第6話 : 迫り来る白亜紀クラーケンの恐怖!死を覚悟した探検隊の前に現れた謎の存在「領主」の驚きの正体とは!?
まずは私こと美少女古生物学者の名香代ちゃんの話を聞きなさい!!聞け!!
時は2026年4月も終わりの頃
北海道大学を筆頭にした国際研究チームがとんでもない研究結果を発表したのです
それは、ある軟体動物の口の化石から発見された驚くべき予測結果でした
白亜紀の海に、全長最大19mに達する巨大な頭足網、つまりタコの仲間がいたという事実です
19m!大きすぎる!!
白亜紀最大の海棲爬虫類たるティロサウルスをはじめとしたモササウルス科ですら、最大予測全長は15mしかないのです
それだけではなく、化石は恐るべき事実も語っていました!
この19mのタコは、
獰猛な捕食者だった可能性がある
「そして今証明されたわけですね」
剣と魔法の異世界だったはずのエモールディアは、絶滅したはずの地球の恐竜がいる島に近づくにつれて白亜紀の様相を強く見せ始めました。
白亜紀の長き覇者たる巨大ザメ、クレトキシリナの群れというオードブル
最強にして究極のモササウルスの答え、ティロサウルスというメインディッシュ
そして、今この空を飛べる船を捕まえた白亜紀クラーケン、
ナナイモテウティスという名のデザート。
「コメダ珈琲じゃないんですよ、胃どころか本当に殺す気ですか!?」
「なんだか知らないが異世界の人!
胃に入れられて殺されるのは我等かも知れぬ!」
触手が船の上の我々を襲う。
竜狩り騎士団を名乗る猛者達と、私含めて銃を持ってきた異世界人達を
「タコのカルパッチョは好きだがな!!
こっちが踊り食いされる趣味はねぇ!!」
知り合いでわざわざティラノサウルスを狩りたくて来た大男のバートさんのいう事もごもっとも。
「私もたこ焼きは好きだけど、ナナイモテウティスの実物は今嫌いになりました!!」
「わたくしも同じくてよ、白亜紀のデビルフィッシュめ!!」
バートさんの娘でストーナー方式大好きお嬢様のエリーが叫んで、AR-16魔改造象撃ちライフルをぶっ放す!
触手一本吹き飛んじゃってます!!
「来るなら来やがれ!!
自衛官はな、ヘビもタコも大好物なんだよ!!」
あれ、外務省の人じゃなかったっけ?というのも一瞬思った同行人の佐藤さんも、大型動物には頼りないアサルトライフルで応戦してくれます。
相手も大型とはいえ軟体動物。
多少は痛いのか、触手が引っ込みます……ってことは!
「いでっ!」
捕まってた飛竜さんと、今回の元凶のちびっこ漁師二人に助けに行って気絶したアルトリーシャさんを放ってくれた!
「アルトリーシャさん!!
しっかり!!」
駆け寄って、すぐ起こそうとします。
「う……は、やく……ね……め……」
頭から出血。それ自体は派手ですけどおそらく表面を切っただけ。
それより言葉が辿々しい上で、意識が朦朧。
「しっかり!
私が分かりますか!?」
「……ぇん生……はや……船……」
「やばいな。
最悪、硬膜外血腫とか起こしてるんじゃ!?」
「どれにしろ頭のダメージはまずい!!」
佐藤さん、それはマジであるかも!」
「早く船を出せぇーッ!!!」
「怪我人だァ!!船を出せー!!」
近くの船員さん達がそう叫び、船が動き始めます。
「船医はいないんですか!?」
「生憎いない!!」
「なんかファンタジーな回復魔法は!?」
「飛竜人は魔法効かねーよ!!
けど安心しろ!!港着けば『刑の教会』の名医が待ってる!」
信じますからね船員さん!!
けど、向こうもまだ諦めてないようで。
ドン!
「うぉ!?」
衝撃!直後脇で水飛沫と黒い影!
またティロサウルス!!
「しつけぇぞこの野郎!!」
バートさんの発砲は外れましたが距離を離してくれました。
いや、距離を離したと言うより……海面が薄くなって来た!?
「もう島が目と鼻の先だ!!
魔力エンジンを切れ!!
