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異世界メソゾイック-剣と魔法のファンタジー世界の奥地、そこに恐竜がいまだ生きていた!?-  作者: 来賀 玲


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第5話 : ついに探検隊の前に海の怪物たちが勢揃いしてしまった!しかし、本当の戦いはここから始まる!?







 美少女古生物学者である私、小平名香代が異世界にも関わらず地球の古生物が支配する海で最もで会いたく無い存在が、今目の前にいました。



「ティロサウルス……!

 白亜紀の海の頂点捕食者……!!」




 ───白亜紀後期の時代、それは海の生態系が大きく変わった時代でもありました。

 皆が知る大絶滅の前、海は火山活動をはじめとした環境を大きく変える要因達の結果、生態系が壊滅するほどの『海洋無酸素事変』を起こし、当時の海の頂点捕食者達をも絶滅させていったのです。


 その時、海が回復していくと同時に海へ帰ったオオトカゲの仲間がいた。

 蛇の祖先と同一の爬虫類から派生した彼らは、文字通り兄弟群である蛇のように四肢を無くしヒレへと変化させ、流線型で長い身体を得て海へ適合していきました。



 後に地球は欧州のマース川から見つかった、10mを超える巨体の化石は『マース川のトカゲ』を意味する、



 モササウルス、と呼ばれるようになります。



 そして、白亜紀末期までの海を支配するモササウルス類が人類に認知され、今日まで研究は続けられてきました。


 その中で見つかった『ティロサウルス』は、まさにモササウルス類の完成系。究極の白亜紀の海の頂点捕食者。


 しかし、まさか哀れなそこら辺を飛んでいたプテラノドンをジャンプして捕食するとは!!

 全長は最大種で14mと言われている巨体で、この運動能力!!



「なるほど。今理解した。

 会いたくなかった、あの大海蛇(シーサーペント)には……!」


 竜狩りという二つ名があるらしいハーヴェストさんと言う方が、鎧の中からそう声を上げます。


「何の!!!

 次に出てきた時はこの竜頭砕きのバベラが頭を!!」


 さらにその隣の、一番背が高くて屈強な身体を重厚な鎧で包んでいる女性騎士のバベラさんが勇ましい事を言います。


「その前に海に引きづり込まれます!!

 いよいよ、この救出作戦の難易度が跳ね上がってしまった!!」



 私たちは恐竜のいる島へ行く途中、海で遭難した漁師を救うことになってしまった今、


 我々の方が遭難した扱いになるまで秒読みとなっています!


「……バベラ殿、剣を頼む!

 リトルウィンド!」


「え?」


「あいよ!」


 バベラさんにいつも背負う巨大な剣を投げ渡して、アルトリーシャさんが小さな飛竜のリトルウィンドさんへまたがって、


 ボン!


 直後、ジャンプした瞬間に何か炎の様な物が飛竜ちゃんのお尻から一瞬出て、一瞬で空へ上がって行きます。


「臭っ!?」


「……可燃性ガスの引火、と言うよりはニトログリセリンみたいな爆発物……!」



 あの翼で羽ばたいて飛ぶのは難しい分かっていましたが、魔法が使えない飛竜が人間サイズの物を乗せてどうやって飛んでいたのかは疑問でしたが解決しました。


 成分は不明ですが、恐らく地球の生物ミイデラゴミムシの様に二種類程の化学物質を噴射し空気と混合、直後に爆発する反応を起こして反作用で飛ぶ、と言った感じでしょうかね。

 魔法並みにすごい生態だ……


 とにかく、生体ロケットエンジンじみた方法で飛んでいく。



「さて……」


「おーい、名香代!!

 助太刀参上だぜ!!」


 と、良いタイミングでバートさん達参上!


「どうも!

 小さい双眼鏡ありません?」


「大きくて弾が出る物で我慢してくださいな」


「良いですよねみんな、俺ほぼ裸眼!」


 全員、持ってる銃のスコープやサイトを覗いて、漁船の方角を見る。


「見えましたわね、ほぼ真南1kmもなし!」


「オイオイ、こりゃあ冗談か?

 ジョーズというよりアサイラムのクソ映画だ!」


 数キロ先、漁船というよりボートって言う方が良いレベルの船の周りにサメの群れ。


 ……って、乗ってるの子供!?


