受け入れの弟子達
生徒さんの受け入れは、ご主人様が仰った様に制限をかけないことになった。
その代わり、支援を受け入れることで、ご主人様とルシアンさん、双方の合意となった。
私には専属のアドバイザーが付き、計測装置を着けての魔力徹底管理、週に一度の身体検査、等を提案されたが、ご主人様が全て断ってしまった。
「メアリは魔力がない。故に、込められた魔力に気付けない。万一があってからでは遅いのだ。彼女は私が視る」
それが、ご主人様の主張だった。
確かに私は、魔力探知が込められたベリーを、そうとは気付かずに沢山、美味しく頂いてしまった。
なのでそんなことは無いと私も言い切ることができずに、苦笑いするしかなかった。
ルシアンさんも、部下さんが暴走した経緯がある為それ以上は言えず、飲み込んでおられた。
ルシアンさんのご研究は、ご主人様の為の、魔力消費を抑える魔法についてだったのだという。
けれどそれは、あくまで抑える、であって。
ご主人様の膨大な魔力消費の前では、例え抑えたところで、一般の魔法使いの年間の消費魔力量に匹敵してしまうと、悩んでおられた。
だからなかなか研究に力を入れられなかったと。
根本解決にはなっていないし、そうこうしている間に、ご主人様の寿命がどんどん、短くなってしまうと分かっていたから。
けれど私が精霊と心を通わせられそうということを知り、抑える研究は一度止めて、精霊研究に力を入れると仰ってくださった。
これまでは『できない』とされていたことだったから、誰も見向きをしていなくて、だから文献も、かなり少ないのだという。
「メアリ、君は今後の礎となる存在かもしれないね」
そう、ルシアンさんから真剣な眼差しを向けられて、胸が熱くなる。
私が、礎へと。
先生だけでなく、全ての魔法使いの、短命に該当してしまう方を、救えるかもしれない存在。
私はその期待と視線をしっかりと受け止めて、頷く。
私はできるか、ではなく、やる、と決めたのだから。
お家に戻って報告会をすると、皆さん喜んでくださり、気合十分のご様子だった。
普段から自給自足で生活しておられるというベルクさんは、食料の消費量が増えるからと、畑を作るおつもりだとも仰っていた。
そして私は、ご主人様が退席なされた隙に、皆さんに、『優秀な弟子達がいる』からと、ご主人様は生徒さんの受け入れに制限をかけなかったのですよ、とこっそり伝える。
それを聞いた皆さんは、泣いて、笑って、感激しておられて、私ももらい泣きをしてしまった。
守らなくてはいけない。
この皆さんの笑顔を。
短命になどさせてなるものか、と、私は今夜も、コレットとの特訓を続けた。
翌朝、早速生徒さんの受け入れが始まった。
既に引っ越して来られる方は荷物を持って来ていて、やっぱりミニチュアサイズに小さくしておられたので、可愛くて何度も覗いてしまった。
リアさんからは鋭く睨まれていた。
ベルクさんは有言実行で畑を作りに行っておられて、ハーティさんは生徒の皆さんの、お部屋の管理と案内をしてくださっている。
シェラさんはご主人様と共に建物の最終確認へ行っておられて、マーシュさんが森の入口からこのお家にかけての道案内をしてくださっていた。
リアさんは私と共に玄関での受け付けをしてくれていたけれど、危険物の持ち込みが無いか厳しくチェックする様が、ご主人様や皆さんへの愛で溢れていて微笑ましかった。
私はやっぱり、睨まれていた。
「一旦お昼にしましょうか!」
人の波が少し途切れた頃、良い時間だったので皆さんを呼んで回る。
ダイニングホールは見たことがない賑わいを見せていて、学校が、始まったことを実感した。
「メアリ、今日の受け入れ何人だった?」
「ベルクさん!今のところ十七人ですね」
「これで十七人か……」
元々皆さん、同じ魔法研究所にいらっしゃったから顔見知りも多いようで、和やかに話していらっしゃる。
圧倒されているベルクさんは、私を見ると微笑んで、また椅子が必要になるかもしれないな、と仰っていた。
今日は昨日仕込んだ御飯をお出ししたけれど、これからは毎日、皆さんの御飯を作っていく。
お顔が見られたことでより実感が湧いて、私はまた決意を新たにした。
「メアリ」
「ご主人様、おかえりなさい。ご主人様もこちらで食べられますか?」
「いえ、私は後程。少し一緒に来ていただけますか?」
「はい!」
ベルクさんと別れて向かった先はキッチン。
先程料理を温め直したばかりなので、ここはまだ少し暖かさが残っていた。
「料理の準備、大変ではありませんか」
入り口に凭れて、腕を組んでいらっしゃるご主人様が、私に問う。
私は暫く、そのお姿に魅入ってしまって、返事できずにいて。
そうしたら、ご主人様が首を傾げるので、ハッとした。
首を傾げるお姿も素敵ですね、なんて思っている場合ではなかった。
「大変、ではないのですが、特訓の時間が減っていて」
少しだけ、悩んでいた。
ご主人様は何やら考えてくださっているようで、ダイニングホールからの賑やかな声だけが聞こえてくる。
「では、ベルク達にも交代でキッチンに入ってもらいましょう」
「ベルクさん達……ですか?」
「ええ。正直まだ外部の方を、料理の担当にはできないので。彼等に私から伝えておきます」
「それは助かりますが……皆さんもお忙しいのに、大丈夫でしょうか」
「私は彼等に料理は教えていませんでしたからね。『人』として成長する意味でも、良い機会だと思いますよ」
そう言うご主人様に穏やかに微笑まれて、私は頷く。
確かに私が倒れた後、皆さんが料理を作ってくださったが、なかなか個性的な仕上がりだった。
決して美味しくないとかではなく、ただ慣れていない、そういう雰囲気だった。
「最初は大変だと思いますが、彼等も君のことは大切に思ってくれています。きっと良い助手になるでしょう」
「……はい!」
ご主人様のその言葉に、心が温かくなる。
皆さんからの優しさは私も存分に感じて、受け取っていて。
皆さんの成長を願うと共に、私の助けになる案をくたさったご主人様に深くお辞儀する。
以前伝えた、私が料理を作り続けたいという願いも汲んでくださった、優しく素敵な案だった。




