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⭐︎第一部完結⭐︎【かみはで】神様、うちの巫女達が今日も派手すぎます。  作者: 仁波昼海
第1部第2章:知らないあなたを知るために

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一日限定カップル

 ※


「すいませーん、二人お願いしま〜す」

「あ、カップル割やってるんですけど、こちらどうですか?」


 受付の人が笑顔でプランを提示する。


「ねね、蓮っち。ウチらカップルだってよ?」

「……そうだな」


 ウイウイと隣にいる俺を肩で揺らす。

 カップルに思われることは喫茶店行くまでだって普通だったのに、言葉にされるだけでこんな嬉しそうな顔するのか。てか何嬉しくなってんだ。


「じゃあお願いします」

「は〜いわかりました!」

「あ〜! ウチが言いたかったのに!」

「お前大学生だろ」


 テンションの高いお姉様を他所に、俺は冷静にお願いする。

 ぶーと頬を膨らませる長女へのものか、(客観的に)イチャイチャしている俺たち(カップル)へのものか分からないが、スタッフさんは微笑んでいた。苦笑いじゃなければいいな。


「ではこちらチケットです、楽しんで来てくださいね!」

「ありがとうございまーす!」


 彼女はカップル券と呼ばれるものをポケットへしまい込み、じゃあ行こっか! とこちらを見る。


 十六年生きてきた人生で初めて見るカップル券。

 本来なら俺が持つべきなのかもしれないが、経験がものを言う世界。そういう役目は最初から彼女の担当らしかった。


 だがしかーし! パンフレットを事前に入手していた俺は、こんなことも考慮して寝ずに最適ルートを編み出して来ていたのだった!

 ここでようやく俺の出番が――――!


「時間は有限だよ蓮っち! まずはサメだ!」

「え、ちょまっ!!」


 バッグから冊子を取り出す前に、俺は彼女に引っ張られるがまま館内を駆けていく。

 どうやらこのデート中の条件として付けられたこの()()()()という足枷が、俺の徹夜を水泡に帰したらしい。


 今思えばいつもはお姉さんキャラな癖して、わがままなお嬢様だな。ってこの時の俺は感じていた。



  ▽



 ―――数十分前。



「ほんとにもとからカップルだったでしょ作戦?」


 聞き返した俺に対し、長女は待ってましたと言わんばかりに笑った。


「Exactlyだよ蓮っち」


 パチン、と指を鳴らしてキメる目の前の長女。

 ふん!という効果音が聞こえてきそうなドヤ顔ウインク付きである。朝からずっと思っていたことだが、こいつ妙にノリノリだな。


「いや意味が分からん」


 俺が即答すると、長女は「えぇ〜?」と不満げに頬を膨らませる。

 なんで不満そうなんだ。意味が分からないのはこっちなんだが?


「だってさ〜」


 長女はそう言いながら俺の隣へ回り込み、数を数えるように指をひとつずつ出し始める。


「ウチら今日デートじゃん?」

「そうだな」

「カップル設定じゃん?」

「そうなのか?」

「ならカップルっぽくした方がよくない?」

「あ?」


 途中から……いや多分最初から俺の返答は求めてないな。何を言っているんだこいつは。


「そもそも誰に見せるんだよ」


 俺がそう返すと、長女は一瞬だけ固まる。そして絞り出した答えがこちら。


「フンイキ?」


 疑問形だった。本人もよく分かっていないらしい。


「適当じゃねえか」

「細かいこと気にしないの!」


 気にするべきだと思う。

 しかし長女はそんな俺の意見を華麗に無視した。融通効かねえなこいつ。


「ほらほら!」

「何だよ」

「手!」


 そう言って差し出された左手。

 意味が分からず見つめていると、彼女は当然のように続ける。


「つなご?」


 コンビニ寄る?ぐらいのテンションで、彼女はあまりにも軽々しく言う。無理を押し通そうとする割には理にかなってないな。


「却下」


 反射的に答える。すると長女は露骨にむくれた。


「え〜」

「え〜じゃない」

「なんで?」

「なんでって……」


 逆になんで出来るんだ?

 かろうじてさっきの事件は間違いだったで済んだはず。

 そこで終わったはずなのに、間違いを正当化しようとする訳が俺には理解できない。俺が言葉を探していると、長女は何かに気付いたようにニヤリと笑う。


「もしかして照れてんの?蓮っち」


 ほら来た。

 何も言わずに居ると、ムフフぅとどっかで見たことあるような煽り顔。


「別に」

「照れてるんだ〜」

「違う」

「照れてるじゃん」

「違うって」


 俺の後ろを左右とひょこひょこ動いて、しまいにはケラケラと笑う長女。俺のことを完全に面白がる姿にまたもや感じる既視感。 


「じゃあ証明してよ蓮っち」

「何をだよ」

「照れてないなら手繋げるじゃん」


 また目の前に位置を戻した長女は、俺に無茶苦茶な理論をぶつける。

 本来ならば俺の負けず嫌いはこんな所で挫けない。間違いを正当化されるのは俺の一番嫌いなこと。


 ――――でも。


「……」


 黙った俺を見て、長女の笑みがさらに深くなる。


「ほら」


 再び俺の目の前に差し出される手。長くて綺麗な指と、輝くネイル。妙に自信満々な笑顔。

 俺は小さくため息を吐いた。


「後で変なこと言うなよ」

「言わなーい」


 ただでさえ信用ならない返事を彼女はラフに返す。それでも結局、俺はその手を取る。

 これで姉妹に早くも二敗目だ。

 すると長女は一瞬だけ目を丸くした後―――。

 声を出さず当たり前のように指を絡めてきた。


「いやおい」


 普通に繋ぐんじゃないのか。体温がさっきよりも深く伝わる。


「だって今ウチらは……」


()()、でしょ?」


 さっきの喫茶店では眩しかったあの日差しは、今度は彼女の顔をほんのりと照らして。

 誰のものでもない彼女だけの満面の笑みを、余計に引きたたせた。

皆様、お読みいただきありがとうございます。

是非ブクマ、評価の方お待ちしています。


6/16 誤りがあったため改稿。

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