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異世界メソゾイック-剣と魔法のファンタジー世界の奥地、そこに恐竜がいまだ生きていた!?-  作者: 来賀 玲


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プロローグ : 異世界が来たせいで古生物が受けた影響について










 剣と魔法のファンタジー世界「エモールディア」とこの地球が繋がって数年あまりのこの世界。



「今日もこの小平古生物博物館は閑古鳥ですよっと」



 この私、アルティメット美少女大天才古生物学者で学芸員だしまず館長ですし名誉助教授なハズの『小平(こだいら) 名香代(なかよ)』ちゃんは、アクロカントサウルスの全身骨格模型の埃を取りながらつぶやくのでした。


 


「見てアレ、ティラノサウルスー!」


「うわマジだ、まだこういうの見れる所あんだな!」



 下では暇なカップルが、ちゃんと標識を見ないでなんか喋っているのでした。お不悪句。


 アクロカントサウルスって書いてありますがぁ!?



 学名『アクロカントサウルス・アトケンシス』。『高い突起を持つトカゲ』の意味ですが??小種名「アトケンシス」は見つかったアメリカはオクラホマのアトケ群という場所より命名なのですが?

 前期白亜紀の北米にいた11mまで成長したとされる巨大な肉食恐竜であり、分類的にはティラノサウルスなどと遠いカルカロドントサウルス科あるいはアロサウルス科に近い恐竜類ですが?


 前足が短い肉食っぽいデカい爬虫類っぽいものは全てティラノサウルスですかそうですか。


 そもそも、その前から見た骨格の厚みを見なさい。

 ティラノサウルスの分厚く「全てを噛み砕く」骨格ではないのです。

 鋭いナイフ状の歯は、狩りの対象となる大型装飾恐竜の身体を傷つけ出血させ、そして弱らせていく為の歯なのです。


 アクロカントサウルスはティラノサウルスではない。


 似ているようで全く違うのです。


 なのに……なのに世間はあの形なら全てがティラノサウルスに見えるらしいのです。


 いやもっと酷いのです!!

 大昔に生きていた全ての大型爬虫類だけではなく、人類に繋がる哺乳類の仲間である単弓類まで『恐竜』と言うのです彼らは!!


 最も古いトカゲ達の中から早くに海へ戻っていった魚竜と首長竜。


 主竜系類ではあるものの、恐竜と共通祖先ながら空を選んで最も早く空を支配した翼竜。


 白亜紀後期に開いた海の生態系ニッチに入り込んだ、原生の蛇とは兄弟群とも言える大型海棲爬虫類の海トカゲ類ことモササウルス科。


 その他、6550万年前の大絶滅を境に絶滅してしまった運のない古生物達。


 彼らは、恐竜ではない。

 しかし恐竜にはない魅力もあるのです。

 なのに……!!

 


「でもやっぱ本物のドラゴンに比べたらさー、翼もないし前足もなんか頼りなくない?」


「本物と比べちゃまずいって〜!

 ほら、この前渋谷にやってきてくれたドラゴンさん迫力ダンチだったし!」



 グフッ!


 …………そうなのですよね。

 えーそうなのですよね。

 そうなのですよ……


 今の時代、もはや恐竜ですら人気は押されてしまいます。

 いや、生き残っていてもそれは所詮パブリックイメージという名の虚像の恐竜達。

 それですら……絶滅寸前です。




 この日本でも異世界から来た人々や人以外の知的生命体、いわゆるエルフやら魔族やらがよく見えて来ています。


 中でも、知性のある爬虫類型生命と言えるドラゴンが実際に現れたのは流石に恐竜大好きな美少女学芸員な私でも感動しましたとも。


 あの唇でどうやって、どうして話を出来るのか……生物学も勿論履修している私も気になる所ですが、向こうの魔法たる異世界の科学の賜物なのでしょう。まぁ、いずれは触りでも学びたい所ですね。