帆を張れ!!」
言われて気づく、もう目の前と言ってもいいぐらいに広がる陸地!!
てことは、ティロサウルスがそう簡単に侵入できない深さってことです!
でも……なんで今帆を!?
「帆を張るぞー!!
うっ!」
そして、マストに登った船員さんをつかむ触手!!
「ナナイモテウティス!!」
「しつこいぞタコ野郎!!」
船の脇に、まだ白亜紀クラーケンの影あり。
船にしがみついてる!
「帆を……張れ……!!」
「そうだ帆を張れ!!
島に辿り着けなくなるぞ!!」
そして、襲われた船員さんも含め、船の皆がなぜかみんな必死に帆を貼ります
「何故だ!?
魔力エンジンは、錬金術師や魔術師のお墨付きの最新技術だぞ!?」
「この世界でも異常な行動って事ですかコレって!?」
「『領主のセイル』のせいだよナカヨ先生!!」
すぐ隣でハーヴェストさんにとっても異常な行動だって言う中で、助けた子供の大きい方が叫びます。
「領主のセイル?」
「島はパレオシーン王国領で、アルトリーシャ姉ちゃんのだけどさ、オイラ達がなんとか住めた場所は、デカい恐竜の住処なんだ!
たまにオイラたちも食うけど、基本は川とか海でデカい魚食ってるデカいヤツの!
ちょっと間抜けヅラだけどデカいし意外と強くてさ、オイラ達は親しみと皮肉ってヤツこめて「領主セイル」って呼んでるんだ!!」
……!
「……帆、か」
なんて事でしょう。アイツか!
コレからいく場所は、アイツの住処なんですか!!
「何か知ってるのか異世界の人!」
「アンタわかってないよな!
この人はあのナカヨ先生だぞ!
オイラ達があの島で生きていけるのは、この人の本読んであの島の恐竜がどう言うやつかを知ってるおかげさ!
でも先生も知らない力があるんだ、領主セイルの周りは魔法が、うわっ!?」
ああ、またナナイモテウティスの触手があの少年を!!
「おチビちゃん!」
咄嗟にティラノスレイヤーをぶっ放しました。
スコープ覗かず至近距離の577T-rex弾の立ち撃ちで……これが対物ライフルベースじゃなきゃ女の子にはキツい反動!!
「うお!」
でも、触手は弾け飛んだ!
なんとかその先に囚われてたおチビちゃんを助けました。
「まったく油断も隙もない!!
ナナイモテウティス、深海性のタコかなと思えば、本当にバリバリの捕食者でしつこいとは……うぇ、しかもマジですか!?」
なんと、弾け飛んだはずの触手が光をまとてみるみる再生していきます。
うそーん、そりゃあ軟体動物の触手が再生するって言っても……!?
「回復魔法だなんて小癪じゃないのよ!!」
そして、隣でエルフのフランツェスカさんが、魔法の一撃それも分裂して誘導する魔力っぽいエネルギーの弾で全ての触手を一度に破壊します。
でもすぐ再生して、また触手が襲いかかる!
「ええい、気色悪い!!
一体、◯×※◇◻︎〜~!!」
「え?」
唐突に、周りの言葉が分からなくなりました。
同時に、船がガクンと速度を落とします。
「◯×※◇◻︎!!」
「ごめんなさい、なんですってバベラさん?」
何か言ってるのに、なんなのか分かりません。
……もしかして、魔法の翻訳リングが機能停止になって?
「×!」
と、近くにいたエルフのフランツェスカさんが、口元を押さえてうずくまります。
吐き気を覚えてる!?
「どうしたんですか!?
何かあったんですか!?」
ふと駆け寄った時、荒い息をしながらフランツェスカさんは、私の腕の翻訳リングに手を当て、一瞬そこに光がともります。
「……翻訳、魔法は……原理的に飛竜人でも使えるのに……それが、阻害される、なんて……!」
「何が起こってるんです!?」
「この……空間、自体の魔力が……集まらない……!
