小雨降る侯爵邸
私はその朝、ロイの隣で目覚めた。 彼は私の隣で、よく眠っていた。
薬の影響で、良く寝ているのだろう。 私は温かな彼の体に触れ、安心して、窓の外を眺めた。
小雨が降る中、離宮の庭の薔薇の庭園を眺めた。
薔薇の花は、雨に濡れキラキラしていた。
私が庭を眺めていると、メイドのリラが私の部屋の戸を叩いた。
昨夜は、ドアを叩いても、返事がなかったので、また私の具合が悪くなったのか、心配してくれていたようだ。 私は眠っているロイをリラにみせた。
旦那様は昨夜遅くに、「ローズウッド邸よりお戻りになったのですか」 リラは私に尋ねたが、私は曖昧に首をふった。
すこし庭の薔薇を、彼のために摘んでくるわと、リラに言うと、リラは傘を私にかざし、庭まで一緒に降りてくれた。
2人で赤い薔薇、白い薔薇、ピンクの薔薇、紫の薔薇、たくさんの薔薇の花を摘んだ。
部屋に戻り、リラが持って来てくれた、花瓶に薔薇の花をたくさん飾った。
花びらは、僅かに濡れて、それはまるで私の安堵の涙のようだった。
やがて、部屋中が薔薇の花の香で満たされ、ロイに似た嫌な男のことが、少し薄れていくようだった。
リラにコーヒーを頼み、ロイが起きたら朝食も一緒にこの部屋で用意するよう頼んだ。
リラが用意してくれたコーヒーを飲んでいる時、ロイは静かに目を覚ました。
私は彼に「おはよう」と何事もなかったようにささやいた。
ロイは「昨夜は、狭い通路を通りこの部屋に来たようだが、あれは夢だったのか」と私に尋ねた。
「あれは代々我が公爵家に伝わる、秘密の通路なの、もうあなたに知られたから秘密ではなくなった」けどね。
今日の夜か明日、あなたの弟がこの屋敷に戻ってくると思うけど、と彼に言うと、彼は弟をもう決して許さないと、私に言った。
私達は朝食を食べながら、彼の弟のルシアンのこと、娼館にいたロイドのこと、今後のことを話しあった。
薔薇の香りのする部屋での2人の密談であった。




