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Chapter7♯46 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く

向日葵が教えてくれる、波には背かないで


Chapter7 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く


登場人物


貴志 鳴海(なるみ) 19歳男子

Chapter7における主人公。昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の副部長として合同朗読劇や部誌の制作などを行っていた。波音高校卒業も無鉄砲な性格と菜摘を一番に想う気持ちは変わっておらず、時々叱られながらも菜摘のことを守ろうと必死に人生を歩んでいる。後に鳴海は滅びかけた世界で暮らす老人へと成り果てるが、今の鳴海はまだそのことを知る由もない。


早乙女 菜摘(なつみ) 19歳女子

Chapter7におけるもう一人の主人公でありメインヒロイン。鳴海と同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の部長を務めていた。病弱だが性格は明るく優しい。鳴海と過ごす時間、そして鳴海自身の人生を大切にしている。鳴海や両親に心配をかけさせたくないと思っている割には、危なっかしい場面も少なくはない。輪廻転生によって奇跡の力を引き継いでいるものの、その力によってあらゆる代償を強いられている。


貴志 由夏理(ゆかり)

鳴海、風夏の母親。現在は交通事故で亡くなっている。すみれ、潤、紘とは同級生で、高校時代は潤が部長を務める映画研究会に所属していた。どちらかと言うと不器用な性格な持ち主だが、手先は器用でマジックが得意。また、誰とでも打ち解ける性格をしている


貴志 (ひろ)

鳴海、風夏の父親。現在は交通事故で亡くなっている。由夏理、すみれ、潤と同級生。波音高校生時代は、潤が部長を務める映画研究会に所属していた。由夏理以上に不器用な性格で、鳴海と同様に暴力沙汰の喧嘩を起こすことも多い。


早乙女 すみれ 46歳女子

優しくて美しい菜摘の母親。波音高校生時代は、由夏理、紘と同じく潤が部長を務める映画研究会に所属しており、中でも由夏理とは親友だった。娘の恋人である鳴海のことを、実の子供のように気にかけている。


早乙女 (じゅん) 47歳男子

永遠の厨二病を患ってしまった菜摘の父親。歳はすみれより一つ上だが、学年は由夏理、すみれ、紘と同じ。波音高校生時代は、映画研究会の部長を務めており、”キツネ様の奇跡”という未完の大作を監督していた。


貴志/神北 風夏(ふうか) 25歳女子

看護師の仕事をしている6つ年上の鳴海の姉。一条智秋とは波音高校時代からの親友であり、彼女がヤクザの娘ということを知りながらも親しくしている。最近引越しを決意したものの、引越しの準備を鳴海と菜摘に押し付けている。引越しが終了次第、神北龍造と結婚する予定。


神北(かみきた) 龍造(りゅうぞう) 25歳男子

風夏の恋人。緋空海鮮市場で魚介類を売る仕事をしている真面目な好青年で、鳴海や菜摘にも分け隔てなく接する。割と変人が集まりがちの鳴海の周囲の中では、とにかく普通に良い人とも言える。因みに風夏との出会いは合コンらしい。


南 汐莉(しおり) 16歳女子

Chapter5の主人公でありメインヒロイン。鳴海と菜摘の後輩で、現在は波音高校の二年生。鳴海たちが波音高校を卒業しても、一人で文芸部と軽音部のガールズバンド”魔女っ子の少女団”を掛け持ちするが上手くいかず、叶わぬ響紀への恋や、同級生との距離感など、様々な問題で苦しむことになった。荻原早季が波音高校の屋上から飛び降りる瞬間を目撃して以降、”神谷の声”が頭から離れなくなり、Chapter5の終盤に命を落としてしまう。20Years Diaryという日記帳に日々の出来事を記録していたが、亡くなる直前に日記を明日香に譲っている。


一条 雪音(ゆきね) 19歳女子

鳴海たちと同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部に所属していた。才色兼備で、在学中は優等生のふりをしていたが、その正体は波音町周辺を牛耳っている組織”一条会”の会長。本当の性格は自信過剰で、文芸部での活動中に鳴海や嶺二のことをよく振り回していた。完璧なものと奇跡の力に対する執着心が人一倍強い。また、鳴海たちに波音物語を勧めた張本人でもある。


伊桜(いざくら) 京也(けいや) 32歳男子

緋空事務所で働いている生真面目な鳴海の先輩。中学生の娘がいるため、一児の父でもある。仕事に対して一切の文句を言わず、常にノルマをこなしながら働いている。緋空浜周囲にあるお店の経営者や同僚からの信頼も厚い。口下手なところもあるが、鳴海の面倒をしっかり見ており、彼の”メンター”となっている。


荻原 早季(さき) 15歳(?)女子

どこからやって来たのか、何を目的をしているのか、いつからこの世界にいたのか、何もかもが謎に包まれた存在。現在は波音高校の新一年生のふりをして、神谷が受け持つ一年六組の生徒の中に紛れ込んでいる。Chapter5で波音高校の屋上から自ら命を捨てるも、その後どうなったのかは不明。


瑠璃(るり)

鳴海よりも少し歳上で、極めて中性的な容姿をしている。鳴海のことを強く慕っている素振りをするが、鳴海には瑠璃が何者なのかよく分かっていない。伊桜同様に鳴海の”メンター”として重要な役割を果たす。


来栖(くるす) (まこと) 59歳男子

緋空事務所の社長。


神谷 志郎(しろう) 44歳男子

Chapter5の主人公にして、汐莉と同様にChapter5の終盤で命を落としてしまう数学教師。普段は波音高校の一年六組の担任をしながら、授業を行っていた。昨年度までは鳴海たちの担任でもあり、文芸部の顧問も務めていたが、生徒たちからの評判は決して著しくなかった。幼い頃から鬱屈とした日々を過ごして来たからか、発言が支離滅裂だったり、感情の変化が激しかったりする部分がある。Chapter5で早季と出会い、地球や子供たちの未来について真剣に考えるようになった。


貴志 希海(のぞみ) 女子

貴志の名字を持つ謎の人物。


三枝 琶子(わこ) 女子

“The Three Branches”というバンドを三枝碧斗と組みながら、世界中を旅している。ギター、ベース、ピアノ、ボーカルなど、どこかの響紀のようにバンド内では様々なパートをそつなくこなしている。


三枝 碧斗(あおと) 男子

“The Three Branches”というバンドを琶子と組みながら、世界中を旅している、が、バンドからベースとドラムメンバーが連続で14人も脱退しており、なかなか目立った活動が出来てない。どこかの響紀のようにやけに聞き分けが悪いところがある。


有馬 千早(ちはや) 女子

ゲームセンターギャラクシーフィールドで働いている、千春によく似た店員。


太田 美羽(みう) 30代後半女子

緋空事務所で働いている女性社員。


目黒 哲夫(てつお) 30代後半男子

緋空事務所で働いている男性社員。


一条 佐助(さすけ) 男子

雪音と智秋の父親にして、”一条会”のかつての会長。物腰は柔らかいが、多くのヤクザを手玉にしていた。


一条 智秋(ちあき) 25歳女子

雪音の姉にして風夏の親友。一条佐助の死後、若き”一条会”の会長として活動をしていたが、体調を崩し、入院生活を強いられることとなる。智秋が病に伏してから、会長の座は妹の雪音に移行した。


神谷 絵美(えみ) 30歳女子

神谷の妻、現在妊娠中。


神谷 七海(ななみ) 女子

神谷志郎と神谷絵美の娘。


天城 明日香(あすか) 19歳女子

鳴海、菜摘、嶺二、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。お節介かつ真面目な性格の持ち主で、よく鳴海や嶺二のことを叱っていた存在でもある。波音高校在学時に響紀からの猛烈なアプローチを受け、付き合うこととなった。現在も、保育士になる資格を取るために専門学校に通いながら、響紀と交際している。Chapter5の終盤にて汐莉から20Years Diaryを譲り受けたが、最終的にその日記は滅びかけた世界のナツとスズの手に渡っている。


白石 嶺二(れいじ) 19歳男子

鳴海、菜摘、明日香、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。鳴海の悪友で、彼と共に数多の悪事を働かせてきたが、実は仲間想いな奴でもある。軽音部との合同朗読劇の成功を目指すために裏で奔走したり、雪音のわがままに付き合わされたりで、意外にも苦労は多い。その要因として千春への恋心があり、消えてしまった千春との再会を目的に、鳴海たちを様々なことに巻き込んでいた。現在は千春への想いを心の中にしまい、上京してゲーム関係の専門学校に通っている。


三枝 響紀(ひびき) 16歳女子

波音高校に通う二年生で、軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”のリーダー。愛する明日香関係のことを含めても、何かとエキセントリックな言動が目立っているが、音楽的センスや学力など、高い才能を秘めており、昨年度に行われた文芸部との合同朗読劇でも、あらゆる分野で多大な(?)を貢献している。


永山 詩穂(しほ) 16歳女子

波音高校に通う二年生、汐莉、響紀と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はベース。メンタルが不安定なところがあり、Chapter5では色恋沙汰の問題もあって汐莉と喧嘩をしてしまう。


奥野 真彩(まあや) 16歳女子

波音高校に通う二年生、汐莉、響紀、詩穂と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はドラム。どちらかと言うと我が強い集まりの魔女っ子少女団の中では、比較的協調性のある方。だが食に関しては我が強くなる。


双葉 篤志(あつし) 19歳男子

鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音と元同級生で、波音高校在学中は天文学部に所属していた。雪音とは幼馴染であり、その縁で”一条会”のメンバーにもなっている。


井沢 由香(ゆか)

波音高校の新一年生で神谷の教え子。Chapter5では神谷に反抗し、彼のことを追い詰めていた。


伊桜 真緒(まお) 37歳女子

伊桜京也の妻。旦那とは違い、口下手ではなく愛想良い。


伊桜 陽芽乃(ひめの) 13歳女子

礼儀正しい伊桜京也の娘。海亜中学校という東京の学校に通っている。


水木 由美(ゆみ) 52歳女子

鳴海の伯母で、由夏理の姉。幼い頃の鳴海と風夏の面倒をよく見ていた。


水木 優我(ゆうが) 男子

鳴海の伯父で、由夏理の兄。若くして亡くなっているため、鳴海は面識がない。


鳴海とぶつかった観光客の男 男子

・・・?


少年S 17歳男子

・・・?


サン 女子

・・・?


ミツナ 19歳女子

・・・?


X(えっくす) 25歳女子

・・・?


Y(わい) 25歳男子

・・・?


