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王子様はセクハラおやじ?

学園祭後の休暇明けの昼休み、男爵家のシェフが作ってくれたランチボックスを持って教室を出ようとしたら

廊下がざわざわしはじめました。


「ココ・チムニー!」元気いっぱいの王子様の声です。

下級生の校舎に王子様が側近の方々をぞろりと連れて現れのです。それはざわざわしますびっくりです。


「昼は一緒に食べよう!」満面の笑顔で宣言する王子様

「私とですか?」


手に持ったランチボックスをルイス様のお兄様に取り上げられて持たれて、

私は後夜祭の時みたいにまた手を王子に掴まれて温室に連れて行かれています。

校舎から校庭からその姿を見た生徒たちが同級生も上級生も更にざわざわしています。

これはよくない事なんんでしょうか。


学生食堂に無料のお茶を貰いに行こうと思っていた所だったけど、温室では大柄赤毛の騎士様がじゃばじゃばお茶を大きなカップに入れて下さったのでよしとします。

私は身分の高い人には逆らいません。


黄金を溶かした様なキラキラ金髪王太子のレオン・ルイ王子様、

銀髪は宰相閣下のご子息サン・ジュスト様、

赤毛の大柄な騎士様は辺境伯の嫡男ガストン様、

騎士団長の嫡男、ルイス様のお兄様ミシェル様、

紺色のストレートヘアは神官長のご子息で何故か次期魔導士長候補の天才ジル様

みんな私よりずっとずーっと身分の高い方たちです。


ランチボックスの中はサーモンとチーズパティにブリオッシュでした。

小さいりんごもありました。

偉い人と一緒でもいつでもパンもおかずも果物も美味しいです。


「ごちそうさま!」

「なんだそれは?」

そういえば、この世界の人は食事の後にごちそうさまは言わないのです。


「美味しかったって事です。」

「ココはパンが好きなのか?」

「大好きです。子供の頃は毎日パン屋さんの近くで見張ってました」

「何を見張ってたんだ」

「お店の人がパンを落とすのを」

「パン屋がパンを落とすのか?」

「そりゃ毎日パンは落ちませんが、時々配達の時や店頭に並べる時にぽろっと落とす時があるので、その時はダッシュで落ちたパンを掴んで速攻口に入れるんです。」

「落ちた物を食べるのか?」

「落ち切る前のをキャッチしちゃダメなんです。ちゃんと地面に落ちたのじゃないと捨てるパンにはならないので」


「捨てるパン?」

「そうです。捨てるパンじゃないのを食べたら泥棒ですから」

「パン屋さんが落としたパンは焼きたてなのでサクサクしてすごくいい匂いで美味しいんです」


私を見ている王子様の眉毛がぐにゅっと変な形に動きました。

側近の皆様も普段と違う表情をそれぞれ浮かべて私を見てます。


「あ…の…食堂や宿屋のゴミ箱の食べ残しもそんなに臭くないんですけど、パンはいい匂いなんです」

返事がありません。みんな黙ってしまいました。

それはまあ、王子様や貴族や地位のある家のご子息たちは落ちたパンを食べた事はないでしょうから反応に困ってもしかたありませんが。


しばらくして

「ココは男爵家で何を食べているんだ?」

王子様が何かに怒っている様な声で聞きました。

「落ちたパンを食べていたのは、男爵家に来る前の孤児院にも来る前の事ですよ?」

男爵家が誤解されてはいけません。


慌てて私は煙突掃除の為に火で炙られて怖かったとか、ごわごわの豆袋を着るとちくちくするとか、道端で眠ると寒いとか、出店の串焼きや蒸しじゃがいももこれまた落ちれば食べられるので美味しいとか・孤児院に入った時丸刈りにされた事などを一生懸命話しました。


話す度に王子様の眉毛は上に行ったり下に行ったりぐにゃぐにゃ忙しく動かして、

とうとうその眉の下の青い宝石みたいな綺麗な瞳を水溜まりみたいにして、そのうちボロボロと涙を流して声まであげて泣き出してしまいました。

男の子なのに…


どうしよう王子様を泣かせてしまいました。不敬でしょうか?

