新しい家とゼノに最強の追手現る???? 初めての祭り
恐ろしい追手、あらわれましたね。今回は、全員平穏?に過ごせてよかったです。
街から少し離れるが少し年季は入っているものの、部屋数は十分。
1階の広いリビングは、アルスとレイが次の作戦を練る場所。
庭の頑丈な裏庭は、ゼノが毎日筋肉を追い込むトレーニング場。
ポテチは暖炉の前の特等席を早々に占拠。
ここを正式なホームとして冒険者稼業を続けていくことを決めたのだ。
宿屋でゼノが魔族であることを知って驚きつつもあっさり受け入れたアルスは、今やこの奇妙なシェアハウスの立派な中心人物。
しばらくの間、彼らは穏やかで賑やかな、平穏な日常を満喫していた。
◇
そんな平穏なある日の午後。
一軒家の玄関の扉が、激しくノックされました。
レイが不思議に思いながら扉を開けると、そこに立っていたのは――言葉を失うほど妖艶な美貌を持った、大人の色気を漂わせる美女。
「あら、可愛い坊や。……ここに、ゼノはいるかしら?」
「・・・・・。」
「お、お前! なんでここにいるんだ……!?」
あの師匠ゼノが、見たこともないほど情けない声を上げ、じりじりと後退する。
「何よ、その態度は。愛しの婚約者がわざわざ迎えに来てあげたのよ、ゼノちゃん?」
妖艶な美女――その名はカルラ。
彼女がふわりと甘い香りを漂わせながら一歩進むとゼノは「ひえっ」と身を翻し、
リビングのソファを飛び越えて必死に逃げ回る。
一軒家は大パニック! コミカルな鬼ごっこ
「ゼノちゃんって呼ばれてるぞ旦那! つーか、なんでそんなに怯えてんだよ!」
「師匠、逃げないで話し合ってください!
ほら、カルラさんも壊れそうな家具の隙間をすり抜けないで!」
アルスとレイが止めようとしますが、二人の大人のドタバタ劇は止まらない。
ゼノがテーブルの周りをぐるぐると猛ダッシュで逃げれば、
カルラは「待ちなさい!」と、まるでダンスを踊るような優雅な足取りで、
しかし恐ろしい執念で追い詰めます。
「フニャーーーッ!!」
カルラが勢いあまってポテチのしっぽをふんだ。
怒りが収まらないポテチは興奮して、危うくリビングで巨大化しそうだ。
カルラがリビングの壁にゼノをドン! と激しく追い詰め(壁ドン)、妖しく目を細めました。
「なんであの夜、黙って私の前から消えたのよ!?」
ゼノは巨体を縮こまらせ、ついに観念したように白状し始めました。
「……すまねぇ、カルラ。お前を嫌いになったわけじゃねぇんだ」
ゼノはトレードマークのガントレットを外し、頭を掻きむしりながら、
ぽつりぽつりと本音を語りだしました。
「俺は……魔族の身でありながら、同胞の『過激派』のやり方に反旗を翻した。
だから俺は、あいつらから『裏切り者』として命を狙われる追われの身なんだ。
実際、この前も北の砦の奴らが街の近くまで来てやがった……」
ゼノの真剣な横顔に、アルスとレイは息を呑みます。
「お前を一緒に連れていけば、間違いなくあいつらの標的になる。
お前を巻き込みたくなかった。
だから……黙って去るしかなかったんだ」
不器用なゼノが、唯一見せた繊細な優しさ。
それは愛するカルラを危険から遠ざけるための、態度だったのだ。
部屋がしんみりとした空気に包まれ、レイが「師匠……そんな理由が……」と涙ぐみかけた、
その時。
カルラは呆れたようにふうっと溜息をつくと。
がしゃああああああー。
ゼノを全力で殴り飛ばす。壁にたたきつけられた。みんなの口があんぐり空いている。
「バカね、ゼノちゃん」
「私がそんなタマに見える? あなたを狙う追手なんて、私が全員ぶっ飛ばすわよ。
魔法だって得意なのよ。それとも何、この私の実力を信じてないわけ?」
カルラの手の平から、バチバチと不穏な紫色の魔力の火花が上がっている。
彼女もまた、ゼノに引けを取らない超高位の魔族だったのだ。
「だ、旦那……これ、巻き込まないようにっていうか、巻き込まれた方が追手が可哀想なやつじゃ……」
アルスが引きつった笑顔で呟くと、ゼノの肩に飛び乗ったポテチも、
カルラの強さを察して急におとなしくなる。
「そういうわけだから、今日から私もここに住むわ。」
「えっ!? 住むの!?」
結局、ゼノの不器用な逃亡劇はカルラの圧倒的な愛と武力?の前にあっけなく敗北。
北の砦から逃げ出した幹部という不穏な影を残しつつも、