ドクターS(どくたーえす) 19歳女子

・・・?


シュタイン 23歳男子

・・・?






伊桜の「滅ばずの少年の物語」に出て来る人物


リーヴェ 17歳?女子

奇跡の力を宿した少女。よくいちご味のアイスキャンディーを食べている。


メーア 19歳?男子

リーヴェの世界で暮らす名も無き少年。全身が真っ黒く、顔も見えなかったが、リーヴェとの交流によって本当の姿が現れるようになり、メーアという名前を手にした。


バウム 15歳?男子

お願いの交換こをしながら旅をしていたが、リーヴェと出会う。


盲目の少女 15歳?女子

バウムが旅の途中で出会う少女。両目が失明している。


トラオリア 12歳?少女

伊桜の話に登場する二卵性の双子の妹。


エルガラ 12歳?男子

伊桜の話に登場する二卵性の双子の兄。






滅びかけた世界


老人 男子

貴志鳴海の成れの果て。元兵士で、滅びかけた世界の緋空浜の掃除をしながら生きている。


ナツ 女子

母親が自殺してしまい、滅びかけた世界を1人で彷徨っていたところ、スズと出会い共に旅をするようになった。波音高校に訪れて以降は、掃除だけを繰り返し続けている老人のことを非難している。


スズ 女子

ナツの相棒。マイペースで、ナツとは違い学問や過去の歴史にそれほど興味がない。常に腹ペコなため、食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。


柊木 千春(ちはる) 15、6歳女子

元々はゲームセンターギャラクシーフィールドにあったオリジナルのゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”に登場するヒロインだったが、奇跡によって現実にやって来る。Chapter2までは波音高校の一年生のふりをして、文芸部の活動に参加していた。鳴海たちには学園祭の終了時に姿を消したと思われている。Chapter6の終盤で滅びかけた世界に行き、ナツ、スズ、老人と出会っている。

Chapter7♯46 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く


◯3107貴志家リビング(昼過ぎ)

 外は雨が降っている

 テーブルの上にはおにぎり、ベーコン、卵焼き、サラダが置いてある

 キッチンでは両目、鼻、耳、口から血が垂れ流している菜摘が意識を失って倒れている

 菜摘は痩せている

 菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている

 菜摘の髪の毛は金髪になっている

 少しすると鳴海がリビングにやって来る

 鳴海の髪の毛は金髪になっている 

 鳴海の顔面には痣がある

 鳴海の髪の毛は寝癖がついてボサボサになっている

 あくびをする鳴海


鳴海「(あくびをしながら)日曜なのに早いな・・・菜摘は・・・」


 少しの沈黙が流れる

 鳴海は菜摘がキッチンで両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失って倒れていることに気付く


鳴海「(菜摘がキッチンで両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失って倒れていることに気付いて)な、菜摘!?」


 鳴海はキッチンで両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失って倒れている菜摘の元へ駆け寄る


鳴海「(キッチンで両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失って倒れている菜摘の元へ駆け寄って)し、しっかりしろ菜摘!!」


 菜摘の顔面は青白くなっており、完全に意識がない


◯3108回想/貴志家洗面所(約8年前/昼過ぎ)

 外は雨が降っている

 洗面所では40歳頃の由夏理が泡を吹き意識を失って倒れている

 由夏理の周りにはたくさんの睡眠薬の箱が転がっている

 あくびをしながら洗面所にやって来る10歳頃の鳴海

 10歳頃の鳴海の髪の毛は寝癖がついてボサボサになっている


鳴海「(あくびをしながら)日曜日なのにお姉ちゃんが朝から音楽を鳴らしててうるさいんだよ・・・」


 少しの沈黙が流れる

 10歳頃の鳴海は由夏理が泡を吹き意識を失って倒れていることに気付く


鳴海「(由夏理が泡を吹き意識を失って倒れていることに気付いて)ま、ママ・・・?」


 再び沈黙が流れる


鳴海「ま、ママしっかりして!!」


 由夏理の顔面は青白くなっており、完全に意識がない


鳴海「(大きな声で)お、お姉ちゃん!!!!」


◯3109回想戻り/貴志家前(昼過ぎ)

 雨が降っている

 家の前にいる鳴海

 鳴海の家の前に救急車が止まっている

 鳴海の家の扉が開いている

 数人の救急隊員が両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失っている菜摘を乗せたストレッチャーを家から運び出して来る

 菜摘は痩せている

 菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている

 鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 菜摘の顔面は青白くなっている

 両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失っている菜摘は酸素マスクをつけている

 鳴海の体は雨で濡れている

 両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失ってストレッチャーに乗せられた菜摘の元に駆け寄る鳴海


鳴海「(両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失ってストレッチャーに乗せられた菜摘の元に駆け寄って)な、菜摘!!菜摘!!」

救急隊員1「(両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失っている菜摘を乗せたストレッチャーを運びながら)どいてください!!」

鳴海「な、菜摘は助かりますよね!?だ、大丈夫ですよね!?」

救急隊員1「(両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失っている菜摘を乗せたストレッチャーを運びながら)まだ分かりません!!」

救急隊員2「(両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失っている菜摘を乗せたストレッチャーを運びながら)旦那さんは少し下がって!!」


 数人の救急隊員は両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失っている菜摘を乗せたストレッチャーを救急車へ詰め込む

 救急車の中には患者が横になるためのベッド、心電図検査機、AED、酸素吸入機などの様々な医療機器が整備されている


◯3110回想/貴志家前(約8年前/昼過ぎ)

 雨が降っている 

 家の前にいる10歳頃の鳴海と15歳頃の風夏

 鳴海の家の前に救急車が止まっている

 鳴海の家の扉が開いている

 数人の救急隊員が40歳頃の意識を失っている由夏理を乗せたストレッチャーを家から運び出して来る

 10歳頃の鳴海と15歳頃の風夏の体は雨で濡れている 

 由夏理の顔面は青白くなっている

 意識を失っている由夏理は酸素マスクをつけている

 意識を失ってストレッチャーに乗せられた由夏理の元に駆け寄る10歳頃の鳴海


鳴海「(意識を失ってストレッチャーに乗せられた由夏理の元に駆け寄って)ま、ママ!!ママ!!」

救急隊員1「(意識を失っている由夏理を乗せたストレッチャーを運びながら)君は邪魔だからどいて!!」

鳴海「ま、ママは助かりますよね!?だ、大丈夫ですよね!?」

救急隊員1「(意識を失っている由夏理を乗せたストレッチャーを運びながら)そういうことはまだ分からないから!!」


 15歳頃の風夏は救急隊員2と話をしている 


救急隊員2「お父さんに連絡は?」

風夏「で、電話しましたけど出なかったです」

救急隊員2「前にもこういうことが?」

風夏「な、ないと思います」

救急隊員2「お母さんが普段どんな薬を飲んでるか知ってる?」

風夏「せ、生理痛止めと・・・す、睡眠薬を・・・」

救急隊員2「伯母さんには病院ついてから連絡をするか、それともこちら側が・・・」

風夏「(救急隊員2の話を遮って)じ、自分で出来ます」

救急隊員2「良かった。お父さんにはなるべく早く病院へ来るように職場に・・・」


 救急隊員2は話を続ける

 数人の救急隊員は意識を失っている由夏理を乗せたストレッチャーを救急車へ詰め込む

 救急車の中には患者が横になるためのベッド、心電図検査機、AED、酸素吸入機などの様々な医療機器が整備されている


救急隊員3「お姉ちゃんは一緒に救急車に!!弟は後で電話するから留守番してなさい!!」

鳴海「お、俺だけ置いて行かれるなんて嫌だ!!」


 10歳頃の鳴海は救急車に乗り込む


救急隊員3「おい!!勝手なことをするんじゃ・・・」

風夏「(救急隊員3の話を遮って)弟の面倒は私が見ます!!」


 15歳頃の風夏は救急車に乗り込む

 

◯3111回想戻り/波音総合病院に向かう道中(昼過ぎ)

 外は雨が降っている

 鳴海と菜摘が乗っている救急車が波音総合病院に向かっている

 鳴海と菜摘が乗っている救急車はサイレンを鳴らしながら一般道を走っている

 救急車の中には患者が横になるためのベッド、心電図検査機、AED、酸素吸入機などの様々な医療機器が整備されている

 鳴海はサイドシートに座っている

 菜摘は両目、鼻、耳、口から血を垂れ流して意識を失いストレッチャーに乗せられている

 菜摘は痩せている

 菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている

 鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 菜摘の顔面は青白くなっている

 両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失っている菜摘は酸素マスクをつけている

 鳴海の体は雨で濡れている

 救急車の中には鳴海と菜摘の他にも数人の救急隊員が乗っている

 救急隊員2と話をしている鳴海


救急隊員2「奥さんの持病は?」

鳴海「と、特定の病名はないはずだ」

救急隊員2「生まれつき病弱だと?」

鳴海「あ、ああ」

救急隊員2「今朝は薬を飲んでた?」

鳴海「わ、分からない」

救急隊員2「分からない?」

鳴海「ちょ、朝食が残っていたから薬は飲んでいなかったのかもしれない」

救急隊員2「ご両親へ連絡は?」

鳴海「か、母さんと父さんは8年前に事故で死んだ」

救急隊員2「奥さんのご両親が?」

鳴海「い、いや死んだのは俺の親です」

救急隊員2「奥さんのご両親には連絡出来ないの?」

鳴海「い、いえ、お、俺が自分でします」


◯3112回想/波音総合病院に向かう道中(約8年前/昼過ぎ)

 外は雨が降っている

 10歳頃の鳴海、40歳頃の由夏理、15歳頃の風夏が乗っている救急車が波音総合病院に向かっている

 10歳頃の鳴海、由夏理、15歳頃の風夏が乗っている救急車はサイレンを鳴らしながら一般道を走っている

 救急車の中には患者が横になるためのベッド、心電図検査機、AED、酸素吸入機などの様々な医療機器が整備されている

 10歳頃の鳴海と15歳頃の風夏はサイドシートに座っている

 由夏理は意識を失ってストレッチャーに乗せられている

 由夏理の顔面は青白くなっている

 意識を失っている由夏理は酸素マスクをつけている

 10歳頃の鳴海と15歳頃の風夏の体は雨で濡れている

 救急車の中には10歳頃の鳴海と15歳頃の風夏の他にも数人の救急隊員が乗っている

 15歳頃の風夏はガラケーで由美と電話をしている


風夏「(ガラケーで由美と電話をしながら)わ、分からないよ今日の朝は話してないから・・・き、昨日?ど、どうでも良いじゃんそんなこと・・・と、とにかく早く来てよ・・・えっ?違うって・・・み、見つけたのは私じゃなくて鳴海なんだよ」


