」
少年S「わざとじゃないし謝ったんだからもう忘れて良いですよ」
鳴海「あれは謝ったに含まれないぞ、ただ頭を下げ・・・」
少年Sは話途中だった鳴海の腕を掴んで無理矢理鳴海を立たせる
鳴海「(少年Sに腕を掴まれて無理矢理立たされて)な、何するんだよ」
少年S「(鳴海の腕を掴んだまま)サン様に言われた通りにしようかと思って」
鳴海「こ、断る」
少年S「(鳴海の腕を掴んだまま)だったら最初から強制的に連れて行った方が早いですね」
少年Sは鳴海の腕を引っ張って行く
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)お、おい!!」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)あんたは聞き分けが悪過ぎるんだよ」
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)き、聞き分けが良くても連れて行くつもりだったんだろ!!」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)もちろん、少年Nは俺たちの活動に必要だ」
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)な、何で次から次へと変な奴が俺の周りには集まって来るんだよ・・・」
◯3071ゴルフ練習場/階段(昼前)
ゴルフ練習場の階段を降りている鳴海と少年S
ゴルフ練習場の階段は長く、どこまで続いているのか分からない
ゴルフ練習場の階段には鳴海と少年S以外誰もいない
ゴルフ練習場の階段は薄暗く、電気がついたり消えたりしている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
少年Sは波音高校の制服を着ている
少年Sに腕を引っ張られている鳴海
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)す、スタッフ以外立ち入り禁止の場所だぞ」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)今更そんなルールを先輩が気にするなんて思いもしませんでしたよ」
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)お、俺はお前の先輩じゃないと言っているだろ」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)いや、先輩だ」
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)な、何の先輩だよ」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)部活の先輩に決まってるじゃないですか」
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)ひ、人違いをしているとしか思えないんだが・・・」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)俺は少年Nと他の人を間違えたりなんかしない」
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)そ、その少年Nっていうのは何なんだよ」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)先輩の名前だろ」
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)違う、俺の名前は貴志・・・」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら鳴海の話を遮って)あんたは今少年なんですよ」
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)クソッ・・・話の通じないガキだ・・・」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)サン様じゃないんだから言葉に気をつけてください」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)な、なあ、腕を離してくれよ、逃げないからさ」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)少年Nは嘘のつき方が下手くそ過ぎるんですよ」
再び沈黙が流れる
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)俺をどこへ連れて行くつもりだ」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)さっき学校って言いましたよね」
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)み、南波音高校なんて聞いたことがないぞ」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)廃校ですから」
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)廃校?」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)はい、今は少年少女被害者のクラブの活動場所になっていますけど」
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)な、何だそのクラブは」
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)もうすぐ分かりますよ」
少しの沈黙が流れる
少しすると鳴海と少年Sはゴルフ練習場の階段の一番下に辿り着く
ゴルフ練習場の階段の一番下には扉がある
少年Sは鳴海の腕を掴んだままゴルフ練習場の階段の扉を開ける
少年Sが鳴海の腕を掴んだままゴルフ練習場の階段の扉を開けた瞬間、鳴海の周囲に光が広がる
鳴海は少年Sに腕を掴まれたまま反射的に両目を瞑る
再び沈黙が流れる
蝉が鳴いている
鳴海は少年Sに腕を掴まれたまま恐る恐る両目を開ける
空は快晴
鳴海と少年Sがいるのは山の中
鳴海と少年Sの後ろには廃道があり、大きな古い扉で通行禁止になっている
地面には木漏れ日が出来ている
地面からは陽炎が立っている
山の中ではたくさんの太く大きな木が育っている
太く大きな木の根が地面から盛り上がっている
鳴海は少年Sに腕を掴まれ困惑しながら周囲を見る
鳴海「(少年Sに腕を掴まれ困惑しながら周囲を見て)お、俺はまだ眠っていない」
少年S「(困惑しながら周囲を見ている鳴海の腕を掴んで)ここは現実ですよ、先輩」
鳴海「(少年Sに腕を掴まれ困惑しながら周囲を見て)ご、ゴルフ練習場の裏口が森になっているなんておかしいだろ」
少年S「(困惑しながら周囲を見ている鳴海の腕を掴んで)これはこれで波音物語の舞台っぽいじゃないですか」
鳴海「(少年Sに腕を掴まれ困惑しながら周囲を見て)そ、そんなことはどうでも良い」
少年S「(困惑しながら周囲を見ている鳴海の腕を掴んで)去年はあんなに熱心に取り組んでいたのに変ですね」
鳴海「(少年Sに腕を掴まれたまま周囲を見て)去年は菜摘と文芸部のために・・・」
鳴海は少年Sに腕を掴まれたまま周囲を見るのをやめる
鳴海「(少年Sに腕を掴まれたまま周囲を見るのをやめて)ま、待て、どうしてお前が一年前の俺の行動を知っているんだ」
少年S「(鳴海の腕を掴んだまま)だから言ってますよね、俺は後輩だって」
再び沈黙が流れる
少年Sは鳴海の腕を引っ張って山を降りて行く
少年S「(鳴海の腕を引っ張りながら)学校はこの下ですよ少年N」
鳴海「(少年Sに腕を引っ張られながら)お、おい」
時間経過
山の麓に降りて来た鳴海と少年S
山の麓には南波音高校がある
南波音高校の見た目は波音高校と完全に同じ
鳴海と少年Sは南波音高校の校門の前にいる
南波音高校の校門には”南波音高校”と書かれた校銘板が貼られてある
南波音高校を見ている鳴海
鳴海「(南波音高校を見ながら)な、波高にそっくりじゃないか・・・」
少年S「一応兄弟校ですしね」
少しの沈黙が流れる
少年S「先輩、早く入りましょうよ」
鳴海は南波音高校を見るのをやめる
鳴海「(南波音高校を見るのをやめて)こ、高校ならもう卒業した」
少年S「年齢は関係ないんだよ、ここはある人たちだけが入れる一種のクラブ活動だから」
鳴海「さっきも言っていたが、そのクラブっていうのは一体何なんだ?」
少年Sは南波音高校の校門に向かって歩き出す
少年S「来てくださいよ、部活説明しますから」
鳴海「ぶ、部活説明って・・・」
少年S「早く、ノロノロしてると遅刻しますよ」
鳴海は南波音高校に向かって歩き出す
南波音高校の校門を潜って学校の中へ入って行く鳴海と少年S
◯3072南波音高校一年生廊下(昼過ぎ)
外は蝉が鳴いている
南波音高校の一年生廊下を歩いている鳴海と波音高校の制服を着た少年S
南波音高校の一年生廊下にはたくさんの人がいる
南波音高校の一年生廊下にいるたくさんの人たちの年齢は少年少女から老人まで様々だが、全員波音高校の制服を着ている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
たくさんの人たちとすれ違っている鳴海と少年S
鳴海と少年Sは40歳くらいの男とすれ違う
少年S「また後でな、少年R」
40歳くらいの男「おう、少年S」
10歳くらいの女の子とすれ違う鳴海と少年S
少年S「少女Z、調子はどうだ?」
女の子「最高だよ少年S」
少年S「そいつは良かった」
鳴海と少年Sは60歳くらいの男とすれ違う
60歳くらいの男「少年S、今度またライブをしてくれよ」
少年S「もちろんだ」
30歳くらいの女とすれ違う鳴海と少年S
30歳くらいの女「夕ご飯の件はサンキューね、少年S」
