巫女たちの覚悟
昼間のあの、大音量の「えええ(略)!」という絶叫から数時間。
神社を包み込む夜の気配はしんみりとしていたが、心の内で高くなった熱は冷めないようだった。
「蓮たんはここの婿養子として迎え入れられた」
長女・未来の放ったあの台詞が耳の奥にまだ鮮明に残っている。
俺は縁側に腰掛け、今日も満点の星空を見上げて1つ嘆息する。
天野蓮。齢16にして婿養子として神社に迎え入れられ、更に神主の跡継ぎ。
圧倒的な顔面&コミュ力を持ち合わせるギャル巫女三姉妹と1つ屋根の下...。
いやおかしいだろって!!
頭の中で1人漫才をしていると、少しずつ虚しさに暮れていく。
これ受け入れないと駄目だもんなあ...。
「お前、ついに気が狂ったんだな...」
「へ?」
思わず変な声が出た。
パタ、と静かに開いた障子戸に、俺は気づいていなかったらしい。
「...あんたも、やっぱり寝れないわけ?」
部屋着のスウェット姿で、腕を組みながらこちらをジト目で見下ろしていたのは、次女・千尋だった。
「...なに。そんなに見つめて」
「いや、別に」
今日の服の模様は黒ベースの白の水玉。
巫女のときとは違った雰囲気を纏わせ、ギャップを感じさせる彼女がいつのまにか俺の目を釘付けにしていた。
なんだか変わってない髪の毛も不必要に可愛く見えてきたし。
昼間の騒動以来、初めて二人きりになるこの瞬間。
こんな風に俺たちの間には、昼間とは全く違う、妙に意識してしまうような空気感が広がっていた。
「さっきまでずっと考えてたんだ、三人で。あんたの嫁なんて絶対にほんとに卍のマジで無理だけど!!神主候補ってなら話は別って」
ものすごい勢いでされた拒絶は一旦置いといて。
彼女は俺の隣に座ったりはせず、同じ空を見ながら話を続ける。
「爺さんももう歳だし、そろそろかなあなんて思ってた。まあこんなにすぐ候補が現れるとは思ってなかったけどね」
「悪かったな」
決して嫌味を含んではいないその言葉に、俺は微笑する。彼女も少し笑った。
「天野蓮。私はこの神社を出来れば続けていきたい、続けれるなら神主がお前であろうと許してやってもいい」
「ああ」
背中で感じる感覚は、覚悟の決まったもののオーラ。
まるで異世界ものの転生者のような、主人公の令嬢のような。
彼女はどちらのことにも真剣に目を向けている。
いつになくはっきりと吐いた言葉がそれを伝えていた。
俺自身は来て日も浅いが、少なくとも救ってもらってることに変わりはない。
今ぶつかっている状況がどれだけ深刻かとか、重要かとかはわからないけれど。
ほんの軽い気持ちで手伝うくらいはやってやるか…。
「だからお見合いデートしてくれ、私たち3人と」
「ああ……あ?」
覚悟の決まったオーラとか言ってた数秒前の自分をぶん殴ってやりたくなった。
さっきまでいい感じだったのに..
流れで了承しちゃったが?
「あーあ言っちゃった〜」
「ふふっ、決まりだね」
障子戸からひょこっと顔を出す2人は、らしくない赤い耳をする次女の方を見ていた。
第二章開幕!
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