第三十四章 返答
一月二十二日。
篠原は丸一日眠り続け、翌朝目を覚ました。
熱は四十度を超えていた。原口が氷嚢を作り、島に残っていた最後の解熱剤を飲ませた。篠原は朦朧としながらも、最初に求めたのは水ではなく、ノートパソコンだった。
「データ……返答のデータは」
「全部記録しとります」翔太がパソコンを差し出した。「信号は六分十二秒間続きました。データ量は――先生、膨大です。今までの蘇生信号の構造と比較にならんくらい複雑で」
篠原は震える手でパソコンを受け取り、画面を覗いた。
返答信号の波形データ。六分十二秒間、途切れることなく送られてきた、あの空の上の何かの「言葉」。
制御構文と同じ体系で記述されていた。『モード:応答』『対象:送信元』。そこまでは昨夜すぐに読めた。だが、その後ろに続くデータ本体は、篠原が解読した制御構文の何倍も複雑な構造を持っていた。
「全部を読み解くには……何ヶ月もかかるかもしれん」
篠原は目を閉じた。だが、すぐに開いた。
「でも、構造の最初の部分――ヘッダーとそれに続く第一ブロックだけなら。あいつのプロトコルに則って読めば――」
篠原は右手でペンを取り、紙の上にデータを書き出し始めた。
翔太が横で支えた。篠原が口述し、翔太が書き取る場面も多かった。篠原の意識が何度か途切れ、そのたびに原口が呼ばれた。
午後三時。第一ブロックの構造が浮かび上がった。
篠原は紙の上に展開された数式を見つめ、何度も何度も確認した。翔太にも確認させた。
そして、顔を上げた。
「……美咲ちゃんを呼んで」




