アントニオ、蒼く暗い海の復讐
昨日、闇ギルドから呼び出しを受けた。
グレイス侯爵家のマリアンヌ様が私に会ってくださるそうだ。
久しぶりに会うマリアンヌ様は水色のドレスで美しく、幸せそうだった。
私たちの出会いは、決して良いものではなかったが、侯爵様がここまで私達に良くしてくれることには感謝している。
マリアンヌ様は、「アントニオさんとロアールさんとロイドは主人の命の恩人だから」と言ってくれる。 「あの時、あなた達の助けがなければ、私一人では主人を助けられなかった」それにあの館にいた時も、主人は3人に良くしてもらったって、、、言ってた。
良くしてあげた、と言っても、私達に出来ることは、あまり多くはなかった。
娼館に通ってくる令嬢の一人にアンヌという名の令嬢がいた。
彼女は、親が決めた婚約者が嫌で良く私達に愚痴をこぼしにやってきた。
私は彼女に彼の体力回復に良い薬を頼んで何度か飲ませただけだった。
それと、これはマリアンヌ様には話せないが、私たちの仕事部屋の奥に来て、少し意識のあったロイエンタールを発見して彼に迫ったご婦人に、彼は危険な病気にかかっているのでと、ロワールと2人でなだめ彼女を彼から遠ざけただけであった。
何でもあり、の娼館だったが、私とロワールは結婚前の令嬢には、貴族の結婚の初夜、処女は大切なものなので、どんなに求められても、最後の一線だけは超えないようにしようと、誓った。
どん底の世界に落とされた私達だが、すこしばかりのプライドは残っていた。
そんな私たちを慕って通ってくる令嬢も多かった。
アンヌさんは婚約者の顔が気に入らないと愚痴をこぼしていたが、私とロワールは男は顔じゃないと、いつも彼女に言っていた。
「2人の顔の良い男に言われてもまるで、説得力がない」と、彼女は笑っていたが、無事結婚できただろうか? 最後に会った時、結婚後の最初の夜が怖いと言っていたので、おおまかにベッドでのことは教えたが、上手にできただろうか?
あの館でのことは、嫌な思い出ばかりだが、その泥沼に一輪咲いた夫を思うマリアンヌ様の清らかさは、美しい薔薇のような存在だった。
ふとそんなことをマリアンナ様と話した時に思い出してしまった。
彼女は面会の当日、自分たちの船を貸すので昔のように船長として、頑張って演技してほしいと、言って、にこやかに笑いながら、ギルドを去って行った。
その後、ギルド長と何人かの仲間と今回の計画を細かく打ち合わせした。
約束の日、私は2人の力の強い仲間をつれ、小型だが、まだ新しく瀟洒な船の船長になっていた。
懐かしい伯爵領の青い空、青い海が輝いていた。 店の主人はにこやかに私を迎え入れた。
私は前回のように勧める酒も飲まず、さっそく金、銀の品物の入った大きな箱を入念に確かめた。
店主は品物確認の現場に立ち会ったが、私のことをまるで覚えていなかった。
「こちらは、グレイス侯爵の奥様のご要望通りの、侯爵家の家紋をいれた最高級のお結わいの品の食器、ティーポット、スプーン、フォークなどのテーブルセットです。 いずれも金と銀2種類で作っております。 小さなスプーンに家紋をいれるのは、大変でした」と金の入った侯爵家の家紋いり木箱から金の品物を何点か出して見せ自慢気に話した。
今回の品はすべて高級品で、集めるのは苦労しました。
店主は、自分の店の物以外にも、どこかからか、最高級の金と銀の商品を集めてきたのだろう。
「航海の安全をお祈りします」と頭を下げた。
これが、すべて消えれば、店主は丸損だ。 そして、2日後には、彼の罪が明確になる。
まさか、グレイス侯爵家がこの詐欺に加わっているとは、店の店主も思わないだろう。
私は笑いをこらえ、にこやかに、明日の朝、船は出航するので、今日は仲間と船で休む、といい、荷運びを手伝うため、店の外を出た。
店の主人は、しばらく船までの荷運びを見ていたが、荷が運び終わる途中で店の中に戻っていった。 私たちは、残りの荷を近くに止めてあった馬車にすばやく運んだ。
船に先に積み込んだ荷は、仲間の連絡で、朝、店長が荷を確認したいと言われると、面倒なので、金銀の品物が入った箱を2個ほど残し、あとの荷は、夜中、闇にまぎれ、待機していた、小さな船に荷物をすべて積み替え、代わりにガラクタの入った箱を入れておいた。
こうして、復讐の一段階は終わった。