「「子供が乗ってる!?!」」


 私たちも未成年ですけど、それが言う「子供」って言うのはつまり、

 まだ10代前半、いや最悪もっと若い子供が!!


「……あのぐらいの歳の漁師ならここまで来てしまうだろうな」


 ふと、隣でそう呟く鎧武者の人ことアスラさん。


「劣等種は可哀想よね。

 それでも親がいるなら一緒に教えてるはずでしょ、あの年齢?」


「……アルトリーシャ殿の村の人間が、先の大戦で何人死んだかを私も数えている。

 その結果が、これか」


 ふと、エルフのフランツェスカさんの呟きに、隣の彼ら竜狩り騎士隊のリーダーのハーヴェストさんが悲しく肯定します。


「チッ!発展途上国家ってのはだから嫌だね!」


「バートさん言い方!」


「アフリカではよくあった事ですし、わたくし人のこと言えません年齢ですわよ?」


「どっちにしろ、まずは人命優先……

 この577T-rex弾仕様のティラノスレイヤーで1km先……届きますか?」


「弾の飛距離は問題なし、ましてや原型は対物ライフルですもの。

 問題は、サメに当てたら効きますけれど、海に当たった場合は威力は半減」


「……モグラ叩きさ、つまり」


「よく狙え、か」



 よく見て、よく予測すべしか。


「───クレトキシリナの襲い方は、恐らく原生のサメ、それもホホジロザメと収斂進化の結果同じ区なっているはずです。


 ボートのサイズはおおよそ8m、最大級のクレトキシリナと同じと仮定すると……その脇や端から噛みついてくるはず。


 ボートにヒレが無いので、胴体の端か下から噛み付くべく突っ込むはず。


 下は、サイズ的にはクレトキシリナには噛めないと信じれば……」


 来た、後ろから背鰭!


「解説通り!!」


 パァンッ!!!


 バートさんのライフルが火を吹きます。

 すごい音に、大男って言葉が似合うバートさんの身体が一瞬後ろに下がるほどの反動!


 結果、スコープ越しに見えたボンという水飛沫が真っ赤に。


「……こりゃあ過剰だったか?」


「いや……でもクレトキシリナが散った!!」


 さっきの衝撃に驚いたようで、クレトキシリナの群が一斉に離れます。


「よく当てられたもんだぜ俺!!

 何だあのサメは、魚雷より速いんじゃねぇの!?」


「クレトキシリナは、最速のサメと言われていますので!

 時速にして70から80km/h!

 文字通り魚雷、それも現代魚雷並みの速度です!!」


「魚雷が何かは知らんが速いな。

 そして集まるのも」


 おっと、とスコープを覗けば、またクレトキシリナ達が漁船へ集まってきてます!


「アルトリーシャ殿は……間に合ったか」


 ちょうど、ボートに降り立つ飛竜の姿が!


 ……!?


「クレトキシリナが距離をとった!?」


 その直後、サッとクレトキシリナ達が何もしてないのに散開する姿が!


「……!

 アルトリーシャの下に何かいる!?」



 フランツェスカさんの言葉と同時に、私はボート位置に照準を合わせました。


 ブワッ、とボートが浮き上がる瞬間、



 バァンッ!!!



 大口を開けて、漁船ごと空中に浮き上がったのは……ティロサウルス!

 その身体の一部が言葉通り吹き飛んで、私もこれまで感じた事ない反動に銃口が勝手に上がるのを感じます。


「うぉ……!!」


 仕留め損なった……いや、にしてもすごい反動じゃないですかコレ!!


「大丈夫ですか!?」


「ごめんなさい佐藤さん!」


 隣で支えてくれた佐藤さんにお礼を言って、すぐスコープを覗いて再装填。


 視線の先でティロサウルスがバランスを崩して、海面へ叩きつけられる様に崩れ落ちて海へ逃げて行きます。

 飛竜のリトルウィンドさんと、アルトリーシャさん達は……


「いた!!泳いで……マジか!?」


 ひっくり返ったボートへ、まずは飛竜さんが泳いで這い上り、幼い子供達が頭から血を流したアルトリーシャさんを泳いで運んでいる。

 そこにサメが、クレトキシリナが迫る!!


