5/38
第五章 世界の声が消える日
四月二十日。テレビ放送が途絶えた。
最後まで放送を続けていたNHKの画面が砂嵐に変わった瞬間、地下街の誰かがすすり泣いた。インターネットもほぼ不通。電力網は各地で寸断されていた。
世界がどうなっているのか、もうわからなかった。
ただ、地上から響く音だけがあった。
引きずるような足音。低い呻き声。時折、悲鳴。それも日に日に少なくなっていった。悲鳴が減るということは、悲鳴を上げる者が減っているということだ。
中村は地上への偵察を日課にしていた。その日、彼は地下街に戻り、静かに言った。
「明治通りから天神交差点まで、全て奴らで埋まっとう。千や二千やない。万単位たい」
三十七人は、三十二人になっていた。