少年S「おう、困ったらまたいつでも声をかけてくれ、役に立つぞ」
男1「うん」
少年Sはすれ違うたくさんの人たちに挨拶をして行く
頭を抱える鳴海
鳴海「(頭を抱えて)何だこれは・・・季節外れのインフルエンザにでもなったのか・・・」
少年S「みんな少年少女たちだよ」
鳴海「(頭を抱えたまま)とても子供とは言えない年齢の奴もいただろ・・・」
少年S「だから年齢は関係ないんです、俺たちは全員少年少女なんだから」
鳴海は頭を抱えるのをやめる
鳴海「(頭を抱えるのをやめて)お前は誰なんだ」
少年S「少年Sですよ」
鳴海「それは本名じゃないだろ」
少年S「名前を言わないのがこのクラブのルールなんだ」
鳴海「そんなに本名が知られたくないのか?」
少年S「そりゃそうですよ、だって苗字にも名前にも呪いがかかっていますから」
鳴海「の、呪い?」
少年S「親からの期待です」
少しの沈黙が流れる
少年S「俺たち少年少女被害者のクラブの活動目的は、性別の呪いからの解放なんだ」
鳴海「せ、性別からの解放って何だよ」
少年S「例えば俺たち男は強くあれと育てられて来た、喧嘩には必ず勝て、女の前で泣くな、仕事では成功しろ、命に変えても家族だけは守って、愛する人たちの役に立ちなさい。そういう教えが常に呪いとして、俺たちの人生にはのしかかって来たじゃないですか」
◯3073◯2940の回想/鳴海の夢/クラブから離れたところ(約18年前/夜)
約18年前の少し古いクラブから離れたところにいる鳴海、由夏理、風夏
クラブの周りにあるお店やビルは少し古い
鳴海の髪の毛は金髪になっている
由夏理は妊娠しており、お腹が少し膨らんでいる
由夏理は右目元に痣が出来ている
由夏理は風夏の手を掴んでいる
話をしている鳴海と由夏理
由夏理「(風夏の手を掴んだまま少し笑って)私は被害者なんだよ少年」
鳴海「(呆れて)どこが被害者なんだ・・・」
由夏理「(風夏の手を掴んだまま少し笑って)男の君には分からないんだろうね、30年近く、女としての価値を見出すだけで消費されて来た辛さが。料理が出来て当たり前、化粧が出来て当たり前、洗濯や掃除が出来て当たり前、子育てが出来て当たり前、男を喜ばせられることが出来て当たり前、留守番が出来て当たり前、常に笑顔でいて当たり前、旦那以外の男と話をしなくて当たり前、常に男たちよりも下にいて当たり前。だけど私は、夫や父親の威厳を守るために母親になったんじゃないし、家政婦や秘書になった覚えもない。私の仕事はつまらない家事をこなすこと?夫を立てること?(少し間を開けて)違うでしょ?私は自分の力で幸せになれる、大人なんだから。紘や君にとやかく言われる筋合いはないんだよ」
◯3074回想戻り/南波音高校一年生廊下(昼過ぎ)
外は蝉が鳴いている
南波音高校の一年生廊下を歩いている鳴海と波音高校の制服を着た少年S
南波音高校の一年生廊下にはたくさんの人がいる
南波音高校の一年生廊下にいるたくさんの人たちの年齢は少年から老人まで様々だが、全員波音高校の制服を着ている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
たくさんの人たちとすれ違っている鳴海と少年S
鳴海と少年Sは話をしている
鳴海「お、俺は別に被害者なんかじゃない。そ、そもそも自分が被害者だなんて思うのは自意識過剰だ」
少年S「まずその考えが間違っているんですよ。性別の呪いがある以上はみんな被害者なのに」
鳴海「そ、それじゃ世界中の人間が被害者ということになるじゃないか」
少年S「そうですね、男だからって戦争に行かされた奴は被害者だし、男の帰りを待ちながら永遠と家事を繰り返している女も被害者と言える」
鳴海「り、理論が発展し過ぎだろ」
少年S「俺は愛のある平穏を求めているんですよ、ノーファイト、ノーバイオレンス、ノートラブルです」
鳴海「も、求めたってそんな簡単に手に入るものじゃない、現実は競争社会なんだぞ」
少年S「だからこそ少年少女被害者のクラブを作りました、他人の痛みや苦しみを知り、世界を変えて行くために」
少しの沈黙が流れる
少年S「言葉だけじゃ分からないだろうから、クラブの活動を見せるよ」
◯3075南波音高校裏庭(昼過ぎ)
蝉が鳴いている
南波音高校の裏庭にいる鳴海、波音高校を制服を着た少年S、少年D
南波音高校の裏庭には花壇があり、たくさんのハイビスカスが咲いている
少年Dの年齢は30歳くらいで、波音高校の制服を着ている
たくさんのハイビスカスに水をあげている少年D
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
話をしている鳴海たち
少年D「(たくさんのハイビスカスに水をあげながら)ここは最高だぜ、息を吸ってるだけで心が落ち着くんだ」
鳴海「そ、そうっすか・・・」
少年S「少年Dはクラブに入るまでは自衛隊員だったんです。周りから馬鹿にされるのが嫌で自分を押し殺していたところを、俺がクラブに誘ったんだ」
少年D「(たくさんのハイビスカスに水をあげながら少し笑って)少年Sがいなきゃ俺は今でも強い男を求めて自衛隊をやってたよ、本当は争いごとが苦手の植物フリークなのにな」
鳴海「べ、別に植物が好きでも自衛隊員にはなれるだろ」
少年D「(たくさんのハイビスカスに水をあげながら)世間にはイメージってもんがある。俺みたいな強面の男が毎晩30分薔薇の花と話をしてると知られたら、きっと馬鹿にされるさ」
鳴海「あー・・・あんたは毎晩30分薔薇の花と話をしているのか・・・」
少年D「(たくさんのハイビスカスに水をあげながら)あんたもここにいればいくらでも話が出来るぜ?」
少しの沈黙が流れる
鳴海「や、やっぱり季節外れのインフルエンザになったみたいだ」
少年S「少年N先輩は重病らしい」
少年D「(たくさんのハイビスカスに水をあげながら)そうみたいだな・・・」
鳴海「あ、あんたたちも俺がインフルになったと思うのか」
少年S「重病なのはインフルじゃなくて呪いの方ですよ」
再び沈黙が流れる
鳴海「は、ハイビスカスの花粉のせいで俺には幻覚が見えているのかもしれない」
少年D「(たくさんのハイビスカスに水をあげながら)ハイビスカスちゃんも悪気があって花粉を飛ばしてるんじゃないんだよ」
鳴海「き、気が遠くなりそうだ・・・」
少年S「じゃあ別の人を紹介しますね」
◯3076南波音高校第一理科室(昼過ぎ)
外は蝉が鳴いている
南波音高校の第一理科室にいる鳴海、波音高校の制服を着た少年S、少女T
第一理科室にある机には水道の蛇口と流しが付属している
第一理科室の後ろには大きな棚があり、棚の中にはフラスコ、ビーカー、ウサギやカエルなどのホルマリン漬け、蝶、カブトムシ、蜘蛛などの標本が置いてある
棚の隣には人体模型が置いてある
第一理科室の壁には巨大な心臓の写真が貼ってあり、天井には人間の腕、足、手、胃、腸、心臓などの絵が描かれている
少女Tの年齢は20歳くらい
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
少女Tは波音高校の制服を着ているが、制服にはフェルトで出来た人間の眼球、腕、足、手、胃、腸、心臓、舌などが縫い付けられてある
話をしている鳴海たち
鳴海「な、なんと言うかますます気が遠くなった感じがするんだが・・・」
少女T「あなたも部位フェチなの?」
少しの沈黙が流れる
少年S「少年N先輩はまだここに来たばかりなんだ、あとさっきハイビスカスの花粉にやられたみたいで・・・」
少女T「あ、そっか。それなら仕方がないね」
鳴海「い、インフルエンザになって悪夢を見たとしてもここまで変な夢にはならないぞ・・・」
少年S「少女Tは人間の体の一部を愛しているんです、例えば内臓とか小指の先とか」
少女T「内蔵は良いよ内臓は、なんかちょっと妖艶だし」
再び沈黙が流れる
鳴海「こ、この学校には変人しかいないんだな」
少年S「そりゃそうですよ。だってみんな現実に居場所がないんだから」
鳴海「内臓をエロいと言う奴に居場所があるわけないだろ!!」
少女T「エロいんじゃない、妖艶なの。ここ、重要だから勘違いしないで」
鳴海「意味は同じだ!!」
少女T「いや、全然違うし。妖艶は上品な感じだけど、エロいだと下品で・・・」
鳴海「(少女Tの話を遮って)内蔵が好きな奴のどこが被害者なんだよ!!」
少しの沈黙が流れる
鳴海「お、お前たちは普通じゃないから自分のことを被害者だと思い込んでいるんだろ」
少年S「彼女は実際に被害者ですよ」
鳴海「いや、周りと馴染めていないだけだ」
再び沈黙が流れる
少女T「私の趣味が分かるとみんな離れて行く・・・友達とか彼氏に言っても引かれたし、最後には必ず気持ち悪がられた。親はこんな私のことを殴って、世間が可愛いと思うものを私に強制しようとしたけど、ダメなものはダメ・・・リボンとかプリンセスとかアクセサリーとか・・・何が良いのか全然分からない。普通になろうと努力したこともあったけど、苦しくなるだけ。(少し間を開けて)だからこのクラブに入るしかなかった、ここなら変人でも受け入れてくれるから」
鳴海「あ、あんたのことを受け入れてくれる奴はここ以外にもいるはずだろ」
少年S「いたとしてもその人を見つけることが難しいんです」
◯3077南波音高校二年生廊下(昼過ぎ)
外は蝉が鳴いている
南波音高校の二年生廊下を歩いている鳴海と波音高校の制服を着た少年S
南波音高校の二年生廊下にはたくさんの人がいる
南波音高校の二年生廊下にいるたくさんの人たちの年齢は少年少女から老人まで様々だが、全員波音高校の制服を着ている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
たくさんの人たちとすれ違っている鳴海と少年S
鳴海と少年Sは話をしている
少年S「彼女は女性性から解放されて、もう一度少女から人生をやり直す必要があったんだ」
鳴海「か、解放されたらどうなるんだよ」
少年S「そんなの自由になるに決まっているじゃないですか」
◯3078◯2940の回想/鳴海の夢/クラブから離れたところ(約18年前/夜)
約18年前の少し古いクラブから離れたところにいる鳴海、由夏理、風夏
クラブの周りにあるお店やビルは少し古い
鳴海の髪の毛は金髪になっている
