第三十九章 六月
六月一日。
送信機が再整備された。増幅ユニットは健在。プロトコルは更新され、より複雑な構文を送受信できるようになっていた。
篠原は毎日、全帯域をスキャンしていた。最終接触の兆候を、一瞬でも早く捉えるために。
六月八日。
兆候は突然に訪れた。
「全帯域で――異常検出」
翔太が叫んだ。篠原が飛んできた。
だが、画面に表示された信号は、今までのどの信号とも違っていた。
14.7ギガヘルツでもなければ、0.5ヘルツでもなかった。特定の周波数に集中していなかった。**全ての周波数帯に、均一に、極めて微弱な信号が広がっていた。**
「ホワイトノイズ……やなか。パターンがある。極めて複雑な変調が、全帯域に分散して乗っとう」
篠原はデータを解析した。
「プロトコルと一致する。これは――**通信**たい。ただし、今までとは桁違いに高度な。帯域全体を使って、膨大な情報量を一度に送っとう」
「内容は?」
篠原は解読を始めた。サーバーがフル稼働した。
三時間後。
篠原が顔を上げた。
「読めた。最初の部分だけやけど」
美咲が篠原の横に立った。
画面に表示された文字列。篠原が翻訳した一文。
**「送信元に問合する。以下の問いに応答せよ」**
「来た」美咲が言った。「問いかけが」
篠原は続きを読んだ。
問いは一つだけだった。
篠原は翻訳を終え、紙に書き出した。そして、長い間それを見つめた。
「……これは」
美咲が紙を覗き込んだ。
問いはこうだった。
**「お前たちは、なぜ存在し続けることを選ぶのか」**