「……フルオート、解禁しちゃいますわー」


 瞬間、隣でエリーがオッソロシイ言葉と共に、ズドドドドッ、と恐竜用の弾丸を連射し始めます。


「エリー、それ色んな法令に違反しているぞ!」


「ここは地球ではないのですわよ!」


「というか、反動ヤバくないですかそれ!?」


「ストーナー方式の反動制御は史上最高ですわ!!」


 速攻で無くなったマガジンを変えて、ストーナー方式特有のチャージングハンドルを引いて装填するエリー。


 これで上手くひっくり返った漁船に当てちゃったりしない辺り、さすがと言うか……


 それで次々にサメを海の藻屑に変えていっても、それに寄せられてかクレトキシリナの数は減ってまた増える。


「コレは色々まずいですぞ!?

 下には大海蛇(シーサーペント)、周りにはやたら速いサメだらけでは!!

 こうなったら不肖このバベラが泳いで!!」


「……なんであのティロサウルスは、漁船を先に襲ったんです?」


 ふと、そんな疑問が私に思い浮かびます。


「何をこんな時に言ってるのよ異世界ザル!?」


「……ティロサウルスは海の王者。しかし、周りにはもっと襲いやすいエサがある」


 バン、と二発目にしてようやく慣れた反動で、一体の海面近くのクレトキシリナを撃ち抜きます。


「ティロサウルスが活発なプレデターといえど、コレだけ新鮮なもう動かない餌もあるならそっちを優先するはず」


 軟骨魚類には過剰な火力のライフルで、肉塊に変わるサメ達は……サメ同士でしか食べてない。


「…………ティロサウルス、と言うよりモササウルス科は視力と水流の変化を感知して獲物を探します。恐らく、ヘビとは兄弟と言っても良いので嗅覚も鋭いはずなので、コレだけの量の血をなぜ無視するのですか……


 いや、そもそもいくら目が良いからと、あの時もプテラノドンを真っ先に襲った……


 空中の影を正確に……」



 何か、何か違和感がある。

 何だろう、何か見落としてる。


 ティロサウルスにこの場で最も詳しい私が。


 詳しい……



「……アルトリーシャさんは、ただティロサウルスはこの海の支配者としか言ってなかった。

 他の海の古生物には、魔力のあるこの世界に適応しているが故の特性があると言っていたのに、ティロサウルスだけは何も。


 何もない、のか?

 恐竜は魔法が効かず、古代のサメは魔力が完治できない……じゃあモササウルス類は、魔法の世界にどう適応した……?

 何を適応した……?」


「オイオイ、どうしたんだそんな、酷い便秘みたいな顔だ!」


「お父様お下品!!」


「…………


 あの、エルフのフランツェスカさん?

 今すぐ魔法を撃てますか?」


「は?」


「誰でも良いです、当てなくても良いです。

 何でしたっけ?攻撃魔法、って言うんでしたっけ?

 とにかく、四方八方にぶっ放してほしいんです」


「一体どう言う事だ!?」


「……!

 そう言うことね、異世界ザル。

 アンタ他の劣等種より、頭いいわ!」


 言い終わるより早く、長く大きな杖を回してフランツェスカさんの足元に何やら魔法陣が。

 そして周りに光の弾が現れて、そして流星の様に飛んでいきます。


「異世界の人、何が!?」


「予測が正しければ、クレトキシリナがティロサウルスと共存できている原因が分かる!!」


「……イラつく事実がすぐ分かるわよ」


 攻撃魔法が、海上を進んでいったその瞬間、



 ザパァァンッ!!


 複数のティロサウルスが、ある攻撃魔法に向かって口を開いて飛び出す。


「!?」


 皆、その舌や顔に攻撃魔法をわざわざぶち当てて、再び海に叩きつけられる様に戻っていく。


 仮説が実証された。



「やっぱり、ティロサウルスは生きているかどうかを魔力の有無で見てる……!

 完全に動かなくなったクレトキシリナより優先的に、生きて魔力があると思える生物を襲っている……!!」



 モササウルス類は優れた感覚器官を持っていました。

 それが、この世界に適応した結果、こう言う認知特性を発現させた。


「だとしたらあのクソ海蛇、脳みそは劣等種以下で、感覚はある意味でエルフ並みよ。

 だから周りのサメに気付いてない……あるいは気付いているけど、優先的じゃないって事ね」


「本来のティロサウルスなら、クレトキシリナ相手でも喰らいつくほど凶暴なはずで、それが原因でクレトキシリナは大絶滅を待たずに消えたサメのはず。


 すごいな……つまり、彼らはある意味でその科の新種だ……きっと色々既存のものと違うはず……!」


「海蛇相手に何目を輝かせてるのよ。

 けどお手柄ね、つまりは攻撃魔法で撹乱してやればいいわけね!

