壊滅的な英語センス
神様がいるかいないとかそんなのは人によるんだから、結局はどうでもいい。
信じて幸せになったと思うならそれでいいと思うし、実力で掴み取った幸福だと思うならそれもそれでいいだろう。
「本日はお参り頂き、ありがとうございます」
「いつもありがとうございます、またいらしてくださいね」
遠くでギャルっぷりからは信じられないほどの愛想を見せる長女と三女が見える。
実のところは、神様がいるかいないかを気にして神社に来ている人はひと握りもいないと俺は思う。
だからこういう巫女たちを目にすると、人目的で来ててもおかしくないなとも感じる。
「神職か..。こんな人間がやっても見放されるだけだろうな..」
決して神木ではない木に、もたれかかりながら今日も今日とて勉強をしている俺。
自虐ネタではないが、昨日あんなことを言ってしまっただけに余計に神職というのが遠のいている気がしてならない。
「こんな奴がほんとに神社にいていいんだろうか..」
感謝はしている。
が、気が合わなすぎても迷惑なだけだからな。
その時、長女三女とは別の所で声が聞こえる。
「イェスイェスセンキューセンキュー」
「どんなとこにでもいるのか、外国人観光客は」
丁度国語の勉強をしていたから倒置法を駆使しつつ、声の主とその相手を視界に捉える。
黒髪と合わぬ東雲色を光らせながら応対しているのは残り1人の次女だ。
三女と比べるとやはり劣りはするが、英語の発音だけではどれだけ苦手か分からんからな....
「ディスイズイコールプレゼント!あ、ユーキャンゲットゴッドガード!」
「???」
俺は吹き出しそうな口を必死に腕で抑え、顔の向きを変えた。
英語力壊滅的すぎる!!!
お相手さんは目が点になっていた。
ゴッドガードって名前ガチガチすぎだろ。
でもあまり他の神社では類を見ないことをしているから、説明はしなければならないんだよな。
「Hold on, I don't need to pay anything for this? Is it seriously a gift?」
「あぁ..えっとぉ....」
返ってきたネイティブな発音、こちらは何にもわかってなさそうだった。
「Please accept it as a gift.
The shrine maidens have infused it with their deepest prayers」
「??」
「!!」
俺は次女を助けた。
いや、外国人観光客に教えた。
またわかっていなさそうな次女を隣に、外国の方はカタコトながらも眩しい笑顔でお守りを持って俺たちに告げた。
「マジアリガトー!」
観光客は笑顔でこちらに手を振りながら、奥へと向かっていった。
「三女の言う通り、君の英語センスは壊滅的だったな..」
あの時は深堀りしないようにしてたが、ここまで来るともはや面白い。
ネタにするほかないだろう。
「巫女としての基本的な英語ぐらいなら俺が教えてやるがどうだ?」
「誰がお前なんかに教わるか!」
ムキになって次女は返す。
だがその後すぐに平常に戻してこう言った。
「まあでもその..ありがと。助かったよ。英語はこれからも頑張る..」
やむを得ずみたいな表情ではあったが、恐らく思いはこもっていた。
彼女らしい少し前向きな姿勢に俺は笑った。
「あぁ聞こえなかったなあ」
「な!」
そんな俺からの軽い気遣い。
暗いイメージで終わって欲しくないからな。
彼女は徐々に怒りメーターが増えていってるようだ。
「あーあ、そういう事言うんだ!もう言ってやんない!このバカ!バカ!」
「あぁそりゃどうも」
ふん!と腕を組んでそっぽを向く彼女。
これは俺の気遣いがきいたんじゃないだろうか。
俺がどんだけ嫌われても、巫女としては上手くいくなら別にいいだろう。
彼女はその後また仕事に戻った。
邪魔にならないよう、俺はその場から離れ、 他のふたりを見に行くことにした。
本日二本投稿の予定になっております。
2本目の際は、他作もだします。




