6.公爵邸 一日目の昼──お昼ごはん
女中頭さんのご用は、お昼ご飯でした。
ルーシェさんは居ないので、奥の上座は空席で、居ないルーシェさんから見て右手にお母様が、左手にるーてーしゅぃあさんが、座ってるのは朝と同じだけど、るーてーしゅぃあさんの隣に、私がちょこんと座ってるのが違います。
こう書くと、私が可愛らしく感じますが、周りの人がみんな2m近いだけで、私は普通の中年女ですからね。
周りの人が大きいと言う事は、もちろん、家具も大きいわけで、衣装も相まって、アリスになった気分デス。
やはり子供と思われてるのか、カトラリーは少し先が大きめで浅い、子供用のスプーンが置かれています。まあ、使いますけど。親子丼だってスプーンかレンゲで食べますからね、元々。
アッチの東洋の文化はここにはないのか、傘もなかったけど、お箸も無いようです。お菜箸も無いのかな。
サラダが出て来ます。私の好物だとインプットされたのか、細かく刻まれた野菜に、何種類かのベリーが散らかってて、ヨーグルトベースのソースがかかってます。
1日3食ベリー食べてたら、アントシアニンいっぱい採れて、視力向上するかも?
アッチの世界では、アントシアニンいっぱいのものって、口ん中ザラザラして喉の奥がエグくなるもの多かったのだけど(特に巨峰やブルーベリー)、昨日今日食べたものは今んとこ大丈夫だから嬉しい。味と匂いは好きなんだよね♪
子供みたいに上からスプーン掴んで食べてやろうかとも思ったけど、恥ずかしいし馬鹿げてるからやめた。
普通に左手で持って、サラダを掬って食べる。左手。私は、お箸は右手だけど、スプーンは左手なのだ。
同じく、はさみは右手だけど、カッターは左手。子供の頃、左利きだったのを、学校の先生や周りの人に強制的に直させられたせい。
指導の入る箸や字を書くの、工作はさみは右手だけど、独りで遊ぶ時のお絵描きやカッター、おやつのスプーンは左手。
これが面倒くさい。字を書きながら、絵を足すときに、持ち替えなきゃならないし、特に困ったのがレタリングする時、字を書くのは右手なのにデザインペイントするのは左手。どうしても曲がって上手くならなかった。
また、話が反れた。
この人達は、お貴族様だろうに、私のお行儀だとかマナーだとかに文句を言わない。思わないはずは無いのに。むしろ、厳しいだろうと思うのに。
やっぱり、子供だと思われてんのかな。
さっき、ハグされたし、まさかの珍獣枠?
言葉通じないし、年齢不詳で正体不明。そっか、珍獣枠か。納得だ。
珍獣ヴァニラは、せっせとベリーサラダを掬って食べる。空になった頃、メイドさんがボウルを下げて、カップに入った少な目のスープと柔らかめに燻製された肉と果物?野菜?を詰め込んだ丸いパンが出て来る。
スープはジャガイモに似た味の野菜を丁寧にすりつぶして裏漉しして、生クリームと煮込んだもの……だと思う。
ただ、ジャガイモのポタージュは、喉の襞に粉っぽいデンプン質がたまって咳込んだり、次に食べたものと一緒にリバースしたりするのだけど、これはさすがお貴族様のお抱え料理長の手になるものなのか、滑らかでまったり濃厚なのにスッキリ飲めました。
お母様とるーてーしあんさんは、ナイフとフォークで丁寧に切り分けて食されてたけど、ハンバーガーに慣れた珍獣は、手摑みで食べますよー。
はくり。頬張ると肉汁が染み出てきて、燻製じゃなかったのかな? 美味しいです。
果物っぽい一緒に挟まれてるものは、アボカドに似てた。味も食感も。こっちにもアボカドがあるのかもしれない。
ただ、パンはスカスカしてた。
ただで食べさせて貰ってるのに文句は言えませんけどね。
ふと、斜め前に座ってるお母様と目が合う。
お母様は、ふふっと口元を片手の甲で隠して笑う。嘲笑ではなさそうで良かった。
「とっても美味しいです。ありがとうございます」
言葉は通じなくても、感謝は伝えるべきだよね。
るーてーしゅあさんが、ふふふと微笑んでナイフを置き、私と同じように手摑みで、かぶりついた。
「わ……、お嬢さまがそんなん、いいの?」
「ウォンターリウィン。アイヒィルウィン」
にっこり綺麗に笑われます。流れから行くと、本当、こうした方が美味しいわね、とかって、私に合わせてくれたのかな?
デザートは、甘さを抑えたワインゼリーでした。もちろん、珍獣ヴァニラは未成年ではないので、ペロリと食べました。まる。
るーてーしゅあさんは私に合わせて手摑みでお食べになられたので、魔道手を洗われて、ついでに私の手も洗ってくれます。
「ありがとうございます」
やはり言葉は通じなくても、気持ちは通じると信じて、お礼は言いますよ。
午後からも言葉のお勉強かな?と思ったら、お昼寝の時間でした。
マジ? さっき食べたの、みんなお腹に蓄えられたらどうするのぉ!?
ただいま、2階のあてがわれたお部屋で絶讃寝かしつけられ中です。
るーてーしぉあんさんが、にっこり微笑みながら、肌掛け布団的な薄い掛布を私のお腹に掛けて、肩の辺りをゆっくりタップします。
天蓋付きベッドではなく、お庭が見える窓際に置かれたカウチです。
やはりここは子供じゃないと、再度主張するべきでしょうか。
でも、楽しそうなるーてーしゅあさんを見てると、否定できませんでした。
でも、このまま行くと、ちょっとヤバいなぁ。
独りの時と、ジュードさんと居た時と、今とでの私の違いが判る人も居ると思うけど。
方言が移ったり混じったり、精神年齢が厨二発症してたり年相応?だったり、ジュードさんに近い感じで姉弟みたいに話してたり、一貫してない。子供の頃、人の顔色ばかり見てた影響かも。自分がないわけじゃないけど、コレって言うものがない。
年下に頼られると姐さん風になってるし、目上の人に偉そうにされると縮こまってボヤ~っと頼りない子になる。
兵庫勢と喋る時は播磨・摂津風味の言葉で話してるのに、大阪や京都の人と話す時は丹波地方から京都寄りになる。その他の地域の人、東京の人達と話す時は、最初は標準語に近い感じで話してるのに、気づけば、岡山も徳島も、播磨も摂津も丹波も京都も混じった似非関西人みたいになる。ただ、イントネーションは一貫してやや京都寄りに。
このまま、公爵邸で珍獣枠で飼われていると、私の精神年齢が厨二発症した未成年で固定されそうな恐ろしい予感が……
私を寝かしつけようとするるーてーしょうぃんさんから、優しい花の香りがして、思わず抱きつきたくなったのは内緒の方向で……お願い……しま……す……ね……
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公爵邸 一日目の夕──お昼寝しちゃった!?




