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【かみはで】神様、うちの巫女達が今日も派手すぎます。〜神社に引き取られた俺を待っていたのは三姉妹ギャル巫女でした〜  作者: 仁波昼海
第1部第2章:知らないあなたを知るために

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まだ知らない君へ


「蓮っちさ」

「ん?」


観覧車がゆっくりと頂上へ近付いていく。

さっきまで外の景色を眺めていた長女は、不意にこちらへ視線を向けた。


「私のこと、ちょっとは分かった?」


突然の質問だった。

けれど、その表情はいつものような悪戯っぽいものではない。

返事は待っている。ただ、急かすつもりもなさそうだった。


俺は少し考える。

ちょうど二週間前、初めて三人と出会った日のこと。


派手で距離感が分かってなくて。

よく喋る酒飲みで。

キレ方が半端じゃなくて。


思い返してもあまり良い思い出はない。

正直なところ、三人とも苦手なタイプだと思っていたし。


―――でも。


「前よりは」


述語を付けずに俺がそう答えると、長女は満足そうに笑う。


「ほんと?」

「あぁ」

「例えば?」

「例えばか……」


納得していないのか、それとも単純に気になっただけなのか。改めて聞かれると難しい。

しばらく考えてから、俺は思ったままを口にした。


「面倒見がいい」

「おぉ」

「打算で動かない」

「おお!」

「あと結構無理する」


その瞬間。

長女の笑みが少しだけ柔らかくなった。


「君はお見通しだね」


そう言って彼女は窓の外へ視線を戻す。

夕焼けに染まり始めた街並みと、どこまでも続く空。

静かに流れていく景色を眺めながら、彼女は小さく笑う。


「私もさ」

「ああ」

「蓮っちのこと、前よりは分かったよ」

「……そうか」

「うん」


俺もそれ以上は求めなかった。

聞けば何か返ってきたのかもしれないけれど、窓の外を見る彼女につられて、俺も視線を外へ向ける。観覧車は静かに頂上を越えていた。


俺は舞の日、彼女が境内を走り回っていた姿を思い出す。

参拝客に呼び止められて、子供にも手を振られて。

それでも何か聞かれれば足を止める。

忙しそうなくせに、そういう時だけは不思議と急がない。

今日だってそう。

連れていこうとする割には、俺をチラチラ見るし。

展示が見えない子がいたら前側を譲る。

気付けば彼女は、誰かの相手をしていたんだ。


でも…パフェが運ばれてきた時だけは違った。

あれだけ喜んでいたくせに、俺と目が合った瞬間だけ平然とした顔を作ろうとする。

全然隠せてなかったけど、きっと本人は気付いていない。

気付いていないから、あんな風に出来るんだろう。


ゴンドラはゆっくりと下降を始める。

俺はまだ、長女の好きなもの、嫌いなものすら知らない。

今日一日一緒にいたはずなのに、分からないことばかり増えていく。


けれど―――。

そんな彼女を俺はもっと知りたい。

それだけで今は十分。きっとな。



―――東雲未来―――


「ただいま〜」


神社の境内へ足を踏み入れる。

夕方の空気は昼間の暑さを忘れるぐらいにひんやりしていた。

もしかしたら自分が走り回っていたからなのかもしれないけど。


蓮っちは何か買いたいものがあるらしく、一日中繋いでいた手はいつもの二人の関係にもどっている。それなのに左手には感触が残っている気がして、ウチは何となく手を握ってしまう。


「おかえり〜!」


玄関の戸を開けると、聞き慣れた声が飛んでくる。


「あ、お姉ちゃんだけなんだ」

「酒は飲んでないな」

「流石に飲まないよ……とは言いきれないね」


居間には妹たちがいた。

どうやら紗理奈が英語を教えていたらしい。

ワークや辞書が沢山ある。


「それでどうだったの? デートは」

「まあお見合いのためのね」

「はいはい」


絶対に信じてない顔をする紗理奈。勘だけは鋭いのがこの妹ちゃんの厄介なところなんだよね。

私は疲れたようにため息を吐いて、荷物を置く。

すると千尋がウチをじーっと見ていた。


「……楽しかったみたいね」

「え?」

「顔」


そう言われて思わず頬を触る。

隠せてなかった?まあ触っただけで分かるはずないんだけど。


「別に普通だけどなあ……」

「「へぇ〜?」」


二人は見透かしたような笑みを浮かべる。

悔しいような嬉しいような、いつもこんな顔される時はロクな事じゃないのに。

なんか恥ずかしい。


「……まぁ、それなり?かな」

「今の間で全部分かった」

「もお! うっさい!」


ウチは分かりやすく怒る。

千尋も紗理奈も笑う。

いつものウチらの景色。


だけど……私は暗くなった窓の外を見て今日一日を思い返す。

観覧車の中で並んで見た景色。

パフェを前にしてはしゃいでいた自分。

恋人繋ぎなんて柄じゃないと思いながら、それでも最後まで手を離さなかったこと。

気付けばウチは口が緩んでいた。


「……よし」


小さく呟く。


「何か言った?」

「ううん、なんでもない」


ウチは立ち上がる。

今日だけで全部分かるはずないって最初から思ってたことだった。

きっと長く一緒にいる人だし、少しずつ感覚で掴められればいっか。なんて軽い気持ちで行くつもりだった。


なのに。


「ウチは彼をもっと知りたいんだ」


誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟く。

知りたいことも知ってほしいことも、今日だけでまた増えた気がしてならない。

時間をかければと思うことほど、早ければ嬉しい。

今日という日を思い出の中へ残しながら、ウチは部屋へと歩き始める。

ゆっくりと一人で―――。

今度は笑って、今日を振り返りたいな。

皆様、いつもありがとうございます!!

まだブクマ、評価してないよって方は是非お願いします!

6/24本文改稿より親しみやすい文章にしました。

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