由夏理は妊娠しており、お腹が少し膨らんでいる
由夏理は右目元に痣が出来ている
由夏理は風夏の手を掴んでいる
話をしている鳴海と由夏理
由夏理「(風夏の手を掴んだまま)残念だけど、私はゲーム大会の景品でも鳥籠の中のカナリアでもないんだよ。もし本当に君が私のことを想っているんだとしたらさ、敬意を払ってもらいたいし、あれこれ口出ししないで自由にして欲しい」
鳴海「そんなのただのわがままじゃないか、あなたはもう十分自由を満喫している。少なくとも俺はあなたがそうなるように努力もしているんだ」
由夏理「(風夏の手を掴んだまま少し笑って)毎日毎日、料理、洗濯、子育て、旦那の同僚に頭を下げる日々、良い母親として、良い妻として、抑圧されて発言も許されない毎日が自由だって?」
鳴海「仕方がないだろ!!あなたは母親なんだから!!」
◯3079回想戻り/南波音高校二年生廊下(昼過ぎ)
外は蝉が鳴いている
南波音高校の二年生廊下を歩いている鳴海と波音高校の制服を着た少年S
南波音高校の二年生廊下にはたくさんの人がいる
南波音高校の二年生廊下にいるたくさんの人たちの年齢は少年少女から老人まで様々だが、全員波音高校の制服を着ている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
たくさんの人たちとすれ違っている鳴海と少年S
鳴海と少年Sは話をしている
鳴海「じ、自由なんて・・・あって良いものじゃない・・・」
少しの沈黙が流れる
少年S「体育館に行ってみますか、そろそろ先輩にも参加してもらいたいですし」
◯3080南波音高校体育館(昼過ぎ)
外は蝉が鳴いている
南波音高校の体育館にいる鳴海と波音高校の制服を着た少年S
南波音高校の体育館には鳴海と少年Sの他にもたくさんの人たちがいる
南波音高校の体育館にいるたくさんの人たちの年齢は少年少女から老人まで様々だが、全員波音高校の制服を着ている
円の形に椅子を並べて椅子に座っている鳴海、少年S、たくさんの人たち
50歳くらいの男が話をしている
50歳くらいの男「僕はゲイだ。恋人は出来たことがない、同僚と女性の話をする時はいつも盛り上がってるふりをして、辛かった。今はこんなふうにみんなの前で話をすることが出来てるけど、昔なら厳しかったと思う。日本は先進国の中でもマイノリティに当たりが強い、割り切って男好きのキャラクターになれたら良かったけど、テレビに出ているタレントみたいには出来なかったよ。(少し間を開けて)40歳になって、自分を偽るのに嫌気がさしたんだ。だから母親にゲイだって打ち明けた。お袋とは仲が悪かったけど、お互いのことを理解し合うならこれが最後だと思ったし、何より愛されてみたかったんだ、4、5歳の頃のようにね。でもダメだったよ。80過ぎの老婆に頬をビンタされて、もう二度と帰って来るなって言われた」
少しの沈黙が流れる
50歳くらいの男「大丈夫、僕は半世紀も生きたけど、腰痛を除けば体はそこまで劣化してないし、これから先ももう少しは生きていけるだろう。でも正直、打ち明けた時は後悔しかなかった、小さい頃から剣道を習わされて、大人になれば出世しろだの、孫の顔が見たいだの言われ続けて来た分、ゲイとして生きるのは親を裏切っているような気がしたんだ。(少し間を開けて)だけど今は打ち明けて良かったと思ってる。歴史を振り返れば、カミングアウト出来ずに死んだ人も大勢いるだろうし、僕は幸運な方だ。このクラブに入ってからは仲間も出来た、ゲイやレズビアンじゃなくても苦労している人がたくさんいた。その時は一人だったとしても、苦労した経験を他人に話せるのはとても素晴らしいことだと思う。少年少女被害者のクラブにいる人たちが、抱えているものを打ち明けられるようになって欲しい。僕はそう願ってます」
再び沈黙が流れる
少年Sを含む南波音高校の体育館にいるたくさんの人たちが拍手をする
少年Sたちに合わせて拍手をする鳴海
少年S「(拍手をしながら)話をしてくれてありがとう少年M」
50歳くらいの男「こ、こちらこそみんな聞いてくれてありがとう」
少年S「(拍手をしながら)どういたしましてだよ」
少しすると少年Sを含む南波音高校の体育館にいるたくさんの人たちが拍手をするのをやめる
拍手をするのをやめる鳴海
少年S「今日は体験入部に来た少年をみんなに紹介しようと思う」
少年Sは鳴海のことチラッと見る
鳴海「な、何でこっちを見たんだよ」
少年S「彼は少年N、俺の先輩だ」
鳴海「お、おい」
少年S「先輩、自己紹介してください」
鳴海「ど、どうして俺がそんなことをしなきゃならないんだ」
少年S「言ったじゃないですか、先輩にも参加してもらうって」
鳴海「わ、悪いが断る」
少年S「自己紹介して話をするだけで良いですから」
鳴海「な、何を話せば良いんだよ」
少年S「先輩、適当に喋ることが得意だったでしょ」
鳴海「て、適当に喋るのだって毎回苦労しているんだ」
少しの沈黙が流れる
少年S「みんな先輩のことを待ってるんですよ」
鳴海「そ、そう言われても何も思いつかないんだ」
少年S「考えながら話せば大丈夫です、多分上手くまとまりますから」
鳴海「そ、そんなわけないだろ」
少年S「俺を信じてください、少年N先輩」
再び沈黙が流れる
鳴海「わ、分かったよ・・・(少し間を開けて)お、俺はここだと少年Nって言うらしい。ぎ、義理の兄とゴルフの打ちっぱなしに来たらこの変な高校生に拉致された。こ、ここを見て俺が思ったのは・・・校舎が波高に似ているってことだ。だ、だがここにいる奴らは全然俺の同級生に似ていない、だから余計に変な感じがするんだ」
少しの沈黙が流れる
少年S「話を続けて、少年N」
鳴海「あー・・・か、顔の傷は風呂場で転んだせいだ。誤解されたくないから説明するが、え、エルフに憧れて髪を染めたわけじゃないからな。お、俺はあんたたちほど変人じゃないんだ」
少年S「それから?」
鳴海「そ、それから・・・お、俺は最近結婚した・・・」
南波音高校の体育館にいるたくさんの人たちがざわつき始める
男1「結婚だってさ・・・」
女1「クラブに体験しに来たのに結婚してるの・・・?」
男2「きっとさせられたんだよ・・・今でも結婚を望む親は多いからな・・・」
女2「有害なシステムだわ・・・結婚イコール幸せって世間の認識がまちが・・・」
鳴海「(女2の話を遮って)し、幸せな家庭を築くのが俺の夢だったんだよ」
ざわついていた南波音高校の体育館の中が静かになる
鳴海「あ、あんたたちは家族のことが嫌いなのかもしれないが、俺にとって家族は幸せの象徴なんだ」
女2「それが古い価値観なのよ、どうせあなたみたいな人は父親から有害な男性らしさを引き継いでいるんだから」
鳴海「ゆ、有害な男らしさって何だよ」
女2「妻に家事を押し付け、反論されれば暴力を振るって、寝る時だけは甘えて、家の中で対等な関係ではなくカースト制度を作って、世間の目を気にする男、それが有害性だわ」
鳴海「お、俺はそんな奴じゃない」
女2「父親が有害ならあなたもそうなるわよ」
鳴海「(立ち上がって)ち、父親の話を持ち出すな!!」
女2「やっぱり、こういう人は自分が加害者になることに無自覚なんだわ」
再び沈黙が流れる
少年S「先輩、落ち着いて」
少しの沈黙が流れる
鳴海は椅子に座る
鳴海「(椅子に座って)あ、あんたの言いたいことは分かるし、親父からそういう一面を引き継いだことは否定しない・・・だが俺は・・・妻のことを尊敬しているんだ。俺なんかよりずっと強いし、勇気もある。菜摘は・・・正しい行いが出来る人なんだ」
女2「でもその認識が間違っていたら?あなたの奥さんは強いふりをしているだけで実は人並みに弱くて、勇敢とは程遠かったら?」
鳴海「そ、そんなわけない。じ、実際あいつは特別な奴なんだ」
女2「あなたは無意識に奥さんに高いハードルを課しているのよ、きっと奥さんもそのことで苦しんでるわ」
鳴海「ど、どうしてそういう考えになるんだよ」
女2「それは・・・私が家庭でそうだったから」
再び沈黙が流れる
女2「男性が喧嘩に負けるなと言われて育てられたように、女性は夫や父親に心配をかけさせるなと言われて育てられて来たわ」
鳴海「だ、だったらどうしたら良いんだ、心配し続けろと言うのか?」
女2「本当の夫婦なら弱みを隠すべきではない」
鳴海「せ、世界はそんな簡単に回ってないんだよ!!恋人にだからこそ、その人が大切だからこそ弱みを隠しているってことがあんたには分からないのか!?」
少しの沈黙が流れる
鳴海「俺の父親は泣く奴が嫌いだった。だから事あるごとに涙を流す母親はいつも叱られていたよ」
◯3081◯2471の回想/貴志家洗面所(約十年前/昼)
洗面所にいる30代後半頃の由夏理と同じく30代後半頃の紘
紘は顔面が傷だらけになっており、大量の血を流している
洗面所の壁にもたれている紘
紘の顔の傷に消毒液を付けたガーゼを当てている由夏理
紘は顔の傷に消毒液を付けたガーゼを由夏理に当てられながら、泣いている
鳴海「(声)だがある時・・・父さんが泣いたんだ・・・俺は母さんと同じで・・・泣くな言われていたから・・・(少し間を開けて)思い出すと腹が立つ・・・俺や母さんには冷たかったくせに・・・喧嘩に負けただけで泣きやがった・・・」
◯3082回想戻り/南波音高校体育館(昼過ぎ)
外は蝉が鳴いている
南波音高校の体育館にいる鳴海と波音高校の制服を着た少年S
南波音高校の体育館には鳴海と少年Sの他にもたくさんの人たちがいる
南波音高校の体育館にいるたくさんの人たちの年齢は少年少女から老人まで様々だが、全員波音高校の制服を着ている
円の形に椅子を並べて椅子に座っている鳴海、少年S、たくさんの人たち
鳴海は話をしている
鳴海「でも今なら分かるよ、あれは多分あんたが言っていた弱みなんだ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(少し寂しそうに笑って)俺の父親は弱かった・・・だから俺には立派な大人になって欲しかったのさ」
◯3083南波音高校二年生廊下(夕方)
夕日が沈みかけている
外は蝉が鳴いている
南波音高校の二年生廊下を歩いている鳴海と波音高校の制服を着た少年S
南波音高校の二年生廊下には鳴海と少年Sしかいない