飛竜人……飛竜と、アンタらの言う、恐竜とは……比べものに、ならない……魔力干渉力……!」
辿々しいのは、その魔力干渉の影響か、それとも体調を崩しているフランツェスカさんの苦しみ故か。
「さっきの……飛竜人のガキが言ってた……領主、セイル……そいつのせいで、魔力エンジンが使えないって……!」
「あ」
そういえば、そう言ってたような。
「アンタ、ソイツがなんなのか……知ってるのね……?」
「……たった数個の特徴だけで、
何より『名前』で何か分かる恐竜でした。
セイルなんていうあだ名が付いて、それで巨大な個体はもはや一体しかいないと言えます」
「……それって、このクラーケンよりデカいの?」
ふと、襲いかかった触手が近くにいたハーヴェストさんの槍で貫かれ、切り裂かれます。
再生しない……おそらく、かの恐竜の「魔力干渉」なる力の影響か。
「いえ。
3mだけ負けてますね」
「クソ……」
「でもどうでしょう?
アレだとすれば、果たして、タコも魚と思ってくれる、か……」
……あ。
私は、それが見えた瞬間に愛銃のスコープを覗いて海を見ました。
「…………確かにアレは帆としか言えないか」
思えばこの魔力干渉なる現象が急に起こったのは、こちらが近づいたからでは無かったのでしょう。
かの領主が、近づいてきた。
帆と呼ばれる、かの地を治める巨大な領主が。
「近いな。しかも速い」
「なん……なの……?」
「恐竜は基本海の中にはいない陸の覇者です。
しかし、かの領主様の種は例外的に海辺や汽水域、川の中や周りを主に生息地としていました。
ただこの領主セイルの仲間の姿は、近年まで不明。
そしてようやく全身が分かった後も、果たして浅瀬の水辺で巨大水鳥のように暮らしていたのか、それともある程度泳いで潜水していたかは疑問だったそうです」
そう、疑問でした。
でもどうやら、泳ぎはやはり得意だったようです。
でもまだ足も付くかどうかの水域まで来れるとは……
「……来てるのね。
もはや魔力があるかどうかも分からないぐらいに……オエッ!」
「大丈夫ですか!?」
「慣れてないだけよ!!
……エルフが、いくら魔力に敏感だからって、これしきの……これ式の妨害魔力干渉如きで……うぅぅぅ……」
うずくまるフランツェスカを見ていた瞬間、上が暗くなりました。
咄嗟にフランツェスカさんを抱えて横に転がったら、ナナイモテウティスの触手が振り下ろされてました。
危ない!最悪骨折った上で捕まってしまう!!
「◯×※!!」
あ、コレは多分「これ以上は無理だ!」ですねきっと!ハーヴェストさん達も魔力を使う攻撃が出来ず苦戦しています。
「クソ、魔法さえ使えれば!」
「いえ、もう大丈夫です」
ナナイモテウティスの胴体が、こちらまで上がってきます。
そして、恐怖を覚えるその目でこちらを見て、改めて触手を4本振り上げます。
振り下ろそうとした瞬間、横から何かが飛びかかってその胴体に噛みつかれます。
「……おぉ!!
オイオイ、名香代!見ろよコレを!!
あの映画でも活躍した有名顔じゃないか!!」
バートさんが英語でそう言いながら、ナナイモテウティスに噛み付くその姿を見て拍手までします。
したくもなる。
というより、思っていたどころか推定全長より大きく見える!!
その、明らかに体格に似合わない胴体に噛み付く姿は、確かに水鳥。
なんでも食べようとするペリカンみたいな、という意味で
「セイル……!」
ああ、異世界の人が初めて分かる言葉を。
そう、あのナナイモテウティスに噛み付くその細長の顔の領主は、
名前の由来となるような、巨大な『帆』が生えているのです
「領主セイル。
またの名を、スピノサウルス」
そのワニのようで、実は口の構造はハモという魚にも似ている面長な顔。
間違いなく、スピノサウルスの魚食性に特化した口です。
ただ予想外だったのは、水辺の巨大な水鳥のような生態は概ね間違って無かったものの、
まさか、推定全長14mを超えてそうなサイズだったという事、
そしてその自分の全長より巨大なナナイモテウティスを相手に喰らいつき、咬合力は弱いはずなのに食おうとするとは
いや、なんでしょうこの目、まさか……
ペリカンという海鳥がいます
ネット動画ではお馴染み、なんでも食べようとするアレです
私はああいう人間基準でヤバいだのなんだの騒ぐ動画、まぁ色々思うところはありますが楽しんではしまいますね。
でもまさか、このスピノサウルス、
多分飲み込める、とか思ってません?
