第13話 : 準備が終わる探検隊を襲う恐怖!それはファンタジーの深淵からの恐るべき刺客だった!?
この天才美少女古生物学者な小平名香代ちゃんが語るフィールドワークに必要なものは何か?
まず、シャツは通気性が良いけど長袖で。
ズボンも長ズボンにブーツ、ヒル対策バッチリで。
登山グローブがあると良いですね、まず素手で触れるものはないと思いましょうか。
日除の帽子、ライト。
バックは大きめに、寝袋とマットはどうしても要ります。
着替え。とはいえ一番必要なのは靴下ですね。足だけは清潔に。
水筒。火をつけるための火打石が付いているナイフ。着火剤。お鍋とお皿と食器の炊飯セット。
いざって時の携帯食糧いくつか。頑丈な小型カメラ。秘密兵器とそれ用の予備装置。そして銃の点検に必要な器具セット。これらはバック行き。
おっと忘れちゃいけない、ロープとペグ。マジで必要なヤツなのに。
腰のポーチに入れる予備弾倉5発入りは3+2個。577T-rex弾はやっぱり重いですが、更に500S&W弾をクイックローダー二つ分。
これだけ用意して、自衛が精一杯。
胸の脇のホルスター。ここに相棒の魔改造ライノ拳銃を。もちろん五発とも装填済み。
最後はストラップ付きの対物ライフル魔改造猟銃のティラノスレイヤーを携えてからチェック。
確認はボルトを軽く引いて、薬室に一発確認。弾倉、フル装填。
「良し」
時刻は、この星の時間で夜中の三時。
草木も眠る時だからこそ、夜行性の恐竜という珍しいタイプ以外は寝ている時間。
そして、旅へ向かう皆も大体同じ時間に起きてすでに出発準備をしているのでした。
「準備完了って感じっすねみんな」
「佐藤さん、ガチ過ぎませんそれ?」
あれ、本当に元自衛官ですか?といいたくなるぐらいなんだか最新鋭っぽい装備ですよヘルメットからなんか暗視装置から。
「ガチなぐらいじゃないと身を守れない、ってこのセーフゾーンの中ですら思えますからね」
「同感だな」
「ですわね」
バートさんもエリーも私と同じく、民間の範囲で割とガチの装備で揃えてます。
流石に防弾チョッキは無さそうですが。
「正直、ここを進む以上は皆本気の装備では無いとな」
「あ、アルトリーシャさんも……結構すごい装備で」
ファンタジー世界の軽装な方とはいえ、胸当ても肩当ても籠手もある上に、動くところはチェーンメイルで防御してある姿のアルトリーシャさんが登場してます。
珍しく、ちゃんと兜まで持ってきて脇に抱えてます。
「この前は機動力重視で軽装すぎて痛い目を見た。
何かあって泳ぐとしてもこれぐらい守らないと行けないと体で覚えたよ」
角の形の穴付きの兜を被って、バイザーを上げて笑顔を見せるアルトリーシャさん。
「アンタの場合、その武器が重そうだし苦労しそうだよな防具は」
ふと、会話に混ざる声は……
あ、あの時の若い冒険者さん……なんだか魔法使いみたいな帽子とローブ姿で登場。
「その点、俺はこの島じゃあんまり役立たない防具ばっかさ。
魔法剣士なんざやるもんじゃ無いな」
そう言って、確か私の世界じゃコリシュマルドっていう名前の太い部分のあるレイピアみたいな武器と、某有名魔法学校小説の小さな杖を見せる彼。
「そう謙遜するな、カイル。
この剣はある意味で、私の意地と趣味でしか無いんだ」
「あ、カイルさんって言うんですね。
いつの間にか仲良く」
「そういや名乗ってなかったよな、先生さんよ」
とりあえず握手を求められたので握手。
そしたら、両手ですこし強く握手を返されました……何事で?
「船では悪かった。
俺らがバカだったよ」
「……ずいぶん殊勝な態度ですね?」
「……俺達は、ここから旅立つのは二度目だ。
アンタに骨貰った時の前に俺達は行って、そして俺だけ帰って来れた」
え?そんな事情が?