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
話をしている鳴海と少年S
少年S「あんたのことが知れて良かったです」
鳴海「さっきの話のことか?」
少年S「はい」
鳴海「別に大した話はしていないけどな」
少年S「でも先輩のことが少し分かった気がする」
鳴海「元々知らない者同士だからそんなことが言えるんだろ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「お前はどうしてこんなクラブを作ろうと思ったんだ?」
少年S「必要とされる場所が欲しかっただけなんです、自分が誰かの役に立てればそれで良かったし」
鳴海「だとしてもよくこれだけの人を集められたな」
少年S「みんな、自分の個性を認めて受け入れてもらいたかったんだ。やっぱり世間のイメージだけで判断されるのは辛いんですよ」
再び沈黙が流れる
鳴海「お前・・・同級生や先輩との付き合いはどうしたんだ」
少年S「俺は役に立てなかったんです」
鳴海「役に、か・・・」
少年S「はい・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「部活はやっていたんだろ?」
少年S 「先輩と同じ部活をね」
再び沈黙が流れる
鳴海「お、俺そろそろ戻るよ、龍さんも待っているだろうしさ」
少年S「そういうわけにはいきません先輩、クラブに入ったからにはちゃんと活動をしないと」
鳴海「お、お前たちの活動は素晴らしいことだと思うし理解も示すが、俺には帰るべき場所があるんだ」
少年S「じゃあ活動してから帰ってください」
鳴海「ま、待っている人がいるんだよ」
少年S「俺だって先輩たちのことを待ってたんだ」
鳴海「お、お前とは初めて会ったと何度も言っているだろ」
少しの沈黙が流れる
少年S「もう晩ご飯の時間だし、少年N先輩の活動については後で説明しますね」
鳴海「め、飯なんて食べないぞ。良いか、俺は絶対に飯を・・・」
◯3084南波音高校食堂(夜)
南波音高校の食堂にいる鳴海と波音高校の制服を着た少年S
南波音高校の食堂にはたくさんのテーブルと椅子がある
南波音高校の食堂には鳴海と少年の他にもたくさんの人たちがいる
南波音高校の食堂にいるたくさんの人たちの年齢は少年少女から老人まで様々だが、全員波音高校の制服を着ている
テーブルに向かって椅子に座っている鳴海と少年S
テーブルの上にはたこ焼き、ポトフ、ステーキ、サラダ、カツ丼、カレーライス、味噌汁、刺身、ピザなど様々な料理が置いてある
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
テーブルの上に置いてある様々な料理を見ている鳴海
鳴海「(テーブルの上に置いてある様々な料理を見ながら)クソ・・・食べないと言ったのに・・・」
少年S「お祈りが終わるまでは手を付けないように」
鳴海はテーブルの上に置いてある様々な料理を見るのをやめる
鳴海「(テーブルの上に置いてある様々な料理を見るのをやめて)お、お祈りなんかするのか?」
少年S「当たり前でしょ、食べ物は貴重なんだから」
鳴海「お、俺は無神論者だ」
少年S「祈る相手は神じゃなくてリーヴェとヴンダーですよ」
鳴海「ゔ、ヴンダーなんて奴は知らない」
少年S「あんた・・・そんなことも分からなくなっちゃったのか・・・」
鳴海「ゔ、ヴンダーって誰だよ」
少年S「リーヴェとヴンダーは人じゃないです」
鳴海「ひ、人ならざる者ということか?」
少年S「リーヴェは愛、ヴンダーは奇跡ですよ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「リーヴェが愛で・・・ヴンダーは・・・」
少年S「奇跡、だから人じゃなくて概念ですね」
◯3085◯2693の回想/奇跡の世界:宿舎/リーヴェの部屋(夕方)
外は曇っている
宿舎の中のリーヴェの部屋にいるリーヴェと鳴海
リーヴェの部屋には勉強机とベッドがある
ベッドの横に椅子を置いて座っている鳴海
リーヴェはベッドの上で横になっている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
リーヴェは両目に包帯を巻いており、右腕、左手の中指、薬指、小指が無くなっている
リーヴェは痩せている
話をしている鳴海とリーヴェ
リーヴェ「確かに・・・このあたしは死ぬけど・・・だからって・・・世界からリーヴェが消えるわけじゃない・・・リーヴェの存在は永遠だ・・・」
◯3086回想戻り/南波音高校食堂(夜)
南波音高校の食堂にいる鳴海と波音高校の制服を着た少年S
南波音高校の食堂にはたくさんのテーブルと椅子がある
南波音高校の食堂には鳴海と少年の他にもたくさんの人たちがいる
南波音高校の食堂にいるたくさんの人たちの年齢は少年少女から老人まで様々だが、全員波音高校の制服を着ている
テーブルに向かって椅子に座っている鳴海と少年S
テーブルの上にはたこ焼き、ポトフ、ステーキ、サラダ、カツ丼、カレーライス、味噌汁、刺身、ピザなど様々な料理が置いてある
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
話をしている鳴海と少年S
鳴海「愛だから・・・リーヴェは永遠なのか・・・」
少年S「リーヴェのことは思い出したんですね」
鳴海「き、聞いてくれ、お、俺は多分リーヴェに会ったことあるんだ」
少年S「(少し笑って)多分なら人違いじゃないですか?」
鳴海「ひ、人違いなんかじゃない」
少年S「というかリーヴェは人じゃないんだけど・・・」
鳴海「わ、分かっている。た、ただリーヴェの話に出て来たメーアは俺だと思うんだ」
少しの沈黙が流れる
少年S「言われてみれば・・・リーヴェとヴンダーが人の姿をしていたら面白いかもしれない・・・」
鳴海「そ、そうだろ?俺には直感で分かるんだ、リーヴェが菜摘で、メーアが俺なんだって」
少年S「先輩・・・それは間違ってますよ・・・だってメーアはもっと・・・混沌だから・・・」
鳴海「な、何でそんなことが言い切れるんだよ」
少年S「俺は・・・メーアと会ったことがあるんだ・・・」
鳴海「め、メーアと・・・」
再び沈黙が流れる
少年S「(大きな声で)み、みんな両手を合わせて!!!!リーヴェとヴンダーに祈るよ!!!!」
少年Sを含む南波音高校の食堂にいるたくさんの人たちが両手を合わせる
少年S「(両手を合わせて)先輩も手を合わせてください」
鳴海「あ、ああ」
鳴海は両手を合わせる
少年Sを含む南波音高校の食堂にいるたくさんの人たち「(両手を合わせたまま)過去と未来、常日頃我らの隣人にリーヴェとヴンダーがいてくださるように・・・」
少しの沈黙が流れる
少年S「(両手を合わせたまま)いただきます」
南波音高校の食堂にいるたくさんの人たち「(両手を合わせたまま)いただきます」
鳴海「(両手を合わせたまま)い、いただきます」
少年Sを含む南波音高校の食堂にいるたくさんの人たちが両手を合わせるのをやめる
少年Sたちに合わせて両目を合わせるのをやめる鳴海
少年Sはたこ焼きを1個食べる
少年S「(たこ焼きを1個食べて)今日もたこ焼きは美味しいな」
鳴海「め、メーアに会ったって本当なのか?」
少年S「俺は先輩みたいに嘘はつきませんよ」
鳴海「ど、どんな奴だったんだ」
少年S「どんな奴って?」
鳴海「み、見た目のことだよ」
少年S「リーヴェやヴンダーと同じでメーアの外見は変わると思いますよ」
鳴海「お、俺みたいな奴じゃなかったか」
少年S「いや、少年N先輩とは似ても似つきませんね」
再び沈黙が流れる
少年S「そんなことよりご飯を食べた方が良いですよ」
鳴海「い、一食くらい抜いても・・・」
少年S「(鳴海の話を遮って)食べないと死んじゃいますから。しかもこの後も活動が続きますし」
鳴海「も、もう夜だぞ」
少年S「真剣に参加したら早く帰れるかもしれませんよ」
鳴海「ほ、本当だろうな」
少年S「期待されても困るので・・・具体的にいつになるかは明言しませんけど・・・」
◯3087南波音高校校庭(夜)
南波音高校の校庭にいる鳴海と波音高校の制服を着た少年S
南波音高校の校庭には鳴海と少年Sの他にもたくさんの人たちがいる
南波音高校の校庭にいるたくさんの人たちの年齢は少年少女から老人まで様々だが、全員波音高校の制服を着ている
南波音高校の校庭の中心には焚き火がある
南波音高校の校庭からは山が見える
南波音高校の校庭には仮設ステージがある
仮設ステージの上にはマイクスタンドが3台ある
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
鳴海たちは仮設ステージの周りに集まっている
仮設ステージの上には少年G、少年Z、少女Hが立っている
少年G、少年Z、少女Hの年齢は18歳
鳴海「お、オクラホマミキサーでもするのか」
少年S「まあ見ていれば分かりますよ」
少しの沈黙が流れる
少年Gがポケットから折り畳みナイフを取り出す
折り畳みナイフを広げる少年G
少年Gは折り畳みナイフを少女Hに向ける
少年G「(折り畳みナイフを少女Hに向けて棒読みで)グェッヘッヘ、彼女にフラれたし人生何もかも上手くいかなくなったから少年Zの彼女を寝取ってからぶっ殺してやる」
鳴海「(呆れて)おいおい・・・演劇にしては下手過ぎるだろ・・・」
少女H「(棒読みで)キャー、誰か助けてー」
鳴海「(呆れながら)もっと真剣にやれよ・・・」
少年Z「た、た、大変だ!!こ、このままでは少女Hの命が危ない!!」
再び沈黙が流れる
少年Z「ではここで少年Nに問題だ!!」
鳴海「は・・・?」
少年Z「(大きな声で)で、ではここで少年Nに問題だ!!!!」
鳴海「いや・・・聞こえてるけどさ・・・」
少年Z「(大きな声で)このシチュエーションで取らなきゃいけない行動とは一体何でしょう!!!!」
少しの沈黙が流れる
少年Sを含む南波音高校の校庭にいるたくさんの人たちが鳴海のことを見る
少年S「(鳴海のことを見て)先輩、問題出されてるけど」
鳴海「お、俺が答えなきゃいけないのか?」
少年S「(鳴海のことを見たまま)先輩に出された問題は先輩が答えてください」
鳴海は深くため息を吐き出す
