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異世界メソゾイック-剣と魔法のファンタジー世界の奥地、そこに恐竜がいまだ生きていた!?-  作者: 来賀 玲


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第1話:来てしまった異世界の最果て、そこに探検隊は絶滅したはずの巨大恐竜の姿をみた








 異世界エモールディア。

 エモールディアの言葉の意味は『我々の素晴らしい大地』だとか。


 魔法という、魔力なる未知のエネルギーを使って生活しているこの大地は、いまだに全てが明らかになっている訳でもない。


 かつて栄えた古代文明の跡地のジャングル、

 未知の生物達がいる森、

 人類に似た知的生命体、いわば亜人類のような多様な種族。


 そして、文明レベルはそれなりに高いはずなのに、どこか地球の中世を思わせるような文化達……




「でも本質的にここは安全な日本じゃないし、検疫とか色々あったはずなのに……」



 私こと天才古生物学者な小平名香代ちゃんは今、この大陸の最果てとも言える港町『ケイピグ』の、冒険者ギルドなる場所で簡単すぎる冒険者登録をしていたのです。



 ここまで3日。

 あの衝撃的な出会いからわずか3日でここまで来れたのです。


 建物出たらもう、よくあるファンタジー世界の街ですよもう!


 荷物を揃える方が大変でした……一部ちょっと『別の国』から揃える必要がありましたし。



「案外ガバガバでしょう?

 どうも、普通に日本レベルの予防接種受けてるなら防げる病気が多いんですってこの世界は」



 そう朗らかに言ってくれるのは、隣にいる防弾チョッキのお兄さん、どう見積もっても二十代後半程度な人は、日本外務省のお方で……


「そりゃあ異常ですね、えっと……」


佐藤(さとう)元気(げんき)です。

 外事九課の佐藤ですって」


 そうそう、あんまりにも普通の名前で忘れてました。


「……外事九課?」


「まぁ、外務省の下っ端って感じなんですけどね。

 下っ端すぎて、先生の護衛俺一人なんですけどね……」


 なんて言うこの人、一応銃は持ってますけど……


「……その銃、自衛隊の20式ですか?」


「お詳しいっすね。身を守るために」


「5.56×45mm弾、効く猛獣は案外少ないんですよ。

 例えるなら、芝犬とかコヨーテサイズまでです」


「え……」


「ただでさえ、ドラゴンなんかがいる世界です。

 人間相手用のライフルはあまり役に立たないと考えるべきですよ」


「……マジっすか?」


「まして軍用品であるなら貫通力が高すぎます。

 いやでも……」


 と、その時近くの露店が壊されて、何か大きな物がやってきました。


 クォォォォ……!


 なんと……それは、異世界の存在ではなく、いやと言うよりあまりに見慣れた復元図のまますぎて絶句してしまうものでした。


 絞り出すような低周波の鳴き声と、巨大な身体のトカゲの姿。

 嘴の様な口には……ああ、まさかちゃんと唇があったんですかあなたは……!!



「恐竜!?」


「イグアノドン……!

 なんでここに?」


 全長多分10mぐらい!

 まさしく巨大生物。それがこんな街中に!?


 よく見ればその身体には大量のロープと何やら人々が押さえつけようとしている様子が見て取れます。


「クソ!!眠り薬が切れた!!!」


「素直に解体されろこの翼無し!!」


 この世界じゃ普通の技術らしい魔法の翻訳リングを渡されてるおかげで状況は理解できましたが、だとしたら……


「まずいな。麻酔に対する拮抗薬を入れ過ぎて、興奮状態なんだ!」


「言ってる場合じゃ無い!!先生逃げますよ!!」


 たしかに、と腕を引かれてここを離れる私達。


 いやぁ、にしてもすごいパワーですねイグアノドン……!!

 あの、ここは人間以外にも、トロルでしたっけ?巨人でしたっけ?

 背が高い筋肉質な、あるいはちょっとブヨブヨな身体の人型の方々が、全員揃って1匹の恐竜に振り回されて……



 これが、前期白亜紀においてかつアルゼンチノサウルスを含む竜脚類という規格外を抜けばとはいえ、最大級の草食恐竜の力……!


 あの巨人ともトロルとも言える人たちですら振り回すパワー!

