第22話 : 雪原には未知の飛竜人『ズメイ族』が存在した!彼らの村に訪れた探検隊が見たものとは!?
熱帯から雪積もる島の一角に飛んでいき、雪に住む恐竜が住む場所に訪れた小平名香代ちゃんとその他御一行は、とんでもない方と出会いました。
「1つの年を数えるのに、日数で言えば365日として、
私達ズメイ族と、『フェンドラグ族』達の一部……ああ、あなたみたいな飛竜人と飛竜と言われている皆が分かられて、確か8万もの年が流れていると伝わっています」
この島の先住民、そしておそらく飛竜人のほぼ原種たる飛竜人。
ズメイ族のオリガと名乗る女性が、そう言いながらナヌークサウルスの手綱を引いて今目の前で歩いているんです。
古生物学者としてだけじゃ無い!
きっと生物学者も、なんなら文化人類学者も考古学者もみんな歯軋りして悔しがる光景だ!!
ああ……カメラ持って来てよかった!!バッテリーもまだあって!!!!しゃあっ!!!
「8万……!?」
「ええ。もはや神話の世界でした。
ただ最近は、島の『アギト氏族』の中でも慎重派な『レズィナ族』の若い偵察の皆が騒がしいので、もしやいよいよ本格的に外の海からマース竜やクトール、大海魚の群れを超えて来たのではとは噂しておりました」
「まった!その族とか氏族というのは……その、そこの恐竜や我々の総称か、オリガ殿?」
「オリガで良いですよ、島の外の姉妹さん。
ふむ……やはり、いくら翻訳魔法があれど、断絶した歴史に、我々の名前は消えてしまったという事ですね」
「……あの、私学者の小平名香代と申します。
オリガさんでしたっけ?その族という言葉から察しますが、あなた方は自分が、我々がティラノサウルス上科、と呼ぶ大きな恐竜のグループであるという自覚があるのです、か、」
「あんだ余所者?
オリガが話してるのはそっちのだろ、順番守れや」
と、このナヌークサウルス君が顔を近づけて言ってくるモノだから、ちょいビビります……デカい……!
「まぁまぁ、アントン。異世界の学者さんというのはそういうモノでしょう?」
「え?」
「だから睨んでんだよ、爺ちゃんから聞いてた」
「ちょっと待ってください、今異世界って?」
「ああ、あなた方の世界には帰ってこれなかったんでしょうね。
ほら、もうだいぶ古くなってしまいましたが、私の祖父があなたみたいな好奇心旺盛な方と知り合った事の証拠がまだ見れますよ?」
ふと、進んでいた森の一角、雪が溶けた下に見えた何か植物に覆われている朽木。
……いえ、朽木ではなく、それは……!
まだかろうじて、プロペラと、二枚の翼が見える……!
「あれは、名香代先生の世界の?」
「だいぶ古いが、あれは複葉機か?
どんなに最近でも、現役なのはもう70年も前だぜありゃあ……!」
「ふくようき、って何よ?見た感じ、空飛ぶためのものっぽいけど」
「だいたいそれであってますよ」
「不思議ですね。外の大陸よりも、次元の外の世界から来た人が先にここへ辿り着くのも。
あの機械から出て来た方は、村ではある種の偉人でした。
お医者様でしたからね」
「ただスッゲー変人でな。俺の爺ちゃんの姿見るなりずっと追いかけ回して絵を描いてた」
「いや何言ってんですか!?
ナヌークサウルスですよ、そりゃあ、」
「なぬ?
俺はティラノサウルスじゃあないのか?」
おぉ!
つまり、まだナヌークサウルス発見前の時代の人!!
「そうそう、そのお医者様も私達の骨を見て、私たちが先祖代々伝えて来た『我らは姿が違えど、元は同じ兄弟より生まれた』という事を証明したとも伝わってますよ?
まぁ、『アギト氏族』で『ホグル族』のアントンと私では、似ているのは脚ぐらいですからね」
「匂いは割とそっくりだけどな」
「その族と氏族って、どういう分類で?」
結構独自の言語が多い……一応確認しないと。
「ああ……まぁ、族とは私などが所属する一族を単純に指していますが、我々は祖先が同じとは言え様々な形へと変わって生きています。
それゆえに氏族という形で4つに分けてそれぞれ属しているんです。
例えば、このアントンは『アギト氏族』。
角がなく手にある指が他の氏族より少なくて、力強く噛み砕き狩猟を行う氏族です。氏族としての歴史も若いですが、最も勢いがあります。
私達のようなズメイ族のような『カイナ氏族』は、皆腕が発達していまして、それなりに賢い賢者の氏族……なんて言われてます」
「まぁ、海側の森を支配してる『ベナト族』のクソカスどもは、その知恵をいつもこっちをはめることに使いまくるカスだけどな!
カイナ氏族の面汚しだ、お前ら間違っても会うなよ?」
……ん?どっかで会ってないですそのベナト族とやら?