鳴海「(深くため息を吐き出して)ナイフを奪ってそいつを殴り飛ばせば良いんだろ」
再び沈黙が流れる
少年Z「ブッブー!!正解は家に帰って一緒に新しい彼女を探してあげるでした!!」
少しの沈黙が流れる
少年Z「続いて第二問!!」
鳴海「ま、待て!!い、今のが本当に正しい答えなのか!?」
少年Z「うん」
鳴海「か、彼女が襲われたならやり返せよ!!」
少年Z「どうやって?」
鳴海「殴るなり蹴るなりすれば良いだろ!!」
少年Z「俺が男だから?」
鳴海「(大きな声で)違うお前の彼女が襲われたからだ!!!!」
少年Z「やり返して男が一億人の仲間を連れて復讐しに来たらどうするの?」
鳴海「(大きな声で)い、一億人も仲間がいるわけないだろ!!!!」
少年Z「仲間の数が100万人だったとしても俺には勝ち目がないけど?」
鳴海「(大きな声で)た、大切な人の命が危険になったのにお前は勝ち負けを気にするのか!?!?」
少年Z「いや、そもそも暴力に走った時点で俺の負けは確定してるでしょ」
再び沈黙が流れる
少年Z「続いて第二問!!(少し間を開けて)A国が核ミサイルを所有し最近イマイチ仲がよろしくない隣国を脅すようになりました!!少年Nが隣国の大統領ならこの問題をどうやって対処しますか!?」
鳴海「こっちもミサイルで牽制する」
少年Z「(大きな声で)はい世界滅亡確定!!!!正解は相手を怒らせないようにしながら下から話し合いに出る!!!!もしくは亡命するでした!!!!」
鳴海「か、核ミサイルが飛んで来るかもしれないのにどうやって話し合いをするんだよ!!!!大体大統領が逃げ出したらダメだろ!!!!」
少しの沈黙が流れる
少年S「今の問題は争いに発展させないことが大事だったんだよ」
鳴海「ミサイルにしたってナイフにしたって持ち出された時点で争いに発展しているじゃないか!!」
少年S「そんな状況は力づくで解決するべきじゃないってことです」
鳴海「そ、そもそも向こうが力づくの手段に出たんだぞ」
少年S「そうですね、こっちは先に手を上げていない」
鳴海「それなのにお前は解決せずに逃げ出すのか」
少年S「そこなんですよ少年N先輩、男はいつもあらゆる問題を解決しなければならないと教わって来た、もし逃げれば、その人は一瞬で弱い奴のレッテルが貼られる」
鳴海「あ、当たり前だろ、逃げるのは弱い奴のすることだ」
少年S「そういう考えが呪いなんですよ」
再び沈黙が流れる
少年S「一番理想なのは愛を持って相手に寄り添うことです、敵意を向けているようじゃ本当の意味で解決したとは言えません」
鳴海「そ、そりゃ誰だって敵意よりは愛の方がマシだと思っているさ・・・だが現実はそう甘くないだろ、自分の中の優先順位は決まっているんだ。愛する人を守らなきゃいけない時は防衛手段を選んでいる暇なんかないんだよ」
少年S「そもそもそんなのは防衛じゃないですけどね」
鳴海「お、お前の言っていることは綺麗ごとだ」
少年S「よく考えてみてください先輩、敢えて防衛手段と表現しますけど、少年N先輩のやり方で問題が解決しなかった場合、先輩と先輩の愛する人がもっと酷い目に遭うとは思わないんですか?」
鳴海「そ、そうだとだとしても俺にはこのやり方しかない」
少年S「いや、そんなことないです。もっとリーヴェを使えば賢く生きられるはずですよ」
鳴海「り、リーヴェを使えと言われたって・・・」
少年S「あんたはリーヴェと知り合いなんでしょ?」
少年Sは鳴海の肩に手を置く
少年S「(鳴海の肩に手を置いて)リーヴェの近くには、いつもヴンダーがある」
◯3088南波音高校美術室(夜)
南波音高校の美術室に一人いる鳴海
南波音高校の美術室にはテーブル、椅子、キャンバス、イーゼル、石膏像、絵の具、筆などが置いてある
南波音高校の美術室には流しがある
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
鳴海はキャンバスに向かって椅子に座っている
鳴海「あの時・・・」
◯3089◯2948の回想/鳴海の夢/道路工事前(約18年前/夜)
鳴海、由夏理、紘、風夏が工事中の道路の前にいる
道にあるお店やビルは少し古い
鳴海の髪の毛は金髪になっている
由夏理は妊娠しており、お腹が少し膨らんでいる
由夏理は右目元に痣が出来ている
由夏理の右手の爪には赤いツツジのネイルがされている
由夏理と風夏は手を繋いでいる
いきなり紘の顔面を思いっきり殴る鳴海
鳴海「(声)親父と話し合いが出来ていたら・・・」
◯3090回想戻り/南波音高校美術室(夜)
南波音高校の美術室に一人いる鳴海
南波音高校の美術室にはテーブル、椅子、キャンバス、イーゼル、石膏像、絵の具、筆などが置いてある
南波音高校の美術室には流しがある
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
鳴海はキャンバスに向かって椅子に座っている
鳴海「(少し笑って)いや・・・やっぱりそう簡単にはいかないか・・・」
少しの沈黙が流れる
少年S「先輩、どこに行ったのか思ったぞ」
南波音高校の美術室の扉の前には波音高校の制服を着た少年Sが立っている
南波音高校の美術室の中に入って来る少年S
鳴海「さっきは絡んで悪かったな」
少年S「いや、先輩が言った通りそんな簡単な世界じゃないってことは俺にも分かってるんです」
鳴海「そうか・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海「考え方が違っても面白かったぞ、共感出来る部分もあったしさ。大学の授業みたいだったよ」
少年S「そだったのか・・・」
鳴海「ん?」
少年S「少年N先輩が進学しているのが意外だったんです」
鳴海「あ、悪い、誤解させたな・・・俺は大学生ってわけじゃないんだ」
少年S「なら進学したのは少女A先輩と少年R先輩だけですか」
鳴海「誰だか知らないがイニシャルで呼ぶのはやめたらどうだ」
少年S「考えておきます」
鳴海「そりゃ考えておかない奴のセリフだぞ」
少年S「(少し笑って)そうですね」
少しの沈黙が流れる
少年S「絵でも描くんですか?」
鳴海「いや、適当に歩いてこの教室に入っただけだよ」
少年S「たまには個人的なことをするのも良いと思いますけど・・・」
鳴海「個人的なことって例えば何だ?」
少年S「花に喋りかけたり、お気に入りの内臓をフェルトで作ってみたりするのが個人的なことですよ」
鳴海「お前は何かしているのか?」
少年S「日記を付けてます」
鳴海「日記・・・?」
少年S 「昔のことを振り返れるし、その時の自分のことを思い出せるから便利なんだ」
◯3091Chapter2◯132の回想/波音高校特別教室の四/文芸部室(約一年前/放課後/夕方)
夕日が沈みかけている
波音高校の文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春
机に向かって椅子に座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春
鳴海たちの机の上にはパソコンが置いてある
20Years Diaryに日記を書いている汐莉
明日香と汐莉は話をしている
明日香「日記書いてると役に立つ?」
汐莉「自分の行動を客観的に見たり、過去を遡るっていう意味では歴史が分かるので面白いですよ。創作をしていると読み返したりして役に立ちます」
◯3092回想戻り/南波音高校美術室(夜)
南波音高校の美術室にいる鳴海と波音高校の制服を着た少年S
南波音高校の美術室にはテーブル、椅子、キャンバス、イーゼル、石膏像、絵の具、筆などが置いてある
南波音高校の美術室には流しがある
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
鳴海はキャンバスに向かって椅子に座っている
鳴海の横に立っている少年S
話をしている鳴海と少年S
少年S「(不思議そうに)どうかしました・・・?」
鳴海「い、いや、俺の知り合いにも日記を付けている奴がいてさ」
少年S「過去が分かる物は役に立ちますよ」
鳴海「そ、そうか」
少しの沈黙が流れる
少年S「俺、そろそろ寝ますけど先輩はどうしますか?」
鳴海「も、もう少しここにいるよ」
少年S「了解です。寝る時はちゃんと寮にまで戻ってくださいね」
鳴海「あ、ああ」
少年S「お休みなさい、先輩」
鳴海「お、お休み」
少年Sは美術室から出て行く
再び沈黙が流れる
鳴海は立ち上がる
絵の具と筆を取りに行く鳴海
時間経過
鳴海は絵の具でキャンバスに絵を描いている
鳴海がキャンバスに描いている向日葵
鳴海「(絵の具でキャンバスに向日葵を描きながら 声 モノローグ)向日葵はいつも教えくれる・・・俺の知らない世界を・・・」
時間経過
鳴海は変わらず絵の具でキャンバスに絵を描いている
キャンバスに描かれている向日葵は完成している
絵の具で向日葵の周りを囲むように7脚の椅子を描いている鳴海
鳴海「(絵の具で向日葵の周りを囲むように7脚の椅子を描きながら 声 モノローグ)俺たちは・・・波に背かず・・・向日葵になれる・・・」
時間経過
日が登り始めている
鳴海はキャンバスに向かって椅子に座って眠っている
鳴海の服には所々に絵の具がついて汚れている
キャンバスには一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿が描かれている
一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿が描かれている絵は、◯2631奇跡の世界の美術館に展示され鳴海とリーヴェが見ていた絵と完全に同じ
外では蝉が鳴き始める
◯3093鳴海の夢/奇跡の世界:宿舎/リーヴェの部屋(朝)
外は快晴
外は蝉が鳴いている
宿舎の中のリーヴェの部屋にいる6歳頃の鳴海とリーヴェ
リーヴェの年齢は17歳
リーヴェの部屋には勉強机とベッドがある
6歳頃の鳴海とリーヴェはベッドの上に座っている
話をしている6歳頃の鳴海とリーヴェ
鳴海「リーヴェ先生・・・メーアは俺じゃないの・・・?」
リーヴェ「鳴海が望めばメーアにもなれるよ。(少し間を開けて)だけど、あたしは鳴海がもっと凄いものになれると思うんだ」
鳴海「凄いものって・・・?」
