42話 殺戮の大規模魔法
動き出した敵軍は、右翼、中央、左翼がこちらに進み始め、少し離れて本陣が中央の後ろを後続するというアルに聞いた通りの陣形でこちらに接近して来る。
ラムケ公爵の軍は中央の前衛に配置されていて、後衛に『夜と月の王国』軍が配置されているので督戦隊としているのだろう。
当のラムケ公爵は供回りと共に安全な(はずの)本陣に居るので、敵軍の中でも士気がかなり下がっているのが見て取れる。
(これは後で好都合かな)
魔法攻撃後に生かしておいた敵首脳達を倒すなり捕らえるなりするのに、中央と左翼の間を突破する予定なので、一応は自国民であるラムケ公爵軍を無闇に攻撃せずとも良さそうだ。
(さて…いよいよだね)
グレンディルに攻撃後、近衛を除く全軍で敵右翼に攻めかかる様に指示を出し、ケッセリングには壊滅的打撃を受けるであろう敵左翼を掃討する様に指示してから塹壕陣地を出た。
姉上とアルと共に陣地から出て少し進み、正三角形を構成する位置に立ち、魔力を解放する!
3人同時に魔力を解放した反動が衝撃波となって周囲に広がるなか、3分割した無数の魔法文字の構成を3人の中央で組み上げ、10秒足らずで完成したその魔法を発動させる言葉を発する…
【落陽】
と。
その言葉に反応した無数の魔法文字の構成は空へと昇っていき、中天に達していた太陽へと吸い込まれ…太陽からもう一つ太陽が分裂して敵左翼の後背に着弾し、膨大な熱と光を解放した!
本陣、左翼、中央で最も近かった者達は何が起こったのかも分からず斃れ、右翼の後方の一部と中央の後方、左翼と本陣の多くは自らが焼かれるのを不幸にも自覚しながら斃れた。
【千の眼】で敵軍の状況を確認すると、左翼と本陣は壊滅状態、中央は半壊、右翼は1〜2割の損害…死者は1万近く、戦闘不能な重傷者が1万1千ほど出ている。
己が手で数多の命を奪った事に胸に痛みが起こりつつも、指揮系統が一瞬で崩壊し、大混乱に陥った敵軍に対して事前の指示通りの攻撃を【テレパシー】によって下令した。
その下令を受けて被害を受けない様に塹壕で頭を下げていた自軍が、強大な魔法行使による呆然状態から各隊長達の叱咤激励で立ち直り、一斉に攻撃に出る。
グレンディルを先頭に第一師団と第五師団は6千近く残っている敵右翼(と、中央の牽制)、ケッセリング戦闘団は2千足らずに減った左翼、そして僕達3人は近衛3千と共に左翼と中央の間を抜けて本陣に向かった。




