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【かみはで】神様、うちの巫女達が今日も派手すぎます。〜神社に引き取られた俺を待っていたのは三姉妹ギャル巫女でした〜  作者: 仁波昼海
第1部第3.5章:私とアイツと春休み

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相も変わらずの笑い声



〜東雲千尋〜


 廊下の奥へと消え去るアイツを見送って、私はため息をつく。


「ほんと意味わかんない」


 愚痴をブツブツと零しながらも、洗い終えたものを一つずつ丁寧に拭いていく。家事に支障をきたさないよう、『音が鳴らなかったら洗い直し』という決まりも自分への戒めとして作っている以上、手を抜くわけにはいかない。


「どうしてこうタイミング悪く、アイツのことで悩んでる時にちょっかいをかけてくるのよ」


 確かに私が少し弄ってしまったのも悪いとは思う。でも、両手が塞がっている時にやられたら応戦なんて出来るはずがないじゃない――いや、そうじゃなくて。


 すぐ仕返しを考えてしまう自分の悪い癖を、首を振って追い払う。


「ああは言ったけれど……結局どこへ行けばいいのかしら」


 布巾を動かしながら考えてみても、答えは出てこない。

 私が決めると言ったからには、未来や紗理奈のような定番は避けて、アイツのことをもっと知れるような場所を選びたい。

 だからといってそんな都合の良い場所がすぐ出てくるわけもなく、考えれば考えるほど頭の中がまとまらなくなっていき、さっきまで動いていた手まで少しずつ止まってしまう。


「……もう」


 小さく息を吐いて、額へかかった髪を耳へ掛ける。

 何か――何でもいいから、きっかけがあれば。


 そう思った、その時だった。


「あっ……」


 思わず一人で呟いてしまった。


 知らなければ聞けばいい、そう私は気づいてしまった。

 拭き終えた皿を静かに棚へ戻すと、手をタオルで軽く拭き、そのまま居間を後にした。



 居間から少し離れ、次女に声が聞こえないぐらいの場所へ来ると、俺はある人にスマホで電話をかける。

 二回コール音が鳴った後、三回目が始まる前に向こうから小さい子供の声がした。



「もしもし」

「はいはーい。どうしたの? 電話なんて珍しいじゃない」


 相変わらず明るくてよく耳に刺さる声だ。


「悪い。また予定変わったんだ」

「ん? 今日じゃなくなった?」

「ちょっと事情があってな」

「ふふっ、また何かやらかしたのね?」


 呆れたように笑う声が聞こえる。

 察しがよくて勘が鋭いのも、らしいところだ。


「ごめん。そっちも色々準備してたんじゃないかと思って」

「大丈夫よ。そのくらい気にしなくていいの」


 向こうで誰かが「せんせー!」と呼ぶ声がして、一瞬だけ受話器が遠ざかる。


「ちょっと待ってなさい」


 そう言って返事をする声が聞こえたあと、すぐに電話へ戻ってきた。

 あっちもあっちで大変そうだし、早いところ見切りをつけた方が良さそうだな。


「ごめんごめん。それでまた別の日に来るの?」


「いや、それもまだ分からないんだ」


 俺は廊下の窓から庭へ目を向ける。

 長女と三女は何か言い合いながら箒を振り回していて、まだ次女の姿は見えなかった。


「今回は向こうに任せることになってさ、予定がまだよく分かってないんだ」

「ふーん、なるほどねぇ」


 少しだけ間が空く。

 それだけで、何か企んでいるんじゃないかと嫌な予感がした。


「じゃ、私は首を長〜くして待ってよっかな」

「そんな待ち方したら戻れなくなるぞ」

「大丈夫大丈夫。君ならちゃんと責任取ってくれるでしょ?」

「語弊が生まれる言い方は避けてもらいたいな」


 俺が呆れながらそうツッこむと、向こうから穏やかに微笑む声が聞こえてくる。

 ほんと、医者とは思えないほど呑気な人だ。


「分かったわ。また来る時になれば連絡ちょうだいね」

「悪いな」

「別にいいのよ。それより、女の子は泣かしちゃだめだからね」

「分かってるよ」


 短くそう返して「じゃあな」と通話を切る。

 スマホの画面が暗くなるのを確認して、小さく息を吐いた。

 これで、あとは次女に任せるだけだ。



 居間へ戻る理由も特になかった俺は、そのまま縁側へ回る。

 あまり掃除しない姉妹だからなのか、窓はよく見ると指紋や砂埃が薄く残っている。

 すぐそばには雑巾が雑巾かけに掛けられていた。

 