「俺達?」
「……バカの生き残りは他にいたってわけだ」
ふと、カイルさんの後ろにいる人たちが見えます。
あの昨日あったドクロの人、肌が褐色のエルフ耳女性、若い男の人に、4mあるけどちょっと可愛い感じの聖職者っぽい女の子。
「ネクロマンサーのナハト、弓兵のダコタ、シーフのバカことジョセフに、巨人で聖戦士のマリアだ。
俺含めて、この島に挑んで1日で壊滅したヤツらの寄せ集めパーティさ」
どことなく自重気味な笑みに、全員やはりそんな顔で答えます。
「……それでもなお、この島を探索するんですか?」
「異世界人には分かんないかもしれないけどな、
冒険者なんていう職業は、つまりは士官もできないはみ出し者か、未知の場所をぶらつくのが好きな変わり者かで、大抵前者だ。
俺らの仕事は、人が入るのも嫌がる場所を『ダンジョン』なんて名前つけた上で俺らは見出しものでその地図作りや貴重な品物を見つけるっていうもんだよ。
ここじゃなくても大抵死ぬ。
ただし、生き残れれば金も貴重な品物の分け前も貰える。
だから、下手な成功が続いちまってた俺達はこの通り。
俺らもバカだよな!
生き残ってまだこの島に挑むってよ!
…………でもバカなりに勉強させてもらったぜ」
ふと、なんとカイルさんが取り出したるは私の書いた恐竜の本。
「まぁ……!」
「舐めてたよ、アンタのこと。頭でっかちの学者は貴族と同じく嫌いだったさ。
英雄になれないから、依頼主でもある偉大な英雄を腐して生きてた。
……そんなカスみたいなプライドが、俺の村から一緒だった仲間を殺したんだ。
翻訳魔法ありでも、数日で読み切るにも、俺達を殺した奴を覚えるのもキツかったぜ。
でも俺らもバカだしな!
全部覚えきれないから、御守りがわりにも持っていくぜ先生さんよ」
「……結構、巻数あるのに」
「俺達の依頼は、『正確なこの島の地図作り』だ。
依頼主は冒険者ギルド二つと、そこの伯爵殿から。
そして、それを行う為にはこの本はいる。
これこそ、我らが最初に揃えるべき武器だったのだ」
ふと、ドクロ顔の人ことネクロマンサーのナハトさんがそう静かに語ります。
「情報がないなら、無いで引き下がるだけの判断力すらなかった。
我らが愚かだった。
……その愚かを許容しこのまま島を離れるぐらいなら、弔いがてら古き仲間の骨集めながら再びこの島全体という名のダンジョンに挑んで死のうというわけだ。
愚かだから一夜漬けだ。
皆揃って、な」
……なるほど。
「……ご武運を。
しかし、この島は最初に巡った人が一部しか通っていないにも関わらず死にかけたことだけは覚えておく事。
後、行っちゃ行けないルートがあるのでそこだけは通らない事」
「行っちゃ行けないルート?」
「そういえば教えてなかったな。
1箇所だけ『確実に死ぬ』があるんだ」
「────それはもちろん、我々にも教えていただけるだろうな?」
ふと、そんな声に振り向けば、あの4人が登場。
「竜狩り騎士隊……!」
竜狩りハーヴェスト、竜頭砕きのバベラ、竜を落とした魔術師のフランツェスカ、竜星墜としのアスラ。
全員言えた!なんか伝説級の人たちです!
「……それと、あれ?」
よく見ると、侍甲冑姿なアスラさんの隣にカルノタウルスの姿が。
しかも鞍まで背負ってるしちょっと荷物乗っけてる?
「ああ、『シマカゼ』か?
存外俺に懐いてな」
「ううむ……ちょっと羨ましいですぞアスラ殿!私も乗りたいなぁ……!」
「アンタがシマカゼ乗ったら、シマカゼが可哀想じゃ無いのよデブ」
「グフッ!」
「すまんな。こいつも案外重いのは苦手だ」
「アスラ殿ぉ!仮にも私は女ですぞ!?」
「はは、まぁ皆そこまでにしておけ。どのみちアスラの鎧が一番軽い。シマカゼほどの俊足にはそれが似合う上に、偵察にはいい。
さて、話を続けてもらいたい。我々もここ数日周辺を回っていたが、それだけでも脅威を肌で感じているからな」
まさかカルノタウルスを飼い慣らせるとは……研究のしがいがあるけど、抑えなきゃ……!
「……さて、じゃあこの島に挑む皆さんに情報共有するとしましょうか」
すこし遅れますが、まずは地図を広げて。
「基本的にこの白亜の村から出る場合、大抵は川沿いのルートを進むのが無難です。
知っての通り、まずこの島は3つの場所、
ここのある『白亜の大地』、そこから地続きの反対側の『ジュラの世界』、内海で隔てられてる『イラズのトリアス』。
行っちゃ行けないルートというのは、この白亜の村から海沿いに進んでトリアス近くまで行くルートですね」
「げ!!
