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【かみはで】神様、うちの巫女達が今日も派手すぎます。  作者: 仁波昼海
第1部第5章:心の内に本心を隠して

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知らないだけでね

読者の皆様、心配をおかけして申し訳ありませんでした。

これからも頑張って書き進めて参りますので、改めてかみはで及び蓮たちのことをよろしくお願いします。


応援いただける方は、是非ブックマーク、レビュー、評価、リアクションの方お待ちしております。

改めまして、日頃よりお読みいただけることに感謝申し上げます。

 ※

 

「あぁ〜」


 ノンストップで約一時間。小学生の勉強を見た。


「しんど」


 勉強が得意というのと、勉強が好きであるというのは直結しない。加えて『教える』となれば、相手に見合ったやり方を模索しなければならないためこれまた難しいもの。二週間前までの俺はこんな重労働を……。

 テーブルに腕を伸ばし、突っ伏して冷房を直に受けると、前髪だけがふわふわと浮く。


「うん、正解よ」


 そんな疲れきっている俺の横では、しばらく前から次女が勉強を教えている。いくら英語ができないと言えど、小学校でやる英語なんて高二からすればほんのお遊び程度だろうし、それ以外も問題なくやっているようだった。

 ただ聞いているのもつまらないし、気づかれない程度に視界に捉える。


「次は……ここね。まずどうしてこうなるか分かるかしら?」


 姉妹間でこういう場があったのかどうかは不明だが、側から見ればそれなりに慣れている。

 一緒に問題を読み進めたり、解く過程を説明したりすることはキホンのキの字。だが歳の離れた子と会話するときに、それがすぐ出来るかと言われればそうではないと俺は思うので、彼女は上手くやってのけているんじゃないだろうか。


 『できた!』『……うん、合ってる。やればできるじゃない』——————嬉しそうに声をあげる男の子と柔くなる次女の表情が、細めた目でもくっきりと捉えられる。


 あぁ、やっぱり……そうだよな。


 俺は、今日ここに連れてこられた理由も、これがデートとして成立しているのかもまったく分からない。

 数えるまでもなく人生三回目だし、失敗する可能性なんて大いにあるんだ。何ならすでに見放されている可能性すらなくはない。

 

 だけど一つだけ……言えることができた。


 長女の未来はおっちょこちょいで、めんどくさがり。ついでに呑兵衛だ。三女の紗理奈も後先を考えないところがある。そして次女の()()()は神経質で意外と鈍臭い。

 

 みんながみんな、抜けている。

 でも、それだけじゃないって気付いている。

 

 あの金髪は周りを見て人のことを考えるし、あの紫髪は人との思い出を大切にする。

 そして、黒髪の()()()は……。

 

『あなたも勉強頑張ってるみたいだし』『でも、その……ありがと』『待ちなさい! このアホンだら!』——————人を笑顔にする……なんてな。


 考えといてあれだけど、こういうのってデート終わってから考えるもんだったな。間違えた。

 

 まぁそれでも。腕の中で微笑みながら、俺はしっかりといった。


「誰が未熟だよ、このアホんだら」

 

 

 ※


 〜東雲千尋〜


「は〜いお昼ご飯よ〜」


 上手く見切りをつけて、椎名さんが昼食をを持ってきてくれた。消しカスや折れた鉛筆の芯などを起き上がった天野と私で手分けして片付け、ノートや問題集は子どもたちが自主的にしまった。


「あ〜おなかすいた〜」

「おひるごはんなにー?」

「はいはい今持ってくから」


 椎名さんは、口々に声をあげる子たちにいちいち返答はせず、綺麗になったテーブルにドンとお盆を置く。


「わ! おにぎりだ!」

「わたしおにぎりが一番好き!」

「おれもおれも!」


 一つ一つラップで包まれたたくさんのおにぎり。恐らく私と天野二人のことも考えて少し多めに作ってくれているみたい。 

 

「ほら、二人も遠慮しないで食べてね。あ、でも蓮は食べ過ぎ禁止」

「医者か……なんでもない」

「なーにバカなこと言ってんのよ」


 そんなちょっぴり抜けた会話を聞きながら私も「ありがとうございます」と、一言告げる。


「じゃ、先に食べててちょうだい」


 エプロン姿で持ってくるだけ持ってきて、再びキッチンに向かおうとする椎名さんを、私は咄嗟に呼び止めた。


「え? 食べないんですか?」

「私は残りものでいいのよ〜。とりあえず飲み物取ってくるわ」


 せっかく作ったのに食べない意味が私には分からなかったけれど、人数分の飲み物を運ぶのは一人じゃ難しいはず。「あ、私も!」と、立ちあがろうとしたところで、気付かぬうちに隣に来ていた天野が私の肩を叩いた。


「なによ」

「いや、周り見ろ」

「え?」


 気づけば私の左側にはさっきまで教えていた子どもたちがたくさん集まっていた。みんなおにぎりを手に一つ持っている。


「えっと……なにかしら?」

「いただきますしよ!」「しよー!」


 困惑する私を置き去りにするためか、隣にいる天野が立ち上がった。


「別に『手を合わせていただきます』って言うだけだ、そんな困るなよ。俺が飲み物取ってくるから」

「え、ちょ……待ちなさいよ!」

 

