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小さなお家の素晴らしきご主人様と、愉快な弟子達。  作者: 雨宮ツムグ


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盛大に転んだ弟子

ぴゅーーーーーい、と音がした。

高くて澄んでいる、鳥のような、笛のような。


ぴゅーーーーーい、と音がした。

今度は反対の方から、さっきより少し低めの音が。


ぴゅい、と音がした。

これまでのどの音より短く、そして近い方向から。


何が起きているのか分からなかったけれど、原因は私だと思った。


私が紐を引いたから、何かが起きている。

何かが、起きようとしている。


空を見て息をひそめる。

この音が良いものか、悪いものかも分からない。


だんだんと不安になってきて、武装したほうが良かったかもしれないと思った。

けれど武器なんて何もなくて、身近にあるのは屈強な第三の相棒、フライパンくらい。


取りに行こうかと迷いながら室内へ戻ると、窓を何かが横切った。

鳥よりも明らかに大きなそれは、ぐるりと家の周りを旋回した後、玄関の方へ降り立つ。


何か来た、確実に来た。


恐ろしく跳ねる心臓を、外側から押さえつけるように胸元へ手をやる。

フライパンは今いる位置から対角の位置。


取りに行けば室内に人が居ると、気配でバレてしまうかもしれなかった。


迷い、

焦り、

不安、

恐怖。


浅くなる呼吸が、どこか他人事の様に聞こえてくる。

私はどうしたら、どうすべきか、どうすればよいのか、ご主人様、ご主人様。


いつの間にか息を止めていたようだった。

玄関をノックする音が響き、驚き息を吐き出したことで気が付いた。


ノック、が、出来る何かが、玄関に居る。

人だろうか、しかし空を飛んでいて。


ならば魔法使いか。

しかし空を飛ぶことはここ何十年も、『出来ない』とされている。


ならば、玄関に居るのは、一体。


何かの来訪により思考を巡らせていると、また大きな影が窓を横切る。


一度、二度、そして三度。


それらは全て玄関の方へと行き、そして同じく、降り立ったようであった。

足音が響く。何かの気配がする。


ノックは最初の一度きり。

けれども油断ならなかった。


ここは小さな木のお家で、恐らく私でも力を込めれば蹴破ることができるくらい、愛しく脆い造りをしているのだ。


息を潜めて、動けないままでいて、裏庭から逃げる算段を付けようとして、飛ぶ相手にそれは無理だと考え直す。


なにか、なにか。

そうして蹲っていると、声。


「ハーティです、アーウィン様」


幼さの残る声。

その声は、確かに「ご主人様」を呼んだ。


跳ねる心臓、そして視線。


これまで生きてきた中でどの動きよりも静かに窓辺に寄り、カーテンの端から玄関を見遣ると、そこには5名の人が居た。


そして合点がいく。

あれはご主人様の、愛しきお弟子さん方だと。


慌てて玄関へ向かうと盛大に転んだ。

家の中で転ぶなんて人生で初めてのことだった。


あまりの勢いに両膝を強打して、あまりの痛さに気を失うかと思った。

それでも起き上がり、玄関へ駆け寄る。


そして開いた先には、大小様々な人がいた。


「お、君は」

一番に口を開いたのは、一番背が高い人であった。


「もしかしてメアリ?」

二番目に口を開いたのは先ほどご主人様を呼んでいた人。


「まあ、メアリ?」

三番目には、美しい女性。


「アーウィン様はいないのか?」

四番目には背が他の人より半分ほどの少年で、


「やっと呼んだと思ったらいねえのかよ」

五番目には同じく少年で、不機嫌そうな顔をしている子。


声の順番に顔を追って、そして少なくとも全員、ご主人様を知る人物だと確信。

私はコンマ一秒で腰を九十度に折り曲げ、早々に謝罪した。


「申し訳ございません、ご主人様はおられません」


私が付いていながら。

私が付いていたから、なのか。


恐らく互いに状況が掴めないまま、それでも確かにご主人様と繋がっている者たち。


一階には椅子もコップも二つずつしかないけれど、私は扉を大きく開き、訪れた五名を全員、中へと招き入れた。


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