 15歳頃の風夏はガラケーで由美と電話をしながらチラッと10歳頃の鳴海のことを見る


風夏「(ガラケーで由美と電話をしながらチラッと10歳頃の鳴海のことを見て)わ、私たちはママと話してないんだって!!ぱ、パパも昨日は帰って来てないし何があったのかなんて分からないよ!!(少し間を開けて)お、お願いだから伯母さんは早く来て、ママを助けてよ」


◯3113回想戻り/波音総合病院に向かう道中(昼過ぎ)

 外は雨が降っている

 鳴海と菜摘が乗っている救急車が波音総合病院に向かっている

 鳴海と菜摘が乗っている救急車はサイレンを鳴らしながら一般道を走っている

 救急車の中には患者が横になるためのベッド、心電図検査機、AED、酸素吸入機などの様々な医療機器が整備されている

 鳴海はサイドシートに座っている

 菜摘は両目、鼻、耳、口から血を垂れ流して意識を失いストレッチャーに乗せられている

 菜摘は痩せている

 菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている

 鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 菜摘の顔面は青白くなっている

 両目、鼻、耳、口から血を垂れ流し意識を失っている菜摘は酸素マスクをつけている

 鳴海の体は雨で濡れている

 鳴海はスマホですみれと電話をしている


鳴海「(スマホですみれと電話をしながら)わ、分かりません、け、今朝は俺も起きるのが遅くて・・・と、とにかく早く・・・は、はい、お、俺のことなんて今はどうでも良いですよ。娘が死にかけているのになんで俺のことを・・・お、落ち着いてますって・・・は、はい・・・わ、分かりました・・・」


 鳴海はスマホですみれとの電話を切る


◯3114回想/波音総合病院廊下/集中治療室前(約8年前/昼過ぎ)

 外は雨が降っている

 波音総合病院の集中治療室前の廊下にいる10歳頃の鳴海、40歳頃の紘、15歳頃の風夏、45歳頃の由美

 集中治療室前の廊下には椅子が設置されている

 10歳頃の鳴海、15歳頃の風夏、紘、由美は椅子に座っている

 紘はイライラしている


紘「(イライラしながら)少し目を離した隙にこれだ、由夏理は何を考えて・・」


 紘はイライラしながら話途中でチラッと10歳頃の鳴海と15歳頃の風夏のことを見る


紘「(イライラしながらチラッと10歳頃の鳴海と15歳頃の風夏のことを見て)クソ・・・」


 少しの沈黙が流れる


由美「由夏理なら大丈夫だわ」

紘「(イライラしながら)あなたには分かるのか?」

由美「ええ、あういうことをするのが私の妹よ」


 再び沈黙が流れる


風夏「二人はママのことを助けられたはずなのに何もしなかった」

紘「落ち着け、風夏」

風夏「パパのことは頼りにしてるよ、もうママにはパパと私たちしかいないんだから」


◯3115回想戻り/波音総合病院廊下/集中治療室前(昼過ぎ)

 外は雨が降っている

 波音総合病院の集中治療室前の廊下にいる鳴海、すみれ、作業服姿の潤、ナース服姿の風夏

 集中治療室前の廊下には椅子が設置されている

 鳴海、すみれ、潤、風夏は椅子に座っている

 鳴海の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 鳴海はイライラしている


鳴海「(イライラしながら)き、昨日は元気だったんだ、そ、それなのにどうしてこんなことになっ・・・」

風夏「(鳴海の話を遮って)落ち着いて、鳴海」


 少しの沈黙が流れる


すみれ「菜摘の体調は日によって違いますから・・・また明日になれば容体は変わっているかもしれません・・・」

鳴海「(イライラしながら大きな声で)ま、まともに治療だって存在していないのにどうしてすみれさんそんなことが言えるんですか!?!?」

風夏「私たちが菜摘ちゃんを信じて待ってあげることが一番の治療法に・・・」

鳴海「(イライラしながら風夏の話を遮って大きな声で)信じても帰って来なかった人だっているだろ!!!!」

風夏「な、菜摘ちゃんは私たちのことを裏切るような子じゃないって鳴海が誰よりも知っているはずでしょ・・・?」


 再び沈黙が流れる


潤「聞け、鳴海。(少し間を開けて)菜摘の病気は・・・昔から治る治らないの話じゃない。現状を維持するか・・・悪化するかのどちらかなんだ。お前の苛立ちはもっともだが、そんなことは関係なくある日突然ガクッと来るかもしれない・・・俺たちの都合ってのはお構いなしに来るもんは来やがる、それが最悪ってやつだ。だからな、焦ったり怒ったりするのはやめておけ。疲れるだけだし、お前のためにもならない。それよりも菜摘が帰って来た時に何がしたいかってのを考えろよ、有り余った力はそっちに向けちまえ」


 少しの沈黙が流れる

 すみれは立ち上がる


すみれ「(立ち上がって)潤くん・・・」

潤「ああ」

風夏「どこへ行くんですか?」

すみれ「少し・・・私に見合ったことをして来ます」


◯3116波音婦人病院/超音波検査室(昼過ぎ)

 外は雨が降っている

 波音婦人病院の超音波検査室にいる神谷絵美と医者

 超音波検査室にはベッド、モニター付きの超音波検査機器、椅子がある

 絵美は妊娠しており、お腹が膨らんでいる

 絵美はベッドに横になり、超音波検査を受けている

 絵美のお腹にプローブを当てて超音波検査を行っている医者

 超音波検査機器のモニターには絵美のお腹の中にいる胎児の神谷七海の姿が映し出されている

 絵美は超音波検査機器のモニターに映し出されている胎児の七海の姿を見ている


医者「(絵美のお腹にプローブを当てて超音波検査を行いながら)どこにも異常は見当たりません、赤ちゃんは健康そのものです」


◯3117回想/波音総合病院ラウンジ(約8年前/夜)

 外は雨が降っている

 波音総合病院のラウンジにいる10歳頃の鳴海、40歳頃の紘、15歳頃の風夏

 波音総合病院のラウンジは広く、たくさんのテーブルと椅子が置いてある

 波音総合病院のラウンジには鳴海たち以外にも数人の利用者がおり、携帯を見たり、読書をしたりしている

 テーブルに向かって椅子に座っている10歳頃の鳴海、紘、15歳頃の風夏

 話をしている鳴海たち


紘「俺が帰れない日は伯母さんがお前たちの面倒を見ることになるだろう」

鳴海「ママはいつ退院出来るの?」

紘「先生は検査がいくつもあると言っていた、具体的な日数は分からないがきっと時間がかかる」


 少しの沈黙が流れる


風夏「パパ」

紘「何だ?」

風夏「パパは知ってたの・・・?ママのあのことについて・・・」


 再び沈黙が流れる


紘「ああ・・・母さんから聞いていたよ」

鳴海「あのことって?」

紘「何でもない、体の小さな問題のことだ」

鳴海「やっぱりママは病気なの?」

紘「昔からな・・・もう治らないんだろう」

鳴海「どうして?」

紘「治療法がない・・・割り切って悪化しないように生きるしかないんだ」

風夏「ママにはパパが必要なんだよ、パパさえ家にいてくれればこんなことは・・・」

紘「(風夏の話を遮って)仕事はもう辞めるよ、風夏。(少し間を開けて)母さんの調子が良くなったら、家族で新しい人生を始めよう」


 少しの沈黙が流れる


風夏「嘘じゃないよね・・・?」

紘「本当さ、一条さんはやっと父さんの脱退を認めてくれた。だから今度こそ家族で暮らせるんだ」

鳴海「家族で・・・・?」

紘「ああ」


◯3118回想戻り/波音総合病院ラウンジ(夜)

 外は雨が降っている

 波音総合病院のラウンジにいる鳴海と作業服姿の潤

 波音総合病院のラウンジは広く、たくさんのテーブルと椅子が置いてある

 波音総合病院のラウンジには鳴海と潤以外にも数人の利用者がおり、スマホを見たり、読書をしたりしている

 テーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている鳴海と潤

 鳴海の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 話をしている鳴海と潤


潤「帰らないのか」

鳴海「帰れるわけないだろ・・・」

潤「職場には連絡したんだな」

鳴海「ああ・・・」


 少しの沈黙が流れる


潤「俺はお前の親と同じ部活をやっていてな」

鳴海「それが何だ・・・」

潤「ただの会話だよ、楽しい青春の毎日がおっさんの俺にもあったってわけだ」


 再び沈黙が流れる


潤「あの頃はやってみたいことや叶えたいことがいっぱいあった気がするが、今じゃそんな夢たちのほとんどがくだらないガラクタと化したか、思い出すこともままならない存在になっちまった。若いとあれもこれも欲しくなるよな、欲しいものを手にするのが幸せへの第一歩にも見えるだろう。お前も30、40と歳を取ったら分かると思うが、そういう夢のかけらってのは日に日に萎むもんなんだ。そして最後には一番大切な夢のかけらだけが残る。それには本当に本当に大事な願いが込められているわけだ、まさに命と引き換えてでも叶えたい夢だろうな。(少し間を開けて)俺の夢のかけらは、菜摘と鳴海が健康で・・・幸せに暮らして欲しいってことだよ。それ以上は何も望んじゃいねえ」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「な、何で俺にそんな話をするんだよ」

潤「ただの会話って言ったのを聞いてなかったのかお前は」

鳴海「き、聞いていたさ」

潤「愛のある会話だ、愛のあるな」


 時間経過


 日替わり

 朝になっている

 外は雨が降っている

 テーブルに突っ伏して眠っている鳴海

 潤はいなくなっている

 テーブルに突っ伏して眠っている鳴海の横には40歳頃の由夏理が立っている

 テーブルに突っ伏して眠っている鳴海のことを起こそうとする由夏理


由夏理「少年、起きてってば少年」


 鳴海は机に突っ伏したまま起きる気配がない

 机に突っ伏して眠っている鳴海の肩を軽く叩く由夏理


由夏理「(机に突っ伏して眠っている鳴海の肩を軽く叩いて)ほら、彼女も目を覚ましたんだからさ、君が迎えに行ってあげなよ」


 少しの沈黙が流れる

 テーブルに突っ伏して眠っている鳴海の横に立っていた由夏理はいつの間にかいなくなっている

 由夏理がいたところにはナース服姿の風夏が立っている

 風夏はテーブルに突っ伏して眠っている鳴海のことを起こそうとする


風夏「鳴海、起きて鳴海」


 机に突っ伏して眠っていた鳴海が目を覚ます


風夏「菜摘ちゃんの意識が戻ったよ」


 鳴海は慌てて体を起こす


鳴海「(慌てて体を起こして)な、菜摘は大丈夫なのか!?」

風夏「今は落ち着いて・・・」


 鳴海は風夏の話を無視して立ち上がり、集中治療室に向かおうとする

 鳴海の手を掴んで鳴海を引き止める風夏


風夏「(鳴海の手を掴んで鳴海を引き止めて)待って鳴海」

 