「他にも、皆さんも見たことがある彼方の別の羽毛を持つ『ルプス族』は、最も古い血筋でありトサカを持つことが多い『グァン氏族』と呼んでおります。
最後に、今や幻というほど滅多に見かけませんが鋭い爪と素早さが特徴の『タスク氏族』がまだどこかにいるはずなのですが……
この4つの氏族が、我々の仲間……というべきなのでしょうか?」
「…………わーお」
なんてこった。これは偶然ですか?
『アギト氏族』がおそらく『ティラノサウルス科』。
『グァン氏族』はならば『プロケラトサウルス科』。
そして、滅多に見かけない『タスク氏族』とはその特徴から……謎多きティラノサウルス上科の『メガラプトル類』。
じゃあ……『カイナ氏族』は……飛竜人と飛竜を含んだ、全てが未記載の未知のティラノサウルス上科!!
しかも推定:フィクションのラプトルのようなアイツらもおそらくこのグループ。
……経験上か、調べたのか、すでに分類が分けられていて、共通項ができている……?
「…………私以上に分類に命かけてる教授の皆が聞いたら泣いて震えるでしょうね……」
「一体何をコイツは真剣な顔にさせてんだ?」
「先生はそういう細かいところも考える学者でな。
確か本業は、骨から昔の生き物の推察をして、どう行動をしているかを予測する事らしい」
「コイツは変な奴で口でドラゴンを泣かせる異世界の蛮族だけど、実際この島のあんたら恐竜っていうデカいトカゲの行動の大半は頭に入ってるすごいやつよ」
「あらまぁ……通りで、狩人の装備が唯一適正かなと思えば」
ふと、そんな事を言われる私でした。
「……この銃がなんなのか知ってる?」
「これほど精巧なのは、あの飛行機で来た異世界の方以来ですが。
私のように魔法が使え、魔法を少しだけ得意とする身の方は案外少ないですので。
銃が流行るのもまたうなづけませんか?」
そう言って、服の裏にあったホルスターから、リボルバー式のやつを見せて言う彼女。
「うぉ!コンバットマグナムかこいつぁ!?
いや似てるが……コレ自作できるもんだとすりゃ、その鍛冶屋は良い仕事してるぜ!」
「マグナムではありますよ。
ええ、もちろん異世界の意味でも」
さて、とそんなあたりで雪積もる森を抜けたみたいです。
目の前には、巨大な木で出来た壁と、門があります。
上の見張りだと思われる場所にいた人へオリガさんが片手を上げた時に、その人が何かしらの操作をして、門がズズズと上へ持ち上がり始めます。
「ようこそ、白銀村へ」
そして、
「あッ!!やっべ!!」
そんな、ナヌークサウルスのアントン氏の叫びとその体で我々の盾になる様子と同時に、ボォンと音を立ててすごい炎が舞い上がりました。
「きゃっ!?」
「なんだ一体!?」
「うぅ……まさか、また!?」
「きっとまただろうさ!!
ちょっと来てくれ!!」
村の中央、大きな広場。
そこでは、二つの巨大な影が暴れていました。
グォォォォォッ!!!
片や、9m級な巨体のナヌークサウルス。
キィヤァァァァァッ!!!
片や、同サイズの巨大な飛竜。
飛竜人、いやこの場合ズメイ族の皆さんや、他のナヌークサウルス数頭に他の飛竜が見守る中で、二体はお互い睨み、そして唐突に頭から突撃してぶつかり合います。
「もぉ!!!また!?」
「ああ、オリガ様!!またです!!」
オリガさんの言葉に、村人の一人がそう説明します。
「またって、この騒ぎは一体?」
「外の奴らにいきなりこんな光景は、すまねぇ以外の言葉はねぇよ。
あの二人のうち、片方は俺の姉貴だ」
ふと、アントンさんがそう申し訳なさそうな雰囲気でいいます。
ナヌークサウルスの顔は分かりにくいとは言え、申し訳なさがなんとなく伝わります。
「姉貴の方の名前は『アリーサ』、俺たちホグル族のリーダーなんだよ。
で、あっちのフェンドラグ族は『ヴェロニーカ』。フェンドラグ族のリーダーだよ。
ちょっと今は揉めてるんだ。お互い、普段も喧嘩同然の手合わせばっかするけど、今回はちょっと拗れてる」
と、ナヌークサウルスことホグル族のリーダーさんアリーサさんが、空中から襲いかかってきた飛竜ことフェンドラグ族のヴェロニーカさんの脚を噛みついて、地面に叩き落とします。
「〜〜ッ!!
やはり強いな、アリーサ……!!」
「辞めてよね、ヴェロニーカ。あなたの主張も分かるとは言った。
けど、賛同できない。その理由も分かるはず」
「逆に聞く!!
では、お前はあのレズィナ族の話を無視できると思うか!?」
翻訳魔法越しに、二頭の会話が聞こえます。
「だから、慎重になれと言ってるの。
私達が喧嘩して解決する問題?
これは、ズメイ族にも関係がある。
私達だけの力で決めてはいけない」
「お前は賢い。認めるが、それでも!!
