成長を見る弟子
「ねぇメアリ。コレット、なんだか大きくなってない?」
「へ?」
お昼を食べ終えた後、少し休憩をしていたら、シェラさんに、そう言われて。
肩に乗るコレットを手に移してまじまじと見る。
「い、言われてみれば…!!」
毎日見て、ずっと傍に居るので気付かなかったけれど、手に乗せてみて、初めて分かる。
出会った頃は片手に収まる程だったコレットが、今は両手で丁度、くらいの大きさになっていた。
「魔力保有量が大きくなっている証拠かしら。メアリの頑張りのおかげね」
ふふ、と優しく微笑まれて、じんわりと心が温かくなる。
そっか、いつの間にか。
コレットも、ちゃんと成長をしていたのですね。
コレットを膝に移して撫でると、また浮き上がり、肩に戻って来る。
その後優しく頬擦りされて、私とシェラさんは、顔を見合せて笑った。
その日の夜は賑やかだった。
生徒さんの受け入れ手続きで、魔法研究所へ行ってくれていたベルクさんとハーティさんが帰って来たのだ。
気合を入れて作った晩御飯はあっという間に無くなって、それから皆さん揃って、お二人の報告を聞く。
私もコレットと共に、お二人に視線を向けていた。
「魔法研究所へ、生徒受け入れの手続きに行って来ました。行って来た、のですが……」
ハーティさんが珍しく言い淀んでいて、私は皆さんと共に首を傾げる。
ご主人様はコーヒーを飲みながら、静かにハーティさんを見つめていた。
「どうも、数が合わないのです。事前に聞いた話では優に五十を超える志願者とのことでしたが、実際に渡された志願書は十枚にも満たなかった」
「それは……」
かなりの差があるな、と思う。
そもそもお二人が自ら、直接出向いてくださったのだって、大勢の志願者が居ると聞いてのことだった。
十にも満たないのであれば、きっとこの場からの、遠隔対応でも事足りたはずで。
「志願取り下げということかしら」
顎に手を当てたシェラさんが言う。
けれど、皆さん首を傾げたまま。
取り下げるにしても、やはり数の変動具合が異常だと思うのだ。
何かあったとしか思えず、けれど、ベルクさんとハーティさんお二人をもってしても、何も聞き出せなかったのだという。
「……まだ邪魔をするか」
「え?」
ご主人様の小さな声が聞こえて、聞き間違いかと聞き直す。
けれどご主人様は緩く首を振って、それからコーヒーをテーブルへと置かれた。
「明日、私が行きます」
「「「「「ええっ!」」」」」
恐らく、リアさん以外の全員が、驚きの声を上げる。
魔法研究所はご主人様がこの世で一番、関わりたくない場所の筈で。
だからベルクさんとハーティさんが動いてくださっていたのだと、私は思っていた。
それなのに。
「心当たりがあります」
そう言うと、ご主人様は私を見る。
あれ、何故を私を、と思っていたら、心のざわつきを感じ取ったコレットが、少しだけ風を出し始める。
「メアリも、付いて来ていただけますか」
「へ、あ、はい、勿論です!」
大きく頷くと、その揺れでコレットは立ち位置が不安定になり、そのせいか風が止む。
だからコレットの体を支えて撫でていると、コレットがじっと、こちらを伺っている様な気がした。
「大丈夫です、大丈夫ですよ」
ご主人様と共に行くのならば、寧ろ楽しみですらあると思った。
なんせご主人様の、元職場なのだ。
例え襲って来た相手がいる場だとしても、正直怖さより、興味が勝つ。
勿論ご主人様が居てくださるからこその話だが。
「では続報はまた明日。二人ともありがとう、ゆっくり休んでください」
「「はい、アーウィン様」」
揃って頭を下げるベルクさんとハーティは、今日は早めに自室へと戻られる。
その後ろ姿に、お夜食一応作っておきますね!と声を掛けると、お二人とも笑って、手を振ってくれた。