 鳴海は掴んで来た風夏の手を無理矢理引き離そうとする


鳴海「(風夏の手を無理矢理引き離そうとして)離してくれ姉貴!!」

風夏「(鳴海の手を掴んで鳴海を引き止めたまま)離してもまだ菜摘ちゃんには・・・」

鳴海「(風夏の手を無理矢理引き離そうとしながら風夏の話を遮って)夫の俺には菜摘と会う権利があるはずだ!!」

風夏「(鳴海の手を掴んで鳴海を引き止めたまま)面会の許可が降りてないんだって!!」


 再び沈黙が流れる

 鳴海は風夏の手を引き離そうとするのをやめる

 

風夏「(鳴海の手を掴んで鳴海を引き止めたまま)すみれさんと潤さんだってまだ面会出来てないの」

鳴海「(風夏に手を掴まれて引き止められたまま)だったらいつ会える・・・」

風夏「(鳴海の手を掴んで鳴海を引き止めたまま)分からない、でも意識ははっきりしているからもうすぐのはず」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「(風夏に手を掴まれて引き止められたまま)手・・・離せよ・・・」

風夏「(鳴海の手を掴んで鳴海を引き止めたまま)暴れないならね」

鳴海「(風夏に手を掴まれて引き止められたまま)離してくれ・・・」


 再び沈黙が流れる

 風夏は鳴海の手を離す

 テーブルに向かって椅子に座る鳴海


風夏「すみれさんたちが先生から話を聞いてるけど、後で鳴海も説明を受けてよ」

鳴海「姉貴は菜摘と会ったのか・・・」

風夏「さっきね、早く家に帰りたいって」

鳴海「面会すら出来ないような状態じゃ・・・退院なんて奇跡が起きても不可能だ・・・」

風夏「入院が必要でも面会出来るようになれば外出許可だって降りるかもしれないでしょ?何でも悪い方向に決めつけないでよ鳴海」

鳴海「それでも菜摘は重症なんだろ・・・」

風夏「か、軽い病気で入院してる人なんていないんだからね?」

鳴海「昨日・・・潤さんが言っていたことは本当なんだな・・・」

風夏「潤さんが言ってたってことって?」

鳴海「菜摘の・・・菜摘の病気はもう治らないのか・・・?」

風夏「や、病と向き合って生きていくことだって出来るし、世界には病気を個性と捉える人だっているんだよ鳴海」


◯3119◯3083の回想/南波音高校二年生廊下(夕方)

 夕日が沈みかけている

 外は蝉が鳴いている

 南波音高校の二年生廊下を歩いている鳴海と波音高校の制服を着た少年S

 南波音高校の二年生廊下には鳴海と少年Sしかいない

 鳴海の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 話をしている鳴海と少年S


少年S「みんな、自分の個性を認めて受け入れてもらいたかったんだ。やっぱり世間のイメージだけで判断されるのは辛いんですよ」


◯3120回想戻り/波音総合病院ラウンジ(朝)

 外は雨が降っている

 波音総合病院のラウンジにいる鳴海とナース服姿の風夏

 波音総合病院のラウンジは広く、たくさんのテーブルと椅子が置いてある

 波音総合病院のラウンジには鳴海と潤以外にも数人の利用者がおり、スマホを見たり、読書をしたりしている

 テーブルに向かって椅子に座っている鳴海

 鳴海の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 鳴海の横には風夏が立っている

 話をしている鳴海と風夏


鳴海「姉貴は菜摘の病気が個性だと?」

風夏「どう受け入れるかは菜摘ちゃんの考え方によるけど、後ろ向きよりは前向きの方が良いでしょ?」


 少しの沈黙が流れる 

 風夏はテーブルを挟んで鳴海と向かい合って椅子に座る


風夏「(テーブルを挟んで鳴海と向かい合って椅子に座って)お姉ちゃんの奥歯が欠けてるのを鳴海は知ってるよね?」

鳴海「ガキの頃にアサリを殻ごと食おうとしてへし折ったんだろ」

風夏「ちょっと違うけどそう、私は馬鹿な歯抜け女なの」


 再び沈黙が流れる


風夏「鳴海は馬鹿な歯抜け女が自分の姉弟であることについてどう思う?」

鳴海「別にどうもこうもねえよ」

風夏「私が馬鹿で馬鹿で馬鹿で馬鹿で馬鹿で馬鹿で馬鹿で馬鹿で間抜けな歯抜け女でも、鳴海はどうもこうも思わないんだね。じゃあそれはどうして?」

鳴海「気にしないからに決まっているだろ」

風夏「気にしないからだし、鳴海はお姉ちゃんの奥歯が欠けてることを受けて入れてもいるんでしょ?」


 少しの沈黙が流れる


風夏「病気だってそれと同じなんだって、気にして気にして気にしてマイナス方面に考えを働かせることも、個性として受け入れることも出来る。もし鳴海が私の欠けた奥歯を見て馬鹿にしていたり、歯抜け女と姉弟になったことを変に意識していたら、私はきっと自分の歯が大っ嫌いになってたよ。(少し間を開けて)体のことは当事者が一番気にするに決まってるんだから、周りが支えてあげないとダメなの。鳴海は今菜摘ちゃんのことで辛い思いをしているだろうし、苦しんでいるだろうけど、菜摘ちゃんよりも病気のことを引きずらないで。だって一番辛いのは、本当の意味で病気を受け入れなきゃいけない菜摘ちゃん本人なんだから・・・分かるよね?鳴海」


 再び沈黙が流れる


鳴海「叱咤激励したいのか奥歯をいじらなかったことに感謝したいのかどっちなんだ」

風夏「そりゃ叱咤激励でしょ」


◯3121波音総合病院/集中治療室(昼前)

 外は雨が降っている

 波音総合病院の集中治療室にいる鳴海、菜摘、すみれ、作業服姿の潤、ナース服姿の風夏

 集中治療室にはたくさんのベッド、モニター付きの心電図検査機、モニター付きの患者監視装置、マスクとモニター付きの人工呼吸器、除細動器などがある

 集中治療室には鳴海たち以外にも数人の医者がいる

 集中治療室には菜摘の他にも数人の患者がおり、ベッドに横になって治療を受けている

 菜摘はベッドの上で横になり、人工呼吸器のマスクをつけている

 菜摘は痩せている

 菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている

 鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 菜摘の顔面は青白くなっている

 鳴海、すみれ、潤、風夏、数人の医者はマスクをしている

 マスクをしたまま菜摘の手を握っているすみれ

 マスクをして菜摘の手を握ったまま菜摘に話をしているすみれ


すみれ「(マスクをして菜摘の手を握ったまま)菜摘・・・みんな来てますよ・・・」

菜摘「(すみれに手を握られ人工呼吸器のマスクをつけたまま)お母さん・・・」

すみれ「(マスクをして菜摘の手を握ったまま)お父さんと鳴海くんもいますからね・・・」

菜摘「(すみれに手を握られ人工呼吸器のマスクをつけたまま)うん・・・ありがとう・・・」

潤「(マスクをしたまま)気にするな、菜摘はしっかり休むんだぞ」

菜摘「(すみれに手を握られ人工呼吸器のマスクをつけたまま)うん・・・」


 すみれはマスクをしたまま菜摘の手を離す

 マスクをしたまま少し後ろに下がるすみれ

 少しの沈黙が流れる 

 鳴海はマスクをしたまま一歩前に出る


菜摘「(人工呼吸器のマスクをつけたまま)鳴海くん・・・」

鳴海「(マスクをしたまま)す、全て上手く行くようになるさ」

菜摘「(人工呼吸器のマスクをつけたまま)ごめんね・・・」

鳴海「(マスクをしたまま)い、良いんだ・・・(少し間を開けて)し、心配ない・・・心配ないよ菜摘・・・」


 菜摘は人工呼吸器のマスクをつけたまま何か言う

 菜摘は人工呼吸器のマスクをつけたまま何か言うが、鳴海には菜摘の言葉が聞き取れない


鳴海「(マスクをしたまま)えっ・・・?」

菜摘「(人工呼吸器のマスクをつけたまま)鳴海くんが・・・今・・・リーヴェに・・・見えたよ・・・」

鳴海「(マスクをしたまま)お、俺がか?」

菜摘「(人工呼吸器のマスクをつけたまま)うん・・・みんなが・・・リーヴェに・・・」


 マスクをしたまま医者が鳴海たちのところにやって来る

 

医者「(マスクをしたまま)そろそろ時間です」

鳴海「(マスクをしたまま)り、リーヴェがどうしたんだ?菜摘」

医者「(マスクをしたまま)貴志さん、少しお話が」


 再び沈黙が流れる


風夏「(マスクをしたまま)鳴海、菜摘ちゃんを休ませてあげないと」

鳴海「(マスクをしたまま)ま、まだ全然話が出来ていない」

医者「(マスクをしたまま)数日すればもう少し面会時間も伸びますよ」

鳴海「(マスクをしたまま)な、菜摘、何か話をしてくれ」

菜摘「(人工呼吸器のマスクをつけたまま)お家に帰りたい・・・早く・・・お家に・・・」


 少しの沈黙が流れる

 人工呼吸器のマスクをつけたまま菜摘は眠る


鳴海「(マスクをしたまま)な、菜摘・・・?お、おい・・・な、何か言ってくれよ」

医者「(マスクをしたまま)今は眠っているだけですよ、それより貴志さんにはお話があります」

鳴海「(マスクをしたまま)だ、大丈夫なのか?これじゃあまるで・・・(少し間を開けて)い、生きていないように・・・」

医者「(マスクをしたまま鳴海の話を遮って)大丈夫ですよ、今は休んでるだけで・・・」

鳴海「(マスクをしたまま医者の話を遮って)や、休んでいるのに死んでいるみたいなのは何故だ?死にかけているからか?」

風夏「(マスクをしたまま)鳴海、先生に当たらないで」


 再び沈黙が流れる


鳴海「(マスクをしたまま)すみません」

医者「(マスクをしたまま)いや、構いません。それよりお話を・・・」

鳴海「(マスクをしたまま医者の話を遮って)だ、だがが本当に死んでいるみたいだ、こんな真っ青な顔は見たことがない。酸素マスクを外して息をしているか確認しても良いですか?」


