東雲未来の襲来
俺に対してずっと否定的な言葉を投げかける黒髪は名を「東雲千尋」といい、なんと俺と同い年らしい。
「ちょっとちひろ〜、さっきから蓮っちに...」
「大丈夫だ。気にするな」
流石に気を遣って黒髪こと千尋を咎める姉。
だが、俺はそんな彼女の言葉を遮るように静止する。
「俺はそちらのスタンスの方がありがたいんだ、黒髪次女」
「な!?」
「「え?」」
隣にいた2人は驚いて口を揃える。
俺は効率的な時間の使い方をするため、ポケットから自作単語帳をだし、ペラペラとめくりながら話を続ける。
「こっちにいる長女と三女は俺のことを家族のように受け入れているが、正味俺は勉強できればなんでもいいんだ。そのために神社で働けと言うなら死に物狂いで働くし、飯を作れというなら料理本1冊読破してやったっていい」
「つまり私たちはお前をただの居候と思えばいいってことだな?」
「多少言い方が悪くはなるが、そう思ってもらって構わない」
途中まで嫌な顔をしながら聞いていた次女であったが、呆れたように嘆息して立ち上がり、こう続けた。
「とりあえず爺やが帰ってくるまでは仕方ねえから目ぇ瞑っといてやるよ、飯が食いたきゃくれぐれもわりぃことすんじゃねえぞ。分かったな暖簾くん?」
「...肝に銘じておこう」
俺は苛立つ感情を心の奥に留め、冷静に返答した。
彼女はその答えを聞くと、部屋を後にした。
「はぁ..よりにもよってあのギャル三姉妹が巫女で一緒に住むことになるなんて...しかも次女に嫌われてるし」
夜になり、俺は与えられた一人部屋で時を過ごしていた。
「まあ幸いにも、部屋は与えられたって訳で」
まだ頭には微かに彼女たちの下着姿が...
そんな煩悩を払うため、机にザッと俺の勉強道具を並べ、左手でペンを掲げて気合いを入れる。
「よし、これでやっと勉強ができる!」
並べられた3つの今日読む参考書。
黄色の社会、黒の英語、赤紫の情報。
「俺が手をかけられるのはお前らだけだ。
君たちはあの3人と違って静かで堅実だし..もう大好きだぜ♡」
軽い変なノリで掛けたその言葉に、後ろから反応が返ってくる。
「蓮っち、まさか物に恋する乙女なんて。うぅ...まだ出会ってちょっとだけど、ウチはその恋。応援するよ..」
「ごめん頼むから忘れてくれ...」
俺は体温が恥ずかしくて上がるのを感じ、手で顔を覆う。
大きな荷物を持って現れたのは長女未来だった。
「いつから俺の話を聞いてたんだ?」
「ちひろに嫌われて病んでたとこー」
「病んでないけど最初じゃねえか」
微笑んで佇む彼女が持っていたのは布団で、どうやら俺のためのものらしかった。
「じゃあ布団やっとくね〜」
「あぁ勝手にやっといてくれ。俺は勉強してるだけだから」
彼女の意外な素質に気づいたのはそのあとだ。
「客用のお布団だぁ、押し入れの匂い〜」
...
「えぇと、枕カバーはこうするんだっけ?」
.....
「ここの端っこ気になるううう!!」
........!!!!!
「うるさい!」
勉強している横で何度も変なことばっか言いやがるので、とうとう堪忍袋の緒が切れてしまい、俺は彼女の方を怒鳴ってしまった。
だが、丁度彼女の方も準備が終わっていたらしい。
「未来のかんぬしぃー、お布団できたよー」
「え?」
そこには見事なまでに整えられた、まるで高級旅館のような布団が仕上がっていた。
「みてみてーすごいしょ?これ自力で膨らんでんだよ?」
掛け布団は布団乾燥機を使ったかのようにふわふわとしているのが伺えるが、音が一切しなかったので彼女の技量と認めざるを得ない。
自分のスキルを自慢する彼女の方に、呆れながらも行く。
「はいはい、ありがとさん。俺は勉強するから」
「てい!」
「ちょっ!」
彼女の前方に行った俺が間抜けだった。
俺は布団の方に押され、対応も出来ず、そのまま倒れ込む。
そして、何故か覆い被さるように彼女も俺のうえに倒れ込んだ。
「うっ...酒?」
「うへへぇ蓮っちぃ〜」
彼女は酔っていた。
俺自身が呑めないから感心がなかったが、彼女は一応成人しているのだ。
何とか抵抗しようとして仰向けになると、これまた危ない画。
決して小さくない胸を押し付けられているような状態になっている。
あれ?金髪の中に少しだけオレンジっぽい色が...?
「おい!何か物音がしたが大丈夫か!!」
そんな俺にとってはどうでも良い事を発見した時に勢いよく襖を開けて現れたのは、次女こと千尋だった。
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