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小さなお家の素晴らしきご主人様と、愉快な弟子達。  作者: 雨宮ツムグ


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10/26

爆音の弟子


*******



「おい!!!!!!!」


朝、洗濯物を干していると室内から爆音、もといリアさんの呼び声が聞こえてくる。


驚きのあまりバクバクとなる心臓を押さえながら室内へと戻ると、皆さんは慣れた顔で、呆れた顔で、口々に「うるさい」と告げていた。


「な、何かありましたか」


そう言うと集まる視線。

呆れた顔は一切無くなり、どこか緊張感すら漂っていて、思わず息を潜めた。


何か、あったのだ。ご主人様に。


「アーウィン様の魔力を感じた」


怒り、緊張、戸惑い、そんなものを含んだリアさんの声が室内に渡る。


「それって!」


ご主人様がどこにいるか分かったということですか!

という言葉は、続かなかった。


皆さんが、揃って難しい顔をしていたから。


「私も感じたわ。でも……」


「どこかへ、向かってるんだよな」


シェラさんの言葉を引き継ぐ形でベルクさんが言う。


どこかへ向かっている……?


つまりここに戻っている訳では無いということ。

そして、これまで隠していた魔力を出したということは、何か理由が……


「帰る」


「え!?おい!!」


考え込んでいると、リアさんが出て行く。

ベルクさんは追いかけたけれど、すぐに戻ってきた。


「行っちまった……」


呼び止める隙も、捕まえる隙も無かったという。

一体どうして急に。


でも、リアさんはご主人様の何か、痕跡を探しに行ったのではないかと思った。

意味もなく急に帰る人ではないと、この数日の付き合いでも分かっていた。


だから皆さんも追いかけない。

今やるべきは、それではない。


「ご主人様が向かった先は分かりますか?」


私が聞けば、マーシュさんが目を閉じる。

しばらくそうしていたかと思うと、マーシュさんは目を開き、静かにベルクさんを見上げた。


「ベルクの家の方、じゃないかな」


「なっ」


何故、と私も心の中で思う。


ベルクさんの家に、何が。

もしくはベルクさんに、何か用が……?


心当たりがあるかとベルクさんを見上げるも、ベルクさんもまた考え込んでいる。

まだご主人様の魔力は感じられるのだろうか。


ご主人様のことを追う、望ましくない者は居ないのだろうか。

魔力が無いことをこんなにももどかしく思ったのは初めてだった。


ご主人様と十六年も過ごしてきて、ご主人様の魔力を、何一つ感じられない。

ご主人様の魔力を、何も知らない。


悔しくて焦りが募り、気持ちが逸るのに何もできない。

けれど、皆さん同じなのだと思った。


顔を見れば分かるその焦り、困惑、何とかしたいと思う、その気持ち。

私に出来ることは何かと考える。


今から皆さんが捜索に出るのだとしたら。

リアさんが戻ってきたとしたら。


必要なのはご飯だと思った。

簡易的に食べられて、でも美味しいものを。


持ち運べて、栄養のあるものを。

皆の考えの邪魔にならないように、そっとその場を離れる。


皆戦っている。ならば、私は私に出来ることを。



*******



弟子の一人、リアの魔力を感じた。


私を追うかと思ったが、遥か後方、リアは自宅へと向かったようだった。


箒が無いことに気付くだろうか。

気付いたら怒られそうだ。


けれどきっと、その姿に笑ってしまうのだろう。

愛らしくて笑っているのだが、きっとまたそれにも怒るのだろう。


ベルクの住まう山間に近付き、あえて迂回をして上着を脱いだ。

そして魔力をたっぷりと込めてから手を離す。


ここからは簡易的にでも自分の魔力を分散させて、偽装する必要があると考えたからだ。

急いでいて着の身着のまま出たので手放せるものも少ないが、靴を片方脱ぎ、魔力を込めて、移動して、手を離す。


片方も脱いで同じことを。

靴下も片方ずつ、同じことをした。


そして一気に下降して、地面に降り立つとともに魔力を抑え込む。


「(ふむ)」


正直飛ぶ方が楽だった。

魔力を放出する方が断然楽だと。


抑え込むのはやはり集中力がいる。

先程よりも蓄積された疲れを感じる。


しかし歩みを止めるわけにはいかなかった。


裸足のまま山を登る。

途中で、木の皮を拾って靴の代わりにした。


何もないよりはましだったが、歩きにくい事この上ない。

しかし歩みを止めるわけにはいかない。


ベルクの住まう山頂を見上げる。日が、沈もうとしていた。



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