 少しの沈黙が流れる

 医者はマスクをしたままモニター付きの心電図検査機を指差す


医者「(マスクをしたままモニター付きの心電図検査機を指差して)マスクを外さなくてもこれを見たら亡くなっていないことが分かりますよ」


 鳴海はマスクをしたまま医者が指差しているモニター付きの心電図検査機を見る


鳴海「(マスクをしたまま医者が指差しているモニター付きの心電図検査機を見て)機械が壊れているかもしれない、電池が切れたりしていないか?」


 医者はマスクをしたままモニター付きの心電図検査機を指差すのをやめる


医者「(マスクをしたままモニター付きの心電図検査機を指差すのをやめて)そもそも電池式じゃない」


 再び沈黙が流れる

 鳴海はマスクをしたままモニター付きの心電図検査機を見るのをやめる

 マスクをしたまま、人工呼吸器のマスクをつけて眠っている菜摘の口元に耳を近付ける鳴海

 

潤「(マスクをしたまま)どうだ、死んでないか分かったか」

すみれ「(マスクをしたまま)潤くん・・・」


 風夏はマスクをしたまま頭を抱える


鳴海「(マスクをして、人工呼吸器のマスクをつけて眠っている菜摘の口元に耳を近付けたまま)菜摘は息をしている。息をしながら生きているみたいだ」

医者「息をしていなければ亡くなっています」

鳴海「(マスクをして、人工呼吸器のマスクをつけて眠っている菜摘の口元に耳を近付けたまま)マスクを外して呼吸を確かめても良いですか?」

医者「それはいけません、奥さんが酸欠になります」


 少しの沈黙が流れる


医者「お話があるので外に出ましょう」


 鳴海はマスクをしたまま、人工呼吸器のマスクをつけて眠っている菜摘の口元から耳を離す


◯3122波音総合病院廊下/集中治療室前(昼過ぎ)

 外は雨が降っている

 波音総合病院の集中治療室前の廊下にいる鳴海、すみれ、作業服姿の潤、ナース服姿の風夏、医者

 集中治療室前の廊下には椅子が設置されている

 鳴海の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 鳴海、すみれ、潤、風夏、医者をマスクしている

 マスクをしたまま話をしている鳴海たち


医者「(マスクをしたまま)様子を見ながらですが、すぐに一般病棟へ移れるでしょう」

鳴海「(マスクをしたまま)すぐにっていつですか?」

医者「(マスクをしたまま)このままいけば2、3日だと思います、面会も出来るようになりますよ」


 少しの沈黙が流れる


医者「(マスクをしたまま)本人は早く退院したがっていますが、現段階でそれはなかなか難しいと思います。なので貴志さんはご本人に代わって入院手続きの・・・」

鳴海「(マスクをしたまま医者の話を遮って)姉貴」

風夏「(マスクをしたまま)何?」

鳴海「(マスクをしたまま)マスクをつけたままだとうっ血しそうなんだが外しても良いよな」

風夏「(マスクをしたまま)うっ血?酸欠じゃなくて?」

鳴海「(マスクをしたまま)頭の中がうっ血しそうなんだ」

風夏「(マスクをしたまま)それは多分マスクのせいじゃないだろうけど、苦しかったらもう外して良いよ」


 鳴海はマスクを外す


鳴海「(マスクを外して)死ねって叫んでも良いですか?」

医者「(マスクをしたまま)いや、それはやめて欲しい」

鳴海「菜摘の病気に向かって言うだけだ」

医者「(マスクをしたまま)他の患者さんの迷惑になるし、医者としてそのような言葉を認めるわけには・・・」


 鳴海は医者の話を無視して再びマスクつける

 再び沈黙が流れる


医者「(マスクをしたまま)どうしても叫びたいなら当医院から半径200メートル以上離れたところで叫んでください」


 少しの沈黙が流れる


医者「(マスクをしたまま)入院手続きの書類にサインしてもらう必要があります、良いですね?」

鳴海「(マスクをしたまま)ダメなんて言った覚えありません」


◯3123波音総合病院一階ロビー(昼過ぎ)

 波音総合病院の一階ロビーにいる鳴海、すみれ、作業服姿の潤、ナース服姿の風夏

 波音総合病院のロビーは広く、たくさんの椅子が設置されている

 波音総合病院のロビーにはたくさんのカウンターがあり、診察の受付に来た人や、医療費の支払いをしている人がいる

 波音総合病院のロビーの椅子には老若男女様々な人が座っており、診察に呼ばれるのを待っていたりしている

 椅子に座っている鳴海、すみれ、潤

 鳴海の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 風夏は入院手続きに必要なたくさんの書類を持っている

 入院手続きに必要な書類が挟まれてあるグリップボードとボールペンを持っている鳴海

 グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”貴志鳴海”と書いている鳴海


風夏「サインした?」


 鳴海はグリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”貴志鳴海”と書き終える


鳴海「(グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄にに名前を書き終えて)ああ」

風夏「間違えてない?ちゃんと確認した?」

鳴海「自分の名前を間違えるわけないだろ」

風夏「書き忘れは?」

鳴海「今真正面から俺が名前を書いているところを見ていなかったのか」

風夏「いや、見てたけどさ」

すみれ「大丈夫ですよ、間違えずに鳴海くんは名前を書いていましたから」


 鳴海はチラッとすみれのことを見る

 入院手続きに必要な書類の一枚を鳴海に差し出す風夏


風夏「(入院手続きに必要な書類の一枚を鳴海に差し出して)じゃあ次はこれ、一番下にサインして」


 鳴海は入院手続きに必要な書類を風夏から受け取る

 風夏から受け取った入院手続きに必要な書類をグリップボードに挟み、書類の署名欄に”貴志鳴海”と書く鳴海

 鳴海はグリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”貴志鳴海”と書き終える


鳴海「(グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”貴志鳴海”と書き終えて)書いたぞ」


 入院手続きに必要な書類の一枚を鳴海に差し出す風夏


風夏「(入院手続きに必要な書類の一枚を鳴海に差し出して)それからこれにも」


 鳴海は入院手続きに必要な書類を風夏から受け取る

 風夏から受け取った入院手続きに必要な書類をグリップボードに挟み、書類の署名欄に”貴志鳴海”と書く鳴海

 鳴海はグリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”貴志鳴海”と書き終える

 

鳴海「(グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”貴志鳴海”と書き終えて)今のでラストか?」

風夏「いや・・・あとこれも」


 風夏は入院手続きに必要な書類の一枚を鳴海に差し出す

 入院手続きに必要な書類を風夏から受け取る鳴海

 鳴海は風夏から受け取った入院手続きに必要な書類をグリップボードに挟み、書類の署名欄に”貴志鳴海”と書く


鳴海「(グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”貴志鳴海”書きながら)学校のテストでもこんなに名前は書かないぞ」


 鳴海はグリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”貴志鳴海”と書き終える

 入院手続きに必要な書類の一枚を鳴海に差し出す風夏


風夏「(入院手続きに必要な書類の一枚を鳴海に差し出して)はい」

鳴海「(入院手続きに必要な書類を風夏に差し出されたまま)何で一枚一枚区切って渡して来るんだよ」

風夏「(入院手続きに必要な書類の一枚を鳴海に差し出したまま)その方が分かりやすいじゃん」

鳴海「(入院手続きに必要な書類を風夏に差し出されたまま)面倒だから一気に全部渡してくれ」

風夏「(入院手続きに必要な書類の一枚を鳴海に差し出したまま)間違えて書かないよね?」

鳴海「(入院手続きに必要な書類を風夏に差し出されたまま)名前を間違えるわけないだろ!!」


 少しの沈黙が流れる

 風夏は入院手続きに必要なたくさんの書類を鳴海に差し出す

 入院手続きに必要なたくさんの書類を風夏から受け取る鳴海

 鳴海は入院手続きに必要なたくさんの書類をグリップボードに挟み、たくさんの書類の署名欄に”貴志鳴海”と書き続ける

 再び沈黙が流れる


潤「風夏ちゃん」

風夏「はい」

潤「波音総合病院には喫煙所ってないんだよな」

風夏「どこの病院にも喫煙所はありませんよ、法律で禁止されてます」

潤「そうだった」

風夏「私は裏にある特定喫煙所でたまに吸いに行きますけど、患者やその家族は使用禁止になってて」

潤「職員以外は使えないってわけか」

風夏「はい」

潤「仕方がないな、今時タバコを吸う方が珍しいってもんだ」

風夏「ですね」

潤「若い連中には電子タバコが流行っているんだろ?」

風夏「あー・・・おしゃれだとか可愛いとは聞きますけど・・・」

潤「すみれ、若作りを兼ねて俺も電子タバコデビューをしてみようと思うんだが」

すみれ「本当に若くいたいなら潤くんも風夏ちゃんもタバコはやめた方が良いですよ」

風夏「(少し笑って)それがなかなか禁煙出来なくて」

すみれ「二人で同時に禁煙を始めてみましょう、そうしたらきっとやめられるんじゃないですか?」

風夏「(少し笑いながら)上手くいきますかね〜?私が先に禁煙を諦めて潤さんが後に続いちゃう気がするんですけど」

潤「(少し笑って)風夏ちゃんの親父と禁煙をした時もそうなったな」

風夏「(少し笑いながら)父も母もヘビースモーカーでしたから」

潤「(少し笑いながら)ああ、だがそうなる気持ちも分かるよ」


 鳴海は入院手続きに必要なたくさんの書類の署名欄に”貴志鳴海”と書き終える

 

鳴海「(入院手続きに必要なたくさんの書類の署名欄に”貴志鳴海”と書き終えて)終わったぞ」

風夏「ん、お疲れさん」


 鳴海はグリップボードに挟まれてある入院手続きに必要なたくさんの書類とボールペンを風夏に差し出す

 グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要なたくさんの書類とボールペンを鳴海から受け取る風夏

 風夏はグリップボードに挟まれてある入院手続きに必要なたくさんの書類の署名欄を確認する

 

