卑劣な罠、ドラゴン封じの湿地
「行くぜ!骸骨野郎」
カイトは意気込みスカル・リーパーを睨みつけた。名称やAPを確認するためだ。
「……!? APがたったの10だと!?」
いくらなんでも低すぎると思った。それは自然界に存在する原生モンスターの平均的な数値よりもやや高いぐらいのAPではないか。一抹の不安を抱えデッキからカードを引き抜いた。
「《ポラリス団の槍使い》召喚!」
光とともにAP12を持つ槍を構えた戦士が現れた。後ろをチラリと見やるとリィズの不安げな顔がそこにあった。
「カイト、気をつけて……」
「ああ、わかっているよ。ここは先手で攻撃だ」
槍使いがスカル・リーパー目掛けて駆け出そうとした時、やや離れた場所に黒い霧が出現した。
その直後、ガタンゴトンと聞きなれた轟音をたてひと昔前をイメージさせる《蒸気機関車(SL)》が線路の上に出現した。
決して速い速度ではないがカイトたちの目の前を通過しようと走り迫ってくる。
「戦う気ガあるならついてこイ。地獄へ案内してやろウ。グハハハ」
スカル・リーパーはすかさずSLに飛び乗る。
「なにいっ、待て!」
カイトは挑発だとわかっていたが逃す訳にはいかなかった。
森を抜けられた達成感が慢心へと変わっていたのである。
カイトと槍使いがSLを追いかけた時、その方向に逃げていくスカル・リーパーの策略にリィズが気づいてしまった。
「その先は……まさか? カイト、いけません。戻ってください!」
必死にカイトを制止しようと叫んだ。
「リィズ、あんなやつ敵じゃないさ!」
少し振り返ったぐらいでカイトは止まる様子を見せなかった。
「行くぞ! 《アーマード・ファルコン》」
カイトはアーマード・ファルコンを召喚しその脚に捕まった。
アーマード・ファルコンは低空であればカイトをぶら下げ滑空することができる。
「その先には《ドラゴン封じの湿地》が!」
リィズがさらに叫ぶもカイトはもう声の聞こえない距離へ離れて行ってしまっていた。
「私も行くしかない……」
森で言った『いなくならないでください。私の前から』その言葉がリィズの胸の奥で不安を増幅させるようにこだました。
――スカル・リーパーを乗せたSLはカイトとつかず離れずの距離を保ちながら走行を続けていた。
「あいつ、どこまで行く気なんだ」
十分ほど走行を続け、丘の山頂付近でスカル・リーパーがSLから飛び降りた。
その後SLは霧に包まれ消えていった。
アーマード・ファルコンにぶら下がったカイトも間もなく追い付いた。
「なんだ、ここは?」
カイトがスカル・リーパーの側に見たものは紫色の臭気を醸し出している湿地帯だった。
クレーター状にできた直径50メートルほどの穴にオイルのような黒い液体が溜まっていた。
外観の特異さもさることながら、また奇妙なのはここまで続いていた荒野エリアがカラカラに乾いていたはずなのに湿地帯がそこにあるのである。
「くっ、このにおいは……」
まるでカビの生えた地下室のようなにおいが強く鼻を穿つようだった。
その悪臭にたまらずカイトは手で口と鼻を押さえた。
「グハハハ。ここガお前の墓場ダ」
あざ笑うスカル・リーパーに対して、カイトの召喚した槍使いとアーマード・ファルコンが対峙する。
ポラリス団の槍使いAP12&アーマード・ファルコンAP15 VS スカル・リーパーAP10
臭気に慣れ始めたカイトがまず槍使いに攻撃命令を出した。
「なにを企んでいるのか知らないがAPは勝っている!ポラリス団の槍使い、攻撃だ!」
鋭い槍の一突きが繰り出されるがスカル・リーパーはその攻撃を軽々と避け、大鎌によるカ
ウンタ―攻撃が放たれ槍使いは消滅した。
「なに……やられただと? こうもあっさりとなぜ? ……!?」
カイトはスカル・リーパーの装備している大鎌が湿地帯の臭気を吸い、紫のオーラをまとっていることに気づいた。
「武器のパワーアップか!」
「力ガみなぎるゾ、お前を切り刻んデくれるワ」
スカル・リーパーのAPは倍の20まで上昇していた。
「だが、それでも俺の切り札ユナイト・ドラゴンの方が」
そう言ってカイトがデッキケースからユナイト・ドラゴンを取り出そうとした時
「カイト!ドラゴンを呼んではならない!」
リィズの声が背中越しに聞こえた。