通りで……」
「カイルさんまさか……?」
「ああ、そのいうとおりにそのルート進んで、村のすぐ目の前の森で俺の仲間は皆死んだ」
その森……ちょうど海沿いにある『小さい殺戮の森』と書かれた場所を指差して苦虫を噛み潰すような顔になるカイルさん。
「小さい殺戮の森?」
「ここは、森に潜むような小型恐竜達の楽園です。
ちなみに、上限が6mでも小型扱いです」
「正直いやあ、もっと小さくても舐めない方がいい。
俺は、マジて小さいヤツに酷い目に遭わされたんだ。
それどころかそいつ、恐竜とやらですら無いんだよ」
……恐竜では無い?
「恐竜では、無いとは?」
「イタチというにはなんかゴツいヤツだが、凶暴と狂気を煮詰めたような化け物だ。
信じられるか?こんなサイズだぞ?
ウサギかもう少し小さいやつが、俺らを殺しにかかってきた。
そんでそいつは仲間1匹食いやがった。
ありゃあ……小さいだけの、捕食者ってやつだ」
……アレがいるんですかその森!?
「……レペノマムスだ!」
「やっぱ知ってんのか?」
「知ってはいますけど、まさかそこまで……
いや、プシッタコサウルスを小さい種が狩りに行く生き物ならあり得るか……」
この特徴に唯一合致する、信じられない絶滅哺乳類の名前を思い出します。
確かにその森は通りたく無い。
「まぁとにかくここはやめろ。
それ以外にもなんか……なんかがいる気がしてならないんだよな」
「実際、ここを素通りして生きて出た人間はいない。もちろん飛竜人も魔族も、だ。
……何か得体が知れない森なのだが、近づきたくは無いんだ」
「勇者アルトリーシャが言うレベルじゃ、俺らが全滅しなかっただけマシか」
「経験者が語ると重いですね。
その次にも殺戮ポイントがあるのに、やっぱりこのルートはマズイ」
げ、と言う顔を見せるカイルさんに、その上の海岸……というよりその小さな島を見せます。
「ここ、『小白亜紀島』に面する海岸。
別名が『神隠し海岸』。そしてその目の前の海も『神隠し海』。
ここは真面目にダメな場所です」
「おぉ、ここは……!」
ふと、ハーヴェストさんが声を上げる。
「まさか、行きました?」
「いや、実はこの島のただ厄介になるのも忍びなく、領主軍の徴税に苦しむ漁師の手伝いを少ししていたんだ。
そこで聞いた怪談の場所さ。
夜以外にこの海岸かこの島に上陸すると、必ず姿を消してしまうという場所か。
この二つの場所には、小さな恐竜しかいないとも聞いたな。
肉食も、草食も、そこのシマカゼと同じかそれより小さいと」
「ここら辺は、むしろ漁場としては豊かな海でな。
意外と浅めな海域で、一応海にモササウルスや魚竜や首長竜がいるんだが、ティロサウルスほど凶暴では無い。と言うよりティロサウルスはなんだアイツと言うぐらい凶暴だがな。
だが、それでも日没前に漁をするものや釣りをする者はいない。
日が出ている間に攫われるんだろうからな」
「攫われる?」
「その生態系の情報で確実にいると思われる古生物に一体心当たりがあります。
名前はハツェゴプテリクス。
後期白亜紀の翼竜で、見た目はケツァルコアトルスに似ていますし、事実同じアズダルコ科ですが……
私は何があっても近づきたく無いですね。
ケツァルコアトルスも正直嫌ですが、ハツェゴプテリクスは最悪です」
「翼竜って……あのいつもグエーって言ってるデカい海鳥みたいな三角頭の仲間だろ?」
「あっちはプテロダクティルス科。魚とか小動物食べてグエー言ってる可愛い種類です。
アズダルコ科の特に今言った二種類は、
そもそも全長7mの、翼開長12mの化け物です」
「…………オイ、マリア!
お前よりデカいってよ!!」
「カイルさん、つまりカイルさんサイズのおチビちゃんは丸呑みにされちゃうよねそれ?」
「全くそのとおりなんだけどよ、コイツ丸呑みにしてくる化け物なのかよ先生?」
「丸呑みだったら、痛く無いから良かったですね?