 でも……だからと言って、世間はこちらにある物を古いものとして、絶滅したものとして忘れ去ろうとしている。



「……強さや弱さ、優秀さや無能さ。

 能力のあるなしに関わらず、何かが突然滅ぶことがあるものなのです……」



 誰にともなく、あるいは目の前のかつて北米を支配していたモノのレプリカ骨格に語りかけてしまうのです。


 ……こういった自然史博物館への国への予算が削れていく昨今、異世界との繋がり以降その傾向は顕著になりつつあります。


 まだ、名前のある博物館は無事でも、この私が、まだお酒も飲めないしアルバイトもできないうちに色々として頑張って作った博物館なんかは……


 いや、ここもまだ、カップルが冷やかしに来るだけマシなのかもしれない。


 まだ14歳の頃の大学時代、遥かに歳上の同じ講義を受けていた、今は別の自然史博物館の学芸員をしている友人の現況報告は、


 古生物の展示を縮小し、異世界の特異な生き物達の展示を増やしたそうです。


 判断も分かる、そしてそれに本気を出さないわけじゃない。

 ただ少し悲しい。そう言ってましたね。


「…………」


 この私の博物館の常設展示のもう一つ。

 巨大な身体と長い首と尾、首長竜と間違えて呼ばれる事も多い、しかしその巨大な身体を支える脚にこそ名前を持つ存在、


 竜脚類(りゅうきゃくるい)

 その一種であり、最後の……白亜紀の巨大隕石による大絶滅の時にいた、巨大恐竜『アラモサウルス』骨格標本の実寸大レプリカは、このアクロカントサウルス以上の存在感と、吹き抜けな館内をぶち抜いて最も目立つ用に……そして、大きすぎて逆に気付くのが遅れるように存在しているのです。


 だから目に入るのですか?

 いや、もしかしたらこのアラモサウルスは、

 6550万年前のK-Pg境界、つまり隕石衝突前と後を分ける時代、埋まっている土の境目から分かるそれ。

 それを跨いでいる可能性がある恐竜。

 つまり、孤独にあの大絶滅をほんの少しの間だけ乗り越えて、その後の氷河期を孤独に長く生きて、そして結局は滅んでしまった悲しい種の可能性がある恐竜だから……


「……感傷です。そもそもアラモサウルスの化石の出た地層年代の差、たった70万年は……ただの誤差だって言われてるのに」


 どちらにせよ、恐竜は滅んでしまったのです。

 ほら、あの楽しそうに話すカップル達も、もう涼み終えたからベンチのあるコーナーに向かうように、いずれは忘れ去られるのが本来の運命。


 古生物の研究とは、ある意味でそれに抗い過去を残す物。




「……いや、絶対そんな事で納得はしないので!!」


 はい、ウジウジタイム終了です!!

 この美少女古生物学者の小平名香代!!

 花もはじらう18歳!!後2年は美少女名乗れますし、未来は美人古生物学者の肩書きが待ってますので!!


 例え異世界が来ようとも、いまだにこの地球には未知の古生物から既知の古生物の骨が眠っているのです!

 それを、誰も見てないと言われようと、誰が知らんと言おうとも、私は見つけて、なるべく自分の博物館で!まぁ、現実的には有名な博物館と教授の元で掘って見つける為にも!!

 何よりただ滅んだだけと思われてる彼らの存在を後世に残し、そして彼らの生きた軌跡から何かの学びを得る事もあるでしょうし、


 何よりこんな面白い生き物が生きていたんだ、ってだけでロマンがあるのです!!


 ……それが分かる人のために、何より彼らのロマンが大好きな私のために!



「絶対ここは古生物博物館のままにしてやるのですよ!!

 まぁ、副収入で書いてる「美少女助教授と学ぶ恐竜図鑑」シリーズが案外重版されてていずれ資金はたまって、また発掘調査出来るはずです!

 ちょうどこの国内、それも神戸で大規模発掘調査が始まるのも近いですし!!


 やったります、私!!」



 アクロカントサウルスのレプリカ骨格君、あとちょっとこっち振り向いたカップルさん達煩くしてごめんなさい。


 でも、私は結局、恐竜好きの天才なので!!



 ゴゴゴゴゴゴ……!



「ん?」


 てっきりやる気が湧き上がる音と思ったら地震?

 いや……突然ブゥンとすごい衝撃が!

 続いてドシン、と外から音が!


「何が……ってぇ!?!」


 外が見えるガラス張りな博物館デザインにして良かったのか、悪かったのか、



 なんと外にはドラゴンの顔!

 いや、翼が腕の、翼竜と鳥が合わさったような、あるいはコウモリかな形は、確か「ワイバーン」では!?



「どっちにしろそこ駐車場じゃないのでぇ!?」



 芝生の所は基本立ち入り禁止ですがー!?!

 私、急いで5点当地で飛び降りて、非常口を開けてワイバーンさんのところへ!!



「ちょっとすみませんがお客さーん!?!」


 よく見ると、馬の鞍のようなものが背中にあり、そこからまさかの全身鎧の人が降りて来てました。

 そんな重そうな鎧で軽やかに……というより急いでこっちに来てますが?