 デカいのはこれで何とかできる!!」


「つまり、クソデカいミサイルみたいな化け物にフレア撒くわけか!!」


 と、あの漁船の上でようやく、飛竜のリトルウィンドさんが3人を乗せて飛ぶ準備が出来てます。


「とにかくティロサウルスを撹乱しないと!!」


「任せなさい、そういう優雅な魔法こそ上位種なエルフのものよ!」


 瞬間、フランツェスカさんの周りで魔法陣が輝いて、

 そしてスコープの向こうの船の上に同じ魔法陣が。



「oh……まさしくファンタジーって感じだ……!」



 バートさんの感想の直後に現れたのは、光る半透明な飛竜の姿の分身達。


 一斉に、彼らが飛び立って、それぞれ上手く拡散して船に向かっていく!


「どう!?アンタらデカいだけの能無し海蛇如きに見破れる!?」


 ……あ、


「まずい、相手はティロサウルスなんだった……!」


 私は、この時自分で既に言っている肝心な事を失念していました。


「船長さん!!今すぐ船を動かして!!

 最大船速で島まで!!」


「いや待て!

 それじゃあ最悪あのチビ飛竜が間に合わない!!」


 すぐ近くにいたこの船の船長さんに叫ぶのですが、割とごもっともな事を。


「ダメなんですよ!!

 相手はティロサウルスです!!!」


「何がダメな、」


 ズン、と言う衝撃が船を襲ってしまいました。

 そう、最悪の予想通り!


「やっぱり目標を変えてきた!!

 ティロサウルスにとっては大きくてもこちらは獲物!!

 食べやすいから空にいたプテラノドン達を襲っていただけで、それが難しいなら次はこっちです!!」


「……すぐ発進させる!!」


 早速、船員さんが慌ただしく動き始めます。

 その間も数度、船に体当たりが続いて!


「クソ海蛇が!!私が乗ってる船を襲う気!?」


「まず体当たり……効かないなら次は……

 恐らく、飛んで攻撃してきますよさっきの様子なら!!」


 言うや否や、ザパァァン、と海から飛び上がるティロサウルスの姿が後ろから!!


 このまま空中から巨体を叩きつけて船を折る気だ!!



「どっせいッッ!!!」



 ティロサウルスの身体がぶち当たる、その瞬間、


 巨大な鉄塊の様な……恐らくハンマーとしか言えない重量物が振るわれ、ティロサウルスの15mはある巨体が大きく吹き飛んでいきました。



「……えぇ?」



「フン!!

 なるほど、多少は重い!!

 この竜頭砕きのバベラですらそう思うとは!」


 片手でそんな鉄塊を振り回し、肩で担いでそう言うバベラさん。


「アンタが多少重いだなんて言うとはね!

 ……それだけ相手も硬いってことね」


「何ですと!?」


 私も、あんなファンタジーな膂力の一撃を叩き込まれたのなら普通は死ぬ、って思ったんです。


 海面に叩きつけられたティロサウルスが、畝りながら水中に潜って、また体当たりを仕掛けてくるまでは!


「うわっ!」


 船の横っ腹に牙を立ててくる!

 なんて言う力強さ!骨折れてたりしてないのか今ので!?


「化け物め……!」


「お腹でダメなら!」


「ですわね!!」


 相手は真下!海面の上の頭!

 スコープ抜きでも、狙い撃てる!!


 ズドンッッ!!


 577T-rex弾の至近距離!

 それもエリーと二発同時!!

 流石に、頭蓋骨も粉砕しますよ!!



 ────したのに体当たりしてきた!?


「うっそ!?」


 ドン、とまた船が大きく揺れます!!


「不死身ですの!?」


「血が流れているなら死ぬはず!」


 ふと、竜狩りと呼ばれた騎士であるハーヴェストさんがそう言い放ち、槍を掲げそこから金色の雷の様な物を発生させます。


「我が『竜狩りの雷槍』、その『付与魔法(エンチャント)』の妙技、ご照覧あれッッ!!」


 雷が、槍を中心にまるでもっと巨大な槍の姿を形取っていって……!!