風夏「(グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要なたくさんの書類の署名欄を確認しながら)明日は印鑑を持って来てよ鳴海」

鳴海「まだサインをするのか?」

風夏「(グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要なたくさんの書類の署名欄を確認しながら)サインじゃなくて印鑑。シャチハタはダメだからね」

鳴海「ああ」


 少しの沈黙が流れる

 風夏はグリップボードに挟まれてある入院手続きに必要なたくさんの書類の署名欄を確認するのをやめる


風夏「(グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要なたくさんの書類の署名欄を確認するのをやめて怒って)だから何度も念押ししたのに!!」

鳴海「今度は何だよ!?」

風夏「(怒りながら)名前を間違えているんだって!!」

鳴海「(怒って)眼鏡を買え眼鏡を!!20年近く使って来た本名を俺が書き間違えるわけないだろ!!」

風夏「(怒りながら)眼鏡がいるのは鳴海でしょ!!何で入院希望者の欄に自分の名前を書いちゃうの!?」

鳴海「さ、サインしろって言われたら普通自分の名前を書くだろ!!」

風夏「(怒りながら)動揺してても文字くらい読める弟かと思っていたんだよ!!」


 再び沈黙が流れる

 

鳴海「わ、悪かったって」


 風夏は深くため息を吐き出す


風夏「(深くため息を吐き出して)新しい紙をもらって来るからちょっと待ってて」

鳴海「あ、ああ」


 時間経過


 鳴海はグリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”早乙女菜摘”と書いている


風夏「今度は間違えないでよね?」

鳴海「(グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”早乙女菜摘”と書きながら)わ、分かってるよ」


 鳴海はグリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”早乙女菜摘”と書き終える

 少しの沈黙が流れる


鳴海「な、なあ」

風夏「うん」

鳴海「な、菜摘の苗字って早乙女だよな?」

風夏「いや、結婚したんだから今は貴志でしょ」

鳴海「み、ミスって早乙女って書いた場合は受理されないのか?」

すみれ「受理されれば菜摘は離婚したことになりますよ、鳴海くん」


 再び沈黙が流れる

 風夏は入院手続きに必要な書類が挟まれてあるグリップボードを鳴海から奪い取る

 入院手続きに必要な書類が挟まれてあるグリップボードで鳴海の頭を何度も叩く風夏


風夏「(入院手続きに必要な書類が挟まれてあるグリップボードで鳴海の頭を何度も叩いて)どうして!!お前は!!何度も!!ポカを!!やらかすんだ!!」

鳴海「(入院手続きに必要な書類が挟まれてあるグリップボードで風夏に頭を叩かれながら)わ、わざとじゃない!!自然に間違えたんだよ!!」

風夏「(入院手続きに必要な書類が挟まれてあるグリップボードで鳴海の頭を何度も叩きながら)自然でもミスはミスなの!!」

鳴海「(入院手続きに必要な書類が挟まれてあるグリップボードで風夏に頭を叩かれながら)あ、姉貴が事前に貴志菜摘って書くんだって教えて・・・」

風夏「(入院手続きに必要な書類が挟まれてあるグリップボードで鳴海の頭を何度も叩きながら鳴海の話を遮って)馬鹿弟!!」

鳴海「(入院手続きに必要な書類が挟まれてあるグリップボードで風夏に頭を叩かれながら)ば、馬鹿でも真面目に生きてるんだから良いだろ!!」


 少しの沈黙が流れる

 風夏は入院手続きに必要な書類が挟まれてあるグリップボードで鳴海の頭を叩くのをやめる


風夏「(入院手続きに必要な書類が挟まれてあるグリップボードで鳴海の頭を叩くのをやめて)次こそは間違えないでよ、絶対に」

鳴海「あ、ああ」


 時間経過


 鳴海はグリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”貴志菜摘”と書いている


風夏「早乙女じゃなくて貴志だからね」

鳴海「(グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”貴志菜摘”と書きながら)い、今そう書いてるよ」


 鳴海はグリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄に”貴志菜摘”と書き終える

 グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類とボールペンを風夏に差し出す鳴海

 風夏はグリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類とボールペンを鳴海から受け取る

 グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄を確認する風夏


鳴海「み、ミスはない、今度は俺もちゃんと確認したからな」


 風夏はグリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄を確認するのをやめる


風夏「(グリップボードに挟まれてある入院手続きに必要な書類の署名欄を確認するのをやめて)家に帰って、鳴海」

鳴海「な、何でだよ!?ま、まだ書類に間違えがあるのか!?」

風夏「名前なら書けてたよ」

鳴海「だ、だったらどうして俺を追い出そうと・・・」

風夏「(鳴海の話を遮って)菜摘ちゃんは休んでるんだし、鳴海だっていつまでも病院にいるわけにはいかないでしょ?」

鳴海「か、帰って何をすれば良い?」

風夏「とりあえずシャワーでも浴びて寝なよ」


 再び沈黙が流れる


潤「鳴海」

鳴海「な、何だ」

潤「今晩はうちに泊まって行くか?」

鳴海「ど、どうしてそうなるんだよ」

すみれ「空き部屋ならあるし、鳴海くんは前にもうちに泊まったことがあるでしょう?」

鳴海「あれは部活の合宿で・・・」

すみれ「(鳴海の話を遮って)合宿じゃなくても泊まって良いのよ」


 少しの沈黙が流れる


風夏「お姉ちゃんが鳴海の家に行っても良いけどさ、まだ帰るまでには時間がかかり・・・」

鳴海「(風夏の話を遮って)ど、どうして姉貴たちは俺に優しくするんだ?」

潤「みんな辛いからだよ」


 再び沈黙が流れる


鳴海「だ、誰も泊まりにこなくて良いし、お、俺は一人で眠れる」

風夏「鳴海、こういう時は別に強がらなくても・・・」

鳴海「(風夏の話を遮って)つ、強がっているわけじゃない」

風夏「本当に?」

鳴海「ほ、本当だ、お、俺なら大丈夫だ」


 再び沈黙が流れる

 潤は立ち上がる


潤「(立ち上がって)家まで送るぞ、鳴海」

鳴海「お、送らなくても・・・」

風夏「(鳴海の話を遮って)お願いします、潤さん」

鳴海「か、勝手に決めるなよ!!」

潤「せがれのくせに遠慮するんじゃねえ、俺は送ってやるって言っているんだよ」

鳴海「あ、あんたは俺の父親じゃないだろ!!」

潤「父親と変わらない立場だ」

鳴海「だとしてもあんたに送ってもらう気は・・・」


 鳴海は話を続ける


◯3124帰路(夕方)

 外は雨が降っている

 鳴海と潤が乗っている車が鳴海の家に向かっている

 鳴海と潤が乗っている車は一般道を走っている

 鳴海は助手席に座っている

 潤は運転席に座り、運転をしている

 鳴海の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 話をしている鳴海と潤


鳴海「あんなに送らなくて良いと言ったんだぞ」

潤「(運転をしながら)お前の言い分は聞いてやったぞ」

鳴海「どこがだよ、全く聞いていなかったから俺は今あんたの車に閉じ込められているんだろ」

潤「(運転をしながら)言い分は意見交換として聞いてやっただけだ」

鳴海「(小声でボソッと)クソジジイが・・・」

潤「(運転をしながら)今のてめえはクソジジイからしても危なっかしい野郎に見えたんだよ」

鳴海「名前を書き間違えただけだろ!!」

潤「(運転をしながら)嫁の酸素マスクを外して殺そうとし、発狂して良いか医者に尋ね、挙げ句の果てに自分の名前を書いてうっかり入院しかけたのがてめえだぞ」

鳴海「そ、それが何だよ!!」

潤「(運転をしながら)それが何だ、じゃ済まされねえってわけでお前は送られることになったんだ、分かるか、要するにみんな壊れかけの若者を心配をしてるんだよ」


 少しの沈黙が流れる


潤「(運転をしながら)病院からは離れたしここなら叫んでも良いぞ」

鳴海「さ、叫ぶわけないだろ」

潤「(運転をしながら)何だお前、今更恥ずかしがっているのか」

鳴海「そ、そうじゃねえよ」

潤「(運転をしながら)叫べるうちに叫んでおいた方がお前のためだぞ」


 再び沈黙が流れる


潤「(運転をしながら)この先、鳴海が期待しているようなことが起こる保証はねえ。(少し間を開けて)その準備をするために一発を気合いを入れて叫んでみるのも・・・」

鳴海「(運転をしている潤の話を遮って)叫ばないと言っているだろ」

潤「(運転をしながら)お前がそう決めたならそれで良いが」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「すみれさんはどこに行ったんだ」

潤「(運転をしながら)すみれにもやることがあるんだよ」

鳴海「買い物か?」

潤「(運転をしながら)そんなわけねえだろ」

鳴海「じゃあどこで何をしているんだ」

潤「(運転をしながら)知りたきゃ今度すみれから話を聞くんだな」


 再び沈黙が流れる


潤「(運転をしながら)そこの角を曲がったところにある中華料理屋は餃子が売りでよ。素材のひき肉が悪くねえからか、結構いける味だ。お前は食ったことあるか?」

鳴海「いや・・・何で今そんな話をする?」

潤「(運転をしながら)昨日の昼から何も口してねえだろ」

鳴海「心配しないでくれ、飯なら菜摘が作り置きしたやつを食べるよ」

潤「(運転をしながら)腹を壊して入院したいのかお前は」

鳴海「今の言葉、菜摘が聞いたら泣くぞ」

潤「(運転をしながら)夏場のリビングに一日置いてあったもんだぞ、料理の腕を問わずそんなもんを食ったら入院確定だろうが」

鳴海「そ、それもそうか・・・」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「あんたもさっきの菜摘の顔を見たよな」

