58話 人員募集
スコルツにソファーに座り直してもらい、
「それで、スコルツさんには第九師団長兼南方方面軍司令に就任したケッセリング辺境伯(法服で領地は持たない)の補佐をお願いしたいのですが、よろしいですか?」
赴任先を提案したところ、
「謹んでお受けします。
それと僭越ながら、私めに敬称は不要でございます」
快諾されて、ケッセリング同様『さん』付けしなくてもいいと言われた。
「ではスコルツ、3日後に所用でフランブルグに行くので同行して下さい。そのまま赴任となります。
フランブルグにも《転移陣》を設置してあるのでそれで移動します。
そのため手荷物程度しか持って行けないので、マジックバッグが必要でしたら言って下さいね」
「御意。…しかし転移陣とはまた凄いものを運用されておりますな」
「今のところ一度に5人以下で、普通は再使用に2時間かかるのがネックですけどね」
苦笑しながら性能を説明したが、
「いえ、一千キロ以上離れた場所に確実に転移出来るものなど『炎と氷の国』が僅かに保有しているだけと記憶しております。
高性能なマジックバッグが有れば緊急性の高い物資などを輸送も出来ますし、有用性は極めて高いかと」
(僕等の【亜空間収納】は量も大きさも特に制限がないから、いくらでも運べるのだけどね)
流石にまだそこまで伝えるのは…と思うので、「確かにそうですね」と相槌を打つだけに留めた。
「では、改めてスコルツを皆に紹介がてらに会食の準備をしているから、一旦下がっていいですよ」
「私如きにそのような…いえ、ありがとうございます。
それではまた後ほど」
深々と一礼をするとスコルツは退出して行った。
さて、執務の続きを…と立ち上がって机に向かったのも束の間、ドアがノックされ、
「陛下、失礼します」
イルミーナが書類を片手に入って来た。
「イルミーナさん、どうされましたか?」
机の前に来たイルミーナに用向きを尋ねると、
「こんな書類が意味が分からないから、という事で上がって来たのよ」
僕に持っていた書類を渡す。その書類にはまとめるとこう書いてあった。
○人員募集
仕事内容:ダンジョン内の宿泊施設の維持管理
必要技能:①施設の清掃のために家精霊が使役出来る。
②ちゃんとした料理が作れる。
③宿賃などの金銭管理が出来る。
④トラブル時に最低限自分の身が守れる(採用時に改めて訓練します)。
募集人数:①〜③各10人前後(複数出来る方優先)
④は特に③の人に必要
「うん、ちゃんと出来てますね…これが何か?」
僕の問いかけに対して、溜め息をついたイルミーナは、
「やっぱり貴方だったのね…そもそもダンジョン内宿泊施設って何なのよ、そんなモノないでしょ?」
室内に他に誰も居ないため、砕けた口調になって問い返して来た。
「あっ、そこから説明が必要でしたね。
この前かなりの財貨を接収出来たとはいえ、我が国の収入を上げるのはいい事ですよね。
それで比較的短期間に収入を上げるにはどうしたらいいかと考えると、ここのダンジョンの利便性を上げるのが手っ取り早いかと」
「そうね、持ち帰る物が増えればそうなるわ」
イルミーナは頷き、先を促してくる。
「そこで、ダンジョンのセーフティエリアがある内の10階層毎に、転移陣を設置してついでにそこに宿泊施設…宿屋を作ればいいかな、と。
地上の転移陣は冒険者ギルド内に設置して、ランク又は実力で行ける階層を制限します」
「あれって連続で使えなかったわよね?まあそれは運用で補うとして…実力の制限って何かしら?」
話に食いついたイルミーナから矢継ぎ早に質問が始まる。
「実力の制限は、自力で転移陣がある宿屋にたどり着いたらその証明書みたいなものを渡す、といったのはどうですか?」
「まあ、妥当なところね。使用料とかはどうするの?」
「深い階層ほど高くするとして、ギルドにも何割か渡した方がいいですよね?」
「そうね、管理して貰うのだから最低2割は渡すべきかしら…『炎と氷の国』の不興を買う訳にはいかないわ。
で、肝心な事だけど…誰が転移陣と宿屋をダンジョン内に設置するのかしら?」
にっこり笑ってイルミーナが訊いてくる…目が笑ってないので迫力が凄い…ヴァレシルさんが尻に敷かれる訳だよね…(黙祷)
「…何か失礼な事考えてないかしら?」
アルもビックリなほど勘が鋭い…強まる圧力の下、平静を装って僕は告げる。
「それは勿論、僕達姉弟は必須ですね」
と。




