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【かみはで】神様、うちの巫女達が今日も派手すぎます。〜神社に引き取られた俺を待っていたのは三姉妹ギャル巫女でした〜  作者: 仁波昼海
第1部第2章:知らないあなたを知るために

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相手を知るということは


東雲神社の夜は静かだった。

昼間は参拝客の声で賑わう境内も、日が沈めばまるで別の場所のようになる。住居から漏れる明かりも少なく、聞こえてくるのは風に揺れる木々の音と虫の鳴き声くらいだった。風呂へ入る前に少しだけ涼もうと思い、俺は縁側へ腰を下ろしていた。


『私のこと、ちょっとは分かった?』


観覧車の中での言葉をどうしても思い出してしまう。


最初は派手な人という印象しかなかった。

ギャルなんてものは俺の中で偏見の塊みたいな存在だったし、実際に会ったばかりの頃は苦手だったと思う。

けれど今は少し違う。

舞の日もそうだった。

参拝客に呼び止められれば足を止めるし、子供に声を掛けられれば手を振り返す。

忙しそうなくせに、そういう時だけは不思議と急がない。今日だって気付けば誰かの相手をしていた。


そういう姿ばかり思い出す。


―――そこまで考えた時だった。

背中の方から戸が開く音が聞こえ、俺は振り返る。


「あれ?」


出てきたのは手にタオルと着替えを持った長女だった。

どうやら風呂へ向かう途中らしい。


「蓮っちこんなとこいたんだ」

「なんとなくな」

「黄昏れてる?」

「違う」

「本当に〜?」


そう言いながら俺の前までやって来る。

風呂前だから座るつもりはないらしい。


「今日はありがとね」


不意にそんな言葉が飛んできて、少しだけ目を瞬く。


「急だな」

「いや、ちゃんと言ってなかったなって」


長女は少し照れたように頭を掻く。


「楽しかったよ」

「…ああ」


返答するまでに少しかかった。

だがそれでも長女は満足そうに笑う。


「うん」


気まずさはない短い沈黙。

あくまでちょっとした間という感じの。


「じゃ、お風呂入ってくるね」


そう言って長女は俺の後ろを歩き出した。

数歩進んだところで、ふと思い出したように言葉を残して。


「あとさ」

「?」


「前よりは、って結構嬉しかったよ」


そう言って笑うと、今度こそ風呂場の方へ消えていった。

また静かになった空間で、俺は小さく脱力する。今日一日を思い返してみても、振り回された記憶しかない。それなのに。


「楽しかった、ね……」


人生でそんなことを言われた記憶はほとんどなかった。


だから返し方が分からない。


「なあにニヤニヤしてんのぉ?」

「…はぁ」


聞き慣れた声に俺は顔だけ振り返る。


「聞いてたのか?」

「途中からねー」


悪びれる様子もなく三女は隣へ腰を下ろした。


「仲良くなったんだね」

「どうだろうな」

「お姉ちゃん、嬉しそうだったよ」


そう言われて長女が消えていった方向を見る。

確かに機嫌は良さそうだった。


「まぁ今日は楽しかったんじゃないか」

「ふーん?」


三女は夜空を見上げる。

少し考えるような顔。


「おにーさんってさ」

「なんだ」

「めっちゃ嘘つきだね」


予想外の言葉だった。俺は聞き返す。


「そうか?」

「うん」


即答だった。


「家族のようには接しないとか決めちゃってる割には、恋人みたいに向き合うんだもんねぇ」

「いやそれは……」


ふふふ、と笑う三女と共に俺を嘲笑するかのような夜風が吹く。

三女の前髪が少しだけ揺れた。


「でもさ」


彼女は俺を見る。


「私のことは…結構難しいと思うよ?」

「知ることがか?」

「That’s Right〜」


楽しそうに笑う。


長女と似たことを言っているはずなのに、使う英単語だけは違った。


冗談半分にも見えるし、本気にも見える。

正直よく分からない。


「そういえば」


今度は三女が話題を変えた。


「私のプラン、考えてるんでしょ?」

「一応な」


お見合いの一環だ。

行き先くらいは考えておくのがエスコートする側の基本。


「もう決まってる?」

「まだ候補段階だ」

「へぇ〜」


三女は少しだけ口元を緩めた。

妙に意味深な笑い方だった。


「なんだその顔は」

「別に?」


絶対に別にじゃないのは、誰かさんに似たこの雰囲気であからさま。しっかりと顔に出ている。


「じゃあ一応聞いとくけど」


三女は身体ごとこちらへ向ける。


「そのプラン、本当に上手くいくと思ってる?」

「どういう意味だ」

「そのままの意味だよぉ」


そう言って彼女も立ち上がった。

そして数歩進んだところでまた振り返って。


「おにーさんの考えてる通りには、きっとならないから」

「なんでそう言い切れる」

「そりゃー私が私だからかな☆」


意味不明なギャルピースが飛んでくる。

本人だけは満足そうだった。


「まぁきっと楽しい思い出は作れるよ」

「おい」

「あーあーそれと」


三女は思い出したように付け加える。


「高いとこは平気?」

「は?」

「うん、平気そうだねー」


何も答えていない。

なのに勝手に納得していた。


「待て」

「じゃ、おやすみぃ」


手をひらひら振りながら、三女は居間の方へ消えていく。

残された俺は再び夜空を見上げた。


あいつが何を考えているのかは分からない。

ただ、最初から思い通りに進むとも思っていなかった。

相手は東雲紗理奈だ。何も起きない方がおかしい。


でも―――。


未来の時もそうだった。


分かったつもりになった頃に、また知らない顔が見つかる。


俺は重い腰を上げ、立ち上がる。


さて、次はどんな一日になるのやら。

6/23本文改稿、より親しみやすくしました。

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― 新着の感想 ―
ギャル巫女ちゃんたち可愛すぎて天野くん羨ましい笑。巫女の舞のときは本当に神様に仕えてる感じですが、普段とのギャップがいいですよね。ニヤケながら読んでしまいました。
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