潤「(運転をしながら)ああ」

鳴海「ね、眠っているように見えなかったのは俺だけか?」

潤「(運転をしながら)お前だけだ」

鳴海「ま、毎晩隣で眠っている姿を見ているが、あんな顔をしていたのは今日が初めてだぞ」

潤「(運転をしながら)父親の前で惚気てるんじゃねえ、ぶっ飛ばすぞ」

鳴海「俺は心配しているんだ、あれだけ真っ青なゾンビみたいな顔を・・・」

潤「(運転をしながら鳴海の話を遮って)分かった分かった分かったお前が誰よりも菜摘のことを心配しているのは分かったからこれ以上菜摘の顔の話をするな、本気で殴るぞ」


 再び沈黙が流れる


潤「(運転をしながら)クソ・・・」

鳴海「言葉に気をつけろよ、またすみれさんに叱られるぞ」

潤「(運転をしながら)てめえのせいで菜摘の青白い顔面が脳裏をよぎっちまったんだよ」

鳴海「やっぱりあれは死んでいるみたいだった」


 潤は急ブレーキを踏んで車を停車させる


鳴海「(怒って)い、いきなり止まるなよ危ないだろ!!」

潤「(怒りながら)そんなに言うんだったらまた病院に戻るか!?あぁ!?」

鳴海「(怒りながら)な、何の話だ!!」

潤「(怒りながら)眠ってるお前の嫁のことだよ!!」

鳴海「(怒りながら)眠っているなら戻らなくても良いじゃないか!!」

潤「(怒りながら)てめえが眠っているようには見えねえってさっきからほざいてるんだろうが!!」

鳴海「(怒りながら)感じたことを言っているだけなのに何であんたはキレるんだよ!!」

潤「(怒りながら)感じたことを全部口に出すのは適切じゃないからだ!!」

鳴海「(怒りながら)だからって急に止まるな!!事故って死ぬところだったろ!!」

潤「(怒りながら)死にたくなかったら菜摘の顔の話はするんじゃねえ!!」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「全く・・・これじゃ送ってもらった方が危ないじゃないか・・・」

潤「黙れ」

鳴海「黙っているだろ」


 再び沈黙が流れる

 潤は車のアクセルを踏む

 鳴海と潤が乗っている車が進み始める


鳴海「本当に病院に戻るのか?」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「何で無視するんだよ、あんたが病院に戻るかどうか提案したんだぞ」


 潤は運転をしながら鳴海のことをチラッと見る


鳴海「あんたは菜摘の顔が見たくないのか?」


 再び沈黙が流れる


潤「(運転をしながら)お前の母親の愉快でお喋りな性格には俺もお前の親父も散々手を焼いた」

鳴海「(少し笑って)父さんと違って社交的な人だったからな、母さんは」

潤「(運転をしながら)言っとくが今のは褒めてねえぞ」

鳴海「ああ・・・ただの皮肉だったのか」

潤「(運転をしながら)そうだ」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「結局病院からは離れているな・・・(少し間を開けて)俺の家に向かっているから病院とは真逆に進んでいるのか」


◯3125貴志家前(夜)

 外は雨が降っている

 鳴海と潤が乗っている車が鳴海の家の前で止まっている

 鳴海は助手席に座っている

 潤は運転席に座っている

 鳴海の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 話をしている鳴海と潤


潤「本当にうちには泊まらないんだな」

鳴海「ああ」


 少しの沈黙が流れる


潤「馬鹿なことはするなよ」

鳴海「馬鹿なことって何だ」

潤「とりあえず一日放置した飯は食うんじゃねえ、子供が二人も入院なんてしたらすみれが発作を起こすからな」

鳴海「あんたもタバコで家を燃やすなよ」


 再び沈黙が流れる

 鳴海は助手席の扉を開ける


鳴海「(助手席の扉を開けて)それじゃ、また明日」

潤「ああ」


 鳴海は車から降りる

 助手席の扉を閉める鳴海

 鳴海は家に向かう

 立ち止まる鳴海

 鳴海は潤が乗っている車のところに戻る

 助手席の窓を開ける潤


鳴海「今から病院に戻るなら俺も連れて行って・・・」

潤「(鳴海の話を遮って)病院には行かねえよ」

鳴海「ならどこに行くんだ?」

潤「家に帰るんだ」

鳴海「家か」

潤「泊まったって良いんだぞ」

鳴海「いや」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「また明日な」

潤「ちゃんと寝ろよ」

鳴海「ああ。(少し間を開けて)お休み」

潤「お休み」


 鳴海は再び家に向かう

 運転席から鳴海のことを見ている潤

 鳴海は家の前で立ち止まる

 ポケットから鍵を取り出す鳴海

 鳴海は家の玄関の鍵穴に鍵を挿す

 家の玄関の鍵を開ける鳴海

 鳴海は家の玄関の鍵穴から鍵を抜く

 家の扉を開ける鳴海

 鳴海は家の中に入って行く

 再び沈黙が流れる 

 潤は鳴海の家を見るのをやめる

 車のアクセルを踏む潤

 潤が乗っている車が進み始める


◯3126貴志家リビング(夕方)

 外は雨が降っている

 リビングのテーブルの上にはおにぎり、ベーコン、卵焼き、サラダが置いてある

 鳴海がリビングにやって来る

 鳴海の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 テーブルの上に家の鍵を置く鳴海

 鳴海はテーブルに向かって椅子に座る

 キッチンを見る鳴海

 キッチンの上には雪平鍋があり、味噌汁が作られてある

 キッチンの足元には大量の菜摘の血痕がある

 鳴海はキッチンの足元にある大量の菜摘の血痕を見る


鳴海「(キッチンの足元にある大量の菜摘の血痕を見て)誰か掃除を手伝ってくれる奴はいるか?」


 少しの沈黙が流れる

 鳴海はキッチンの足元にある大量の菜摘の血痕を見るのをやめる

 立ち上がる鳴海

 鳴海はキッチンに行く

 雪平鍋の中を覗いて味噌汁を見る鳴海


鳴海「(雪平鍋の中を覗いて味噌汁を見て)沸騰させれば大丈夫だろ」


 再び沈黙が流れる

 鳴海は雪平鍋の中を覗くのをやめる

 コンロの火を付けようとする鳴海

 鳴海がコンロの火を付けようとすると、鳴海の右足が大量の菜摘の血痕を踏む

 コンロからはガスが漏れる

 鳴海は慌ててキッチンの足元にある大量の菜摘の血痕から右足をどかす


鳴海「(慌ててキッチンの足元にある大量の菜摘の血痕から右足をどかして)クソ・・・」


 鳴海は右足の裏を見る

 鳴海の右足の靴下は汚れていない

 鳴海は右足の靴下を見るのをやめる 

 少しの沈黙が流れる

 コンロからガスが漏れている小さな音が聞こえて来る

 鳴海はコンロからガスが漏れていることに気付き慌ててガスを止める

 再び沈黙が流れる


鳴海「クソッタレ・・・」


 鳴海は雪平鍋を手に取る

 雪平鍋の中の味噌汁を直飲みする鳴海

 鳴海は雪平鍋の中の味噌汁を直飲みした瞬間、シンクに向かって味噌汁を吹き出す

 

鳴海「(シンクに向かって味噌汁を吹き出して大きな声で)クソッタレ!!!!クソッタレ!!!!クソッタレ!!!!クソッタレ!!!!クソッタレ!!!!」


 鳴海は”クソッタレ”と叫びながら味噌汁が入っている雪平鍋を振り回す


鳴海「(味噌汁が入っている雪平鍋を振り回しながら大きな声で)クソッタレ!!!!クソッタレ!!!!クソッタレ!!!!クソッタレ!!!!クソッタレ!!!!」


 鳴海がクソッタレ”と叫びながら振り回している雪平鍋の中の味噌汁が周囲に飛び散る


鳴海「(味噌汁が入っている雪平鍋を振り回しながら大きな声で)クソッタレ!!!!クソッタレ!!!!クソッタレ!!!!」


 ”クソッタレ”と叫びながら味噌汁が入っている雪平鍋を振り回している鳴海の頭と顔には、味噌汁がかかっている

 少しすると鳴海は雪平鍋を振り回すのをやめる

 雪平鍋の中の味噌汁は鳴海の全身、キッチンに飛び散り、雪平鍋の中は空になっている

 

鳴海「クソッタレ・・・」


 鳴海はシンクの中に雪平鍋を放り込む


◯3127貴志家風呂(夜)

 外は雨が降っている

 風呂にいる鳴海

 鳴海の髪の毛は金髪になっている

 鳴海の顔面には痣がある

 鳴海は全裸になっている

 鳴海の頭と顔には味噌汁がかかっている

 シャワーを手に取る鳴海

 鳴海は水栓のハンドルを捻りシャワーのお湯を出す

 シャワーを浴びる鳴海

 

鳴海「(シャワーを浴びて 声 モノローグ)医者が言ったように菜摘は数日で一般病棟へ移されたが、それは俺たち家族にとって試練に過ぎなかった」


 鳴海はシャワーを浴びながら後頭部をかく

 鳴海がシャワーを浴びながら後頭部をかくと、鳴海の後頭部から味噌汁のわかめが出て来る

 シャワーを浴びるのをやめる鳴海

 鳴海はシャワーで味噌汁のわかめを洗う

 少しすると鳴海はシャワーで味噌汁のわかめを洗うのをやめる

 味噌汁のわかめを口に入れる鳴海

 鳴海は味噌汁のわかめ入れた瞬間、味噌汁のわかめを吹き出す

 少しの沈黙が流れる

 鳴海は再びシャワーを浴び始める


鳴海「(シャワーを浴びながら 声 モノローグ)他でもない菜摘自信の手によって、安堵出来るはずの喜ばしい出来事は混沌へとすり替わった」


◯3128波音総合病院廊下(日替わり/深夜)

 外は弱い雨が降っている

 波音総合病院の廊下にいる菜摘

 波音総合病院の廊下は薄暗い

 波音総合病院の廊下にはナースステーションがある

 波音総合病院のナースステーションにはナース服姿の風夏と数人の看護師がいる

 波音総合病院のナースステーションにはテーブル、パソコン、椅子、書類などがある

 風夏の机の上にはパソコン、たくさんの菜摘のカルテ、筆記用具、コーヒーなどが置いてある

 机に向かって椅子に座っている風夏

 ナースステーションにいる風夏と数人の看護師たちはコーヒーを飲みながらパソコンで作業をしていたり、書類に何か書き込んだりしている

 菜摘は痩せている

 菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている

 菜摘の髪の毛は傷んでくすんだ金髪になっている

 波音総合病院の廊下の壁に手を当てながらフラフラ歩いている菜摘

 菜摘は波音総合病院の廊下の壁に手を当てながらフラフラとナースステーションの前を通りがかる

 パソコンで作業をするのをやめる風夏

 風夏はコーヒーを一口飲もうとする

 風夏がコーヒーを一口飲もうとすると、波音総合病院の廊下の壁に手を当てながらフラフラとナースステーションの前を通りがかっていた菜摘のことに気付く

 風夏は慌ててコーヒーを飲もうとするのをやめて菜摘の元へ駆け寄る


鳴海「(声 モノローグ)一般病棟へ移されたその日の夜、菜摘は病院を抜け出そうとしているところを姉貴に止められた」


◯3129波音総合病院/菜摘の個室(日替わり/昼)

