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『童貞だった僕が、美しいエルフだけの村に迷い込んだ件 ~世界樹に選ばれた最後の管理者~』  作者: こうた
第一章「世界樹の村」

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第二話「初めて見たエルフの村」

「……人間?」


目の前の少女は、警戒したまま弓を構えていた。


春人は慌てて両手を上げる。


「ま、待ってください! 僕は怪しい者じゃありません!」


自分でも何を言っているのか分からなかった。


突然、知らない森に放り出されて、目の前には耳の長い美しい女性。


普通なら混乱する。


だが、それ以上に春人を驚かせたのは、その少女の表情だった。


怖がっている。


警戒している。


でも同時に、どこか信じられないものを見るような目をしていた。


「……本当に人間なの?」


「え?」


「あなたのような存在が、この森に現れるなんて……」


少女はゆっくり弓を下ろした。


「私はリーファ。エルネシアの森守です」


「エル……ネシア?」


聞き慣れない言葉。


春人は周囲を見渡す。


やはり、ここは日本ではない。


植物も、空気も、何もかも違う。


「僕は春人です」


「ハルト……」


リーファは、その名前を小さく繰り返した。


まるで大切な記憶を確認するように。


「あなたは、どこから来たのですか?」


「どこからって……」


春人は言葉に詰まる。


異世界から来ました。


そんなことを言って信じてもらえるだろうか。


「……日本っていう場所です」


「ニホン?」


リーファは首を傾げる。


その反応で、春人は確信した。


ここは自分の知っている世界ではない。



---


「リーファ!」


森の奥から声が聞こえた。


数人の女性がこちらへ向かってくる。


春人は思わず息を止めた。


美しい。


それが最初の感想だった。


金色の髪。


銀色の髪。


青い瞳。


緑の瞳。


全員が人間離れした美しさを持っている。


そして全員、長い耳をしていた。


「エルフ……」


春人が呟く。


すると、一人の女性が驚いた。


「今……エルフと言いましたか?」


「え? あ、はい」


「その言葉を知っている?」


女性たちはざわめいた。


その中で、一番落ち着いた雰囲気を持つ女性が前に出た。


白い衣をまとい、優しい瞳をしている。


「私はエリシアです」


「初めまして……」


「あなたのお名前は?」


「春人です」


エリシアは静かに目を閉じた。


そして、まるで祈るように呟く。


「……世界樹様」


「え?」


「ついに……現れたのですね」


春人には意味が分からなかった。



---


村へ案内される途中。


春人は何度も周囲を見回した。


そこは絵本の中のような場所だった。


巨大な木の中に作られた家。


花で飾られた道。


水晶のように輝く川。


そして、歩いているのは全員エルフの女性。


「ここが……村?」


「はい。エルネシアです」


エリシアが微笑む。


「この村には、長い歴史があります」


「すごいですね……」


「ですが、一つだけ問題があります」


エリシアの表情が少し曇った。


「問題?」


「はい」


彼女は静かに答える。


「この村には……男性のエルフが、数百年生まれていません」


春人は驚いた。


「え……?」


「私たちは女性だけの一族です」


その言葉の意味を理解するまで、少し時間がかかった。


美しい村。


優しい人々。


しかし、その裏には大きな孤独があった。



---


夜。


春人は村の宿で一人、窓の外を眺めていた。


星空が広がっている。


地球では見たこともないほど、綺麗な星空。


でも。


胸の奥には不安があった。


帰れるのか。


家族はどうしているのか。


自分はこの世界で何ができるのか。


「……僕、本当にここで生きていけるのかな」


その時。


扉が軽く叩かれた。


「春人さん」


声の主はエリシアだった。


「眠れませんか?」


「……はい」


少し沈黙が流れる。


するとエリシアは、小さく笑った。


「不思議ですね」


「何がですか?」


「あなたは突然現れたのに……」


「?」


「ずっと昔から、この村にいたような気がします」


その言葉に、春人は少し驚いた。


そして初めて。


この異世界で、自分を受け入れてくれる人がいるのだと感じた。



---


その夜。


世界樹の奥深くで、巨大な樹が淡く光った。


長い眠りから目覚めたように。


そして、誰にも聞こえない声で呟く。


――異界の魂よ。


――あなたが、この世界の未来を選ぶ時が来た。



---


第二話 終

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