「───本当にいた……!」


 頭の(かぶと)を外して、なんと中から女の子……?


 まって、頭に角が生えてる?

 即答やや上、後方へ三角形。


 それに瞳。白目部分は我々人類と同じですが、瞳孔が細い楕円形で縦になっている。


 どことなく、陰謀論で語られがちな『爬虫類人(レプティリアン)』のような……


 いやというより、同じくこちらを見ているワイバーンと同じ目に、ツノの形状がそっくり……?


「コダイラ、ナカヨ?」


「ああ、ご丁寧に。

 相変わらず、翻訳技術がすごいですね異世界の人」


 嫌味ですけど、そう言った直後彼女は懐から、一冊の本を……


 って、私の『美少女助教授学ぶ恐竜図鑑』の第3巻!!『なんか小さくて可愛い (だけでもない)コエルロサウルス類』じゃないですかねぇ!?


 一番売れてるやつです。

 可愛い恐竜ぬいを持つ私の後ろのティラノサウルスの開いた口の表紙がこだわり。


「これを書いた、あの?」


「え、まぁ一応……ついでに挿し絵も、AIほぼ使わずに自力で」


 ふと、なんでかやたらあとのついたページを開いてみせる彼女。

 おぉ、珍しいヤツですね。

 これは……


 ピュイ!ピュルルルッ!


 ふと、なんだかここら辺の田舎ではよく聞く鳴き声が、その人の後ろのワイバーンさんの荷物の辺りから聞こえるのです。


「鳥?」


「これを見て欲しくて、無礼を承知で来た……!」


 鳥籠を外すとそこには…………




 …………突然だけれども、鳥という恐竜の話をしようと思ったのです。


 発生はジュラ紀後期。最初の鳥は始祖鳥こと『アーケオプテリクス』が有名でしょうけれど、実は同時期にはより鳥に近い骨格の『バミノルニス』という存在がいた、どちらにせよみんなが知るティラノサウルスより1億年近く前には既に存在していた古参の恐竜グループ……それが鳥。


 鳥に近い恐竜という言い方はそもそも鳥が恐竜なので変ですが、鳥のように羽毛を持ち、空を飛んでいた恐竜はそこそこいたりします。


 比較的有名なのですと『ミクロラプトル・グイ』などですが……



「……生息時代は、ジュラ紀中期から後期。

 小型の羽毛恐竜群のスカンソリオプテリクス類の一種にして、特異な恐竜も多く出土している中国で見つかった中でも……あまりに特異な種でもある……!」



 それは、コウモリに似た翼でした。

 籠の中で壁面にしがみつく様子もコウモリじみている。

 なのに顔は鳥。

 嘴のような羽毛のない口には牙。

 ああ、()()()()()()()()()()()


 思ったより───『予想通り』だったんだな


 そう、素直に思いましたね。


「私が書いた予想図通りだ……」


 思わず、彼女がなん度も開いたページを持って、籠の横に置いて見比べる。



 ピュッルルァ!

 ピュルルァラララララッ!!



 イ・チ

 それは中国語で『()』という種名に、『()』という小種名を与えられた、言葉通り『奇妙な翼』の恐竜だった。


 そう、目の前には、翼だけが蝙蝠じみた、他はまさしく鳥のままな、化石から見つかった羽毛の予測色通りの黄色と黒の体毛に覆われているイ・チがいたんです。



「なんで……これも異世界の生き物ってヤツなのですか……?」


「聞いて。

 私達の世界の……その果てにある島に、

 あなたの図鑑に乗ってた翼のない竜達が、


 恐竜が、ここに載っているのだけじゃなくて、他の本の恐竜達の皆、そこで生きているの……!」


「……なんですって?」



 この時、私は何故か彼女の言葉をすんなり信じてしまっていました。

 そもそも、似た生き物がいてもおかしくない世界なのに、何故か私はその奇妙な翼の、いっそドラゴンの仲間ぐらい言えそうなそれが、どうしてもあの奇妙な恐竜『イ・チ』にしか思えなかった。



 だから、

 私がその後異世界へ行ったのも当然で、


 そこで地獄と、でも天国の日々を過ごすことになったのも、なんだかこの時に決まってしまったような気がしていましたね。


 だって、私は恐竜が大好きですし、古生物が大好きですし、


 化石も好きですが、生きた姿が見れるなら、

 地獄の底にも行けるんです。



         ***


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