表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死者の目覚め  作者: モモンガ太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/38

第二十九章 起動

一月十九日。午前六時。


夜明け前、全員が高台に集合した。


三十三人。遠征前の四十二人から、九人が減っていた。鶴田。遠藤。吉田の妻。池田の息子。宮本。そして昨夜、南の浜の防衛で二人が噛まれ、処理された。さらに一人が、夜中に心臓発作で死んだ。送信中だったから、蘇らなかった。


三十三人が、高台の送信機の周囲に集まっていた。


篠原は装置の前に座っていた。顔色は悪かった。額にうっすらと汗が浮いていた。熱は下がっていなかった。だが手は震えていなかった。


「手順を説明する」篠原の声は明瞭だった。「まず既存の送信を停止する。次に増幅ユニットへの電力供給を開始。周波数同期に約六十秒。出力安定まで約三十秒。合計九十秒で新システムが立ち上がる」


篠原は全員を見た。


「この九十秒間、蘇生阻害は消える。そして起動後に何が起きるかは、正直わからん。島のゾンビが止まるかもしれんし、何も起きんかもしれん。それでも、やる」


中村が前に出た。


「防衛配置につけ。九十秒間、何があっても装置に近づけさせるな」


三十三人のうち、戦える者は二十人足らずだった。高台の周囲に円陣を組んだ。内側に篠原と翔太と装置。その周囲を、武器を持った者たちが囲んだ。


美咲は篠原のすぐ傍に立った。右手に鉈。左手は装置の支柱を掴んでいた。


中村は円陣の最前列、南側に立った。海から来る敵が最も多い方角。鉈を構えた。


「佐々木、時間を計れ」


佐々木が腕時計を見た。


「了解」


夜明けの光が、水平線を赤く染め始めていた。


海の上に、影があった。昨夜よりも多い。数えきれないほどの頭が、浅瀬に向かって動いていた。


「篠原さん」中村が言った。「やってくれ」


篠原はスイッチに手をかけた。


「既存送信、停止」


パチン。


小さな音とともに、送信機のランプが消えた。島を守っていた見えない盾が、消えた。


「増幅ユニット、電力供給開始」


発電機が唸りを上げた。新しい装置に電力が流れ込む。計器の針がゆっくりと動き始めた。


「周波数同期開始。カウント、スタート」


佐々木が叫んだ。


「九十秒!」


最初の十秒は、何も起きなかった。


二十秒。南の浜で、海から上がったゾンビが高台に向かって歩き始めた。五体。十体。続々と。


三十秒。東側からも来た。丘を越えて。集落の方から。昨夜処理しきれなかった者たち。


「来たぞ!」中村が叫んだ。


四十秒。最前列にゾンビが到達した。中村の鉈が閃いた。一体。二体。三体。佐々木がハリガン・バーで横から薙ぎ払った。


五十秒。東側の防衛線にゾンビがぶつかった。漁師が銛で突き、老人が斧を振った。一体が防衛線を抜けた。美咲が飛び出して鉈を振り下ろした。倒れた。


六十秒。篠原が叫んだ。「周波数同期完了! 出力安定まであと三十秒!」


南側が崩れかけていた。ゾンビの数が多すぎた。中村は三体を同時に相手にしていた。鉈を振り、蹴り、体当たりで押し返した。


七十秒。中村の右腕に歯が触れた。腕を引いた。ジャケットの袖が裂けたが、肌には届いていなかった。


「中村さん!」美咲が叫んだ。


「来るなッ! 装置を守れ!」


八十秒。翔太が美咲を引き戻した。円陣の内側で、篠原が計器を睨みつけていた。出力の針が、じりじりと安定域に近づいていた。


八十五秒。北側から一体が突破した。誰の防衛線も抜けて、まっすぐ装置に向かってきた。


美咲が立ちはだかった。


海から来た男だった。漁師だったのかもしれない。ゴム長靴を履き、海藻を纏い、膨張した目でまっすぐ美咲を見ていた。


美咲は鉈を振った。男の頭に当たった。だが浅かった。男はよろめいただけで、再び腕を伸ばしてきた。


美咲は後ろに下がれなかった。背中に装置があった。


二撃目。今度は深く入った。男が崩れ落ちた。美咲の足元に。ゴム長靴が、美咲の靴に触れた。


「九十秒!」佐々木が叫んだ。


篠原がスイッチを入れた。


「増幅システム、起動」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