側近方はそれぞれ困った様な、悲しいような怒った様な顔をしてます大変です。


慌てた私は刺繍したハンカチをペチコート下のポケットから出して

王子様の顔の涙を拭こうとしましたら、近づきすぎてしまったのでしょうか、

王子様は「うっ」とまた鳴き声出して私を両腕でがっしり抱きしめました

「苦労、したんだなココは」


びっくりしたけど嫌な感じはしませんでした。顔が王子様の胸にあたって暖かいです。

よく考えればこの世界でこんな風に抱き締められたのは初めてだと気付いて、その感触に胸の奥が一瞬ツキンと痛くなりました。

煙突掃除の親方も、孤児院シスターも、養女して引き取ってれた女男爵も抱き締てはくれませんでした。


でも孤児院で世話をしている時に年下の子供たちは抱きついて来ていました。

上級生の中でも長身の王子様の身体に抱き締められると、

下級生一小柄な私はもしかしたら子供みたいかもしれません。

子供として大人に抱き締められてる様な気分なって

さっき傷んだ胸の奥から全身がぽかぽかして来ました。


記憶にはないけれど、覚えていない赤ちゃんの頃なら、今生で私、ココを生んだおかあさんが

抱っこしてくれたかもしれないと思い至って…

王子様と孤児院の子とお母さんを連想したのが可笑しくなって、

私はついくすくすと笑い出してしまいました。


「何を笑っているんだココ?」と王子様が私の顔を覗き込もうとしたみたいです。

私は返事をしようと王子様を見上げる様に顔を上げたら、下げて来た王子様の顎と

私のおでこがガチンと音を立ててぶつかりました。

痛くてつい出てしまった涙を拭きながらも可笑しくてくすくす笑いながら、やっぱり痛くて顎を抑えてるけどこちらを見て王子様もやっぱり笑って涙を流しています。


側近たちも先程とは違って、呆れた様な表情をしたり、苦笑いをしたり、赤毛の騎士様は大笑いしてます。

「あの、でもあの王妃様の政策で!」

「あれで私も、私みたいな他の子供も、貴族のみなさんのお家にいる庶子の子も

きっとみんなそれぞれ違った苦労していた所を、王妃様が法令を出して掬って下さったので!

今はとても幸せですよ」


「そうか…母上の政策が」


目をゴシゴシこすったと思ったらその手を握って胸に当てて王子様がつぶやきます。

しぐさが孤児院の子供たちと一緒で王子様なのに…と又くすっと笑ってしまいましたら

王子様ははっとした様な顔で私を見て


「ココが今幸せでよかった」と胸に当てた反対の手で私の手を握りました。


「流石王妃様ですね」と銀髪様が言うと

「へえっ 政策ってそんな風に役に立つものなんだな知らなかった」と赤毛の騎士様が関心した様に頭をかいています。

紺色の魔導士長候補は下を向いて何か考えてますし。

ルイス様のお兄様のミシェル様は私に向かってうなずきました。


泣いたり笑ったりした昼休みは終わって温室を出ると、ルイス様が立っていました。

「教室まで送るよ」と言って前を歩いて行きます。

いつも穏やかに微笑んでいるルイス様が少し怒った様な顔をしています。

「ココは殿下に気に入られたんだね…」

教室に着いた所でルイス様が言いました。少し悲しそうな声でした。


そんな昼休みから殆ど毎日

私は王子様達と一緒にお昼は温室で過ごす様になりました。

何故だかはわかりません。呼ばれたら行くだけです。身分の高い人は逆いません。


ランチを食べて王子様の素敵なデザートを分けて頂いたり

他愛のない会話をしているだけですが、時々王子様の目線が気になります。

私の育って来た胸元を見ている様な気がするし、必ず隣に座らされて距離は近いし

もしかして王子様ってセクハラおやじの転生者だったりするんでしょうか

金髪で碧い瞳が綺麗でこんなに整った顔の王子様に転生出来たらおやじも幸せでしょうね



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