人が人であると肯定する物
ちょっと急展開です
「ア、アイン?」
不味い……見られたか……?
「アインって忌神の加護持ちなの?」
見られたのか。どうする、誤魔化しは効かないぞ。しょうがない俺の事を話すか? いやダメだ。
「答えて、アインス=フリューゲル」
「ッ⁉︎」
くそっ! なんでこんな時でも自分の保身を考えてるんだ俺は!もう強がるなよ俺。いやでも強くいないと……。
「そ、そうだ。俺は忌神の加護を受けている。だからフィアは忌神の加護なんて受けていない」
勝手に口が動く。
ああ、今の声は絶対震えてるよ。
「ふーん。やっぱりそうでしたか」
え? やっぱり?
リアスは確かに今、やっぱりと言った。ということは俺が忌神の加護を受けていることを気づいていたのか?
俺はそんなヘマした覚えは……あ。
「一年前のサバイバルの時。アインは魔法を使いかけましたよね、あの時です」
リアスの格好は制服だった。制服が似合う人は大概の服も似合う。
カツカツと音を立てながら俺に向かって歩くリアス。
「今から私と魔法で勝負してくれませんか?」
唐突に言われたその言葉、俺の性格上の条件反射なのか、俺のお口はいいぜと一言言っていた。
するとリアスは距離を取り、魔法陣を描いてゆく。
その動作一つ一つに無駄などなく、お手本通りの動き。
魔法陣から見て、使う魔法は上級か。しかも古代魔法の部類。相殺するにはちと骨が折れる。
「私は願った矢に必中を
私は使った神弓を
矢と神弓は纏った
蒼き焔を‼︎
解き放て蒼穹の矢‼︎」
俺に向かい神の蒼き焔を纏った矢が飛んでくる。少しでも威力を消そうと、何枚も魔法壁を作るが意味などなく、全て貫通した。
中々の威力だな。
「詠唱破棄‼︎ 高速展開‼︎ 理の破壊者‼︎ 属性複合‼︎ 水炎の濁流‼︎ これだと足りないからまだ行くぜ。
光と闇は手を取った
光は弾丸
闇は砲身
放てよ 「暁」‼︎ 」
水と炎のコラボレーションと光と闇のコラボレーション。水炎の濁流が蒼穹の矢の威力を弱め、勢いを殺す。そして、「暁」が矢を破壊。
リアスの蒼穹の矢を水炎の濁流と暁で相殺する。リアスは目を見開いて驚いていた。
本当ならあり得ない相対する属性の融合と詠唱破棄、並びに魔法陣の高速展開ときたら驚くに決まっている。
「す、凄い……アインは天才ですね。私じゃ足元にも及ばない」
「そうでもないと思うぞ。リアスだって魔法陣の展開はかなり速かったし古代魔法も使えるなんて凄いじゃないか。本来俺が使った魔法は多量の魔力を要する。だから連発なんてできない。けどそれを可能にしているのは忌神の加護のおかげだ」
リアスはまた俺に歩み寄り、地面にちょこんと女の子座りで俺の隣に座った。
どうやら、これから少し話そう、ということなんだろう。それに応え、俺もその場に座る。
リアスは俺の目を見てありがとうございますと和かに笑う。
綺麗だ。
「辛かったでしょうねアイン」
「え?」
急に俺の視界が暗くなった。別に気絶したわけでもなく、ましてや目をつむったわけでもない。
柑橘類の良い香りが俺の鼻腔を刺激する。次に感じた物は人の温もり。
俺の後頭部に回された柔らかい腕、胸に押し当てられたリアスの豊満な胸の感触。
「私は見てた。一年前の合同演習の時あなたのことを。フィアさんが灰色の焔を出して、あなたは震えていた。最初は私達一般人と同じく怖がっていたのかと思っていたけれど、さっき聞いたことで分かった。あなたは怖がっていたんじゃなくて、どうしようもないくらい自分が嫌いになってしまったのね。何故あなたが一年間、あんな張り詰めた雰囲気を出していたのかも分かった。
頑張ったね……辛かったね、嫌だったね。でも少しは私達を頼ってもいいんだよ。一人で全部を背負わなくてもいい」
その声は今までで聞いたどの声よりも優しく、俺の心に踏み込んだ。俺が忌神の加護持ちなのに、それなのにここまで優しい言葉をかけてくれる。
「ありがとう」
その言葉しか出ない。とにかく嬉かった。
人が人であると肯定する物は何か。それは心だろう。心を無くした人は人ではなく獣だ。
誰かを守るために凶戦士になるのはそれは守るためなどではなく、殺すため。
そして、俺が歩もうとしていた道は凶戦士の道だったのかもしれない。
この人が善であると肯定するのはその人の心で、誰の加護を受けているのかなんて関係なく、人は心を見るのだろう。
俺の身体から憑き物が落ちた気がした。気がしただけかもしれないが今の俺には気がしただけでも随分と成長した方だ。
もう分かったよ。
俺は、いや僕は弱い。だから人の、仲間の手を借りないといけない。
なあ、忌神。
聞こえてるんだろ?僕はあんたの力を肯定する。
もう、逃げない。
話を動かしたいのでこうなりました