リーヴェ「本物のヴンダーだよ」
鳴海「本物の・・・」
リーヴェ「心配ない、心配ないよ。鳴海が強く望めば、思い描いてた通りになるから」
リーヴェから鼻血が垂れる
リーヴェの部屋にいたはずの6歳頃の鳴海はいつの間にかいなくなっている
ベッドの上には一匹の小狐が座っている
リーヴェは垂れて来た鼻血を手で拭う
リーヴェ「(垂れて来た鼻血を手で拭って)言っただろ?本物って」
◯3094南波音高校美術室(日替わり/朝)
外は快晴
外は蝉が鳴いている
南波音高校の美術室にいる鳴海と波音高校の制服を着た少年S
南波音高校の美術室にはテーブル、椅子、キャンバス、イーゼル、石膏像、絵の具、筆などが置いてある
南波音高校の美術室には流しがある
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
鳴海の服には所々に絵の具がついて汚れている
鳴海はキャンバスに向かって椅子に座って眠っている
眠っている鳴海の前にあるキャンバスには一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿が油絵で描かれている
鳴海が一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿を描いた油絵は、◯2631奇跡の世界の美術館に展示され鳴海とリーヴェが見ていた油絵と完全に同じ
少年Sは鳴海がキャンバスに描いた一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿を見ている
少しの沈黙が流れる
キャンバスに描かれている汐莉に手を伸ばす少年S
眠っていた鳴海が目を覚ます
少年Sはキャンバスに描かれている汐莉に手を伸ばすのをやめる
少年S「(キャンバスに描かれている汐莉に手を伸ばすのをやめて)おはよう、先輩」
鳴海「あ、ああ・・・おはよう」
少年S「良い絵ですね」
鳴海「そうだろ」
鳴海は立ち上がる
体を伸ばす鳴海
少年S「ここで寝るなと言ったのに・・・」
鳴海「(体を伸ばして)良いんだ、絵が描けて満足したからな」
少年S「じゃあ朝ご飯を食べに行きましょう」
鳴海「いや、俺は帰るよ」
再び沈黙が流れる
少年S「ここに・・・残ることも出来ますけど・・・」
鳴海「待っている人がいるんだ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「男だから・・・女だから・・・それが言い訳だとは思わない・・・俺の母親のように苦しんでいる人がいるのも事実だ。もし身近にそういう人がいれば愛を持って接したい、ここで半日過ごしてそう思うようになったよ。(少し間を開けて)だけど俺は・・・俺なりに真面目に生きていたい・・・性別や受けて来た教育を理由に普通の暮らしを諦めたくない・・・ガキの頃から家族で幸せに暮らすのが夢だったんだ。だからさ、愛する人のために一生懸命でいようと思う。せめてそうするのが正しいんじゃないかって思えるんだ」
再び沈黙が流れる
少年S「ごめんなさい・・・先輩・・・」
鳴海「何で謝るんだよ」
少年S「先輩が正しいことをしたいと思ったように・・・俺も正しいことをしたくなりました・・・」
鳴海「お前はここで十分良い行いをしているじゃないか」
少年S「違うんです先輩・・・本当は他にもっと正しいことが出来たかもしれなくて・・・」
鳴海「気にするなよ、正しいことなんてこれからいくらでも出来る機会があるんだからさ」
少年S「先輩・・・」
鳴海「あ、ああ」
少年S「俺の本名は・・・南涼って言うんだ・・・」
◯3095Chapter6◯1112の回想/波音高校体育館/クリスマスパーティー会場(夜)
波音高校の体育館にいる鳴海、汐莉、響紀、詩穂、真彩、双葉、細田、神谷
波音高校の体育館はクリスマスの装飾がされ、ステージにはピアノとクリスマスツリーが置いてある
ピアノにはマイクがつけられてある
体育館の壁沿いには大きなテーブルが並べられてあり、その上にはチキン、ピラフ、キッシュ、サラダ、ローストビーフ、クリスマスケーキ、クッキー、チョコレート、ポテトチップス、ジュース類などのたくさんの飲食物と取り皿、スプーン、フォークが置いてある
鳴海と汐莉は飲食物が置いてあるテーブルの近くにいる
響紀、詩穂、真彩、双葉、細田、神谷などを含む大勢の人が鳴海と汐莉のことを見ている
体育館には鳴海たちの他にもたくさんの着飾った生徒たちがいる
汐莉は泣いている
汐莉は紺色の、詩穂は水色の、真彩はベージュ色のパーティー用ドレスをそれぞれ着ている
鳴海はスーツ姿で袖をまくっており、スーツの下に着ているワイシャツの裾をズボンから出している
響紀はタキシードを着ている
体育科の中は静かで、スピーカーから流れるクリスマスソングが響いている
汐莉「(泣きながら大きな声で)先輩もいつか私みたいに苦しめば良い!!!!好きな人たちに見放される痛みを知って後悔してください!!!!先輩の人生なんか私が呪ってやりますから!!!!」
どこからか波の音が聞こえて来る
汐莉の瞳には滅びかけた世界の緋空浜の浜辺で一人掃除をしている老人の姿が映っている
汐莉の瞳に映っている滅びかけた世界の緋空浜は様々なゴミで溢れている
汐莉の瞳に映っている老人はトングでゴミを拾っている
汐莉の瞳に映っている滅びかけた世界の緋空浜の波が荒れている
波の音は鳴海と汐莉にしか聞こえていない
涙を流す鳴海
◯3096回想戻り/南波音高校美術室(朝)
外は蝉が鳴いている
南波音高校の美術室にいる鳴海と波音高校の制服を着た少年S
南波音高校の美術室にはテーブル、椅子、キャンバス、イーゼル、石膏像、絵の具、筆などが置いてある
南波音高校の美術室には流しがある
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
鳴海の服には所々に絵の具がついて汚れている
鳴海と少年Sの前にはキャンバスがある
鳴海と少年Sの前にあるキャンバスには一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿が描かれている
鳴海が一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿を描いた油絵は、◯2631奇跡の世界の美術館に展示され鳴海とリーヴェが見ていた油絵と完全に同じ
話をしている鳴海と少年S
鳴海「み、南・・・?」
少年S「はい・・・南涼です・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「な、懐かしさを感じる・・・い、良い名前じゃないか涼」
少年S「鳴海先輩のことも、前から良い名前だと思ってました」
鳴海「ど、どうして俺の名前を・・・」
少年S「(少し笑って)俺たち、部活仲間だったでしょ?」
再び沈黙が流れる
鳴海「そ、そうだな・・・(少し間を開けて)教えてくれてありがとう」
少年S「いや、こちらこそ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「またなはおかしいか・・・」
少年S「でもどこかでまた会えるかも」
鳴海「そ、そうだよな」
少年S「俺と会えなくても、きっと俺とそっくりな人とは会えますよ」
鳴海「な、なら涼も俺のそっくりさんに会えるさ」
少年S「うん、そう信じてます」
再び沈黙が流れる
少年S「鳴海先輩、幸運を祈ってますよ」
鳴海「チャオ・・・涼・・・」
◯3097鳴海の夢/波音高校美術室(約一年前/放課後/夕方)
外は蝉が鳴いている
夕日が沈みかけている
約一年前の波音高校の美術室にいる鳴海と汐莉
汐莉の年齢は15歳
波音高校の美術室にはテーブル、椅子、キャンバス、イーゼル、石膏像、絵の具、筆などが置いてある
波音高校の美術室には流しがある
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
鳴海と汐莉は波音高校の制服を着ている
鳴海の制服には所々に絵の具がついて汚れている
鳴海はキャンバスに向かって椅子に座っている
鳴海の前にあるキャンバスには一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿が描かれている
鳴海が一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿を描いた油絵は、◯2631奇跡の世界の美術館に展示され鳴海とリーヴェが見ていた油絵と完全に同じ
汐莉は鳴海がキャンバスに描いた一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿を見ている
汐莉「(鳴海がキャンバスに描いた一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿を見ながら)鳴海先輩が絵を描くなんてちょっと意外でした」
鳴海「父親が得意だったんだ」
汐莉「(鳴海がキャンバスに描いた一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿を見ながら)先輩にもその才能が受け継がれているわけですね」
鳴海「(少し笑って)才能があったら文芸部じゃなくて美術部に入っていたけどな」
汐莉は鳴海がキャンバスに描いた一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿を見るのをやめる
汐莉「(鳴海がキャンバスに描いた一輪の向日葵と、向日葵を囲むように7脚の椅子を円の形に並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音の姿を見るのをやめて)今から掛け持ちしたらどうですか?」
鳴海「(少し笑いながら)そりゃ無理な話だろ」
汐莉「どうしてです?せっかく絵が上手いのに」
鳴海「(少し笑いながら)俺の居場所は文芸部だからだ」
◯3098ゴルフ練習場/2階(昼前)
空は曇っている
蝉が鳴いている
ゴルフ練習場の2階にいる鳴海と龍造
ゴルフ練習場は2階建てになっていて、たくさんの打席がある
ゴルフ練習場の打席は自動でゴルフボールがティーアップされるようになっている
