第一話「孤独な僕と、光る森」
春人は、いつも一人だった。
学校でも、職場でも、特別嫌われているわけではない。
話しかけられれば普通に返事をする。
困っている人がいれば助ける。
誰かを傷つけたいと思ったこともない。
けれど、いつも心のどこかに穴が空いているような感覚があった。
「……僕って、何のために生きてるんだろうな」
夜の帰り道。
春人は空を見上げながら、小さく呟いた。
周囲には誰もいない。
街の明かりは遠く、聞こえるのは風の音だけ。
二十二年間。
恋人ができたことはない。
女性と話すだけでも緊張してしまう。
友達と呼べる相手も少ない。
もちろん、誰かに愛された経験なんてなかった。
「一度でいいから……誰かに必要とされてみたいな」
その願いが、まさか自分の人生を大きく変えることになるとは、この時の春人は知らなかった。
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数日後。
春人は休日に山へ向かっていた。
特別な理由があったわけではない。
ただ、都会の騒音から離れたかった。
木々に囲まれた場所なら、少しだけ自分の心と向き合える気がした。
深い森の中。
鳥の声。
葉が揺れる音。
静かな空気。
「……落ち着くな」
そう思った瞬間だった。
森の奥で、不思議な光が見えた。
最初は、誰かが置いたライトだと思った。
しかし違った。
木々の間に、空間そのものが揺れている。
まるで水面に映った景色のように、虹色の光が揺らめいていた。
「……何だ、これ」
近づいてはいけない。
頭では分かっていた。
けれど、なぜか足が止まらなかった。
その光から、声のようなものが聞こえた気がした。
――助けて。
「え……?」
聞き間違いかと思った。
しかし、胸の奥が強く反応する。
誰かが呼んでいる。
そんな気がした。
一歩。
また一歩。
春人が光へ手を伸ばした瞬間。
世界が反転した。
「うわっ……!」
身体が浮く。
足元の感覚が消える。
風の音も。
森の匂いも。
すべてが遠ざかっていく。
最後に見えたのは、光の中に浮かぶ巨大な樹の姿だった。
その樹は、春人を見ているようだった。
そして、静かな声が響いた。
――ようやく見つけた。
――世界を変える可能性を持つ者よ。
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目を覚ました時。
春人の目の前に広がっていたのは、見たこともない景色だった。
巨大な木々。
空を飛ぶ光の粒。
青く輝く花。
そして、遠くにそびえる一本の巨大な樹。
「……ここ、どこだ?」
返事はなかった。
ただ、森の奥から足音が聞こえる。
警戒するような気配。
春人が振り返る。
そこに立っていたのは――
長い銀色の髪。
透き通るような白い肌。
美しい顔立ち。
そして、人間にはない長い耳。
彼女は驚いた表情で春人を見る。
「……嘘」
小さな声が漏れる。
「人間……?」
春人には、その言葉の意味が分からなかった。
しかし、この出会いが。
孤独だった青年の人生を変える最初の一歩になる。
そして彼はまだ知らない。
この世界で、自分が世界の未来を左右する存在になることを。
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第一話 終