 サイズ差で言えば、相手は牛なんでしょう、彼らからしても。

 人間が二人で興奮する牛を押さえつけられるか、と考えれば、振り回されるのも当然ですね


「どけ!!

 ────『アズライトの流星』!!」


 あ、魔法使いっぽい方が魔法を!!


「あ、バカ辞めろ!!」


 魔法の杖から放たれた光、レーザーというか光球というか、そんな物がイグアノドンに当たります。


 なのに傷どころか、まるで効いていない。

 と言うよりイグアノドンのロープだけ断ち切って、本体には一切傷が付いていないような……!!


「効いてない!?」


「どこのよそ者だァ!?

 メソゾイク島の翼無しは魔力が一切効かないんだよぉッ!!」


「頭でっかち魔術師のせいでロープがちぎれたじゃねーかよぉ!?

 あっ!」



 あっ!!

 多分トロルの方のブヨブヨボディに、イグアノドンの爪が!!


「ギャアア────ッ!?!

 いでぇよぉおぉおおぉぉぉおおぉッ!?!」


 イグアノドンのあの爪、本当に闘争に使うのか!!

 にしてもざっくりいっちゃってまぁ……血が吹き出し過ぎてますよ!?


「相棒ォォォッ!!!

 あ、だめだクソが一人じゃ抑えきれねぇ!!」


 ドシン、と筋肉質な巨人さんの身体を、もっと大きな体当たりで近くの煉瓦造りの壁に叩きつける。


「グフッ……!!」


 嫌な血の吐き方、肺が破れたかもですね……

 そりゃあ、あのサイズで軽い方とは言え、5トンの体重ですよ!


 もうしっちゃかめっちゃかですね……仕方ない。


「無茶苦茶だ!!

 先生逃げましょ……先生?」


 着替えやら記録のための荷物の中でも、ちょっと大きくて『危ない』物が入ったケースを地面に置いて、開けます。


 中に入っているのは、地球の銃。

 俗に、『対物(アンチマテリアル)ライフル』って呼ばれる物。


「……猟銃、って聞いてたんですが?」


「猟銃です。それ以外には使えません。

 まぁ、だいぶ形が趣味入ってますよねそりゃ」


 昔、海外の大学で勉強している時、まぁ規制が緩いのと現地の人に誘われて、こんな銃を使った狩猟をやらせてもらいました。

 ライセンスも一応取ってます。

 そして、私は天涯孤独の身でありながらもちょっとお金はあるので、コレを『現地の悪い友人』から私物として買っていました。


「バレットM95改造象撃ち銃(エレファントガン)

 友人曰くその名も『エレファントスレイヤー』。ただの魔改造銃なのにカッコつけてますよね?」



 見た目通り重いこのエレファントスレイヤー君の銃床を下にして置いて……っと。


 そして日頃資料作りに欠かせないスティックのりみたいなサイズの……


 577ニトロエクスプレス弾。


 先が尖っていない、アーマーではなく分厚い肉を貫通して無理やり骨を砕き、内臓を破壊するための弾丸入りの、重い弾倉をグリップ後ろの機関部に差し込みます。


「手慣れてるようで。

 それならあのデカいのを殺せますか?」


「問題は、相手がイグアノドンである事ですが」


 バイポットを下げて地面に設置。

 私も寝転がって、エレファントスレイヤーを構えます。


「イグアノドンは、化石から脳のサイズが小さいと言われています。

 狙うは通常の大型生物、クマと同じで心臓付近。

 果たして、恐竜の骨が空洞とは言え硬く無いという証明をしてしまうのかどうか」


 この魔改造ライフル君は、重いからこそ逆にギリギリか弱い美少女な私でも撃てる反動にはなってます。


 ただ、チャージングハンドルを引いて球を銃に込めて、セーフティーに指をかける間から緊張がずっと走ってしまいますけど。


「なんて、言ってアレですけど、私もコレ撃つのは次の旅行の時って思ってたのになぁ……」


 動く的相手に当てるのも初めて。

 うーん、出しゃばったかな……


 ウサギや鳥じゃ無い。大型で、しかも結構暴れてる。


 怒らせるだけか、憧れのイグアノドンを初めて撃った美少女の称号を得るか。



 雑踏。混乱。逃げる人。

 幸いこっちの道は空いている。

 人には当たらないはず……


 セーフティーを解除。


 威嚇する場合イグアノドンは立ち上がるようでって言う世紀の発見をスコープ越しに見れたのは、古生物学者として喜んだ方がいいのか。


 引き金に指を……かけて……いけ!!



