ハプニングは付きもの
※
俺たちはまずモダンな喫茶店に入った。
道中、薄々勘付いていたものの、やっぱり視線がキツかった。
「可愛い〜」とか「めっちゃ綺麗な人だな..」みたいな隣を歩く金髪さんへのリスペクトがちらほら聞こえるのに対して、どこからともなく「横のヤツ何なん?」とか「え〜..あれ彼氏?似合わな」みたいな言葉が耳に入ってくる始末。こっちが聞きてえよ!
いらっしゃいませ〜、と俺たちは窓側のテーブル席に案内される。
マジックミラーだから外から見られる心配はないらしい。
「ご注文は何になさいますか?」
「俺はアイスアメリカンで。君は?」
俺がメニュー表を閉じて置くのと同時に、店員さんがやってくる。
少し高いが、こういうところのコーヒーは美味しい。お決まりを注文し、長女に踵を返す。
「えーと...」
彼女はさっきからずっと色々なコーヒーの種類が書かれた通常メニューを持ってにらめっこしていた。
失礼だが彼女がコーヒー選びで悩む顔には到底見えないため、恐らく隣にある期間限定に気を惹かれているのだろう。
『季節限定!ボリューム満点パフェ!』
デートの数日前、SNSでこれがたまたまおすすめに出てきたのだ。
あ、これいいじゃん。と思って予定に組み込んだが、さっきから長女が映えとやらをしやすい、苺と生クリームがたっぷり盛られているその写真をメニューと合わせてちらちら見ているのが俺にはバレている。
作戦は成功したようだ。
「頼めばいいじゃんか、それ」
「え...」
何を気にしているのか知らないが、もどかしい仕草が店員さんを困らせそうになっていたので後押しする。カロリーとかを気にしているのかもしれないが俺には知ったこっちゃない。
「ほんとにいいの...?」
「ああ、遅いと困らせるぞ」
「...分かった」
彼女は小声で心配そうに聞いてきたが、断る理由が無い俺はすんなりと受け答える。
「じゃあパフェとカフェオレアイスでお願いします!」
「かしこまりました。少々お待ちください」
店員さんがお辞儀をして厨房に向かったあと、嬉しそうに注文した彼女は俺に向かってもう一度聞いてきた。今さら聞いても仕方がないというのに、カロリーってほんと罪なんだな。
「ねぇ、ほんとに良かったの?蓮っち」
「そんなにさっきから何を心配してるんだ?」
そこまで心配する理由を1度彼女の口で確かめておこうか。
「いやだって...これ」
「ん?」
彼女はファイルに入った紙の、下の方を指さす。
彼女の目線と共に俺もそちらを向く。
『宣伝写真のため、注文者は2人以上の場合のみで、相手にあ〜んをしてください!!』
その下にきっちりと、※掲載させていただくとは限りませんが、ご了承ください。とまで記載されている。
「...」
「お〜い、蓮っちぃー??」
石のように固まった俺の目の先で、長い指がゆらゆらと交互に揺れる。
「おまたせしました〜!!こちら期間限定パフェになります!」
今思えば、モダンな喫茶店でこんなパフェをするのは少し変わってるなとは思った。
集客目的でやってると思い込んでSNSも勝手に信じ込んでしまったが、大きな見出しだけ読んで(もっと見る)を押していない俺の悪い癖。
「そしてコーヒーと、カフェオレです。ではお写真よろしくお願いします!」
デートとは俺が思っていた以上に登竜門のようだ。
皆様、お読みいただきありがとうございます!
是非、ブクマ評価お願いします!
誤字修正改稿




