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異世界メソゾイック-剣と魔法のファンタジー世界の奥地、そこに恐竜がいまだ生きていた!?-  作者: 来賀 玲


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第2話 : 異世界の大地に存在した飛竜人達。彼ら彼女らのその驚愕の正体とは!?









 私、天才美少女古生物学者の小平名香代ちゃんは、『恐竜が何故か生きている』と言われて剣と魔法のファンタジーな世界のエモールディアまで渡航し、さらにはその最果ての港まで来てしまったのでした。




「……まず前提として、ここケイピグの港はここまで整備されたのはつい最近なんだ。


 ここは世界の最果て、辺境の中の辺境だった。

 大地に根ざす精霊が少ない土地、魔力が無い土地であり、


 奇妙な手脚のある大海蛇(シーサーペント)が巣食う『魔の海』の入り口、と」



 私を異世界へ誘った謎のツノ付きの女性、アルトリーシャさんの説明は、しかし私も隣の私の護衛らしい外務省の佐藤さんも視線を向けずに聞いていました。


 聞いていないんじゃありません、証拠が目の前にあったんです。



 漁師が引き上げた網の中、弱った巨大な長い首に、その首に対してずんぐりむっくりまるで甲羅のないウミガメみたいな身体の生物がいたんです。




 首長竜、つまり鱗竜類首長竜目(プレシオサウリア)の一種が。

 体長約5mの、巨大なものが。




「そこの、首長竜はまだおとなしい方だ。

 せいぜい魚を漁るぐらいで。


 本当に恐ろしいのは、文字通りの大海蛇(シーサーペント)……


 いや、ナカヨ先生、あなたの本にもあった。


 モササウルス、だったな」



「……詳しいですね」


「この近くの崖の村出身なんだ。

 飛竜人や飛竜は皆そうだ」



 彼女や、周りの一部の人は、角が生えている方が多い。

 いや良く見ればその足。その脚が、まるで獣の後ろ足のまま二足歩行になったような……


 獣脚……ここまで書いて、何かこう、点と点が繋がりそうでした。



「……この足と角、ただそれだけなら良かった」


「?」


「この大陸に『竜人』という種は他にいる。

 皆が強靭で、皆が魔法の才を持つ、そんな種ばかりだった。

 その背の翼で自在に空も支配するが……


 我々には翼がなく、なんならばこの通り指も少ない」




 ふと、籠手を外して初めて気付きます。



 爪が長い親指、人差し指と……もう一本。

 三本だけ。それだけしか指がない。

 切られたとかそういうのではなく、元からないと分かる造形。


 いやそれより、今気がついた。その腕。

 風切り羽根のようなものが生えている……!?



「飛竜人は竜人にあらず。

 いや、ある意味でオークやゴブリンよりも酷い扱いを受けてきた歴史がある。

 なんせ魔法が使えない。

 そして魔法も効かない。


 あらゆる戦争で重宝されたらしい。

 兵としても、兵に使わせる武器の原料としても。


 そして、戦いの場や最底辺でしか生きる事があまり許されず、故にずっと寂れた最果てにいながら、似たような化け物がいる海か、武功を立てれば束の間の人権が得られるか。


 ……そんな種族が我々だった。

 少し前までは」


 その事実に、あまりの事実に言葉を失ってしまいます。



「……に、日本政府を代表するだけでなく、個人としてもその……心中お察ししま、」


「…………まさか、あなた方の足の指は四本!?」


「え、ちょ、先生!?それ流石に失礼では」


「分かってくれるか。流石だ」


「……尾骨は退化してるって事ですね。

 テタヌラ類に見えにくいわけだ」


「ちょ、待ってくださいよ二人とも!?

 あの、置いてけぼりなんですがどういう事で!?」




「恐竜に魔法が効かなかったのはそういうことのはず。


 つまり、彼らは私達の祖先だと」



 やはりか。

 隣でいい大人なのに驚いてる佐藤さんとは違って、私は何か点と線が繋がりそうに感じます。



 前脚の指が三本、後ろ足の指が四本。

 それは、進化的な恐竜が持つ特徴でした。

 もっとも、生物とは有利になるならば進化の過程で先祖返りすることも多いので、まさか人型になるまで進化してる過程で、指の本数はそのままだったとは。


 飛竜人は、恐らく、

 特徴だけ見るなら……恐らく竜盤類、もっと絞れば、獣脚類。

 いや、もしかして、テタヌラまで行くなら……コエルロサウルス類?


