第三十七章 最後のブロック
サーバー室。篠原と翔太と美咲。
篠原の顔には疲労があったが、同時に、ある種の澄明さがあった。長い旅の終わりに見える景色のような。
「第二ノードの返答データ、全ブロック解読完了。最後の部分に、重要な記述がある」
篠原は画面を指差した。
「これは第二ノード自身の言葉やなくて、**観測網全体のプロトコル**に関する記述たい。つまり、四体のノード全てに共通するルール」
篠原は読み上げた。
**「全ノードの観測完了後、対象に対して最終接触を実施する。最終接触の内容は、観測結果に基づく問合と、応答に応じた情報提供とする」**
「最終接触……」美咲が繰り返した。
「四体全部の観測が終わった後に、もう一回来る。今度は観測やない。**対話**たい。向こうから問いかけてきて、こちらの答えに応じて情報を渡す」
「情報って、何の?」
「書いてない。ただ、『応答に応じた情報提供』やけん、こちらの答え次第で内容が変わるらしか」
翔太が聞いた。
「最終接触はいつですか」
篠原は計算した。
「ノード3の観測期間が終わるタイミングによるけど……データ上の記述から推測すると、**ノード3の観測開始から約六ヶ月後**。ノード3がいつから観測を始めたか正確にはわからんけど、第二ノードの干渉が止まった直後と仮定すれば――」
「六月頃」
「そう。今年の六月前後。あと二ヶ月」
美咲は窓の外を見た。四月の空。桜が咲いていた。拠点の中学校の校庭の端に、一本だけ残った桜の木。
「篠原さん。最終接触で向こうが問いかけてくるってことは、ノード4は**来ない**んですか?」
篠原は首を傾げた。
「いや。ノード4の『環境適応の観測』がいつ、どう行われるかは記述がなか。もしかしたら、ノード3と同時並行で、既に観測を始めとうのかもしれん。あるいは――最終接触そのものがノード4の役割かもしれん」
「最終接触がノード4?」
「あくまで推測たい。でも、考えてみろ。人間が空の存在と対話すること自体が、**環境への適応**やないか。人間の環境は、もう地球だけやない。あの観測網も含めた宇宙が、人間の環境になった。それに適応できるかどうかを見るのが、ノード4の仕事やとしたら」
美咲は黙って考えた。
「つまり、最終接触で向こうの問いに答えること自体が、ノード4の**テスト**」
「テストという言い方は好かんけど――まあ、そういうことになるやろうな」




