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異世界マングローブからの脱出

「リィズ。ユナイト・ドラゴンで攻撃するとしたら何回ぐらいできそうか?」

「……あの雄叫び攻撃はできて一度きりでしょう」

リィズが弱々しく答えた。

ウィップ・ツリーが決して早くはない速度ではあるが、確実にじりじりと二人に距離を詰め寄ってくる。カイトは覚悟を決めモンスターを召喚した。

「何もしないわけにはいかないか、頼んだ!」

カードから《ポラリス団の槍使い》と《ステッキホビット》が飛び出すように現れ、交戦状態に入る。

 ポラリス団の槍使いAP12&ステッキホビットAP8 vs ウィップ・ツリーAP5×n

槍使いもホビットもAPは上回っているのでウィップ・ツリーを次々と撃破していくが、圧倒的な物量を前に鞭攻撃を受けどちらも消滅していった。

「まずいな、まともに戦ってもらちがあかない」

こちらに敵意を向けているとはいえ、相手は原生モンスターである。無駄な殺生はしたくない。逃げられるなら逃げたいのが正直なところ。カイトの頬を絶えず汗がつたっている。

「ったく、自然の驚異ってのはこの世界に来て嫌ほど……自然?」

病室で見たマングローブの動画にその説明書きがされていたことを思い出した。マングローブが形成される環境は海水と淡水が混ざり合う場所。つまりこの場所は河口付近、海が近いということだ。

カイトはデッキケースから一枚のカードを引き抜いた。

「ならこのカードが使える。リィズ、お前泳げるか?」

リィズはこんな時に何を聞いてくるのだろうと怪訝(けげん)な顔を浮かべ答えた。

「竜人ですから水の中は全く問題ありません。それがどうしたというのですか?……まさか?」

リィズはカイトの魂胆を察した

「そうか。よし、決まりだ!」

カイトはさらにもう一枚カードを引くと河口側と思われる方向にユナイト・ドラゴンを召喚した。

「さあ、来い!ユナイト・ドラゴン!」

雄叫びをあげドラゴンが現れた。

 そして、反対の森側に向けカードを掲げる。

「スペルカード《噴出する激流》発動!」

〈噴出する激流:激しい水流が押し寄せ火炎タイプのモンスターを一体、手札に戻す〉

発動直後、上流の方向からドドドと音をたてて穏やかなマングローブ帯に大量の水が押し寄せてきた。

カイトはユナイト・ドラゴンに目配せし叫んだ。

「ユナイト・ドラゴン!道を切り開いてくれ!リィズ俺につかまれ、飛び込むぞ!」

リィズを抱え、はああああと大きく息を吸い激流の中に飛び込んだ。

ユナイト・ドラゴンAP25 vs ウィップ・ツリーAP5×n

下流方向に待ち構えるのはウィップ・ツリーの軍勢。本来、マングローブでは発達した樹木の根や幹がいくつも連なり重なり合うことで波のエネルギーを吸収する防波堤の役割を担っている。

ユナイト・ドラゴンの尻尾を使った薙ぎ払い攻撃により一度に数体が消滅した。その突破口を水の急速な流れに乗ったカイトたちが通過した。植物型・水棲型モンスターの命を育む神秘的な水域であろう。だが、自分たちはまだ倒れるわけには行かない。

――数十秒がたった。どれほど流されただろうか。ようやく水流が落ち着いた時、水面に無我夢中であがった。予想通り、すでにそこは森エリアを抜けて海にでていた。浮上したのは海面だった。視覚的な距離感から推測するに、森からそこまで遠くまで流されてはいないようだ。

「ぷはっ、はあはあ。生きている……」

 これが快晴の空の下であれば突き抜けるような爽快感も少しは感じられたであろうが、残念ながら変わらず空は暗い曇り雲で覆われていた。

 カイトにしがみついていたリィズも息を切らしている。

「何とか……なりましたね」

「すまなかったな、あれしか方法が思いつかなかったぜ。また凶暴なモンスターが現れたらまずい。」

見回すと森側に砂浜を見つけた。

「とりあえず、あの砂浜からあがろう。泳げるか?」

「ええ、行きましょう」

二人はまた泳ぎ始めた。

 淡々と受け答えするもリィズは本心、仕方がなかったとはいえカイトが無茶な行動にでたなと思った。もし激流に流されている時にカイトの身に何かがあれば、自分が水面まで引っ張り上げなければならなかったであろう。


 ――そういえば、同じように《彼》も無茶なことをする人型だったな……



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