ゴルフ練習場の打席の隣にはオートティーアップ機が設置されている
ゴルフ練習場は広く、ボールが出ないようにネットで囲われている
ゴルフ練習場にはグリーン、バンカー、ホールが設置されており、たくさんの人が打ちっぱなしの練習を行っている
ゴルフ練習場の打席の後ろにはベンチがある
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
鳴海の服には所々に絵の具がついて汚れている
ベンチに座って眠っている鳴海
龍造はグローブを手につけている
龍造はゴルフウェアを着て帽子を被っている
ベンチには鳴海のドライバー、龍造の7番アイアンが立て掛けてある
ベンチの上には鳴海のグローブが置いてある
ベンチで眠っている鳴海を起こそうとしている龍造
龍造「鳴海くん、ゴルフ練習場で寝るのはまずいよ」
龍造はベンチで眠っている鳴海の体を揺さぶる
龍造「(ベンチで眠っている鳴海の体を揺さぶって)出禁になる前に起きるんだ、鳴海くん」
少しすると龍造に体を揺さぶられていた鳴海が目を覚ます
龍造は鳴海の体を揺さぶるのをやめる
鳴海「俺・・・寝てました・・・?」
龍造「もう爆睡だよ。打ちっぱなしを始める前から寝てるんだから」
鳴海「いや・・・龍さんさっき打ってたじゃないですか」
龍造「えっ?僕が?」
鳴海「人生は放物線でゴルフボールと対話をするとか訳の分からないことを言いながら打ってましたよ」
龍造「いや、でもまだ一球も触れてないんだけどな・・・」
鳴海「なら今まで何をやってたんすか?」
龍造「ボールが詰まっちゃってたみたいで、それの調整だよ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「龍さん」
龍造「うん」
鳴海「今度こそ帰りませんか」
龍造「まだ打ちっぱなしに来て20分だけど・・・」
鳴海「俺、多分ゴルフとか向いてません」
龍造「いや、しかし貴重な休日を義理の兄弟水入らずで過ごせることになったんだから、せめてもう少しは・・・」
鳴海「(龍造の話を遮って)俺、いちごのアイスが乗ったパフェが食べたいっす」
龍造「い、いちごの?」
鳴海「はい、そういうわけだから早く菜摘たちと合流しちゃいましょう」
鳴海は立ち上がる
◯3099波音ショッピングモール/カフェ(昼過ぎ)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
波音ショッピングモールの中のカフェにいる鳴海、菜摘、風夏、龍造
テーブルに向かって椅子に座っている鳴海、菜摘、風夏、龍造
波音ショッピングモールの中のカフェには鳴海たちの他にも家族連れやカップルなどたくさんの客がいる
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
鳴海の服には所々に絵の具がついて汚れている
鳴海と菜摘はいちご味のアイスが乗ったパフェ、風夏はバニラアイスが乗ったパフェ、龍造はチョコレートアイスが乗ったパフェを食べている
バニラアイスが乗ったパフェを一口食べる風夏
風夏「(バニラアイスが乗ったパフェを一口食べて)もー、美味しいランチを食べてこれからデザートって時に何で落ち合おうとするのかなー」
鳴海「ゴルフボールは食べられないけどパフェは食べられるだろ」
菜摘「鳴海くん、お腹が空いていたの?」
鳴海「俺はいちご味のアイスが食べたかったんだ」
風夏「何それ、スイーツ男子化した感じ?」
鳴海「ゴルフボールは食べられないけどパフェは食べられるだろ」
風夏「いや、さっきも聞いたけど意味不明だからね?というか鳴海、なんか服に絵の具みたいなのついてない?」
鳴海はいちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べる
鳴海「(いちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べて)気にするな、これはただの絵の具だ」
風夏「やっぱり絵の具じゃん!!何でゴルフに行って服に絵を描いて来るのかお姉ちゃんは謎で仕方が・・・」
龍造「(風夏の話を遮って)ま、まあまあ。つまり疲れると甘い物が摂取したくなるってことだよね」
鳴海「そうっす、それに菜摘がテレビを欲しがっているんじゃないかと思ったし」
菜摘「テレビ?」
鳴海「ああ」
菜摘「私、テレビは別に欲しくないよ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「じゃあ姉貴だな、最新の8Kテレビを狙っているのは」
風夏「8じゃなくて良いって、4だったらちょっと欲しいけど」
龍造「えっ?やっぱり風夏テレビが欲しいの?」
風夏「大きい画面でドラマが見たくてさ〜」
鳴海「やっぱりな」
菜摘はいちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べる
菜摘「(いちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べて)食べ終わったら電気屋さんに行ってみますか?」
風夏「んー、龍ちゃんはテレビいる?」
龍造「あったらもちろん使うけど・・・」
風夏「ならこの後見てみるか・・・」
龍造はチョコレートアイスが乗ったパフェを一口食べる
龍造「(チョコレートアイスが乗ったパフェを一口食べて)ついでにVRを見て回りたいな、鳴海くんとゴルフのシミュ・・・」
鳴海「(龍造の話を遮って)俺、ゴルフはもう引退します」
菜摘「続けたらハマるかもしれないのに良いの?鳴海くん」
鳴海「別の趣味が出来たからな」
風夏「スロット?」
鳴海「ちげえよ」
風夏「そうなんだ。じゃあパチ・・・」
鳴海「(風夏の話を遮って)言っておくがパチンコでもないぞ」
龍造は再びチョコレートアイスが乗ったパフェを一口食べる
龍造「(チョコレートアイスが乗ったパフェを一口食べて)賭けごとをしないのは良いことじゃないか、鳴海くんは堅実だね」
鳴海はいちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べる
鳴海「(いちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べて)そうなんすよ、俺は堅実だからそういう遊びはしません」
菜摘「賭けごと弱そうだもんね、鳴海くん」
鳴海「し、しないだけで別に弱くはない」
菜摘「そうなの・・・?」
鳴海「た、宝くじだって俺が本気を出せば5億くらい簡単に当たるぞ」
菜摘「お金が勿体無いから試しに買ってみてとは言わないよ鳴海くん」
再び沈黙が流れる
龍造「菜摘ちゃんは鳴海くんよりも堅実だな」
菜摘はいちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べる
菜摘「(いちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べて)鳴海くんは少しだけふざけていますから」
鳴海「少しくらいなら許されるだろ」
風夏はバニラアイスが乗ったパフェを一口食べる
風夏「(バニラアイスが乗ったパフェを一口食べて)鳴海の母親はスロットとかパチンコが得意だったけど、鳴海はそこまで器用じゃないからやらないでおきなさい。お姉ちゃんには手を取るように分かるからね、鳴海が破滅するって」
少しの沈黙が流れる
鳴海「な、菜摘、ワンプレイだけ試してみて・・・」
菜摘「(鳴海の話を遮って)ダメ」
菜摘はいちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べる
菜摘「(いちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べて)私にも鳴海くんが破滅するのが分かるもん」
鳴海「ほ、本当にそうなるか実験的に決められた金額で・・・」
菜摘「(鳴海の話を遮って)ダメなものはダメだよ」
風夏「売り言葉に買い言葉じゃないけどさ、鳴海はすぐに乗せられ過ぎなんだって」
鳴海「菜摘と姉貴がボロクソに・・・」
菜摘「(鳴海の話を遮って)言葉使い」
鳴海「と、とにかく菜摘と姉貴が酷い言い方をするからだろ」
風夏「鳴海、喧嘩を売られても買ったりしないでね?」
鳴海「(少し笑って)お、おいおい、昨日までの俺だったら売られた喧嘩を買うことしか頭になかったが、今日の俺は一味、いや、三味も違うんだぞ」
菜摘「鳴海くん、喧嘩を買わないでいられるの?」
鳴海「あ、当たり前だろ」
鳴海はいちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べる
鳴海「(いちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べて)喧嘩を買うどころか、喧嘩を売って来た奴の彼女探しまで手伝ってやるくらいだからな」
再び沈黙が流れる
風夏「喧嘩を売って来た奴の彼女を探す・・・?」
鳴海「あ、ああ」
風夏「(呆れて)どんな超展開を迎えたらそんな意味不明なことが起きるのやら・・・」
鳴海「だ、大事なのは展開よりも争わないことだろ」
少しの沈黙が流れる
菜摘「ただ喧嘩を買いませんっていうので良いと思うよ・・・」
鳴海「いや、最後まで面倒を見ることで相手も救われるんだ」
龍造「確かに男なら喧嘩相手の面倒を見ることで芽生える友情も・・・」
風夏「(龍造の話を遮って)共感しないで龍ちゃん」
龍造「はい・・・」
鳴海は再びいちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べる
鳴海「(いちご味のアイスが乗ったパフェを一口食べて 声 モノローグ)なんだか少しだけ自分の視野が広がったようなが気がした」
◯3100波音ショッピングモール/アクセサリーショップ(昼過ぎ)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
波音ショッピングモールの中のアクセサリーショップにいる鳴海
波音ショッピングモールの中のアクセサリーショップには鳴海の他にも数人の客がいる
