40話 第一王子側の戦闘準備
◆◆◆第一王子側近side◆◆◆
『鉱石と闘技の国』からの使者が退出し、見えなくなったところでバルド様は憤怒の表情で書簡を床に叩きつけた(絨毯が敷いてあるので音は出ないが…)。
「おのれスコルツめ、失敗しおってあの役立たずが!!…誰かあの生意気な使者を斬り捨てろ!」
腹立ち紛れなのか、バルド様が書簡を踏み付けながらとんでもない事を言いだした。
私は慌てて、
「お待ちください!そんな事をすれば『炎と氷の国』の不興を買うのは確実です!」
思わず大声を出しながら、戦闘以外で特に瑕疵の無い竜族に危害を加える事は、外交問題になりかねないので必死に制止する。
そんな中、騒ぎを聞きつけたのかは分からないが、ラムケ公爵が謁見の間に入って来て、
「バルド様、何やらご機嫌斜めなご様子ですが、使者は何と?」
場の空気を気にする事なく訊いてきた。
「ラムケ公爵か、これを見てみよ!」
私は素早く書簡を拾ってシワを伸ばし、ラムケ公爵に手渡した。
公爵は一読すると顔を上げ、
「これはまた随分な要求をして来ましたな」
眉間にシワを寄せてそう言った。
「そうであろう、生意気な奴等だ…とは言え会談まであまり時がない…どうすれば…」
少しは怒りが収まったのか、対応を考え出すバルド様にラムケ公爵が、
「わざわざ向こうから来てくれるのですから、撃ち破ってその勢いのまま攻め込めば良いのではないですか。
幸い、私も6千ほど連れて来ておりますし、バルド様が一声かければ向こうの軍を凌駕する軍勢が集まりましょう」
と、提案した。
「うむ…そうか、そうだな。では早速軍を集めるとしよう」
バルド様が私に目配せをしたので、手配をすべく場を離れた。
◆ ◆
何とか国境の町に我が軍3万とラムケ公爵軍5千強(脱走兵が出ていて少しずつ減少中)の軍勢の集結が間に合ったが、明日が会談だというのに徴兵から直ぐの強行軍の影響で、特に兵の多くを占めるバンパイアスレイブ達の疲労が無視出来ない。
幾ら奴隷共に先陣を切らせるとは言え、会談場所に着いて突破的に戦端が開かれたらまともに戦えないのは明らかだ。
早く会談場所に行こうとするバルド様に、待たせておいて堂々と姿を現すのが王者たる者の風格を示す事になるなどと言いくるめて、何とか朝までの休養を得た。
(さて、これで陣地など作られていると厄介だが…どうかな)
食事もそこそこにあちこちで倒れ込んで眠るバンパイアスレイブ達を眺めながら、明日の会戦の流れを考え続けた。




