シチューを食べる弟子達
二度目の涙も落ち着き、一度夕飯を挟もうと準備をしていた頃、ようやくずっと外に出ていたマーシュさんとリアさんが帰ってきた。
おかえりなさいと迎え入ればお互いぎょっとする。
私はお二人のボロボロ具合に、お二人は私の目の腫れ様に。
「お、お二人とも一体何が……!?」
「おおおおお前こそ!!」
玄関で騒いでいたら、何事かと大人三人組も玄関に出て来た。
そうして、ああなんだと。
いつものことだなと帰っていく。
一人残ったハーティさんは苦笑いして、また喧嘩してたの?と二人に問いかけた。
「俺じゃねえ!こいつが暴走するから」
「暴走なんてしてない!リアが迷子になるからだ!」
「まあああああいごになんかなってねえよ!!」
「おお……」
エネルギーがすごい、パワーがすごい、声量の圧がすごい。
ひとまずお風呂に入られてはいかがですか、と進めると、お二人とも勝手知ったる様子で、何故かお二人揃ってお風呂場へ歩いて行かれた。
「(実は仲良し……?)」
不思議な気持ちで見送った後、ハーティさんと共にダイニングへ戻る。
「うるさくてごめんなさいね」
と、シェラさん。
「あいつらいつもああなんだ」
と、ベルクさん。
「なんだかんだ息は合ってるんだけどね」
と、ハーティさん。
ボロボロなのは心配だけれど、
いつものことなら
「(まあいい……のかな?)」
とりあえず、お二人の分のお肉は多めに取り分けよう、と密かに心に決めた。
なんだかんだありつつも、ようやく全員が再びダイニングに揃う。
料理が出来上がる頃にはハーティさんが、全員分の食器類を生み出してくれていた。
ダイニングの雰囲気と合う、ベルクさんが作ってくれた椅子と同じ木の素材。
その食器類はハーティさんと同様にどこか温かみがあり、生み出している最中の様子を見てみたかったな、と離れていたことを少し残念に思った。
「(またいつか見せてもらおう)」
小さな目標を胸に、作ったシチューを取り分ける。皆さんのお口に合うか不安だったけれど、お肉増し増しのシチューにマーシュさんは嬉しそうに口角を上げ、リアさんは誰よりも先に食べ始めていた。
こら待て!と言うベルクさんに笑い、みんなで食べ始める。
やがて聞こえた小さな「うまい」というリアさんの声に、何故だかまた、泣きそうになった。
シチューを食べながら、互いに情報交換を行う。
マーシュさんとリアさんはハーティさんの指示の元、外にご主人様の痕跡がないか探しに行ってくれていたという。
「向かった方角すら分からねえ。急にかくれんぼ始めるたぁどういうことだ」
かくれんぼ、の表現が可愛くて、でも可愛いなんて言えば三十倍の威力で言い返されそうだったので既の所でぐっとこらえる。
しかし何かを感じ取られたのか、リアさんにじろりと睨まれ、笑顔を張り付けながらお肉を渡すと許された。危なかった。
「つまり手掛かりはなしか……」
意外にも沢山食べてくれているハーティさんは、おかわり二杯目のシチューを平らげながら言う。
おかわりいりますか?と聞けば、照れた顔で「あと少し」と伝えてくれて、思わず笑顔になった。
沢山食べてくれて嬉しい、お口に合って良かった。
おかわりを入れに行くとシチューの残りはあと少しで。
「皆さんもいかがですか」
そう声をかければ、全員から反応が返ってくる。
賑やかで良いな、と思った。
ここにご主人様が居てくださったら、もっと良いなと思う。
このシチューはご主人様のお気に入りで、いつもご主人様もおかわりをしてくれる。
だから、そんなシチューを、皆さんも気に入ってくださったことがとても嬉しかった。
全員揃って、また食べて欲しいと思った。
だから何としてもご主人様を見つけ出さなくてはいけない。
例え、私に出来ることは少なかったとしても。