 ドゴォォンッッ!!


 そのまま、ティロサウルスに突き込まれた槍が、見た目通り雷が落ちた爆音を響かせて爆ぜる!


「……すごい……!」


 説明されたわけでもなく、ただ肌で、心で感じます。


 この人は、竜を狩れる。


 説得力でできた一撃。

 ティロサウルスも全身を火傷し、もはや頭蓋が吹き飛んだかの様な痛ましい姿に……


 ゴン!


 ────そんな姿で、なおも船に強く噛み付くティロサウルスがいた。



「…………なんという、最後の一撃か。

 死に行くものが出す力か、これが……!?」



 船体に食い込む歯。

 あまりの光景に、竜狩りの二つ名を持つハーヴェストさんですら驚愕の声。

 そんな状態で、やっとぴたりと動かなくなるティロサウルス……


「……ティロサウルスという絶滅した海棲爬虫類は、白亜紀最後の数千万年を支配する中、絶えず戦いの中にいたんです」


 つい、この恐るべき海の王者を語り出してしまうほどの、その命の強さを感じる最後でした。


「クレトキシリナ、他の首長竜をはじめとした海棲爬虫類……小さいものから大きいものまであらゆる物を襲い、食らいつき、喰らわれて勝利してきた」


 いや、最後じゃなかったんです。


「────時に同じモササウルス類に、同胞のティロサウルスに喰らい付いてでも」


 ザパァァン、と現れた別のティロサウルスが、その息絶えたティロサウルスに噛みつきます。

 海面で首を振って肉を食いちぎろうとしたところを、別の方向から獲物を横取りしようと噛み付くさらに別のティロサウルス。


「同胞を喰らうか!

 まさしく凶暴を絵に描いたようだ」


「あのクソ大海蛇、さっきまで仲良く襲いかかってきたじゃない!」


「ふぅー、やれやれ。

 こりゃあ、チームワークも何もあったもんじゃないな?」


「バートさん、ティロサウルスにチームワークなどと言う都合のいい関係は存在しません。

 あるのは、捕食行為に有利な狩りを進めていくうちに生まれたチームプレイの様な行動だけ。

 不要になれば、それは餌を取り合うライバルか、餌か。


 ティロサウルスとはそう言う生き物です」



「……恐ろしきかな、大海蛇(シーサーペント)ティロサウルス……!

 しかし、共食いの隙は我らに有利に働いた様ですとも!!」



 バベラさんが見る方向、もう3人を乗せた飛竜がすごく近くまで来ている!!


「ここだー!!早くこーい!!」


「誰か医者を用意してくれぇーッ!!!

 オイラ達のせいで姉ちゃんが死んじまうよぉーッ!!!」


「畜生!!ゼーッ!!ハーッ!!

 ヒーッ!!重いけどかんばったぞこの野郎!!

 死んだら承知しねぇ!!オラッ!!もう一踏ん張り!!」


 もう声が聞こえる距離だ!!

 もう少し!!



 パシン!



 ───もう少し、だったのに。



「え……?」


 突然空中で止まってしまった事に、驚いた顔の飛竜のホワイトウィンドさん。

 無理もない。ええ、無理もないでしょうね。


 真っ赤な、吸盤のついた触手に絡め取られているんですから。


「……そんな」


 来てしまった。

 いや、ヤツかは分かりませんでしたこの時は。

 ただ直感的に、ヤツだと思って海面を船の縁から見て見たんです。


 目が、会いました。

 巨大で、漆黒で、四角く細長い瞳孔の。


 やがて、海から数本の触手が、船に絡みついてきました。


 太く、巨大で───推定より長い……!



「く、クラーケン!!」


「こんなヤツまで!?」


「…………来たか、白亜紀クラーケン」


 ぬぅ、と水の中から持ち上がる胴体。

 8本の触手の根元は膜でつながり、そのタコの胴体───皆から見れば頭の部分にヒラヒラしたイカにも見えるヒレがある。


 メンダコと近縁の、一切その可愛さに似通わない凶悪な姿。


 間違いない。

 推定全長17mの、白亜紀クラーケン……!



「ナナイモテウティス……!!

 絶対、17mじゃ済まない最大サイズ……!!」



 ああなんて事でしょう。

 海で会いたくない古生物、オールスターズですよこんなのでは……!!!




         ***








 

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