7.公爵邸 一日目の夕──お昼寝しちゃった?
7話が抜けてました! 大失態です(>_<)
お日様がぽかぽか暖かくて、いつの間にか本当に寝てたみたい。
目が覚めると、慈愛の目で見下ろするーてーしらんさんに、おでこにちゅーを貰う。
「おはようございます」
「クルヴィルマリファニルヴァ、ヴァニラ」
今は、お昼。昼食後に寝かしつけられて、お昼寝しちゃったけど、体感的にそんなには経ってないはず。
ゆうべちゃんと寝てないから、るーてーしょあんさんの手の温もりと、花の香りが眠気を誘って、落ちてしまったらしい。
もしかして、あまり寝てないって、知ってたのかな。
──窓の外を見ると、夕暮れでした☆
ええ~っ!? 三時間くらい寝てたの?
深緑のお仕着せのメイドさんがわらわらと来て、蒸しタオルで顔を拭ってくれたり、髪を整えてくれたり、美容クリームぽいのすり込んだりしてくれる。
朝だけとちゃうんかい……
るーてーしょあさんの柔らかいお手々にひかれて廊下を進む。正面階段の踊り場の肖像画の上、ステンドグラスの前は、細めの通路になってました。
2階なのにアチラの3階と変わらない高さは少し怖いです。
目の高さにあるシャンデリアは、ステンドグラス越しにあたる陽光と、纏わりつかせた魔力の塊とできらきらしてます。ちょっと目が痛いかも。
実は白内障気味です。夏は駅から学校まで、目を瞑って、友人に手を引かれて歩いてました。アスファルトですら眩しかったのです。
偏光サングラスは必需品でした。
公爵邸の右翼部分の2階は、私が泊めてもらってるお部屋と同じ扉が2つ。それぞれの隣に小さめの扉が2つ。これは、たぶん、布団部屋みたいな納戸兼メイドさん達の控え室なのかな。
その奥は行き止まりで、細かい彫刻装飾の入った重そうな扉が1つ。
変だな? 外から観た広さと合わない。この先、まだまだお部屋が5~6個はありそうだったのに。
るーてーしあるさんが可愛らしい高い透き通ったお声で呪文を唱えると、音もなくスーッと、扉が奥へ開く。
「っ! みゃぎゃっは~!!」
るーてーしゅあさんの案内も待たずに、部屋の中に飛び込んだ。
──本、本、本、本本本本本……!!
ここは、楽園でした!
───── ◆ ◆ ◆ ───────
訂正します。
ここは、地獄でした。
本を目の前にして、一冊も読む事が出来ないなんて、どんな責め苦ですか。
言葉が通じないんだから、文字が読めるはずもないとなぜ気づかないのか。
本を手に取って表紙を見ての絶望感。
あまりの落ち込みように、るーてーしゅあさんがオロオロします。
もうしやけありましょん。もはや、日本語も壊れるほど、落ち込んでマス。気を遣わせて悪いとは思います。でも、でも。今は、そこに気遣えないくらい哀しいのです。
異世界に迷子になるきっかけかもしれない眩暈を起こすまで集中して読み込むほど、読書が好きなのに。
まさか、建物の右半分のお2階の⅔が書庫だという楽園に案内されたのに、何一つ、子供向け絵本ですら読めないなんて……!
るーてーしゅあさんのご用は、言葉の通じない子供(と思われてる)、私のために、たぶん言葉の学習も兼ねて、絵本を貸してくれるつもりだったらしい。
勝手に飛び込んだ私の後からゆっくりと入室してきて、絵本を選んで振り返ったら、項垂れて床に四つん這いで泣くのを堪えてる私を見て、びっくりされたらしい。
もう少し待って、なんとか浮上するから。
本が数え切れないほど存在する陽光から隔絶された空間、しかし息苦しさはない楽園に匹敵するお部屋で、私は、室内の真ん中あたりに位置する、テーブルとイスのセットまで手を引かれて移動する。
そこでメイドさんが引いた椅子に座る。
知らない男性が近づくとビクッとしたり、涙が反射的に盛り上がるので、私のまわりは今朝から女性のみで構成されている。
やはり大きめの家具(+衣装と身長)のせいで、子供感を醸し続ける。
メイドさんの用意したハチミツ入りホットミルクティーを飲んで落ち着くと、ホッとした顔で、るーてーしおさんが、テーブルの上に一冊の絵本を開いた。
次回 第8話
公爵邸 二日目の朝──私の記憶力とは?