アイツらも賢く、我々並みに強いんだぞ!!」
ボン、と、飛竜特有の爆発性の化学物質を混合させて強く息で飛ばす、いわゆる火を吐く攻撃を繰り出すヴェロニーカ氏。
それを避けて、おそらくアークトメタターサル由来の巨体ながらも素早いステップで、横から体当たりして身体を押さえ込むアリーサ氏。
「恐怖に屈するの!?」
「答えを出せる頭で、なぜ早く回答を出さない!?」
「二人とも!!!!
まだあの事で争っているのですか!?!」
そこで、前に出て二頭の巨大な恐竜の争いを制するオリガさん。
「流石に私らも武器を構えときましょ?」
「だな」
「同感」
と言うわけで、アルトリーシャさんとバートさんと共に、ライフル構えて背後を追う私達でした。
「オリガか!?お前もアリーサに付くのか!?」
「どっちだろうと、そりゃ止め……ん?」
ふと、そこで結構怖いティラノサウルス科特有の正面顔を向けるナヌークサウルスのアリーサ氏と、続くヴェロニーカ氏。
「見ない顔、嗅いだことがない臭い……
まさか、島の外から!?」
「一人はズメイ族じゃあないのか!?
伝説は本当だったのか!?!」
「興奮するのは分かりますが、決闘裁判を族長が堂々とするものではありませんよ!!
お察しの通り、島の外より我らの姉妹とそのお仲間がやってきました。
客人の前で粗相をするほど、あなた方は品性が無いわけではないでしょう?」
まさか、恐竜相手に品性を説教するとは。
けれど、2頭はその巨体に似合わないほどの静かな動作で、頭を下げてくれました。
「我らフェンドラグ族、野に住む者としての自覚はあるが、だからこそ客人へ非礼を詫びる」
「ごめんなさいね。ズメイ族に我々ホグル族は世話になっているのに、その顔に泥を塗るような事を。
怖がらせて申し訳ないわ」
「これはどうもご丁寧に。
お邪魔してこちらこそ」
礼には礼を。相手が恐竜でもそれは大事なのでこちらも頭を下げておきます。
もちろん後ろのみんなにも、一応頭下げさせてね。
「───しかし、この族長会議の日に島の外から客人が来るとは、」
ふと、また別の方向からの声と共に、ゾロゾロ人を引き連れた人がやってきました。
一目で、偉い人なのは分かりました。
何せ、多分幼いティラノサウルス科の頭骨を頭に装飾して被り、他の人より豪華な青い衣装を纏ってましたから。
「兄様」
「え?」
「客人よ、お初にお目にかかる。
俺はゲラシムという。若輩ながら、ズメイ族の長を務めさせてもらっている者だ」
ティラノサウルス科頭蓋骨の装飾を外すと、まだ若い結構イケメンな男性の顔が現れました。
結構……オリガさんに顔のパーツや印象が似ている。
「はじめましてだ。私はアルトリーシャ。
こちらは名香代先生と、後もまぁ仲間だ」
「ほう、本当に我がズメイ族の末裔か。
して、我らが兄弟アルトリーシャ、なぜここへ来た?」
「ここへ来たのは偶然だ。
島は故あって島の外の国より私が領主ということになって譲り受け、他の場所に村を作り私達飛竜人安住の地として過ごしている。
それで……この島が我々の祖先の住む場所と知り、我が飛竜人の祖先……我々のような姿になる前の祖先を見つける冒険をしている」
そう言えば初めて旅の目的を言いましたね。
そして、その目的を初めて言った瞬間、その場の全ての人が目を見開きました。
ズメイ族、つまり飛竜人も、ナヌークサウルスも飛竜も全て。
「……そ、その村……!
もしや、背中に帆を持つ水辺の王の土地では……!?」
「なぜ白亜の村の領主セイルを!?」
ピシャリと白亜の村の特殊な立地を言い当てるだなんて……!?
いや、それ以上に周りのざわめきがすごい。
こちらを見る目が、その余所者相手というのとは違う……何か別の意味を感じる……!
「…………ババヤガの予言がこうも当たるとは……」
「何?」
「…………もしや。
そこの異世界のいでたちの方、少し聞きたい」
え、私?
「な、なんですか?」
「……変な事を聞くが、その……
我らの氏族は見た目こそ違うが、共通点が3つある。それを言えるか?」
────え?
「歯の断面がD字、恥骨と坐骨の形、ツノの空洞」
即答したら、余計に驚かれました。
なんなら隣のオリガさんが、ついでに後ろの有象無象と化したみんなまでなんだよその変な人を見る目は!?
「……島の外の同胞が、我らを知る賢者を連れてきた……」
「……巡礼の旅のために……!」
ふと、上で、いつのまにかガチ捕食距離まで近づいてきたナヌークサウルスと飛竜の顔が!?
「何!?なんなんですか、怖いよぉ!?」
「…………客人!
突っ立ていても辛いだろう。
少々込み入った話がある。
着いてきてくれぬか?」
と、若い族長であるゲラシム氏がそう言って招きます。
……一体、何が待っていると?
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