60話 御魂分け
僕は気を取り直して、
「それで、そんなヴァレシルさんは何ランクですか?」
とイルミーナに尋ねると、
「Sランク目前だと自慢気に前に言っていたわ。
その後、何か腹が立ったから仕事を積み上げてやったけど」
少々昏い笑みを浮かべて答えてくれた。
「じゃあ…ヴァレシルさんをリーダーにして、5人パーティでダンジョンに入りますか…」
「そうね、仕事を私に押し付けてランクを上げてたのが役に立ちそうね…フフフ…」
「………(わ、話題を変えないと)」
その時、何だか寒気がする執務室のドアをノックする音がして、温もりを求めて間髪入れず「どうぞ!」と入室を許可する。
「失礼します…おや、イルミーナ殿もいらっしゃいましたか」
救いの主(或いは道連れ)はグレンディルだった。
「お二人がいらっしゃるという事は、内政についての話でもされていたのですかな?」
「内政と言えばそうなのだけど…」
と、イルミーナが今までの話をまとめて説明し、その間に寒気も引いていった(助かった…)。
話を聞き終わったグレンディルは当然、
「それは面白そうですな!私も是非加えてください!」
と言って来たので分体があるのか訊いたところ、【アバター】は使えないが姿を変えて登録している冒険者ランクはAとの事だった。
魔力的には補助をすれば十分分体が出せる水準なので、
「では、分体を出す用の儀式陣と魔道具は僕達が用意しますので、2人とヴァレシルさんにはダンジョンに入る準備と転移陣を設置する事について冒険者ギルドと話し合いをお願いします」
「分かったわ。それで儀式陣は分かるけど、魔道具ってどんな物なの?」
というイルミーナの問いに対して、僕はチョーカー型の魔道具を亜空間から取り出し、
「【アバター】だと分体は本体の精々2割ぐらいの力しか出せないと思いますが、この《御魂分け》を着けると普通は3割、本体を休ませた状態で直接操れば最大5割まで力が出せる様になります」
「それはまた凄い魔道具ですな!すると陛下方が着けておられるチョーカーもその《御魂分け》になるのでしょうか?」
賛辞と共にグレンディルが僕達が着けているチョーカーについて訊いてきたが、
「いや、これは違います。僕達が生まれた時に母上が着けたそうなのですけど、何の魔道具なのかイマイチ分からないのですよね…」
僅かに目を伏せ、チョーカーを触りながらそう答えた。
「それですか…それは大変失礼致しました。
では陛下がフランブルグからお帰りになられる迄には、全ての手筈を整えておきます」
恭しく一礼してグレンディルは退室し、イルミーナも共に退室して行った。




