第十五章 サーバー
十月十日。
翔太と美咲は天神のオフィスビルの地下に潜った。
地下二階のサーバールーム。鉄製のドアを開けると、冷たい空気が流れ出した。地下は外よりも温度が低い。それがサーバーの保存状態を守っていた可能性があった。
懐中電灯の光が、整然と並んだサーバーラックを照らした。
「IT企業のデータセンターやったみたいですね」翔太がラックのラベルを確認した。「Dell PowerEdge。二〇二四年モデル。Xeonプロセッサ搭載。これが動けば、ノートパソコンの三十倍は速い」
「動くと?」
「電源さえ確保できれば。サーバーのハードウェアは精密やけど、電気を通さん限り劣化しにくい。一年半くらいなら――いける可能性は高か」
二人はラックからサーバーを二台引き出した。重かった。一台約二十五キロ。美咲と翔太で一台ずつ、汗だくになりながら地上まで運び上げた。
拠点に持ち帰り、発電機に繋いだ。
翔太がスイッチを入れた。
ファンが回る音。LEDが点滅する音。
画面に文字が流れた。
翔太が拳を握った。
「動く。動きます、先生」
篠原がサーバーの前に座った。目が少女のように輝いていた。
「これで解読速度が三十倍になるなら……残り七割の解読が、一年半から**三週間**に短縮される」
「三週間……」美咲が呟いた。
「ただし」篠原の表情が引き締まった。「サーバーの消費電力はノートパソコンの比やない。発電機をフル稼働させる必要がある。ガソリンの消費量が跳ね上がる」
燃料問題。畑の作業にも、焼却作業にも、通信にも発電機は要る。全てがガソリンに依存していた。そして、放置車両から抜けるガソリンは劣化が進んでいて、使えるものが減っている。
「どれくらい要ると?」中村が聞いた。
「三週間フル稼働で……ざっと二百リットル」
中村は黙って計算した。現在の備蓄ガソリン、約五百リットル。他の用途との兼ね合い。
「厳しいが、出せる。ただし、三週間以内に終わらせてくれ。それ以上は他に回すガソリンがなくなる」
「やる」篠原は即答した。