 ドン!!!



 私の羽みたいな体重で良く耐えられたって言う反動と衝撃波。

 ボスッ、とイグアノドンの胸の辺りに穴が開くのが見えます。


 ドン!!!


 一発で仕留める自信なんてないので、ハンドルを引いて弾を込め直してもう一発。

 カコン、と薬莢が近くのレンガに落ちます。



 ドンッ!!!



 もう一発。弾、結構貴重だけど出し惜しみなく撃ちましょうか。


 イグアノドン、ごめんなさい。

 あなたは異世界の種ですし別の学名もつくかもしれないのに、貴重な恐竜型恐竜の一体なのに、ただただ人の都合で殺してしまうことを許してほしい。

 ただ……好きな恐竜だからこそ推定Jカップの胸を張って言える。


 その巨体で街で暴れるのは、

 普通に迷惑です。


 そして、三発目でイグアノドンが倒れ、ビクン、ビクン、と跳ねながら……やがて、胸から血を流しながら動かなくなりました。



「……ふわ……!!」



 腕がビリビリするのは、.577ニトロエキスプレスなんて撃ったせいなのか……


 命を奪った。

 たとえそれが人じゃないとしても、あんまり良い気分ではないから、そんなストレスなのかも。


 ぽん、とそんな私の肩に、手を置くのは隣の佐藤さん。


「おつかれっす!

 先生、ウチの狙撃班になれそうっすよ?」


「……あの、ウサギと鳥と……恐竜しか撃ったこと無いので」


 はは、と笑ってその手を取って立ち上がらせてもらいます。

 ……おっと、ちょっとよろけちゃった。

 やっぱり、久々にこんなイかれた銃を撃ったせいなのか、



 グゥゥ……グォ……!



「まさか生きてる!?」


 なんて言って油断するべきじゃなかったようです。

 イグアノドンは、まだ生きていた。


 周りですら、完全に死んだと思っていたせいで驚く中、必死に起きあがろうとしている……!



 皆何を考えているのかは分かりませんが、私は……



 感動、していました



 果たしてコレが、地球の6500万年前のものと同じ恐竜なのかは分かりませんが、

 少なくともこの生命力は、まごうことなき古き時代の支配者の威厳を持っていました。


「撃って!!撃って先生!!」


 ついハッとなって、やっと佐藤さんの声で我に帰りました。

 象撃ち用の.577ニトロエキスプレス弾三発じゃあ足りないとは……


 マガジン残弾、二発。

 いけますかね……!



 そこまで考えた時、傷ついたイグアノドンの横から走ってくる影。


 ズン、という音と共に、イグアノドンの頭と胴が分かれていました。




 それは、剣と呼ぶには余りにも大きかった。


 有名な漫画の一説が思い浮かぶほど、太く、分厚く、大雑把な剣。


 それを握っていたのは、見たことのある顔。


「あ……!」


 あの、私の博物館にワイバーンに乗ってやってきた甲冑の女の子です。




「ゆ、勇者アルトリーシャ!?」


「北の魔王を鎧ごと縦にぶった斬った怪力勇者のアルトリーシャだ!!」


 あの人、そんな名前だったのか。

 名乗りをする暇もなかったかも。


「飛竜人で初めての異形の主……ヒッ!」


 ふと、近くにいた商人っぽい人の顔の鼻先に、そのアルトリーシャさんなる人の手のどデカい剣が近づけられていました。


「───ついでに言うなら、この異世界の言葉で『イグアノドン』という名の哀れな竜のいる島全ての土地を譲り受けた者でもあるのだが。


 誰の許可を貰って、この哀れなヤツを運び出した?

 お前だろう、商人の……名前は何だったか?」


「ちょ、ちょ待ってくださいよぉ、アルトリーシャ伯爵様ぁ……!