 ……そういえば窓拭きするために居間から出たんだったな。


 A型に恥じぬよう一番綺麗な雑巾を手に取り、またまたすぐそばにあった、たしか『スプレーボトル』だったっけか。よく服にプッシュするファブリーズのような入れ物に入った水(でかでかと水!とひらがなで書かれていた)を同じように手に取る。

 

 円を描くようにゆっくり拭いていくと、曇っていたガラスが少しずつ景色を映し始めた。


「おーい蓮っちー!」


 庭の方から聞こえてきた長女の声に俺は手を止めず、顔だけそちらへと向ける。


「何してるのー?」

「見りゃ分かるだろ」

「お絵描き?」

「せめて掃除であってほしかったな」


 首を傾げて『?』を浮かべる長女に苦笑しながら窓を拭き続けていると、庭からぱたぱたと駆け寄ってくる足音が聞こえた。


「や、おにーさん!」


 三女が縁側からあざとさ満載の笑顔を覗かせて、こちらに手を振ってくる。


 「窓ピカピカだねえ」

 「まだ半分もやってないが」

 「あれぇ? じゃ、ピカピカ予定!」

 「なんだそれ」


 人差し指をピンとだして、決めつけたように言う三女。

 長女がその後ろからひょこっと顔を出す。


「わ、私たちも頑張ってるんだよ!」

「どこがだ」


 視線を庭へ向ける。

 掃き集めたはずの落ち葉はまだあちこちに散らばったまま。箒は地面へ置かれ、二人とも俺のところへ来ている時点で説得力なんてものは無い。

 というか途中で振り回してたしな。


「ほら、ちゃんと掃いたもん!」

「掃いたあと放置してたら意味ねぇだろ、風で全部飛んでるぞ」

「うっ」


 分かりやすく言葉に詰まる長女。


「終わらなかったら後で次女に怒られるぞ」


「そ、それはやばい」

「やばいねぇ……」


 二人とも同じ顔で青ざめる。

 飴と鞭がしっかりしているんだな。

 そこまで分かってるなら最初から真面目にやればいいと思うんだが。


「ほら、戻れ戻れ」

「はーい」

「がんばりまぁす」


 口を尖らせながら今度こそ庭へ戻っていく二人を見送り、俺もまた窓へ向き直る。

 やり始めた時より格段と窓は透明感を増していた。


 丁度折り返しとなって一枚目の窓に手をつけようとした時、俺はふと思い出す。


「あいつ、洗い物長すぎじゃね?」


 居間から外に出ようと思えば、この廊下は必ず通る道だと思うのだが、アイツはまだ出てこない。

 かれこれ電話も入れると30分は余裕で過ぎてるんだが、洗い物ってそこまで重労働なのか?


 俺は一度雑巾を床に置いてキッチンへと向かう。

 すると——————


「あれ?」


 そこには見事なまでに整理された食器や調理器具。

 シンクまでピカピカに拭かれていてこちらも気持ちがいいほど。


「……仕事だけは早いな」


 感心半分、呆れ半分でそう呟く。

 けれど、肝心の本人の姿だけはどこにも見当たらない。


「ま、俺が気にすることでもないか」


 居間にも庭にもいないとなると行く当ても思いつかないが、探し回るほどのことでもない。

 どうせまた何か思いついて勝手に動いてるんだろう。


 わざわざ見にきたくせにあっさりと割り切って雑巾を拾い上げる。

  

 問題ない。明日のことは、明日になれば分かるはずだ。

日常編終了!

次回からはデート編!

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