この自分と同じぐらいのタコを
……もっと、利口な恐竜だと思っていたのに……!!
しかし、かのスピノサウルスはナナイモテウティスという17m以上はある巨大ダコを食べようと必死です。
なんて食い意地が張ってる……!
その時、ブチンと音がした気がする勢いで、
あのナナイモテウティスの脚が根元の膜近くで切れました。
「自切……!」
そうです、ナナイモテウティスは自ら生き残るために負けを認めました。
今も動く白亜紀クラーケンと呼ばれた巨大頭足類の足に噛みつき丸呑みにして食べている、
この巨大なる、浅瀬の土地の領主に。
「────強いよな、アイツはさ。
だから姉ちゃん差し置いて「領主」って呼んでんのさ」
ふと、近くのあの漁師の少年が言葉を……
あれ、分かる!?
「言葉が……?」
「領主のセイルは、周りが魔法が使えないようにできるんだ。
けど、その範囲っていうか強さっていうか……とにかく、機嫌と腹の減り具合で強さが変わるんだ。
腹が減ってる時のアイツ、アルトリーシャ姉ちゃんが半殺しになるぐらい強いし、村にいる魔……法使いの姉ちゃん、めっちゃ普段は強いのに何も出来なくなるぐらい魔法が使えなくなるんだ。
……うぅ、ごめん。みんなごめんよ……!」
少年が、項垂れて泣き始めました。
隣のもっとチビな子も、俯いて黙ってます。
「言い訳するつもり無いけどさ、アイツは俺たちが取ってきた魚の一部食わせとけば大人しい方なんだよ!
けど、最近嵐続きで……村が育ててる恐竜も喰わせられるほど小さくないしさ。
オイラたち、ちょっとでも役に立ちた、」
「避けて!!」
そんなちびっ子を捕食しようと、上から襲いかかるスピノサウルス!
慌てて突き飛ばして、少年をなんとか救います。
「コイツ……!」
危うく腕持ってかれるかと思いました。
けど、ちょっとあの円錐形の牙に掠って血が!
「この重課税の悪徳領主!!!」
スピノサウルスは魚食性が強いとはいえ、ティラノサウルスよりも長く大きなその身体にとっては、我々サイズはオヤツか何か。
手頃な餌でしかない……
手頃な餌、そうか!
「そんなに食べたいなら、私が奢ってあげます!!」
さて、急いで船の淵まで走って、怪我した腕の血を海面に垂らします。
コレでくるか……うぉ!
今度は私をデザートにするつもりで、悪徳領主の噛みつきがやってきます。
わー、本当避けられて良かった!!
「この野郎!!!
民主主義革命の鉛玉ぶち込んでやろうか!?」
「重課税もいい加減にしなさい悪徳領主!!」
「待って!!撃たないで!!」
「チビくんどうして!?」
「こんなんでも、いないと村が大変になるんだよ!!
クソだけど領主って言われる仕事はしてるんだ!!」
「どっちにせよもう撃たないですみます!!
……そら!年貢はこれで勘弁を!!」
必死に船のへりで血を垂らしてた甲斐あった!
領主のセイルがそれに気づいて、直後海へ頭をダイブ。
そして、口元にいい感じのサイズのサメ……クレトキシリナを咥えて、器用に丸呑みしていきます。
「おぉ……」
「……昔の恐竜映画も、ここまでのシーンは撮れないでしょうよ」
船が風を受けて進んで行く中、もう1匹クレトキシリナらしきサメを捕まえるスピノサウルス、領主のセイルを見ながらつい呟きます。
「……これが、この島のいつものだよ」
ふと、そうおチビさんが呟くのです。
「ようこそ、メソゾイク島へ」
船が進んで行き、港らしき場所が見える。
思ったより広そうな島、緑と……そして恐竜達が住む島。
「その言葉、テーマパークなら閉園待ったなしのフラグってヤツですよ」
我々はようやく、異世界のこの恐竜がいる島に辿り着こうとしています。
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