 とにかく、そこら辺から派生した、人類型主竜類。しかも爬虫類ってことは……



「少し昔話を続けさせてもらう。

 私は少し前まで、魔族と呼ばれる種族達が作った国家相手との戦争の中心にいた。


 何のことはない、武功を立てていればいずれどこかの国が飛竜人だろうと恩賞をもたらしてくれると信じていた。そのぐらいはしてくれる人間もいるだろうと。実際にいたのは良いことを知ったが。


 魔族達が、そもそもあなた方のいた異世界とのゲートを作っていた。

 その作ったゲートの一つがあった土地を奪ったのは私もいた軍団だった。


 やがて、戦況が拮抗し、魔法とは別の技術や知識がゲートから流れてくれたお陰か、こちらが少し有利になった。


 私は、いわゆる魔王……と言っても、魔族の一部を治める王に過ぎないが、武闘派で正々堂々とした武人を討ち取ったお陰で、飛竜人でありながら『勇者』になった。


 だが、そうなれたのも、そちらの世界から来た……先生、あなたの本のおかげなんだ」


「私の……?」


「ああ。自分が、何者かから生まれたのかを知れたから」


 ふと、アルトリーシャさんが私の出した恐竜解説本……タイトル省略を取り出して言いました。

 ……良く見たら、すごく汚れてます。

 ちょうど、コエルロサウルス類の巻を



「……ティラノサウルス、ラプトル、テリジノサウルス、最初の鳥類……

 この本にいたモンスター達は、私が今まで見た大陸の怪物達と違って、


 何故だろうか、懐かしいって感じたんだ……!

 全部を覚え切れるほど頭がいいわけじゃないが、いつ読んでもそこにいる恐竜達に親しみを感じた。

 そして、思い出したんだ。

 古い飛竜人の村の伝承を。



『昔、世界の最果てにあった島で、飛竜が生まれた。

 小さく翼があった飛竜は、その島の大きくて恐ろしく、翼がない竜に怯えて暮らしていた。

 やがて、飛べることに気づいた飛竜達は、最果ての島を逃げ出した』



 ……戦争が終わった時私は、この港が属する『パレオシーン王国』の王から土地と爵位を褒美として賜わることになった時、迷わず最果ての海の向こうの島があるからそこを欲しいと言った。


 今の国王は話が分かる方だが、飛竜人の愚かな願いに安く済んだと思ってくれたか快諾していただいたよ。


 ……そして、一年前私は海を渡り、

 伝説の島を見つける事ができた」



 私の本を胸に抱きしめ、噛み締めるような笑みをおもわずと言った様子で浮かべるアルトリーシャさん。



「そこは、先生の本の通りだった。

 地獄で、魔境で、何よりも力強い命の島だった。

 ……先祖が何故逃げ出したのか分かる。

 だが……きっと、祖先の持っていた翼を失った今この私達ですら戻るしかないというのも良くわかる、種の故郷がそこにあった」


「…………」


「……もっとも、私や私の村の皆が新たな家にするには都合がいい場所もあった。


 なので、今は皆がほぼそこに住んでいる。

 大変な場所さ、程よく死にかけることもある。

 だが……まぁ、今はいい安住の地だ」



 そうか。

 ……進化の歴史の様に、彼女達は戻ったということですか。


 海から陸へ上がった脊椎動物達は、しかし再び海に戻る種も多く、生物の歴史にはそれこそかず多く存在しました。


 である様に、彼女達の祖先が飛び出した島へあえて戻る選択をした。


 きっと、その顔に浮かぶ悲しみか疲れか開放感か……とにかく、受けてきた差別や彼女が経験してきた何かに比べたら、はるかにマシな『地獄の中生代の島』がそこにあったんでしょう。



「……それで、そこへ私を連れて行って、何をさせたいんです?

 私にとっても、そりゃあ居心地の良さそうな地獄でしょうけれども」


 そして、ここまではある意味で序章。

 本題は恐らくそこでしょう。


「……実は、」



 そこまで言ったタイミングで、突然このファンタジー世界に似つかわしくない音が鳴り響きました。



 ブォーン!!



 耳をつんざく、クラクション。

 何事かと振り向けば、すごい車がゆっくりやって来ました。


「装甲車!?」


「ストライカー!?

 げぇ、まさか!?」


 アルトリーシャさんも困惑と警戒に剣に手を置く中、やって来た8輪のタイヤ付きの装甲車が、私達の目の前でそこらへんのタルを踏み潰しながらやって来ました。



「ごきげんよーう!」


 そして、ハッチを開けて出てくる顔は、


「…………なんでいるんですか、エセお嬢様」


 私の知り合いの、地球人……と言った方がこの異世界じゃ通じるんですかね?

