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何があっても不思議じゃない気がしてきた

 高校の時に図書館に、『珍談奇談 オペラとっておきの話』(ヒュー・ヴィッカーズ著 井口百合香訳 音楽之友社)なる本があって、読んだ。オペラの内容やら創作秘話ではなくて、上演に際してのハプニング集だった。歌手が酔っ払っていて、順番を間違えて歌ったとか、上演中に寝入ったとか、裏方が大道具や小道具を入れ替えるイタズラをしたとか、面白おかしく紹介されていた。話が気に入って、高校を出てから自分で買った。

 本の中で、いくらなんでも政府の偉い人が……、という話が載せられていた。ブラジル大統領、その本ではジャンゴ・ゴラール大統領と書かれていた。そのゴラール大統領は前触れなしでしょっちゅう姿を消す人で、三週間行方知れずになってフィレンツェでオペラ鑑賞をしていたところを発見されたなんて書かれていた。おいおいおい……。1964年に、ゴラール大統領が中国に視察に出掛けて不在の折り、二千パーセントのインフレが起こり、軍隊まで出た。反目し合う二系統の軍団がリオの大統領官邸に到着し、しばらく睨み合いになった。両軍の将校が出てきて話し合い、その夜リオで上演される『ラ・ボエーム』を聞きに行くことに決まった。片方の将校の兄弟がオペラ歌手であり、将校の二人ともがオペラ好きだった。何をしにリオデジャネイロまで来たもんだか、残された兵士たちは戦車をゴールに見立ててサッカーをして時間を潰した。大統領は翌日帰国。本の語り口が冗談っぽく書かれているので、どこまで本当なのだろう、与太なんじゃないかと思った。

 今回、ジャンゴ・ゴラールと検索しても一回で出てこなかった。1964年、ブラジルで、「ジョアン・グラール」と出た。ジャンゴは通称。1961年から1964年までブラジルの大統領を務め、軍のクー・デタで失脚とあった。Wikipediaにはオペラが好きとか、よく所在不明になるとか、ましてやクー・デタに駆け付けた将校がオペラ観劇に行ったなどは載せられていない。

 これ以上ブラジルの大統領について調べる気はないのでここまで。

 去年これまた図書館で借りて読んだガブリエル・ガルシア゠マルケスの『族長の秋』の印象があって、本当にあっても南米ではおかしなことではないのだ、と鳥が頭の上で羽ばたきでもしたかのように感じた。

 昨今の世界の出来事を見れば、マジックでもなんでもないリアリズムそのものの気がしてくる。もう南米だけでなく北米でもユーラシアでも。

 生きる為に何かしていると、それが悲劇なのか喜劇なのか判別できなくなってくるようなもので、それを記すのに、どのような語り口になるのか、それさえ必死に生きる側は選べない。

 もう、何が起こっても不思議はないような気がしてきた。

 姑が庭に野菜を植えるのが趣味の範囲ではなくなるのかも知れないし、小学生の時に観た『未来少年コナン』みたいにプラスチック製の廃材を燃料に回す為にリサイクルしなくちゃならない明日が来るかも知れない。

 真実が奇なりで、小説の騙りをどう工夫しなくちゃいけない?

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コロナの時は、自分の人生でまさか世界規模の感染症を経験するとは思いませんでした。不自由な毎日と同調圧力をあれほど感じたことはなかった! 今やそれを越えるかもしれない世界の不穏な空気感。まさかまさかだな…
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