 この商人アコギ!そりゃあ評判はよくねーとは言え後で金は払うつもりで……!」


「───せめて運び出す前に言え」


 そのクソデカというよろしくないですけれどもそういうしかない剣を、まるでナイフか何かの様に精密にチョンと商人さんの服の上をなぞらせて、ボタンを切り裂く。


 片腕で、そんな事をする威圧感。

 おそらく色々やらかしているらしい商人さんの顔の血の気が引いていきます。


「港もすぐできるだろうから、密かに渡って密かに持ち出す盗人みたいな真似は……お互いの今後に傷がつくはず」


 ブンと振った鉄板じみた剣を片手で自分の肩まで持っていく姿は、すごく様になってます。

 そして、そのままもう片方の手で相手の肩をがっしり掴みます。


「まぁ、災難だったろうから、こちらへの取り分は哀れな一頭で出た利益の7割で良い。

 ああ、だいたいコレぐらいなら78万G(ゴールド)か。3割懐に入れても、充分良い思いができるんじゃないのか?」


「……せ、せめて、6割にして、もらえやせんかねぇ?

 ほら、働きがしらのデカいの二人を治してやりてぇ……ぇぇえ……!!」



 一瞬、こっちからは背後しか見えないのに、すごい顔をしているんだなって分かる……


 ああそうか、『殺気』だ。


 それが感じられたんですよね、アルトリーシャさんなる、私と同年代ぐらいの少女から。


 この殺気は、まるで、

 そうだ、初めて海外で狩猟した時、おんなじものを感じた事があります。



 グリズリーと出会(でくわ)した時に。





「……ダ、ダメですかねぇ……!?」


「…………6.7で手を打ってやる。

 ちゃんと部下は大切にするんだ」



 ポンポン、と商人の肩を叩いてこっちへ向き直るアルトリーシャさん。ちなみにその背後で商人さんは地面に崩れ落ちる様に腰を抜かしていました。


名香代(ナカヨ)先生、それと日本の外交官の確か佐藤サトウさん、遅れてしまった」


「ああ、えっと……アルトリーシャ、さん?」


 ガチャガチャと鎧の音を鳴らしながら、肩で担いだ凄まじく巨大な剣を感じさせない足取りでやってくるアルトリーシャさんです。


「どうも、佐藤です。伯爵様にはお世話になります」


「む……一応、爵位を貰ったばかりとはいえ、そこまで畏まられるのもやっぱりむず痒い……がなぁ……」


「……考えても見たら、私自身はだいぶ有名人だったみたいですけど、そちらの名前も覚えていないうちに来ちゃいましたね」


「え、あ!

 ……それはすまない。招いた側なのに、色々説明不足で……」


「まぁ、ホイホイ付いてきちゃったのも私ですが。

 ……しかし、改めて、本当にいるとは思いませんでしたよ、恐竜が」



 いつのまにか、解体作業なのかが始まるイグアノドンの死体を見て、つい呟いてしまう。


「島の私達が作った村……いや領にくれば、本物の全身骨格も見られる。

 ナカヨ先生、あなたの本は私達にとってはとても重要な本だった」


 というと、と聞く前に、アルトリーシャさんが私の前にやってきて、胸に手を置き一礼するのです。


「改めて、私はアルトリーシャ。

 飛竜人にして、勇者。そしてこの度、最果ての島メソゾイク島を治める事になり、伯爵の爵位まで貰ってしまった子娘だ。


 ナカヨ先生、あなたには私が治める事になった最果ての島に来ていただきたい。


 その上で、ある頼みを聞いて欲しく、招いた」


 ……なるほど。



「じゃあ、まずは行きましょうか。その島。

 恐竜がいるという島に。


 話はその道中でもできます?」



「……ありがたい」



 異世界にきて、ドラゴンでもそう言ったファンタジーの幻獣でもなく、


 何故か存在している恐竜を見にきた人間、それがこの美少女天才古生物学者の小平名香代17歳。


 そりゃあ、まずは向かいますとも、恐竜のいる島へ!



「では、港に飛行艇が出ている。

 そっちへ行こう」



         ***


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― 新着の感想 ―
ここまで読んで、昭和の『川口浩探検隊』と『恐竜探検隊ボーンフリー』の雰囲気を感じました(;^ω^) 全然世代じゃないのに(;^ω^)
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