ちなみに、1/3は頭なんですよアズダルコ科は。
長く大きな嘴で、なんらかの方法で動かなくなった柔らかい肉を突きます」
「なんらかの方法って言葉が一番嫌だじゃねーかそれ!?」
「……なんらかの方法、それが一番知りたく無いな」
ハーヴェストさんの言葉にうなづく一同。
ぶっちゃけ、この神隠し海岸にいるのがハツェゴプテリクスだとしたら……『なんらかの方法』が一番エグいでしょうし。
「そしてその上は、ちょうどジュラの大地の一部にして、最も嫌な言葉の土地です」
地図の上を指で追っていき、この海岸を超えた先、もしかすれば最短ルートのジュラの大地の入り口、その名は……
「『未踏査地域』」
「『?』でも良いが、こっちがわかりやすいだろう?」
「おお、こりゃ最悪だわ、なんもわかんないのかよ」
そこは、真面目にまだ誰も足を踏み入れていない場所。
つまり何があるかわからない場所です。
「このルートは見ての通りある意味で私の目的地としては最短ルートではあります。
でも辞めたのは、そりゃあ危険なルートだからです」
「仮にも俺たち地図作りとはいえ、他にも未踏査地域多いしな。分かってる危険が二つはやばいな」
「我らもこの領主川を上に登るルートを向かう予定だが、この近くも未踏査が多いか」
「すまんな、死にかけていたからだいぶわからない地域も多いんだ。
それを無くして行く為に冒険者諸君に依頼を出したとも言える」
「基本的に、ジュラの大地の恐竜や森の中の生き物は小さめとは思います。
ただし、全長3mでも十分脅威ですし、たとえ相手が30cm程度でも、群れで襲うタイプもいるでしょうから。
もっとも、小型の群れは実は基本的にそこまで怖い訳ではありません。
小型種の恐竜は個体数や密度が多く、獲物に群がるだけで社会性が薄いと言う研究結果があるので」
「逆に大型種か草食種は大概が群れで生きているって言うのが怖いところだが、そう言う大型の個体は食う量のせいで深い森にはいない……
はずなんだがな」
「……未知の恐竜はいるはずなんです。
世界が違う、いえたとえ同じ世界でも我々は見つけた骨でしか語れない」
「まぁ、後は冒険者らしく、油断せず臨機応変に、だわな」
これにて情報の共有はよし。
ならば、後は向かうだけ。
「それでは、」
だったはずなのに。
突然、空が明るくなって、直後に後ろで爆発が。
慌ててしゃがんでショック体勢。
しかし、次々と炎が飛んできます。
「何事!?」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁッ!?!
私のお店が!!お店がァァァァ!?!!」
「何の光!?」
「家が!!」
と、建物から命からがらとしか言えない様子で、いろんな人たちが現れます。
「何事だこれは!?」
「今の火球……もしや!?」
「海を見て!!」
ふと、フランツェスカさんの言葉に、海の方角を。
そこには、薄暗いいまだ朝日の遠い空の下の海の上で、淡く光る炎の揺れる姿が。
慌ててティラノスレイヤーのスコープを覗いて、炎の正体が船の照明のランタンの明かりと分かりました。
「船?」
「……確かに船だ」
じぃ、と裸眼で見て言うアルトリーシャさん。
やっぱり、恐竜から人類になっただけがあってか目がいいのでしょうね。
「船の帆かマストの上に何か紋章は書かれていないか!?」
「そう言うなら見るかい、騎士さんよ?」
バートさんに双眼鏡を渡されて、かたじけないと言って即座にハーヴェストさんが海の方角を見ます。
「……アレは、まさか暗黒竜の紋章!?」
マストの上、旗めく旗にはこれみよがしの黒い布に金の刺繍の竜のマークが。
そこで、ばさりと一瞬何かがスコープの前を掠めます。
「!?」
夜の空よりなお暗い、まさに漆黒の影。
なんて詩的な言葉が似合う、コウモリに似た翼をはためかせた存在がやってくる!
「暗黒竜……デーギラ!?」
空に羽ばたく竜。
それは、黒い体表と鱗、例えるなら身体は鳥盤類のような4足、腕の先は獣脚類でも丈夫な部類の爪と腕に、長めの首と正面から見たイメージは進化的じゃないティラノサウルス系な顔つき。面長なアリオラムスが近いかも。
角は、カルノタウルスの様なものを通り越してまるで山羊のなかでも立派な角を持っているタイプで、ディスプレイ用に近いのは歯の肉食獣っぽさでよくわかる。
でも一番異形なのは、翼ようにもう1対の腕がある事。
6本腕……まさしく、ファンタジーの生き物。
進化前の生物が、見えない。
「あの勇者がチンケな島を手に入れたと聞いて来てみれば……なんだ、竜狩り騎士隊までいるとは。
ククク……手間が省けて嬉しいぞ?」
その黒い竜は、そう笑って話しかける。
とても喜びをこめて、そして嘲りをこめて。
「暗黒竜!!なぜここへ来た!?
「何故?
ククク、教えてやろう。
お前達をわざわざ殺しに来てやったのだよ、この我が。
お前達と気持ちも企みも同じだとも、忌々しいくも嬉しい話だろう?
そら、もう少しだけ我が恐ろしさを思い出させてやろうではないか。
こんな場所まで逃げ帰るほどの恐怖を!」
そのドラゴンは、そう言ってまた火を吐いた。
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