 外は弱い雨が降っている

 波音総合病院の菜摘の病室にいる菜摘と看護師

 菜摘はベッドに座っている

 菜摘は痩せている

 菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている

 菜摘の髪の毛は傷んでくすんだ金髪になっている

 菜摘のベッドの上には車輪付きのテーブルが出ている

 看護師はご飯、味噌汁、焼き鮭、卵焼きが乗っているお盆を持っている

 ベッドの横には椅子が置いてある

 ベッドの隣には棚があり、小さなテレビ、筆記用具、”鳴海くんとしたいことリスト”のノートが置いてある

 窓際には花瓶が置いてあり、花が飾られてある

 ご飯、味噌汁、焼き鮭、卵焼きが乗っているお盆を車輪付きのテーブルの上に置く看護師


鳴海「(声 モノローグ)それ以降、菜摘の入院態度が変わったのだ」


 菜摘は車輪付きのテーブルの上に置いてあるご飯、味噌汁、焼き鮭、卵焼きが乗ったお盆を手で払い落とす


 時間経過


 夜になっている

 5人の看護師が菜摘の病室にいる

 菜摘は3人の看護師に取り押さえられている

 3人の看護師に取り押さえられながら暴れている菜摘

 看護師2は錠剤と水の入ったコップを手に持っている


鳴海「(声 モノローグ)生まれた時から波音総合病院に世話になり続けている菜摘は、スタッフたちにもよく知られている存在だ。挨拶はこと欠かさず、検診が終われば丁寧にお礼を言うあいつの姿は印象深いに違いない」


 看護師1が暴れながら取り押さえられている菜摘の口を無理矢理開けさせる

 暴れながら取り押さえられ無理矢理口を開けさせられている菜摘に、錠剤と水を飲ませる看護師2


鳴海「(声 モノローグ)菜摘の変貌ぶりを見ると多くのスタッフがショックを受けたが、瞬く間に悪評は広がり、猫を被っていただけだとか、彼女も所詮18、19の子供でしかないという辛辣な声が飛び交うようになった」


 看護師1は暴れながら取り押さえられている菜摘の口を無理矢理閉じさせる

 暴れながら取り押さえられている菜摘に錠剤と水を飲み込まさせる看護師2


鳴海「(声 モノローグ)ただその一方で、俺たちは菜摘の変化を初めは気付くことが出来なかった」


 時間経過


 日替わり

 朝になっている

 外は晴れている 

 外は蝉が鳴いている

 ナース服姿の風夏が菜摘の病室の中に入って来る

 風夏はロールパン、ハム、サラダ、バナナが乗っているお盆を持っている

 ロールパン、ハム、サラダ、バナナが乗っているお盆を持ったまま菜摘に声をかける風夏

 菜摘はロールパン、ハム、サラダ、バナナが乗ったお盆を持っている風夏と話をする


鳴海「(声 モノローグ)菜摘は俺や姉貴、すみれと潤さんに対してはいつも通りの接し方をしていた」


 菜摘と話をしながらロールパン、ハム、サラダ、バナナが乗ったお盆を車輪付きのテーブルの上に置く風夏


鳴海「(声 モノローグ)姉貴が看護師仲間からの悪評を聞き付け、やっと俺たちにその情報が回って来た頃には、菜摘の体重は5キロも落ちていた」


 菜摘は”いたただきます”と言って朝食を食べ始める


 時間経過

 夕方になっている 

 夕日が沈みかけている

 菜摘の病室にいる鳴海

 鳴海の髪の毛は傷んでくすんだ金髪になっている

 鳴海はベッドの横の椅子に座っている

 話をしている鳴海と菜摘


菜摘「だってお腹がいっぱいだったんだよ」

鳴海「いっぱいでも食べなきゃダメだ」

菜摘「そんなにたくさん食べたら気持ち悪くなるもん」


 少しの沈黙が流れる


菜摘「鳴海くん、今日は早いんだね」

鳴海「早上がりだったからな」

菜摘「そうなんだ」

鳴海「ところでこの間の味噌汁は美味かったぞ」

菜摘「この間のって?」

鳴海「日曜日さ、作り置きしてくれただろ」

菜摘「作り置きじゃなくて鳴海くんと一緒に食べる予定だったんだよ」

鳴海「よ、予定っていうのは変わるものだ」


 再び沈黙が流れる


鳴海「あ、あんまり看護師さんたちに迷惑をかけるなよ」

菜摘「うん」

鳴海「姉貴も心配して・・・」

菜摘「(鳴海の話を遮って)鳴海くん」

鳴海「な、何だ?」

菜摘「私、いつ退院出来るのかな」

鳴海「き、きっともうすぐさ」

菜摘「もうすぐって・・・?」

鳴海「も、もうすぐはもうすぐだ」


 少しの沈黙が流れる


菜摘「私・・・早くお家に帰りたいよ・・・」

鳴海「あ、あんなオンボロハウスにか?」

菜摘「あれが私の家だもん・・・」

鳴海「も、もっと良いところに住みたいって思えよ、例えばピラミッドの地下とかスフィンクスの頭上とかさ」

菜摘「どちらも住むところじゃないよ鳴海くん」

鳴海「ぴ、ピラミッドは古代人が暮らしていた場所じゃないのか?」

菜摘「ピラミッドは古代人のお墓だと思う」


 再び沈黙が流れる


鳴海「な、何にしても体が良くなれば退院出来るしエジプトに引越すことだって可能だ」

菜摘「私、引越したいわけじゃないよ」

鳴海「そ、そうか」

菜摘「早くお家に帰りたいだけだもん」


◯3130波音総合病院ラウンジ(夕方)

 夕日が沈みかける 

 外は蝉が鳴いている

 波音総合病院のラウンジにいる鳴海とすみれ

 波音総合病院のラウンジは広く、たくさんのテーブルと椅子が置いてある

 波音総合病院のラウンジには鳴海とすみれ以外にも数人の利用者がおり、スマホを見たり、読書をしたりしている

 テーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている鳴海とすみれ

 鳴海の髪の毛は傷んでくすんだ金髪になっている

 話をしている鳴海とすみれ


鳴海「俺と話す時はいつもの態度と変わらないと思います」

すみれ「そうですか・・・」

鳴海「い、今までにこういうことはなかったんですか?」

すみれ「それがないのよ・・・菜摘は小さい頃から反抗しない子でしたから・・・」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「お、遅れて反抗期が来たんですよ」

すみれ「なら私や潤くんにも歯向かうと思います」

鳴海「お、俺も高校生の頃は相手を選んで態度を変えていましたし、必ずしもすみれさんたちに反抗するとは限らないんじゃないですか?」


 再び沈黙が流れる


すみれ「介護施設で働いている人から聞いたことがあるのだけど・・・お年寄りの方の中には性格が小学生くらいの子供に戻ることがあるそうよ」

鳴海「そ、それが何です?」

すみれ「子供なら好きな人には甘えるし、嫌いな人には反抗するでしょう?」

鳴海「す、すみれさんは菜摘に幼児退行が起きていると思ってるんですか?」

すみれ「医学的な根拠がある話じゃありません、ただ母親として、最近の菜摘を見ていてそう思ったんです」


 少しの沈黙が流れる


すみれ「菜摘の病気は本当に未知だから、精神面を含めても今後どんな影響が出るか・・・」

鳴海「そうですね・・・」

すみれ「鳴海くん」

鳴海「な、何ですか?」

すみれ「菜摘が治療を拒み続けるようであれば、一度退院も考えてみるべきかもしれません」

鳴海「た、退院?」

すみれ「菜摘は私にも帰りたいと言っていました、病院から逃げ出そうとしたのも鳴海くんとの生活が恋しいからだと思います」

鳴海「た、退院してどうするんですか?俺は日中仕事でいないし、菜摘に何かあった時もすぐに面倒を見れるってわけじゃ・・・」

すみれ「潤くんは整備士の仕事を休業してくれるそうです。なので鳴海くんが家にいれない時は私たちが菜摘の側についていますよ」

鳴海「そ、それでも病院にいた方が安全じゃないですか」

すみれ「もちろん必ず退院させて欲しいというわけじゃないの、ただ選択肢として覚えてもらえたら・・・」


 再び沈黙が流れる


鳴海「わ、分かりました・・・」

すみれ「ありがとう、鳴海くん」


◯3131波音総合病院/菜摘の個室(日替わり/深夜)

 波音総合病院の病室に一人いる菜摘

 菜摘はベッドに座っている

 菜摘は痩せている

 菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている

 菜摘の髪の毛は傷んでくすんだ金髪になっている

 ベッドの横には椅子が置いてある

 ベッドの隣には棚があり、小さなテレビ、筆記用具、”鳴海くんとしたいことリスト”のノートが置いてある

 窓際には花瓶が置いてあり、花が飾られてある

 カーテンの隙間から月の光が差し込んでいる

 菜摘は外を眺めている


鳴海「(声 モノローグ)すみれさんの言葉に拍車をかけるかのように、菜摘はそれからも病院から抜け出そうとした。何度も何度も、おぼつかない足で外に出ようとしては捕まるの繰り返しで、結局一階にすら辿り着くことはなかった」


◯3132帰路(日替わり/夜)

 一人自宅に向かっている鳴海

 鳴海の髪の毛は傷んでくすんだ金髪になっている

 鳴海は部活帰りのたくさんの波音高校の生徒とすれ違っている


鳴海「(声 モノローグ)数日間、仕事は休んだ。まだ勤めて半年にもなっていない俺は有給が貰えず、風邪を引いたと嘘をつくしかなかった」


◯3133貴志家リビング(深夜)

 リビングにいる鳴海 

 テーブルに向かって椅子に座っている鳴海

 鳴海の髪の毛は傷んでくすんだ金髪になっている

 テーブルの上には電気代、水道代、ガス代などの公共料金の請求書が置いてある

 鳴海は立ち上がる


鳴海「(立ち上がって 声 モノローグ)結婚生活初の妻の入院は、俺にとってまた別の厄介な問題を引き起こした」


 時間経過


 鳴海はテーブルに向かって椅子に座っている 

 通帳預金を見ている鳴鳴海


鳴海「(通帳預金を見ながら 声 モノローグ)今まで姉貴やすみれさんと潤さんに甘えて来た分が、大人になった責任として一気に降り注いだ」


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