街外れの一軒家には「最強の姐さん」が新たに加わった。
街外れの一軒家に新生活の賑やかさが定着した頃、
タイミングよく街で年に一度の「大収穫祭」が開催されることになった。
日頃の家事バトルや特等席争いをひとまず休戦し、
全員でお祭り用の新しい服に身を包み、活気あふれる夜の街へと繰り出す。
カルラ & ゼノ。
大人の色気たっぷりのドレスを纏ったカルラと、
慣れないお洒落なシャツに身を包んだゼノ。
脳筋男と美女の二人が並んで歩く姿は、お祭り騒ぎの街中でも異様なほど目立っている。
カルラはゼノの腕に嬉しそうに絡みつき、
「ゼノちゃん、あの屋台のお肉美味しそうね」とおねだり。
ゼノは顔を真っ赤にしながら、人混みをぐいぐいと掻き分けてカルラをエスコートしている。
ポテチ
カルラとの「ゼノの肩争奪戦」に敗れたポテチは、今回はレイの頭の上を臨時の定位置にしていた。
家猫サイズでちょこんと乗ったまま、屋台から漂う香ばしい匂いに鼻をクンクンさせている。
レイが串焼き肉を買うたびに、肉を横取り。
周囲の子供たちから「可愛い猫ちゃん!」と囲まれると、伝説の魔獣としてのプライドが邪魔をするのか、シャーーッと威嚇するものの、見た目が可愛すぎて逆にさらに撫で回されている。
レイ & アルス
男の姿に戻ったレイとアルスは、孤児院時代には絶対に味わえなかった
「お祭りの楽しさ」を噛み締めていた。
「おいレイ、あっちの射的の屋台、景品に美味そうな高級干し肉があるぞ!」
「本当!? アルス、僕が魔法で狙いを定めて……」
「バカ言え! お前が打ったら屋台ごと消し飛ぶだろ! 俺の双剣のコントロールに任せとけ!」
そんな風に笑い合いながら、二人は子供のように屋台のゲームや食べ歩きを満喫。
失われた少年時代の穴を埋めるように、心からお祭りを楽しんでいる。
各自祭りを楽しんでいたが、いつの間にか街の中央広場に集まってきた。
広場では大きな焚き火を囲んで人々が踊り出す時間になる。
ポテチを抱えたレイと、串焼きを片手に持ったアルスは、
カルラに強引に手を引かれて不器用に踊らされているゼノの姿を眺めていた。
「……あんなに楽しそうな師匠、初めて見たよ」
レイがハーブエールを一口飲みながら、優しく微笑みます。
「そうだな。あの旦那が魔族だろうが裏切り者だろうが、あんな顔して笑う奴が悪い魔物のわけねぇよ。……カルラ姐さんも、旦那を追ってきたっていうより、ただ旦那のことが大好きなだけだしな」
アルスはそう言って笑い、夜空を見上げました。
「レイ、俺さ……孤児院を先に逃げ出した時、お前を置いていったこと、ずっと後悔してたんだ。でも、お前があの過酷な日々を生き抜いて、こんなに温かい奴らに出会えて……そしてまた俺の前に現れてくれて、本当によかった」
突然のアルスの本音に、レイは少し驚いた後、そっとアルスの手の上に自分の手を重ねました。
「うん。僕もだよ、アルス。僕たちの旅はまだまだこれからだけど、この家族なら、どこまでだって行ける気がする」
二人の絆が改めて確かめられたその時、夜空に大収穫祭を締めくくる大きな花火が打ち上がる。
大輪の光が街を照らす中、小さく鳴くポテチを真ん中に挟んで、一行の笑い声が響き渡ります。
彼らはかけがえのない「家族の時間」を満喫するのだった。
そんな彼らを不穏な影が見ているとも知らずに。
翌朝、リビングで朝食を囲んでいた一行の前に、カルラが信じられない宣言を突きつける。
「決めた。私も今日から冒険者ギルドに登録する!
一緒に冒険するから、当然よね?」
「「「えええええええええっ!?!?!?」「」」
再び一軒家に響き渡る絶叫。
「ちょっと待て姐さん! ギルドの連中、こないだのレイの穴あけ魔法でただでさえビビってんだぞ!? そこに姐さんまで行ったらギルドが物理的に崩壊する!」と頭を抱えるアルス。
ゼノも「カルラ、お前の魔力は目立ちすぎる。おとなしく家で待っていてくれんか……」
と必死に宥めますが、
カルラが「あら、私の言うことが聞けないの、ゼノちゃん?」
と妖しく微笑むと、筋肉師匠は一瞬で沈黙した。
レイの頭の上からゼノの肩へと飛び移ったポテチを連れ、
最強の魔物姐さんを先頭に、一行は再び冒険者ギルドへと向かう羽目になりました。
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