人が人であると肯定する物
少なめです
「リアス、流石に離れてくれないか?」
リアスは俺に抱きついたまま動かなかった。俺も男だから嬉しいっちゃ嬉しいけど、流石に長い。十分も抱きつかれたままはキツイです。
「あ、すみません。ではもう私は部屋に戻りますね」
そう言うとリアスは俺から離れて部屋へと戻っていった。
鍛錬場に一人きりになった俺。ポツンとただそこに佇む。
忌神の力はどんな物なのだろうか。
俺に扱える代物なのか。
《よぉ、餓鬼元気か?》
まるで時間を計ったかのような絶妙なタイミングで話しかけてきたあのおっさん。
頭に直接聞こえてくる声の主は忌神。名前は知らない。
《この一年間ずっと沈んでた》
ゲラゲラと笑う声が頭に響く。とても不愉快。もし、殴ることができるなら今すぐにでも殴りたい。
《まあまあ、そんな怒るなって。あ、一つ言っておくが俺の力を使えとか言ってたけどアレ撤回な。お前のヘタレっぷり見たから認めるの辞めるわ。使いたければ俺にお前を認めさせてみろ。んっじゃまったなー》
……。
そりゃないぜ。
一方的に流れるおっさんボイス。
一方的に話しかけてきて、一方的にどっかにいってしまう。ひでぇ……。
てか忌神の力使わせてくれないのかよ。ついさっき、良い感じに外れた道を戻ってきたってのに。
なんだまだ俺のメンタルは軟弱高慢貴族なみなんですか!
そんな愚痴を吐くも、俺は聞いてないーと忌神は何も反応を見せない。
ああ、俺も疲れたし帰ろう。
「遅かったわね。アイン」
部屋に戻るとまだ朝の五時だというのに制服に着替えたフィアが椅子に座りながら朝食をモグモグと食べていた。
でもさすがに眠いのかその瞼は蕩けており、またいつ微睡みの中に落ちるのか分からない。
フィアにも沢山迷惑をかけた。一年間ずっとグレてた俺とよくルームメイトとしてやってくれたよ。
俺だったら先生に変えてくれとか言うかもしれない。
「ああ、遅くなった。それとこの言葉をかけるのも遅くなった」
そう言うとフィアは首を傾げる。はて何のことやら。といった感じのジェスチャーだ。
この言葉を言ったらどういう顔になるのだろうか。
「今まで迷惑かけてごめん。それとルームメイトで居てくれてありがとう」
フィアは食べかけのパンを落とした。眼は見開き真っ直ぐ俺の事を見ている。
俺たちはたったの十四歳。思春期というのは不思議なもので考え方が多種多様に変化する。
グレてた俺から改心した俺へ。もしかしたらまたグレるかもしれない。でも今度は大丈夫だろう、なんたって俺には素晴らしい仲間がいるんだから。
「アイン、頭でも打った?」
「打ってないぜ。改心したのさ。リアスのおかけでな」
最後の言葉を聞いた途端にフィアの空気は重くなった。顔には影が出来、椅子から立ち上がる。ユラユラと擬似的千鳥足でこちらへと歩いてきた。
俺のすぐ目の前に来るとフィアは顔を上げて俺を見る。その目はとても虚ろ。
「私は?」
「え?」
そう反射的に答えるとフィアは目尻に涙を溜め、泣きそうな顔をする。
何故? そう思っているとフィアはまあいいやと何時もの調子に戻っていた。
「謝るのは私だけじゃないでしょ?他にも謝る人は居ると思うけれど」
落ちたパンを拾い、便利な魔法で汚れを取ってまた頬張るフィア。その姿は何とも言い難い愛らしかった。
そして、時間は過ぎて朝のホームルーム。
「ええ、明日から夏休みで約一ヶ月授業は有りません」
俺は一番後ろのど真ん中でそれを聞いた。
忘れていたが明日から夏休み。
去年の夏休みはグレてた事もあり、極力人を避けて鍛錬に明け暮れていた。
ということは俺はわからないのだ。夏休みの過ごし方が。
明け暮れるのはもう沢山だ。
そして、終業式もつつがなく終わり、ついに夏休みに入ってしまった。
とりあえず今はメーアとミーナ、フィア、アークライト姉妹と一緒に談笑している。
アークライト姉妹のリアナが俺をまじまじと見ている。
「どうしたんだよリアナ」
そう言うと
「本当に変わったんですね。だったら私と再戦して‼︎ どうせ夏休みに入って暇でしょ? 」
うぐっ。この通り、またみんなと話せるようになりはしたが、俺が忌神の加護持ちであることは言っていない。心の片隅でまだ俺は怖がっているらしい。
「ああ、そうですよ暇ですよ。で得物はどうすんだ?真剣でいいのか?それとも木剣か?」
リアナは即答で真剣‼︎ と答えた。
感想くれると作者は水を得た魚のように元気になります




