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【かみはで】神様、うちの巫女達が今日も派手すぎます。〜神社に引き取られた俺を待っていたのは三姉妹ギャル巫女でした〜  作者: 仁波昼海
第1部第3章:私はあなたの妹

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次はお前の番だ



春休みということもあってか、駅前は朝からそれなりに人が多かった。買い物へ向かう家族連れ。どこかへ遊びに行くらしい学生たち。

そんな人混みの中で待ち合わせ場所の時計を見る。

約束の時間まであと数分か。相手はあいつだと言うのに、少し早く来すぎたかもしれない。

そう思った直後だった。


「おまたせぇ〜」


聞き慣れた声に振り返ると、三女が手を振りながら歩いてくる。


「まだ時間前だが」

「でも待たせたじゃん?」

「数分だぞ」

「数分もだよぉ」


意図がつかめないが、本人はにんまりと笑う。

丈の短い黒のミニスカ。

紫のブラウスに黒のデニムジャケット。

歩くたびに揺れるイヤリングまで含めて、どう見てもギャルだった。

普段から似たような格好はしているはずなのに、待ち合わせ場所で見ると少し印象が違う。

…気のせいかもしれないが。


というか。


「朝からほんと元気だなお前は」

「だって遊びだしぃ?沈んでたらやってられないっしょ!」

「お見合いじゃなかったのか」

「それもあるけど〜」


何か言いたげな顔をしたくせに、それ以上は続けない。

どうせ聞いても(ろく)な答えは返ってこないだろうから、聞きはしないが。


「じゃあ行こっか」


そう言って歩き出した三女・紗理奈の隣へ並ぶ。

しばらく歩いていると、不意に彼女がこちらを見た。


「そういえばさ」

「なんだ」

「今日のプラン、考えてきたんでしょ?」

「まあ一応な」


“一応”を強調したつもりで、俺はため息をつきながら答える。

そう言うと紗理奈は少しだけ目を丸くした。


「へぇ〜」


なんだその反応。

この俺が考えてこないと思われていたのか?一通り伝えることにした。


「映画見て」

「うん」

「昼飯食って」

「うんうん」

「買い物して終わり」

「つまんなそ〜だね」


にひひ、と笑いながら即答する。

言葉に反省する気は一切なさそうだった。


「無難と言えば解決するものを」

「いやぁ〜人生尖っていかないとねえ」


俺の気遣いでわざわざ教えてあげたのに、常識から逸脱した自論を持ち合わせていたらしい。

楽しそうに笑いながら、またこちらを覗き込んでくる。


「でも結局やらないんでしょお?」

「そりゃあそうだろ」

「認めるんだ」

「相手がお前だからだよ」


昨日の時点で分かっていた。

俺がどれだけ考えようが、こいつはその通りに動くタイプじゃない。

むしろ崩しに来る。


「ひどくない?」

「事実だろ」

「そっかあ」


そこは否定して欲しいところだったんだが。

チケット取らなくて正解だった。危な。


「だから今日はお前に任せるよ」

「おぉ?」


一瞬だけ。

本当に一瞬だけ紗理奈の眉が上がった。

すぐにいつもの笑顔へ戻ったけど。


「どうせ何か考えてるんだろ?」

「さあねえ」

「その顔で誤魔化せると思うな」


昨日の夜。


「高いところは平気?」

「考えた通りにはならない。」


そんなことを言っていた奴である。

今もなおニヤニヤし続けるこの女が、何も考えていないはずがない。


「だったら最初から付き合ってやるよ」

「へぇ〜?やるじゃん」


三女の笑いは少しだけ嬉しそうなものに変わった。


「その代わりだ」

「うん?」

「責任は取れよ」


数秒の間。

彼女は俺を見たまま固まった。

それからふっと笑う。


「おにーさん」

「なんだ」

「そーゆーとこだよ」


俺は首を傾げる。

聞こうとしたが、本人に答える気はなさそうだったため、ここはスルーした。

というかこいつ真顔の時がないじゃねえか。


それからしばらくして電車が到着し、人の流れに合わせて乗り込んだ。

休日だからか車内はそこそこ混んでいたため、並んで立ちながら窓の外を眺める。

流れていく景色は住宅街、商業施設、知らない川。

目的地について考えてみる。


高いところ。

考えた通りにはならない。


昨日の言葉を思い返してみても、嫌な予感しかしなかった。


「そういえば」


また三女が口を開いた。


「どうした?」

「高いところ、平気だったよね?」

「まだ聞くのか」

「重要だからねぇ」

「平気だ」

「まあ知ってたけど〜」


窓に微かに映る三女は満足そうだった。

まあ俺は嫌な予感が強まっただけ。


それからまた電車を乗り換え、知らない駅のホームで降りる。

三女もといその他大勢の人の流れに俺はなんとかついて歩く。


家族連れ。

友達同士。

制服ではない高校生らしき集団。


ちらほら見られる人たちから、なんとなく目的地が見えてきた。


そして数分後。

俺は足を止めた。


「……なるほどな」


目の前にあったのは巨大なゲート。

その向こうにはアトラクションがいくつも見えていた。

子供から大人まで、限定のグッズを頭に付けて走り回っている。


だがそんなものより先に目に入ったのは、空を切り裂くように伸びたレール。

高所恐怖症ではないが、馬鹿みたいな高さに少し足がすくんだ気がした。


「気付いた?」


隣で三女が笑う。


「まさかとは思うが……」

「うん」


言葉足らずではない。

その二文字と、満足そうな笑顔だけで十分だった。

俺は死に近い何かを悟る。


「ちなみに」


三女はゲートの向こうへ身体を向けながら、こちらを見上げる。


「今日は絶対予定通りにならないからね?」

「最初から予定を知らないんだが」

「それもそうだね〜」


ふふふと笑う。

始まる前なのに本当に楽しそう。


相変わらず何を考えているのかよく分からない隣の三女。

昨日の未来とのデートを思い出す。

あの時だって、最初から全部上手くいった訳じゃなかった。

むしろ予定外の方が多かった気さえする。


それでも。

結果として相手のことは少し知れた。だったら今回も同じようにすればいい。

計画通りに進めることより、その場で相手を知ることを優先する。昨日決めたばかりの事を、俺は頭の中で復唱する。


俺はもう一度ゲートを見上げた。

相変わらず良い予感はしない。が、


来い。

次はお前の番だ、東雲紗理奈。


確かに心の中でそう声を上げていた。

6/23 改稿しました

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