もう一人の能力者
避難する事になった僕らは、先生の指示に従って非常階段を降りる事になった。
僕らの教室は本館の3階にあり、火災が起こったのは僕らの一つ上の階である、本館4階の家庭科室だそうだ。
4階にも一年のF〜H組の教室があり、非常階段ではその人達で埋め尽くされていた。
そして、その人達の中には、”神田宗介”が含まれている。
(何でこんな事になるんだ〜。)
授業中に突如としてお腹を壊した俺は、火災現場から階段を挟んだ4階のトイレに取り残された。
(くそ……まだ腹痛止まないし、だんだん煙の香りがしてきた。)
トイレの中、一人で便意と闘う俺は、心の中で悲痛な嘆きをつぶやく。
その時、外から一人の男の声が聞こえてくる。
「あれ、間違えたかな。」
クラスのどの人とも似つかない声で、僕らと同い年か、年下のような青年特有の透き通った声が聴こえる。
それは左の方迫ってきていた。家庭科室の方角からだ。
「まぁいいか、目的はそれじゃないし。」
次第に足音が大きくなる。俺はこいつが犯人だと”本能的”に察知し、息を殺す。
幸い、もうそろそろ排泄が終わりそうな頃だった。
「随分と、派手にやってくれたじゃない?」
壁の向こうから、もう一人の声が出現する。女性の声だ。
「まぁ誘導だからね。この学校では君だけ?」
「そうね。この程度、私だけで十分だわ。」
「へぇ〜、”僕の後ろ盾”が何か分かってて言ってる?」
(こいつら、何の話をしているんだ?)
壁の向こうから聴こえてくる会話に、神田宗介は疑問を感じざる負えなかった。
「分かってるわ。だからこそ闘うの。”また会いましょう。”」
そう言ってから、女性の方からは声がしなくなった。
「お前の弱点は分かってるんだ。次で最後にしよう。」
青年の方は小声で捨て台詞を言った後、”能力”の発動を待つ。
花崎 美波
”魔法図書”から授かった能力は、”時間遡行”である。