 心なしか小走りで消えた気がする。ほんとどこまでもアイツは……。


 場に残ったのは困惑する私と、目を輝かせる子どもたち。ま、まぁいつもみんなでやってる事だし……大丈夫よね。

 この場に及んで何故か緊張している私がちょっと情けない。


「じゃ、じゃあ……手を合わせて」『手を合わせて‼︎』


 十何人の手を合わせる音が鳴り響いた。


「せーの……」


『『いただきます!』』



 ▽



「どうだったー? お味は」

「めちゃくちゃ美味しかったです!」


 大勢でゆっくりと昼食を食べ終え、私は洗い物を手伝っていた。

 椎名さんの作るおにぎりはおにぎりはおにぎりでも、オムライスにぎりやスパムにぎり、チャーハンにぎりなどバリエーションが豊富で、味にずっと飽きなかった。

 我が家の食いしん坊たちも絶対気にいるだろうし、今度作ってみようかしら。


「ならよかった〜。ちょっと不安だったのよ」

「いえいえ、ほんとに美味しかったです」


 広いシンクを左右に分けて、水洗い係と洗剤係で手分けして作業を行う。単純計算で二分の一に終わるし、だいぶ負担も減ってるはずよね。


「それで……どう? 千尋ちゃん、蓮のことちょっとは分かった?」


 私がラストのコップを渡されたときに、椎名さんはトーンを少し落として聞いてきた。でもそれは決して悪い結果を予想しているわけではなく『ラフな感じで返してほしい』そんな優しさが感じ取れる声色。


 洗い流したコップを吸水シートの上に置いて、借りたゴム手袋をまとめて洗濯バサミで干しかける。

 そして、軽く息を吸いこんだ。


「むっつりだけど優しくて、スケベだけど機転がきいて。ウザいけど勉強はできて、腹が立つけど運動もできる。彼……天野蓮は、掴みようのない人です。きっとこの先でも私が追いつくことはできないかもしれません」


 返答は聞こえてこない。私は求めずに、また口を開いた。


「ですが」


 私は顔を上げ、椎名さんの方を向いて微笑む。


「隣にいてくれれば、少し安心するかもしれませんね」


 ※



「で、どうしてコイツと料理を作らないとダメなんだ?」

「あら、それはこっちのセリフだけれど?」


 小学生たちの昼寝の時間、寝かしつけから帰ってきた天野と、話を終えた私は、エプロン姿で三角巾を頭につけていた。


「うんうん、似合ってるわよ。二人とも。可愛らしいわ〜」


 写真を撮るようなジェスチャーをする椎名さん。若さに執拗な大人はちょっと怖い。


「じゃあ二人にはこれからカレーを作ってもらうわ! [飯を共に作った仲]という仲の良さを表す言葉もあるし〜、これを機にあなたたちの協力が見たいのよ!」


「は?」「え?」


 たしか存在する言葉は【飯を共にした仲】とかだった気がするし……お酒でも飲んでいるのかしら?未来と重なって見えるのだけれど?

 隣を見上げると、天野も頭をかかえている。孤児院には小学生の子しかいないし、同年代の女の子が来てしまったから?いずれにせよ理解不能ね。

 

「材料はそこに全部揃えてあるから、ちょっと多めに作ってちょうだい!」

 

 私……今日椎名さんと初対面よね?


 

 ※


 〜椎名さゆり〜


 半ば強引に二人をキッチンに残し、私は部屋を出る。

 廊下に繋がるドアをしっかりと閉めて、壁の薄いところまで歩いた。


 さすがに料理中まで付きっきりというわけにもいかない。

 とりあえずは二人に任せてみることにした。


 ▽


 数分ほど経ったところで、キッチンから包丁の音が聞こえはじめる。


「なぁ。じゃがいも、これくらいでいいか?」

「若干大きいわ。火が通るのに時間が掛かるから、もう一回り小さくして」

「これでも十分だと思うけどな」

「なら好きにすればいいじゃないの」


 すぐに言い合いが始まった。それでも包丁の音は止まらない。間を置いて、また一定のリズムが廊下まで響いてくる。


 ▽


 包丁の音が止まったか思うと、今度は炒め物をする音が聞こえてくる。


「玉ねぎ、もう入れていいか?」

「見せてみなさい……。まだね、しんなりしていないわ」

「そういうのがあるのか。分かった」


 さっきよりも声の調子は落ち着いている。


 水道を流す音。食器が触れ合う音。それから、鍋の蓋を置くような音。


「……そろそろいいわね」

「じゃあ入れるぞ」

「えぇ」


 短い会話のあと、鍋の中へ何かを入れる音がした。


 ▽


 さらに時間が経つ。


「次は?」

「にんじん切って。私はこっちやるから」

「了解」


 今度は返事だけ。

 包丁の音がまた始まり、別の場所では鍋をかき混ぜる音が続いている。

 火を止めた音がしてから、蓮の声がした。


「これ、次どうする?」

「そこ置いておいて。私がやるわ」

「分かった」


 もう、何も言うことはない。

 優しくなった二人の顔が、安易に想像できた。


 ▽


 私は気付いていたわよ。二人が来る、一日前から。

 

 まさか二人とも同じようなことを言うなんて、思ってもいなかったんだから。『お見合いデートの場所として向かってもいい?』って。

 いつのまにか綻んだ口元に手を当てる。

 

 きっと、あなたたちはお似合いなのよ。

 あなたたちが——————

【知らないだけでね】

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