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筋肉師匠とおまけの冒険者。かりそめ聖女は村を救う?!

師匠のゼノと弟子のレイ(ただいま、美女に変身中)。おまけで、勘違い冒険者がついてきた。裏切り者と魔族の追手をかたずけつつ、鉱山に向かっておりますが・・・途中で村を救ったり、レイの聖女伝説加速中です。

道行く人々はすれ違うたびに振り返る。長い銀髪をなびかせる絶世の美女――に変えられたレイだった。

元は誰もが振り返る超絶イケメンなのだが、中身は致命的なまでにドジで、しかも行く先々で女性にモテすぎてトラブルを連発する。

その「残念なモテ運」に嫌気がさした師匠のゼノは、自身の素性(本来は巨大なオオカミの魔物)を隠すために「魔法で筋肉隆々の大男」へと姿を変えつつ、レイを気まぐれな魔法で可憐な美少女の姿に変えていた。

「師匠、そろそろ勘弁してくださいよ。歩きづらくて・・・ててて。」

いいながら、スカートのすそに躓きそうになる。

「黙れレイ。その方が無駄な寄るやからが減って魔物退治の鉱山へ行きやすい。大体、お前が無駄なフェロモンをまき散らすからだろう。相殺するにはこれが一番だ。まっ、俺のこの肉体、なかなか気に入っているがの。みろ、力がみなぎって悪くないぞ」

かつて魔界の重鎮でありながら、退屈しのぎに人間界へ出奔した「裏切り者」であるゼノは、はち切れんばかりの大胸筋をピクピクと動かして、がははと豪快に笑ってみせる。

中身はオオカミの大魔導士のくせに、見た目は完全に

「脳みそまで筋肉でできていそうな男」そのものだった。

二人がそんな言い合いをしながら街外れの林道を抜けたその時、空間がぐにゃりと歪んだ。


「――見つけたぞ、裏切り者のゼノ! 人間界の薄汚い冒険者に身をやつそうとも、

その禍々しい魔力は隠せぬわ! 大魔王様の命により、その首をもらい受ける!」

現れたのは、禍々しい角を生やした魔族の暗殺部隊だった。

「チッ、面倒な。……おい、ここは筋肉らしく、力押しで――」

今まさに魔法をぶっ放そうとした瞬間。

「待てい!!」

林の奥から一人の青年冒険者が猛烈な勢いで飛び出してきた。

剣を構えた彼は、怯える(というか、ドレスの裾に足を取られている)美少女レイの前に身を挺する。


「安心するんだ、お嬢さん! この僕、新進気鋭の冒険者・アルスが、

君をあんなむさ苦しい大男と、魔族どもから守ってみせる!」

「え? いや、そっちのゴツいのは俺の師匠で――って、わわっ!?」


レイは慌てて説明しようとしたが、ドテッと派手にすっ転んだ。

アルスはそれを「魔族の風圧に怯えて倒れた」と完全に勘違いし、

怒りに燃えて魔族の暗殺部隊へ斬り込んでいった。

実のところ、アルスの実力はそこそこだったが、ゼノが後ろからこっそり無詠唱の重力魔法で魔族の動きを縛っていたため、奴らのトドメを軽く刺すことができた。

おかげで、レイの前で「無事に追手を全滅させた」と思い込んでしまった。


「ふう、片付いた。怪我はなかったかい、僕の女神(ミューズ)?」


キラーンと爽やかな笑顔を向け、転んだレイに手を差し伸べるアルス。

レイは泥だらけの顔で引きつった笑みを返すしかなかった。

魔族を片付け、先を急ごうとするレイとゼノ。

しかし、アルスは目を輝かせて二人の後ろをピタリとついてくる。

「おい、なんでついてくる・・・の?」

(しかし魔法で美少女ボイスに変換された)声でレイが尋ねる。

「当然さ! あんな恐ろしい魔族の襲撃に遭いながら、一瞬も気高さを失わなかった君の姿に僕は魂を奪われた! ぜひ、僕を君の弟子にしてください、レイ様!」

「はあ!? 俺、いや私年下だし、そもそも弟子だなのよ! ほら、この筋肉ダルマが私の師匠!」

「いやいや、そちらの大男はただの護衛か荷物持ちでしょう? 君のような気高き魔導の才能を感じる御方が、そんな脳筋を師と仰ぐはずがない!」

隣で「脳筋」と言われた師匠ゼノは、ピキピキと青筋を立てて変装を維持するために

「がはは! 言うようになったじゃねえか若造!」と無理やり笑い声を上げている。

残念なことに、レイの「男を引き寄せる残念なモテ運」は、完全にパワーアップしていた。

こうして、奇妙な3人旅となった一行は、目的の鉱山へ向かう途中、ある小さな村を通りかかった。


前方の村から激しい悲鳴と、不気味な咆哮が聞こえてきた。

村を囲む粗末な柵を破壊し、凶暴なAランク魔物『ガイア・オーガ』の群れがなだれ込んでいる。


言うがより早く、アルスが飛び出す。

「待て! 村人には手を出させん!」


だが、事は一刻を争う。すでに村は悲惨な状況にあった。

鉱山から降りてきたとおぼしき、巨大な魔獣(ギガントベア)の群れに囲まれ、

村の防衛柵がまさに破壊されようとしていたのだ。


「ひええ! お、お嬢さんたち、逃げてください! 村はもうおしまいだ!」

村長が絶望の声を上げる。

アルスが「僕が食い止める!」と剣を抜いたが、相手は数が多すぎる。

ゼノもここで本来の姿に戻ったり、大魔法を使ったりすれば一発だが、

それでは「筋肉冒険者」の変装がバレてしまう。

「おいゼノ、お前がその筋肉でなんとかしろよ」

「アホか、この数相手に拳一つで殴り合えるか。……おいレイ、ドレスをこれ以上汚したくなければ、さっさと吹き飛ばせ」

「まったく、人使いが荒いんだから……!?」

レイは文句を言いながら前に出ようとした瞬間両手を突き出し、最高峰の古代魔法の呪文を叫んだ。


「『天より降り注ぐ光の劫火(アルテミス・レイ)』――!!」

レイが放った魔法により、曇り空が割れ、眩いばかりの聖なる光のレーザーが幾筋も降り注ぐ。

光に包まれた一瞬。それは建物を一切傷つけることなく魔獣の群れだけを一瞬にして蒸発させた。


……そしてレイは、勢いあまって泥溜まりに顔面から突っ込んだ。

あせって目のまえの石に躓いたのだ。いろんな意味で静寂が訪れる。

あまりの神々しさと圧倒的な威力に、村人たち、そしてアルスまでもがその場にひれ伏した。


「おお……なんという慈愛の光……自らの身をなげうって魔法を放たれるとは……」

「我々の祈りが天に届いたのだ! 聖女様だ! 聖女様が降臨されたぞ――!!」


村人たちは涙を流し、泥だらけで起き上がったレイに向かって拝み始める。

「あ、いや、聖女とかじゃなくて――」

レイが慌てて顔の泥を拭いながら弁明しようとするが、

アルスがその足元に跪き、大感動の面持ちでその手を握った。


「やはり僕の目に狂いはなかった……! あなたは世界を救う聖女だったのですね、

レイ師匠!! 僕のこの命、生涯あなたに捧げます!」

「だから話を聞けって!!」

隣では、師匠ゼノが、肩を震わせて「がははは! 聖女レイ様万歳!」と大爆笑している。


本人たちの思いとはうらはらに、聖女伝説は加速するのだった。



こんばんは!今日も更新できました。読んでくださってありがとうございます。気に入っていただけたら嬉しいです。

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