 この金髪ブロンドは。


「ちなみに、そのお父さんもいるぞ?」


 そして、運転席の覗き窓兼ハッチを開いて、イカつい大男って表現が似合うグラサンの男性まで。


「なんでいるんですか、スミス親子」


 私の知り合い二人は、ニカっと屈託なく笑って言いました。




「「恐竜が狩れると聞いていてもたってもいられなかったから!」」




 やっぱりか……


「……誰さんです、この人たち?」


 まず、最初にそう尋ねたのは佐藤さん。


「あー……こちら、バーソロミュー・スミス氏に、その娘のエリザベス・スミス。

 アメリカでは有名な、銃改造マニアの資産家です」


「ついでにいえばね、日本の人。

 俺達は偉大なる大英帝国が7つの海を支配する前から続いて来た貴族の家系で、その頃からずっと狩りが趣味だったのさ!


 というか、横を見りゃあありゃプレシオサウルスか!?

 歓迎の花束よりも嬉しいねぇ……うーん、この魚臭さが、何より芳しい香水の様だ……!」


「そして、こちらにくればドラゴンも恐竜も相手取れると言われたら、

 そりゃあ来るしかありませんわ〜!!おほほほ!!


 ましてや、かつては同じく一緒に地面を掘っていたお友達が!知っている中で最高の古生物学者が行くと決めたなら……本物は確実。でしょう?名香代♪」


 いやそういう問題……と言いかけて、この二人はずっとこうだったのを思い出します。


 あの高笑いする英国のお嬢様気取りな一般金持ちアメリカ人が、なんだかんだ大学で同じ講義を受けていた間柄とは……



「…………知ってるぞ。いやコイツらは知らないが、私は良く知ってる。


 コイツら、放っておいてもこの海を渡るタイプだ。


 あの大海蛇まみれの海をな。他の船を借りて沈めてでも」


「……このクソ重い車ごと連れてけます?」


「……連れて行かなかった方が……なんか怖いって気持ちがある様だな、先生」


「……俺、報告書書くのすんごい嫌になっちゃった」



 ふと、スミス父親……こと「バート」さんがハッチから出て、一歩アルトリーシャさんに近づきます。


「とはいえ、不躾な登場は失礼したお嬢さん。

 改めて、私はバーソロミュー・スミス。

 お気軽にバートとでも呼んでほしいですな。

 まぁ、以後お見知り置きを」


 と、跪いて片手を胸に当てて一例。

 ……意外なほど様になってる……


「……恐竜を狩ると言ったが、何故に?」


「……何も島一つ狩り尽くしたいわけじゃあありません。

 ただね、1匹で良いんですよ。


 ティラノサウルス・レックス。

 ヤツをこの目で見て、この足で追いかけ、この手で握った相棒で討ち取ってやりたい。


 難しいですかな?」


「…………」


 一瞬、チラリとこちらを見るアルトリーシャさん。


「……1匹で良いのか?」


 そして、ふとそう言葉をかける。


「……まぁ、手前勝手な夢に娘と娘の友達まで巻き込んだ訳なので。

 分別つけてるフリぐらいはと思いましてね」


「そうじゃない。

 ティラノサウルス、は実はまだ見たことがない。

 ただ……似たのは、正直週に2回は見る。

 そして、狩られてるのはこちらかもしれないぐらいの『2回』を体験できる」


 アルトリーシャさんは、ふとそんな事を言います。


「いいさ。お前が何者でも。

 自称ハンター、自称未来の最上位冒険者。

 皆招いているよ。


 ……生きているヤツの方が、少ない」


 その顔、凄いんですよ。

 ごく当たり前みたいな顔で、ごく当たり前みたいな口で。


 アルトリーシャさんにとっては、案外良くある事の様で。


 そして、こっちを振り向くバートさんと、目を合わせる娘の「エリー」。



「聞いたかエリー!

 『本物』だ」


「ええ、お父様。

 今度こそ、分かれたお母様に遺産が入りますわね?」


「二人分だな。

 よし行こう!」



 …………


 こうして、アメリカから装甲車ににって来てやって来た二人までも加わって、



 ちょうどやって来た大きな空飛ぶ船……文字通り帆船の脇にプロペラエンジンが付いている様な凄い船に、私達は乗ることになったのです。



 まぁ、目指すは恐竜島。

 さて、鬼が出るか、ティラノが本当に出るか。




         ***


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