波音ショッピングモールの中のアクセサリーショップにはショーウィンドウがある
ショーウィンドウにはネックレス、指輪、ピアス、イヤリング、ブレスレットなどのシルバーアクセサリーが展示されている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
鳴海の服には所々に絵の具がついて汚れている
鳴海はショーウィンドウの中に展示されている指輪を見ている
鳴海「(ショーウィンドウの中に展示されている指輪を見ながら 声 モノローグ)考え方が違う人との対話も、それはそれで良いことなのかもしれない」
アクセサリーショップの少し離れたところには菜摘がいる
アクセサリーショップの中にいる鳴海のことを見ている菜摘
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
菜摘の髪の毛は金髪になっている
ショーウィンドウの中に展示されている指輪を見ている鳴海は、アクセサリーショップの少し離れたところから菜摘に見られていることに気付いていない
◯3101貴志家鳴海の自室(日替わり/朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
鳴海の部屋にいる鳴海と菜摘
鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない
机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラ、くしゃくしゃになったてるてる坊主、フレームに入った一枚の写真、◯2091の結婚式会場/披露宴場で鳴海と菜摘が風夏に抱き寄せられて写っている写真、菜摘がクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレット、水族館のガチャガチャで手に入れたダイオウグソクムシのフィギュア、ミズクラゲのフィギュア、菜摘が鳴海にプレゼントしたイルカのぬいぐるみ、◯2377の鳴海の夢のダイナーで由夏理が紙ナプキンに可愛く描いた二頭身の鳴海の絵、”鳴海くんとしたいことリスト”のノートが置いてある
机の上のてるてる坊主には顔が描かれている
机の上のフレームに入った一枚の写真には、ホテルらしき披露宴場で水色のウェディングドレスを着た20歳頃の由夏理と、タキシードを着た同じく20歳頃の紘が写っている
机の上のフレームに入った一枚の写真は、◯2097で約30年前に潤が披露宴場で由夏理と紘を撮った時の物
机の上の◯2091の結婚式会場/披露宴場で鳴海と菜摘が風夏に抱き寄せられて写っている写真には、手書きの赤い文字で”我が愛する弟と妹に幸あれ❤︎”と書かれている
机の上の◯2091の結婚式会場/披露宴場で鳴海と菜摘が風夏に抱き寄せられて写っている写真は、滅びかけた世界の老人が持っている写真と完全に同じ
机の上のノートの表紙には大きな字で”鳴海くんとしたいことリスト”と書かれてある
菜摘はベッドの上で横になっている
ベッドの上で眠っている鳴海
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には痣がある
菜摘は体を起こす
隣で眠っている鳴海のことを見る菜摘
少しの沈黙が流れる
菜摘「(隣で眠っている鳴海のことを見て)鳴海くん、もう朝だよ」
再び沈黙が流れる
菜摘「(隣で眠っている鳴海のことを見たまま)せっかくの日曜日なんだし早く起きて遊びに行かない?」
鳴海は全く起きる気配がない
菜摘は隣で眠っている鳴海のことを見るのをやめる
ベッドから降りる菜摘
◯3102貴志家キッチン(朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
キッチンにいる菜摘
キッチンのコンロの上には雪平鍋があり、味噌汁が作られてある
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
菜摘の髪の毛は金髪になっている
菜摘は味噌汁を煮ている
味噌汁を煮ながらキャンディーズの”やさしい悪魔”を鼻歌で歌っている菜摘
少しすると菜摘は”やさしい悪魔”を鼻歌で歌いながら味噌汁を煮ていたコンロの火を弱める
”やさしい悪魔”を鼻歌で歌いながら冷蔵庫の冷凍室を開ける菜摘
冷蔵庫の冷凍室の中には冷凍のコロッケやハンバーグ、◯1896の鳴海が残した椎茸のバター醤油焼きなどがある
◯1896の鳴海が残した椎茸のバター醤油焼きは、◯1896で菜摘が作った物の残り
菜摘は”やさしい悪魔”を鼻歌で歌いながら◯1896の鳴海が残してタッパーに入れた椎茸のバター醤油焼きを見る
◯1896の鳴海が残してタッパーに入れた椎茸のバター醤油焼きを見たまま”やさしい悪魔”を鼻歌で歌うのをやめる菜摘
少しの沈黙が流れる
菜摘は◯1896の鳴海が残してタッパーに入れた椎茸のバター醤油焼きを見るのをやめる
冷蔵庫の冷凍室を閉じる菜摘
菜摘はキャンディーズの”やさしい悪魔”を歌い始める
菜摘「(“やさしい悪魔”を歌いながら)あの人は悪魔・・・私を虜に・・・」
◯3103貴志家リビング(朝)
外は曇っている
外は蝉が鳴いている
リビングに一人いる菜摘
菜摘はテーブルに向かって椅子に座っている
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
菜摘の髪の毛は金髪になっている
テーブルの上にはおにぎり、ベーコン、卵焼き、サラダが置いてある
テレビのニュースを見ている菜摘
ニュースキャスター4「ロシア国内では度重なるテロ攻撃による影響で・・・」
時間経過
昼過ぎになっている
外は雨が降っている
菜摘は変わらずテーブルに向かって椅子に座っている
テーブルの上のおにぎり、ベーコン、卵焼き、サラダは朝から変わっていないままの状態で置いてある
菜摘は手で口を押さえて激しく咳き込んでいる
菜摘「(手で口を押さえて激しく咳き込みながら)ゲホッ・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・」
少しすると菜摘の咳が落ち着いて止まる
菜摘は手で口を押さえるのをやめる
菜摘の手には大量の血がついている
菜摘は急いでキッチンに行く
水道で手についた大量の血を洗い落とす菜摘
◯3104Chapter6◯1538の回想/緋空寺/境内(昼過ぎ)
緋空寺の境内にいる菜摘と早季
緋空寺は人の手入れが全くされていない
緋空寺の屋根の一部分は壊れている
雑草が生い茂り、かつて舗装されていたであろう道は砂利で荒れ果てている
手水舎に水は入っていない
緋空寺の賽銭箱はひっくり返っている
菜摘の前には吐き出した大量の血がある
膝をつき菜摘から顔を背けている波音高校の制服姿の早季
真っ二つに折れた赤黒く光る早季の刀が賽銭箱の横に落ちている
真っ二つに折れた赤黒く光る早季の刀からは煙が出ている
菜摘の足元の少し後ろでは水溜まりが出来ている
話をしている菜摘と早季
早季「(膝をついたまま菜摘から顔を背けて)私はもう菜摘を必要としないことにします・・・菜摘、この次に私と出会った時、あなたは命を落とすでしょう・・・私のことを死神や魔女と言った類の存在だと思い込みながら・・・その愚かな瞳から涙を流して・・・21グラムを失うのです・・・」
◯3105回想戻り/貴志家キッチン(昼過ぎ)
外は雨が降っている
キッチンにいる菜摘
キッチンのコンロの上には雪平鍋があり、味噌汁が出来ている
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
菜摘の髪の毛は金髪になっている
菜摘の手には大量の血がついている
急いで手についた大量の血を水道水で洗い落とそうとしている菜摘
菜摘は急いで手についた大量の血を水道水で洗い落とそうとしているが、菜摘の手についた大量の血はほとんど洗い落とせていない
シンクの中に水が溜まり始める
シンクの中に溜まった水には両目が真っ黒になった早季の姿が反射して映っている
シンクの中に溜まった水に反射して映っている早季の真っ黒な両目と、急いで手についた大量の血を水道水で洗い落とそうとしている菜摘の目が合う
菜摘は手についた大量の血を水道水で洗い落とそうとするのをやめて振り返る
菜摘「(振り返って大きな声で)こ、来ないで!!!!」
菜摘の後ろには誰もいない
少しの沈黙が流れる
菜摘は膝をついて激しく咳き込む
菜摘「(膝をついたまま激しく咳き込んで)ゲホッ・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・まだ・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・ま、まだ死ぬもんか・・・」
シンクの中に溜まっている水に反射して映っていたはずの両目が真っ黒になった早季は消えている
菜摘「(膝をついたまま激しく咳き込んで)ゲホッ・・・ゲホッ・・・」
膝をついたまま激しく咳き込んでいる菜摘の両目、鼻、耳、口から血が垂れ流れる
菜摘「(膝をついたまま激しく咳き込み両目、鼻、耳、口から血が垂れ流れて)ゲホッ・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・い、嫌だ・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・ま、まだ・・・し、死にたくない・・・ゲホッ・・・」
菜摘は激しく咳き込み両目、鼻、耳、口から血を垂れ流しながらその場に倒れる
◯3106波音婦人病院/超音波検査室(昼過ぎ)
外は雨が降っている
波音婦人病院の超音波検査室にいる神谷絵美と医者
超音波検査室にはベッド、モニター付きの超音波検査機器、椅子がある
絵美は妊娠しており、お腹が膨らんでいる
絵美はベッドに横になり、超音波検査を受けている
絵美のお腹にプローブを当てて超音波検査を行っている医者
超音波検査機器のモニターには絵美のお腹の中にいる胎児の神谷七海の姿が映し出されている
医者「(絵美のお腹にプローブを当てて超音波検査を行いながら)元気な女の子ですよ」
絵美は超音波検査機器のモニターに映し出されている胎児の七海の姿を見る




